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前世「降霊術師」の村娘Bは、亡き侯爵夫人の霊と事件を解決する ~婚約破棄されたけど、今世こそ普通に結婚したい!~  作者: 三多来定


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6/22

6.濡れ衣です!

 事件が起きたのは、翌朝だった。


 なんとこの町の町長が、私を引き渡して欲しいとホテルにやって来たのだ。


 ケビンを奪った女性の親である。

 嫌な予感しかしない!


「いいえ。ココさんの引き渡しには応じることは出来ません」

 執事様がドア前で応対している声が聞こえてくる。


「ココさん、大丈夫ですよ! 絶対に引き渡したりはしませんわ!」

 今日も私の体を使っているジュリー様が私を安心させるように言う。


「昨夜ホテル前にいたご夫婦は、ココさんの元婚約者の方だったのですね」

 侯爵子息様は腕を組んでドアを見つめている。


 ちなみに侯爵様はホテルの自室で書類仕事をしているため、この部屋にはいない。


 私は、私の体の中の意識下で、溜息をついていた。

 もう私の婚約破棄話を蒸し返さないで欲しい。

 最近になってやっと、少しだけ忘れていられる時間が出来たのだ。


 ドアが開いて、執事様が部屋に戻ってくる。


「とりあえずお帰りいただきましたが、何でも元婚約者のココさんから、娘さんが執拗に嫌がらせを受けているとのことで……」


 は、はあ!?

 嫌がらせ!?

 そんなことしたことない!!


「ココさんはそんなことはしていないと言っていますわ!」

 ジュリー様が私の気持ちを汲み取ってはっきりと執事様に言う。


「ええ、まあ、こちらは何が真実かは分からないのですが、何通も呪いの手紙を送って来たり、家に何回もきて罵詈雑言を浴びせられた等々……」


 手紙なんて一通も送ってない!

 家にも一回も行っていない!

 大体この町には、婚約破棄されてから初めて来たのだ!


 私の心の中に、どす黒い感情が湧き出ていた。


 どうして!?

 ケビンを奪われて、傷付いたのは私の方なのに!

 どうして私をさらに陥れようとするの!?


「町長の娘さんでしたか? 少々、おいたが過ぎるようですわね!」

 私(ジュリー様)は、スッと立ち上がった。


「お母様は、ココさんを信じるのですね?」

 侯爵子息様も立ち上がる。


「信じるも何もありませんわ! このココさんに入っている状態では、わたくしもココさんも嘘はつけないのです! 感情がそのまま伝わるのです!」

 私(ジュリー様)は目を吊り上げる。


 私のどす黒い感情が、ジュリー様に伝わってしまった。

 ごめんなさい。

 でも、私も悲しくて悔しくて、抑えることが出来ない……。


「私はココさんのことは知らないも同然なのですが、お母様のことはよく知っております。そのお母様がこんなにも怒ることを放置してはおけませんね」

 侯爵子息様は淡々と言う。


「ですが、ニール様……」

 執事様は私(ジュリー様)と侯爵子息様を交互に見る。

 おそらく平民の色恋沙汰になど関わりたくないのだろう。


「クロック! ココさんは手紙など一通も送っていませんし、その女性の家にも一回も行っていません! 婚約者さんに振られて、毎日泣き暮らしていたのですよ! 町にも怖くて行けず、ウジウジしていただけなのです!」


 そ、その通りだけど、ジュリー様、もう少し言い方ってものが……


「なるほど。そのような事実は少し調べれば判明してしまうことですね。なんとなく、町長の娘の性格が分かってきましたよ。ご自分が一番でないと許せない短絡的な思考の方なのでしょう。ここは、お前なんか取るに足らないと教えて差し上げるのが得策ですね」

 侯爵子息様はニヤリと笑う。


 ん? このニール・コイラーン侯爵子息様って、ちょっと性格悪い?

 侯爵様とジュリー様の息子だけあって、かなり見目が麗しいのに残念である。

 しかし、銀髪にエメラルドみたいなグリーンの瞳も、長身の立ち姿も、ケビンとは違った魅力がある……って、いやいや! 今それ関係ないから! イケメンに思考が停止するのは、もう女性の本能であってですね……


 私(ジュリー様)はふふっと笑った。


「お母様?」

 侯爵子息様は怪訝な顔をする。


「いいえ、何でもありませんわ。取るに足らない、でしたか? ニールは、どのように対処するのでしょう?」

「よくぞ聞いてくれました。まずはですね……」


 ジュリー様と侯爵子息様は、不敵に笑い合いながら、計画を話し出した。


 どうやらこの母子は毎度この調子だったようで、執事様はもう止めても無駄だ、というような表情で諦めている。


「さあ、決まりましたわ! ココさん、出かけますわよ!」


 出かける?

 どこへ、何しに?

 

 私の意思を確かめることもなく、侯爵子息様と私(ジュリー様)はホテルの外へと歩き出したのだった。

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