5.感動の再会
私(ジュリー様)は、私が前世でも今世でも泊まったことがない豪華なホテルの一室に案内された。
この部屋は、ニール・コイラーン侯爵子息様の泊まる部屋のようだ。
私だったらキョロキョロしてしまうところを、私(ジュリー様)はさすがに堂々としている。
「ニール様、どういうことかご説明願えますか!?」
部屋に入るなり、執事様が叫ぶ。
私(ジュリー様)の手を取ったままの侯爵子息様はほほ笑んだ。
「どうもこうも、お母様が戻ってきたのですよ。丁重にお迎えするのは当然でしょう」
侯爵様と執事様は「ええっ!?」と言い、私(ジュリー様)はウフフと笑った。
「さすがニールですわ。よく分かりましたわね」
「分かりますよ。ああ、このココさんという方に入っているとお話が出来るのですね!」
「ええ。ココさんは旦那様から離れて消えかかったわたくしをご自身の中に入れてくださり、ここまで連れてきてくれたのです」
すると、ロミオ・コイラーン侯爵様が私(ジュリー様)の肩を掴んだ。
「本当に、本当にジュリーなのか……!?」
「……はい! 旦那様、もう一度お話しできるなんて、夢のようです……!」
私(ジュリー様)は、はらはらと涙を流す。
この再会に、口を挟めるわけがない。
降霊術は二度とやらないと心に決めていたが、実際助かったし、ジュリー様の機転に感謝はしている。
そういえば、ジュリー様は旦那様である侯爵様に伝えたいことがあると言っていた。
私が処刑にならないのなら、それも伝えて下さい。
この私の気持ちはジュリー様にも伝わっているはず……
「ああ! ココさんがもう少し体をお借りしても良いと言ってくれています。実はわたくし、旦那様にお伝えしたいことがあり、ずっとおそばにいたのです」
私(ジュリー様)は口元を押さえて侯爵様を見つめる。
「実はそのことを先程ニールから聞いて知ったのだよ。ニールはこのホテルで私たちと合流するなり、『お母様が消えた』と言って……。半信半疑ではあったのだが、とりあえずジュリーを探そうと外に出たところだったのだ」
侯爵様は熱い眼差しを私(ジュリー様)に向ける。
ジュリー様を連れてきて正解だった。
それにしても、すぐに母だと分かるなんて、侯爵子息様は霊感がなかなか強い。
この世界で霊感がある人に初めて会った。
「ところで伝えたいこととは……」
「そうでしたわ! 今すぐ侍女のラナを解放してください! 彼女は私に毒など盛っていません!」
私(ジュリー様)の言葉に、室内がピリリとする。
「そんな……!? それでは君は何故突然亡くなったのだ!?」
侯爵様は私(ジュリー様)の両肩を掴む。
その手には力が込められている。
「わたくし、病気だったのです。でも旦那様にお伝えしていなくて……。わたくしもこんなにあっさり死んでしまうとは思わなかった……」
「お母様! それでしたらお医者様に診ていただいていた、ということですか!?」
私(ジュリー様)の言葉を遮り、侯爵子息様が大きな声を出した。
「え? ええ。主治医のギルバート先生です。流行り病だと言われました。すぐに治るので旦那様に言うほどでもないと仰られたので、旦那様にご心配をおかけするのもと思い、お薬だけいただいて……」
「な、なんだと!? ギルバートが『直前の食事に盛られた毒殺』だと言ったのだぞ!?」
侯爵様は目を吊り上げる。
「ええっ!? ギルバート先生はわたくしが病気だったことを知っていますわ! わたくしが死んでからも内緒にしているのですか!?」
いやいや、そんな義理堅い話じゃないでしょう。
この話、かなりきな臭いよ。
ギルバートが犯人だよ。たぶん。
「奥様、奥様はやはり病死ではありません。これはかなりきな臭いですよ……!」
執事様は顎に手を当てて考え込む仕草をする。
「まあ! ココさんもそう言っていますわ! 犯人はギルバート先生ですって!」
あーっ!
言わなくていいですって!
素人の推理ほどウザいものはないのだから!
「それは少々安直ですが、間違いなく何か知っていますね! すぐに調べ直します!」
執事様はスタスタと部屋を出ていく。
「まだジュリーにはききたいことがあるのだが、この状態は続けていても良いのか? ココさんに負担があるのではないか?」
侯爵様が、私ごときの心配をしている!?
視察中も思ったけど、いい人だなぁ。
大丈夫ですよ。
私とジュリー様は相性が良いですし、元々降霊術は得意なので!
「……と、おっしゃっていますわ!」
忠実に私の言葉を伝えるジュリー様に、侯爵様は頷き、侯爵子息様は「降霊術か……」と呟く。
その後は、ホテルの部屋に食事を運ばせて、夜10時頃まで家族水入らずでお話をされていた。
私はこの町まで歩いてきた疲れもあったのか、体を貸したまま、途中から眠ってしまっていた……。
侯爵家の方々は優しく、私にホテルの一室を用意してくれて、私はふかふかのベッドで心も体もぐっすり眠ることが出来たのだった。




