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前世「降霊術師」の村娘B、婚約破棄されたけど今世こそ素敵な人と結婚したい!  作者: 三多来定


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50.ココ・シスネロスの悪評

 ニールがココと別れて1ヶ月後、王都のグローカル公爵家別邸の応接室で隣国との貿易の話し合いが行われることになった。

 

 隣国のメンバーは、アシュリー・シスネロス宰相(ジュリーの従兄弟)と現シスネロス家当主のルーカス・シスネロス公爵(ジュリーの弟でイライザの父親)。

 王国のメンバーは、サイモン・グローカル公爵(55歳)とロミオ・コイラーン侯爵とニール・コイラーン侯爵子息だ。


 書記として応接室の隅に設置した記録席に着席している2名は、隣国の書記官と侯爵家執事のクロック・サザンである。


 メンバーからも分かる通り、元々この貿易は、ジュリー・シスネロス公爵令嬢がコイラーン侯爵家に嫁いだ縁によるものだった。

 そのため、ワーネキー元公爵にジュリーが殺害され、頓挫していたのだ。


「えー、貿易再開の条件ですが、書簡でお知らせしました、私の娘、ココ・シスネロスをお引き受けいただけるとのことでよろしかったでしょうか……」

 アシュリーがロミオとニールをチラチラと見る。


「あ、あの、ココ・シスネロス公爵令嬢とは、どのようなご令嬢なのですか? 書簡には問題があると書かれていましたが、その、コイラーン侯爵子息は将来有望でして、足を引っ張るようなことは……」

 グローカル公爵もロミオとニールをチラチラと見る。


 サイモン・グローカルは、とても真っ当な常識人のため、ニールだけに責を負わせるのが心苦しいのである。


「ええと、そうですね、容姿は、まあ、ふ、普通です(メアリーにそう言えと言われている)」

 アシュリーは目を泳がせる。


「ふ、普通、ですか……(イマイチなのか?)」

 サイモン・グローカルは復唱する。


「あとは、ココは、少々、力(祈り)が強くて、ですね……」

「力が強い? 男性よりも、ですか?」

「ええ、まあ、私を1とするのなら、ココは10くらいでしょうか……?」

「な、なんと……! 10ですか!?」


 サイモン・グローカルの脳裏に、大きなゴリラが思い浮かんだ。


「あ、あの、性格はどうなのでしょう? 気立てが良ければ……」

 女性を容姿や腕力で判断するなんて下郎のすることだ、とサイモン・グローカルは質問を続ける。


「せ、性格ですか。悪くはないのですが、その、二重人格なところがあり、時折もう1人と話していたり……?」

 アシュリーは泳いでいた目を天井に向ける。


「な、な、そんな……」

 サイモン・グローカルは青ざめる。

 

 ふと見ると、ロミオとニールは下を向いて肩を震わせている。


 それはもちろん笑いを必死にこらえているのだが、サイモンの目には苦しんでいるようにしか見えなかった。


「あの、その話、なんとか……」

「もう決まった話ですよ、グローカル公爵」

 ルーカス・シスネロスがピシャリと言う。


 サイモンから見ると、ルーカス・シスネロスはまだ30代の若造だ。

 しかし、殺害されたジュリー・コイラーンの実の弟である。


「私も心苦しいのです(笑いを堪えるのが)。しかし姉はココのことを気にしておりました(現在進行形)。ココは少々変わり者ではありますが(これは事実)、きっと悪いようにはなりませんのでご安心ください」

 

 ルーカス・シスネロスは畳み掛けるように言う。

 その実は、これ以上は吹き出してしまいそうなので、早く終わらせたい一心だったのだが。


 その様子を見たニールは、顔を上げてルーカスを見た。


「ルーカス叔父様、私はどのようなご令嬢でもかまいません。もう少し特徴を教えていただきたく存じます(面白いのでもう少し続けましょうよ)」


「いやいや、さすがにこれ以上の特徴はありませんよ(相変わらず性格悪いな!?)」

 ルーカスはハハハと乾いた笑い声を出す。


 すると、アシュリーがコホンと咳払いをした。


「特徴はこれくらいですが、最近の様子をお伝えしますよ。ココは今まで全くやりもしなかった淑女教育を熱心に受けています」


「い、今までやりもしなかった……」

 サイモンが青ざめたまま呟く。


 シスネロス公爵家に生まれて、淑女教育を一切やりもしなかったという事実は強烈だ。

 しかし、ココは平民として生活していたので淑女教育を受けていないのは当然である。


「熱心に……」

 ニールは呟く。


「はい。少しでも役に立ちたいようですよ。我が娘は、ふてぶてしいのに、とても素直なのですよ」

 アシュリーはニヤニヤと笑う。


「……そう、ですか。ご令嬢にお会いできる日が楽しみですね」


 ニールは目を伏せてほほ笑んだ。






 その後、貿易の話し合いは滞りなく終了し、隣国のアシュリーとルーカスを見送った後、コイラーン領に戻る馬車の前で、ロミオとニールはサイモンから謝罪を受けていた。


「ロミオ殿、ニール君、本当に申し訳ない!」

 サイモンは頭を深々と下げる。


「おやめください、公爵! 私もニールも、この婚姻に関しては、納得していますので! なあ?」

 ロミオは慌てて、ニールに同意を求める。


 納得どころか、こちらが望んだことなのだ。


「はい。私はシスネロス公爵令嬢にお会いする日が本当に楽しみです。ご心配でしたら、婚約後、公爵様にご挨拶に伺います(ココを着飾って驚かせましょう)」

 ニールは少し顔を背けて、辛そうに見えるように答える。


「ニール……(その演技もうやめてくれ)」

 ロミオは自身の頭を押さえる


「ニール君……(貿易のために、なんて覚悟なんだ)」

 サイモンは涙目になる。


 馬車の御者席にいたクロックはこの光景を、「ニール様最大の悪趣味」として後に語り継ぐことになる。

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