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前世「降霊術師」の村娘B、婚約破棄されたけど今世こそ素敵な人と結婚したい!  作者: 三多来定


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49.アシュリー・シスネロス

 シスネロス公爵家の応接室で、私はアシュリー・シスネロス宰相様と対面していた。


 宰相様は長身金髪碧眼の、コイラーン侯爵様とは違った魅力の、なかなかのイケオジだ。

 私はシスネロス家では常時金髪金眼で生活している。

 この腹違いの兄と私はやはり少し似ている。


 お互いの名前だけを言う簡単な自己紹介をした後、私とメアリー様が並んでソファに座り、ローテーブルを挟んだ向かい側に神官長と宰相様が着席した。

 メアリー様を座らせ、お茶を出した使用人たちが応接室から出ていくのを待って、宰相様が口を開いた。


「ええと、このココさんを私の養女にして隣国のコイラーン侯爵家に嫁がせると……」

 宰相様は私をチラリと見た後、メアリー様を見る。


「ええ。筋書きとしては、シスネロス家の問題児として隠して育ててきたココさんを、ニール・コイラーン侯爵子息が引き取るというのなら、ジュリー殺害の件を不問にして貿易を再開するという感じですね」

 メアリー様は淡々と息子である宰相様に説明をする。


 大体あっているけど、「問題児」って、私の人権を無視した筋書きである。


 宰相様は、ふぅと息を吐いた。


「お母様。さすがにココさんがシスネロスの血筋だということは私にも分かりますよ。もともとシスネロスなのですから、何も私の養女にしなくてもいいでしょう? 一体誰の隠し子なのですか?」


 メアリー様と私は、打ち合わせをしたわけではないが、同時に神官長を見た。

 神官長は観念したのか、小さく頷く。


「な! え? お、お父様の、隠し子、ですか……!?」

 宰相様はかなり動揺した様子で、私と神官長を見比べる。


「す、すまない、アシュリー! 私の子としてしまうと、神官長を続けられないのだよ。まだイライザは12歳で後を継がせられないんだ!」

 神官長は、頭を膝にこすりつけるようにしながら言う。


「お、お母様は、知って……?」

「はい。赤子のココさんを縁戚のマーチ・ロクスリー男爵令嬢に預けるよう手配したのは私ですので」

 メアリー様は毅然とした態度で答えている。


「あ……、なんて、こと……」

 宰相様は頭を抱える。


 メアリー様は息子の様子に構わず、神官長を指差した。


「細かい話は後でこの人から聞いてください。実はもう少し込み入っているのですよ。ジュリー、出てきてください」


 私は言われた通り、ジュリー様と交代をする。


「アシュリー兄様、お久しぶりです。ジュリーです」

 私(ジュリー様)は、少し困惑した表情で宰相様にほほ笑んだ。


「あ……、ジュリー……。なんなんだよ、これは……」

 宰相様は抱えていた頭をぐしゃぐしゃとかきむしって溜息をついた。







 これまでの経緯と事情を、何故かジュリー様から宰相様に説明をして、宰相様は一応納得の返事をした。


「承知しました。ココさんを養女とする件はお引き受けします。貿易の件も、グローカル公爵にこれで打診をしましょう」


「アシュリー兄様、ありがとうございます!」

 私(ジュリー様)は、両手を胸の前で合わせて、笑顔でお礼を述べる。


 宰相様も笑顔で私(ジュリー様)に頷いた。


 事情を全く知らない私でも、なんとなく分かってしまった。

 宰相様はジュリー様を女性として想っていたということが。

 そしてそれは、周知の事実だった。

 だから、説明をジュリー様に任せたのだ。


 イトコというのは、不思議な関係だ。

 特にこのシスネロス家では、イトコは婚姻対象だ。

 宰相様は、幼い頃からジュリー様を娶る気だったのかもしれない……。


 もちろん宰相様は、別の女性と結婚をしている。

 奥様と子どもにこの件をどう伝えるのだろうか。


(アシュリー兄様の奥様は5年前に亡くなられているのです。お子様は娘さんがおりますが、すでに他家に嫁いでおりますわ)

 ジュリー様が心の中で教えてくれる。


 ということは、娘さんには「お祈り」の力がなかったということだ。

 私から見て、宰相様はメアリー様くらいの力があるように思う。

 勝手に数値化して申し訳ないけど、メアリー様と宰相様の力を1とするなら、イライザ様とニール様は2で、神官長は4といったところかな。

 やっぱり浮気はダメだな。

 神官長は4なのに、ここでは立場が最弱だ。


 私(ジュリー様)はふふっと笑った。


「ジュリー?」

 宰相様は首をかしげる。


「あ、いえ、申し訳ありません。ココさんと話していたもので……」


「ジュリーとココさんはよく二人で話しているのですよ。周りから見ると不気味ですけど」

 メアリー様が表情を変えずに言う。


「それにしても、ジュリーはずっとココさんの中にいるということは、やはり未練があるのか?」

 宰相様は私(ジュリー様)を覗き込む。


「未練がないと言えば嘘になりますが、ニールとココさんの行く末を見届ければ満足ですわ」

 私(ジュリー様)はニッコリと笑う。


 宰相様は、「そうか」と小さな声で言うとほほ笑んだ。


「分かったよ、ジュリー。ニール君とココさんがちゃんと結婚できるように尽力すると誓うよ」




 

 こうして養女の件の話し合いは無事に終わった。

 私は、ジュリー様も、宰相様も、メアリー様も、みんな大人だな、と思っていた。

 私なんて出自も性格も面倒くさい小娘なのに、シスネロス家でいじめに遭うこともなく、淑女教育を受けさせてもらっている。


 イケメンと結婚などと浮かれていないで、ちゃんとその先を考えなくてはいけない。


 侯爵夫人になるのだから、ニール様を支えて、妻としての役目を果たそう。


 もっとちゃんと、勉強しよう。

 ニール様の側にいても、恥ずかしくないように……。

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