↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世「降霊術師」の村娘B、婚約破棄されたけど今世こそ素敵な人と結婚したい!  作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/81

34.嫌われるのが怖い

 ジュリー様が気を利かせてくれて、私は毎夜30分くらい、ニール様と二人きりで過ごす時間をいただいていた。

 

 が、しかし、私はリリアンのことが気になって仕方がなく、ニール様に直接女性使用人のことをきいていた。


「確かに、クロックから女性使用人を増やせないかという話はされましたね。というか、またクロックの話ですか?」

 ニール様は執務室の机上の書類を片付けながら、私を軽く睨む。


「いえ! これはリリアンの話なんです!」

 私はピシッと背筋を伸ばす。


「ああ、娘の……」

「あの、ニール様は女性使用人がいると嫌なのですか?」

「嫌ですね」


 即答か。

 リリアンの言うとおり、女嫌いなのかな。


 ニール様は私の様子を見て、はぁと息を吐いた。


「別に女嫌いではないのですよ。ただ、大体の女性は癇に障るのです。仕事もせずに話しかけてきますし……」


 ニール様はつらそうだが、これはイケメンならではの悩みであり、人によっては自慢に聞こえなくもない。


「雇う時に、ニール様に話しかけないという規約を作れば良いのでは?」


「作りましたよ。確かに話しかけてはきませんでしたが、目で追われているんですよね……」

 そう言うと、ニール様は溜息をついた。


 イケメンをつい目で追うという、密かな楽しみもダメなのか。

 ニール様には申し訳ないけど、今までに雇われた女性の気持ちの方が理解出来てしまうな……。


「クロックの娘は、そういう感じはありませんので雇い続けていますけど……。まあ、そんなわけで、女性使用人を増やすのは、あまり前向きにはなれないですね」


「勘が鋭いのも大変ですね……」

 

 ニール様は、思った以上に生きづらいのかもしれない。

 私が少しでも役に立てたら良いのだけど……。


「ココ、こちらに来てください」

 ニール様はソファに腰掛けると、私に手招きをした。


 ま、また、隣かな?

 でも、あのキスは、もう一度したいような……。


 何というか、私も歴代女性使用人の方々と全く同じなんだよね。

 ニール様がいたら目で追ってしまうし、出来ればお話したい……。

 こんな調子では、ニール様が突然、私のことを「癇に障る」と感じるようになるかもしれない。

 

 私の背筋に、ゾッとしたものが走った。

 

 怖い。

 ニール様に嫌われることが、とても怖い。

 

 私は、うつむいてニール様の隣に座った。


「また、くだらないことを考えてますね……」

 ニール様は私の暗い表情を見て呟く。


「く、くだらなくなんか、ありますけど……」

 起こっていないことで落ち込んでいるのだから、くだらないことかもしれない。


 私のことを嫌わないで、なんて言えないし、言ったとしても、嫌われるときは嫌われる。


「大体分かりますけど、何でも言ってください」

 

 しかも、大体バレている。

 これも、負けている感じがする。

 そうだ!

 私が思ってもいないことを言えば、勝てるかも?


 いや、思ってもいないことって、どうやって頭に思い浮かべるんだ?


 もしかして、考えすぎかも?

 もっと、欲望をそのまま言えば……


「あの、ニール様……」

「考えがまとまりましたか?」

「私、この間のキスがしたいです」

「……なるほど、そうきますか……」

 ニール様は腕を組んで天井を仰いだ。

 

 お? 少しは意表をつけたかな?

 欲望ストレート作戦の勝利か?

 

「ココ、私はアレをすると、その先もしたくなるのですよ。それでもよければしますが、どうしますか?」


 ニール様の言葉に、私は瞬きをした。


 その先とは?

 

 私は前世の、実際は一度も使用しなかった知識を総動員して、ニール様の言う「その先」を思い描いていた。

 私の顔が、カーッと熱くなる。


「あ、あの、あの、その先は、準備不足といいますか、えーと……」

 私が必死に言う横で、ニール様は顔を背けて肩を震わせている。


「か、からかいましたね!?」

「……いえ、私も少し驚いたので、お返しです」


 ニール様はやっぱり性格が悪い!

 

 私のふくれっつらを見て、ニール様はふふっとほほ笑む。


「そうですね。実は私は、ココと同じ恐怖を感じているんですよ」

「……同じ恐怖、ですか?」

「ココに嫌われたらどうしよう、といつも思っています」

「え……、うそ、ですよね?」

「嘘ではありません。私は性格が悪いので、ココの困った顔見たさにやりすぎて、ココに嫌われる可能性が高いのですよ」


 さらっと、困った顔を見たいと言いました?

 しかも、性格が悪い自覚があるのですね!?


「あの、じゃあ、優しくしていただければ……」

「具体的にどうすると良いですか?」

「え? えーと……」

 私は首をひねっていた。


 「優しい」って、なんだ?

 ボランティアみたいな感じ?

 カウンセラーみたいな感じ?


 なんだか、どれもニール様じゃないような気がする。


「あの、ニール様はニール様でいいかもしれないです。性格悪くて、時々怖いニール様で……」


 私の言いように、ニール様は「酷い評価ですね」と笑う。


「でも、私もココはココのままがいいですね。素直で落ち込みやすくて、恋愛が絡むとダメなココがいいです」


「えー……」

 私は文句を言おうとしたが、ニール様がとても優しい顔をしていることに気がついて黙った。


 普通の恋愛がどういうものか、分からない。

 どんなに好きでも、相手が自分を好きになってくれるとは限らない。


 そもそも、完璧な人間なんていない。

 それどころか、私もニール様も欠点だらけだ。


 こんな不安定な恋愛(こと)を、人類のほとんどがやっているとは驚きだ。


「ニール様。私、ニール様が好きです」

 私はニール様を真っ直ぐ見つめていた。


 ニール様は、ふっと笑った。


「私もですね。私も、ココが好きです」


 私とニール様は、ほほ笑みあって、どちらからともなく、軽い方のキスをした……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。