31.金髪な私
侯爵様の執務室で、私は幽体離脱をして私自身を見ていた。
ニール様の隣に、金髪で金の瞳の女性が座っている。
……いや、誰!?
「もう、ココさんは! 間違いなくココさんですよ」
私(ジュリー様)は呆れたように笑う。
「お母様、金の瞳というのは、シスネロス公爵家では普通ですか?」
ニール様は私(ジュリー様)の瞳をまじまじと見つめる。
うわっ!
そんなに目を見つめられたら、卒倒しちゃいますよ!
「いいえ、金の瞳の者はいませんわ。でも『お祈り』の力に、髪や瞳の色は関係しないはずですので、あまり気にしなくても良いかと……」
当然だが、私(ジュリー様)は卒倒せず答えている。
「こう見ると、ジュリーに似ているなぁ!」
侯爵様が笑顔でトンデモ発言をする。
「まさか、本当に奥様の妹ですか? ニール様、『ココ叔母さん』ですよ?」
執事様が顔色を変えずに私を指差した。
「ココ叔母さん」って言うな!
「クロック! わたくしには妹と弟がいますので、どちらかの子かもしれませんし、いとこかもしれませんでしょ? わたくしの妹より、そちらの可能性の方が高いですわ」
私(ジュリー様)は冷静に男3人に言う。
「確かにその通りですね。とりあえず神官長から返事が来ましたら隣国に行って……」
「ニール、私とニールは隣国には今は行けないのだよ」
ニール様の言葉を侯爵様は遮って、申し訳なさそうな顔をした。
「ああ、お母様殺害の件がありますものね……」
ニール様は察したように下を向く。
そうなんだよね。
隣国からすると、シスネロス公爵家の令嬢だったジュリー様はこの国の者に殺されたのだ。
貿易も中断されたままだし、このタイミングで侯爵様や侯爵子息のニール様が隣国に行くのは国際問題になる。
「大丈夫ですわ! わたくしとココさんで行ってまいります! わたくしたち、最強コンビですのよ!」
私(ジュリー様)は胸をドンと叩く。
私は体に戻って、ジュリー様と交代する。
「はい! もともと私の問題ですし、ジュリー様がいれば、何でも出来ます!」
私も胸をドンと叩いた。
ニール様はふっと笑う。
「本当にお二人には敵いませんね。護衛はつけるようにしますので……」
「ありがとうございます!」
「あの、盛り上がっているところ申し訳ないのですが、その髪と瞳は少々目立ちますが……」
執事様が私の髪を指し示す。
「あ、多分戻せます! やってみますね」
私は執事様に笑顔で答えて、もう一度胸の前で手を合わせる。
実は私もこの金色は落ち着かないんだよね。
母と同じ茶色が一番だ。
私は母の茶色をイメージして、集中して祈る。
すると、髪と瞳が先程の茶色にススーッと変わっていく。
「戻りましたわ!」
私の中のジュリー様が言う。
この『変化の祈り』は案外簡単だ。
他にも何か変えられるのかもしれない。
ちょっと研究してみようかな。
なんか、霊感より魔法の方が楽しいぞ!?
「何だかとてもすごいことなのに、ココさんがやるとあまりそうは見えませんね……」
執事様が大変失礼なことを言うと、なんと侯爵様とニール様も頷いている。
「うう、確かに祈るだけなので全然難しくないですけど……」
「ココさん! 『お祈り』の力があっても簡単には出来ませんわ! やっぱりココさんはすごい方なのですよ!」
私の中でジュリー様が褒めてくれたが、当然この声は男3人には聞こえていない。
まあ、ニール様に「すごい」と思われて距離を取られても嫌だし、いいんだけどね。
「それでは、隣国の神官長からお返事が来ましたらお知らせします。ココさんは仕事に戻ってくださ……」
「ああ、ココはこのまま私の部屋に来てください。お母様、申し訳ないのですが、2時間程霊体でお父様の側にいていただけますか?」
執事様の言葉を遮って、ニール様が平然と言う。
「あら! うふふ。ココさん頑張ってくださいね!」
ジュリー様は私の返事を待たずに、さっさと私の中から出ていく。
「え! ジュリー様!?」
「さあ、ココ行きますよ」
ニール様は私の腕を掴んで立たせると、私の意思などお構いなしに、ズルズルと私を引っ張って部屋を出ていく。
「お二人とも、2時間後に仕事に戻ってくださいね!」
「私にもジュリーが見えればなぁ……」
執事様と侯爵様の声を後方に聞きながら、私は思考が一点に集中していた。
もしかして、キスの続きですか!?




