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前世「降霊術師」の村娘Bは、亡き侯爵夫人の霊と事件を解決する ~婚約破棄されたけど、今世こそ普通に結婚したい!~  作者: 三多来定


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21/22

21.仕事は成功しても……

 ジュリー様が料理人とメイドに「男女の仲」を仕込んだ翌日、私は急遽体調不良になり、ギルバートの助手をお休みすることになった。

 医者相手に体調不良の演技は自信がなかったが、どうやら信じてもらえたようである。


「ココさん、あれはやっぱり、演技というより気迫でしたわ」

 私の中のジュリー様は溜息をつく。


 私は、演技と気迫の違いが分からず首をひねったが、結果良ければどちらでもいいかと思うことにした。


「それでは、あの2人の様子を幽体で見に行きます! ジュリー様はベッドで寝ていて下さいね」


 私は軽々と幽体離脱し、部屋を出た。




 私が幽体で厨房へ行くと、料理人とメイドが仲良く手を繋いで厨房を出て行くところだった。

 一応あとをつけると、2人は料理人の部屋に入っていった。

 さすがにこれ以上覗くのは無粋というものだ。

 それに、好都合なことに、料理人の部屋はギルバートの寝室と薬の保管部屋から一番離れている。

 私は急いで私(ジュリー様)の元へ戻った。





 私は特にコソコソせず、ギルバートの寝室に入った。

 ベッドサイドのチェストの隠し引出しから、スペアキーを取り出す。


「まあ! そんな後ろに引出しが付いているのですね!」

 私の中のジュリー様が感心したように言う。


 一種のカラクリ箱ですよね!

 チェストの後ろにこんな小さな引出しがあるとは誰も思いません。

 幽体の時は引出しを手で開けることが出来ず、中を直接覗いたので偶然見つけることが出来たのですよ!


 私は鍵をポケットに入れて寝室を出る。


「ココさんの能力はとてもすごいものですわ!」

 私の中のジュリー様は、私を手放しで褒める。

 

 ジュリー様の方がすごいですよ。

 あの2人を本当に取り込み中にしてしまうのですから!

 私の結婚相手はジュリー様に選んでいただきたいです!


 私は薬の保管部屋の鍵を開けて中に入る。


「ええ? ニールではいけませんか?」


 私は保管部屋の壁を押して、今度は隠し部屋に入る。


 それは、いくらなんでも、ニール様が可哀想ですよ。

 ジュリー様との橋渡しはやりますので、ニール様はもっとちゃんとしたご令嬢と結婚するべき……

「ニールはココさんを気に入っていますわ!」

 私の中のジュリー様は、大きな意識を私に送ってくる。


 私は木箱をスペアキーで開けながら笑った。


 それは、ジュリー様が中にいるからですよ……。


「そんなこと……、ああっ! この薬ですわ! 大きさも色も!」


 木箱の中の薄いクリーム色の錠剤を見て、私の中のジュリー様は叫んでいる。


 私はその薬を持っていた封筒に入れる。


 ここまでやったらさすがにギルバートにバレるだろう。

 薬というのは、逐一、残量を確認するものである。

 

 というわけなので、このままトンズラである。

 悪いことをしているのは、ギルバートなので、私には驚くほど何の罪悪感もない。


 バレるのを少しでも遅くするため、木箱や鍵を元通りにし、退職する旨の置き手紙を自室に置き、まとめてあった荷物を持って私はギルバートの家をあとにした。

 

 途中でギルバートと会うのを避けるため、少々高いが、貸切馬車を借り、急いでコイラーン侯爵家のお屋敷まで帰る。


 執事様が珍しく「よくやりましたね!」と褒めてくれて、私は少しホッとした。

 薬や手紙を執事様に渡して、個室の使用人部屋のベッドに寝転がる。

 

 侯爵様やニール様もきっと褒めてくださるだろう。


 薬を調べれば、ジュリー様殺害の真相も明らかになるはずだ。


 全てが終わった時、霊体であるジュリー様の未練がなくなった時、私の役目も終わる。


 ニール様との、接点がなくなる……。

 

 ああ、せめて、男爵家でもいいから、貴族に生まれ変わっていれば良かったなぁ……。


「ココさん、あなたやはりニールのことを……」

 私の中のジュリー様が呟く。


 私はアハハと笑った。


「こんな気持ち、嫌ですね……。私、叶わない恋ばかり……。もう、傷つきたくないのに……」


 霊感の強さで仕事が上手くいっても、恋愛は全く上手くいかない。

 

 ケビンに振られて、ニール様をあきらめて、これ以上出会いがあるのだろうか?


 あったとしても、また振られるのでは?


 全国の恋が成就している人は、ものすごい奇跡を体験しているのだなぁ……。

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