17.ギルバート医師宅潜入
どうも。
前世で彼氏いない歴25年、「インチキ降霊術師」として25歳で殺され、今世で初恋の婚約者に婚約破棄を言い渡され、ひょんなことから侯爵夫人のジュリー様を降霊させ、たまたま、イケメンご子息のニール様の問題を解決したら、何故かニール様の婚約者になりそうな、前世25歳+今世16歳。つまり合計41歳の侯爵家使用人Bのココです。
「41歳でしたら、わたくしは享年44歳ですので同年代ですわね。どうりでココさんと気が合うと思いましたわ!」
ジュリー様と気が合うのは嬉しい。
しかし、30代を経験しないまま不惑の年齢になるのはいかがなものか。
ていうか、惑いまくりですよ!
なんですか!
ニール様と婚約って!?
「ココさん、今はそんな場合ではありませんわ。薬を探さなくてはいけませんのよ」
私の中のジュリー様が、私をたしなめるように言う。
そうでした。
私と私の中にいるジュリー様は、今、ギルバート医師の仕事部屋を捜索しているのでした!
ニール様との婚約話が持ち上がった10日後、私はギルバート医師を直接訪問し、ぜひ弟子にしてください! と拝み倒したのだ。
婚約者を寝取られ、醜聞のあまり村を出て、ある医師の助手になったもののセクハラを受けそうになり、今現在ものすごーく困っているのです! と涙ながらに訴えたのが良かったらしい。
多種アルバイトを経験した私だけど、演技経験はなかった。
でも、演技もいけるかもしれない……
「ココさんのは演技ではなく、度胸と気迫ですわ……」
私の中のジュリー様は呆れたように言う。
私は引き出しを一つ一つ開けながら、度胸と気迫なら、やはり前世の経験かもしれないと納得していた。
降霊術師なんて、結局は真っ当な仕事ではない。
依頼者も真っ当ではないことが多い。
降霊させる霊も荒ぶっていることが多い。
今こうやって、ギルバート医師がもしかしたら戻って来るかもしれない状況でも、堂々と探索出来ている。
しかし、仕事部屋と言いつつ、書類ばかりで薬の一つもない。
薬は別管理なのかもしれない。
前世のミステリーでは、こういうデスクの引き出しは二重になっていて、その下に重要な証拠が隠されている……、いや、この引き出し、浅いな!?
私はペーパーナイフを、引き出しの底と側面に入れる。
すると簡単に、底が浮き上がった。
「ココさん! よく分かりましたわね!」
「はい。でも、薬ではないですね。紙ばかり……」
こうやって隠しているということは、秘密のものには違いない。
私は紙に書いてある文字を追う。
手紙か?
指示書?
ワーネキー公爵から?
ワーネキー公爵家とクレアール公爵家とグローカル公爵家は王国の三大公爵だ。
「ココさん! これは大変ですわ!」
私の中のジュリー様が驚愕の声を上げる。
「大変?」
「実はコイラーン侯爵家はグローカル公爵家からある事業を任されているのです。その事業を阻止できないかという内容ですわ!」
「え? えーと……?」
私は首をひねった。
王国の上層部が関わる事業の阻止なんて、一介の医者に出来るのだろうか?
「実はわたくしは隣国から嫁いできたのですけど、その隣国との貿易に関することなのです。わたくしが亡くなったことで、現在この事業は一時中断しているのです!」
「な、なん、じゃあ、ジュリー様は……」
事業を阻止するために殺された……!?
「でもわたくしが亡くなったからといって、事業がなくなるわけではありませんわ!」
「遅らせることが目的……!? どちらにしても、私利私欲のためにジュリー様をってことですよね!? 許せません!!」
私は手紙を全て引き出しから取り出すと、持っていたカバンに入れた。
「ココさん! 手紙を盗んではバレてしまいますわ!」
「どうして悪くない方がバレてはいけないのですか!? 悪い人ばかり堂々としているなんておかしいです! 薬も見つけてやります! 私の霊感をなめないで下さい!」
私は意識を外に出した。
そう、これは、かの有名な、「幽体離脱」である!!
「幽体離脱」は、前世から普通に出来た。
しかし離脱してしまうと私の体が空っぽになり危険なので、あまり使用することはなかった。
でも今は、私の中にはジュリー様がいるので空っぽにはならないのだ!
「いっちょコレで薬を探してきます! ジュリー様は部屋にお戻り下さい!」
「ココさん!?」
「幽体なので、壁を通り抜けることができます! 全ての部屋を調べてやります!」
私は言い放ち、すうっと壁をすり抜けた。
許せなかった。
ジュリー様を殺した奴らが、ただ許せなかった。




