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前世「降霊術師」の村娘Bは、亡き侯爵夫人の霊と事件を解決する ~婚約破棄されたけど、今世こそ普通に結婚したい!~  作者: 三多来定


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16.困難な男探し

 ニール様に怒られた翌日、私は言われたとおり、自分で男探しを始めていた。


 しかし、何かがおかしい。

 若い男性使用人に話しかける(たび)に、逃げられるのだ。

 もう、「あの……」の時点で逃げられる。


 すると、メイド仲間のリリアンが私の腕を引っ張った。


「ココ! さっきから何やってるの!?」

「何って、普通に交流をしようと……」

「ココは自分がなんて言われているのか知らないの!?」

「え?」


 私が首をかしげると、リリアンは呆れた表情をした。


「ココは毎晩侯爵様のお部屋に行っているでしょう? 使用人全員、ココのことを、侯爵様の慰め役のメイドだとウワサしているのよ!」


 な、なんだってぇー!?

 

「ち、ちが……」

「違わないでしょ? 個室を与えられて、毎晩侯爵様とお会いしているのだから」


 本当だ! 違わない!!

 でも、侯爵様と会っているのはジュリー様なの! って、言えるわけがない!


「そんな女性に話しかけられても、男は困るのよ。だから交流はやめた方がいいわよ」


 私はガクッと膝をついていた。

 嘘でしょう……?

 私は住み込みだから、この屋敷の男性がダメとなると、もう出会いがないじゃないか!


「私はココが何であろうと気にしないわよ。奥様を亡くされた侯爵様に慰め役が必要なのも理解するわ」

 リリアンが優しく私の肩に手を置いた。


「あうあうう……」

「そうよね、人生いろいろあるわよね!」


 私の変なうめき声に、リリアンは納得したように頷いている。


 人生はいろいろあるけど、私には男運が全くないんですけどっ!?






「それで落ち込んでいて出てこないのですか……」

 執事様が、かなり呆れたように溜息をついた。


 ここは、侯爵様の執務室。

 ジュリー様の死因調査の報告会議を行うため、侯爵様、ニール様、執事様、私(ジュリー様)の4人がソファに座り向かい合っている状態だ。


「まあ、ココさんはいいのではないか? 体を貸してもらっているだけで十分だろう」

 侯爵様はほほ笑みながら言う。


「それもそうですね。逆にしゃしゃり出て来られても困ります」

 執事様は淡々と言う。


「さすがにココさんが可哀想ですわ。この件が終わりましたら、誰か紹介してあげてくださいな」

 私(ジュリー様)が執事様に詰め寄る。


「そうですね。性格はともかく、見た目は悪くありませんので、考えておきます」

 執事様はやはり淡々と言う。


 え? 本当に?

 ていうか、性格はともかくってどういう意味?


「そんなくだらないことはどうでも良いでしょう! お母様の件を進めますよ」

 ニール様が書類をローテーブルに並べながら言う。


 くだらないこと、かぁ……。

 私にとっては死活問題でも、ニール様からすると、そうなのだろう。

 ニール様の前でこの話題は、もうやめた方がいいな。

 わざわざこれ以上嫌われるのもね。


「ギルバート医師に聞き取りを行いましたところ、流行り病の診断はしていないと言い張っており、今回の『毒殺』を除けば、奥様のカルテは確かに1年前の風邪が最後となっておりました」


 執事様の言葉に、私(ジュリー様)は「そんなはずありません!」と叫んだ。


「もちろん私は奥様のことを信じております。ですが、証言者が『奥様の霊』とは言えず……」

 執事様は悔しそうに語尾を濁す。


「お母様が飲んでいたという薬も、お母様の部屋のどこにもありませんでした」

 ニール様も悔しそうに付け加える。


「どうして……、どういうことなのです……!?」

 私(ジュリー様)はぶるぶると震える。


「何とかギルバート医師宅を調べられないだろうか……。その薬が調べられれば……」

 侯爵様が腕を組みながら目をつむる。


「しかし、その薬の種類もわかりません! 奥様の侍女も薬のことを知らないと言い張るのです!」

侍女ラナにも内緒にしていたのです! 侍女ラナが知らないのは当然です!」


 執事様と私(ジュリー様)は言い合っている。


 うーん……。

 その薬を知っているのはジュリー様だけで、ギルバートとかいう医者の家にあるかもしれないってことだよね。

 じゃあ、私がギルバートの助手になって、堂々と家に忍び込んで調べればいいんじゃない?

 私はその医者に会ったことがないし、いけそうだよね?


「あ、あの、ココさんが、ギルバート医師の助手になって調べると言っていますわ……」

 私(ジュリー様)が、遠慮がちに言う。


「な!? そんなことは……」

「それは良い手ですね!」

 ニール様の言葉を、執事様が笑顔で遮った。


「クロック! ココに危険が……」

「ニール様! ココさんはこう見えて器用ですし、無駄に度胸があります! ココさんの中には奥様がいらっしゃいますし、足りない頭脳は奥様がカバーできますよ!」


 前から思ってたけど、執事様は私のこと嫌いだよね?

 いや、私と言うより、平民を教養がないとバカにしてるのかもしれない。


 でも私は前世の記憶もあるから、そこまで知識がないわけじゃない。


「クロック! ココさんは前世も含めるとあなたより年上ですよ! 教養もありますわ!」


 私(ジュリー様)が執事様を叱ってくれたが、前世を含めた年齢で見ないで欲しい……。


「はあ、教養があるのに『男探し』ですか?」

 執事様はジュリー様にというよりは、私に尋ねているようだ。


 教養と願望は別なのですよ!

 むしろ、前世ではあっという間に25歳になったので、16歳の今から本気で動かないと間に合わないのです!


「……だそうですわ!」


「ああ、平民はそうかもしれませんね。継ぐ家もない場合が多いので、結婚は義務ではありませんから、ぼんやりしていると婚期を逃しますね」

 執事様はそう言うと、ニール様を見た。


「ココさんはどうでもいいのですが、ニール様はそろそろ考えていただかないと……」


 どうでもいいって!?

 私が私の中で怒っていると、私(ジュリー様)がポンと手を叩いた。


「それでしたら、ニールとココさんが結婚すれば良いですわ!」


 私(ジュリー様)の発言に、室内が水を打ったかのように静まり返る。

 私は、思考が停止していた。

 侯爵様とニール様も思考が停止しているらしく、何も言わない。


「お、奥様、ご冗談は……、あっ! もしかして発言したのはココさんですか!? なんと図々しい!!」

 やっと言葉を発した執事様が、眉を吊り上げて私(ジュリー様)を睨みつける。


 ええっ!?

 無実の罪で図々しい呼ばわりされた!?


「クロック! 私は冗談なんて言っていませんわ! 旦那様、ココさんをザミフォリア伯爵の養女にしていただきましょう! そうすればニールと結婚できますわ!」

 

 笑顔の私(ジュリー様)に、侯爵様はハッとした表情になった。


「た、確かにそれなら婚姻できるな……」


 や、やめて下さい!

 この話、笑えないです!

 ニール様は私が嫌いなんですよ!

 あの綺麗なお顔が苦痛に歪んだら、私のHPがゼロになります!


「ニールはどうですか? ココさんが変な男に引っかかるより良いのではないですか?」

 私の声が聞こえているはずの私(ジュリー様)は、私を完全に無視してニール様にほほ笑みかける。


「……そうですね。変な男に引っかかるよりは良いですね」

 ニール様はポツリと呟く。


 変な男に引っかかるの前提!?

 いや、ええ? いいの!?


「ニール様! 正気になってください!」

 執事様は半泣きでニール様に訴える。


 ちょっと失礼すぎるでしょ!

 でも執事様に賛成!


 私はジュリー様にお願いして交代をした。


「ニール様! 執事様は失礼ですが、言っていることは正しいです! 変な男には引っかかりませんので、心配は要りません!」

 私は胸をドンと叩いた。


「……私、ココの条件に合っていると思うのですよ」

 ニール様はニヤリと笑う。


「え? 条件?」


「はい。私は30歳以下で顔が良くて背が高いです」


 今、ご自分で顔が良いと言いましたか?


「後は……、私は実は年上の女性が好きなのですが……」


 はい、存じております。

 10歳の時に15歳のシンディ様に求婚したんですよね。

 驚きですよ?


「ココは前世の25歳と合わせると41歳ですので、私より年上です」


 41歳……!?

 私は、目の前がくらっと歪んだ。


「婚約破棄された者同士ですし、霊感も強い者同士ですし……」


「ニール様、本気でおっしゃっているのですか!?」

 執事様が真顔で青ざめている。


「本気ですよ」

 ニール様は不敵な笑みで執事様に答える。


 しかしこの時の私は、41歳が強烈すぎて、これ以上は何も頭に入ってこなかったのだった……。

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