8、貴方しか見ていないから
それから俺はデミグラスソース版のオムライスを頂き...とても美味しく食べてから空を見上げる。
横に居る優菜は俺をチラ見してから同じ様に空を見上げる。
俺はそんな様子に「優菜」と言う。
すると優菜は「ん?」と言葉を発した。
「...お前、何か恋とかそういう系をしたいって思うか?」
「恋?ふぁ?!」
「...すまんな。唐突に」
「あ、いや。ちょっとビックリしただけ」
「...」
「私は恋を...まあしているよ」
「え?...あ...そうなのか」
「でも言う気は無いよ」
そう答えながら赤面ではにかむ優菜。
俺はその顔を見てから一瞬で悟る。
コイツは俺が好きなのだ、と。
恋する乙女はいつもこんな感じだ。
付き合っていた時代の事を思い出した。
「...優菜。聞いてくれるか」
「ん?何を?」
「知り合いの知り合いの話だけどさ」
「ん。そう。聞いてあげる」
優菜に俺は今まであった事を自分だと悟られない様にAとかBで隠し話した。
他人の...他人。
そういう系等で話をした。
すると「えっと...そうだね」と優菜は言う。
困惑気味だった。
「私だったらありえないかな。結婚しているのに他人と付き合うなんて」
「...そうか」
「私は...うん。絶対に無しだね」
「そいつは今まで嘘を吐いた事が無いからさ。...だから信じているんだ」
「そっか。...君はいつでも優しいからね」
「...優しい訳じゃないけどさ」
「優しいよ」
そんな言葉を発してから紅潮する優菜。
それから俺を見てくる。
俺はその顔を見ながら目を閉じて開いた。
そして視線を空に向ける。
「俺さ」
「...う、うん」
「また恋をしたいって思うんだ」
「?...また?」
「そう。また、だな。...だけど誰かと付き合っていた訳じゃない。まあその。...俺、お前の頑張る姿と一途な感じを見て恋って良いなって思ったんだ」
「そ、そうなんだ」
「そう。...で、恋をしようかなって」
「そ、そっか。応援してる」
「...ああ」
すると優菜はモジモジした。
それから「あの、さ」と言葉を発する。
そして優菜はとんでもない事を言う。
「疑似恋人にならない?」と。
は?
「い、いや。その。...君が、しょ、将来的に困らない様にするのに」
「お前...疑似恋人ってお前は好きなのか?俺が」
「ち、違いますぅ」
「優は好きって言えよ」
「そんな訳無いでしょ!?も、もう」
ジョーク交じりに俺は苦笑しながら話す。
すると優菜は俺の身体をポコポコ叩いてきた。
俺は苦笑しながらその姿を見つつ受け止めていた。
「でもさお前。疑似恋人ってなんだよマジに」
「疑似恋人は疑似だよ」
「なりすましってか?」
「ま、まあとにかく偽り。偽りカップル!」
「意味が分からない」
恥ずかしいのは分かるがなんでそうなる。
そう思っていると優菜は「私...その。将来が心配なの。それも...優の将来が」と切り出した。
俺は「それは...ご心配ありがとうだな。...だけどお前。偽りのカップルって意味不明だぞ」と言う。
優菜は「良いの!」と頬を膨らませる。
「いや。良いのって」
「嫌なの?私と偽りのカップルになるの」
「嫌って言ってないぞ。...ただなんか違和感を感じただけだ」
「違和感か...まあ確かにね」
「じゃあ付き合った方が...」
「!!!?!」
優菜にポコポコ叩かれた。
それから「デリカシーが無い」と言う。
俺は「...はぁ」と溜息を吐く。
コイツこんな時期からマジに俺が好きだったんだな。
そんな事を思いながら俺は過去を思い出すが。
こんな偽りカップルという話は無かった。
どうなっているのだろうか。
「それで、さ」
「...?...それで?」
「そのカップルみたいにはならないとは思うけどもしそうなったら私、また貴方と出会った時の事を思い出すからね」
「...お前...」
「浮気なんてそんな事、絶対にしない」
そう話しながら優菜は俺を見る。
そして背伸びをした。
俺はその姿を見つつ唇を噛む。
なんでこの世界の優菜はこんなに良い奴なんだ?
前の世界と違って...ありえない。
「どうしたの?優...」
「え?あ、いや」
「涙目になってる...」
「気のせいだ。花粉だよ花粉。外だしな」
「そうなの?...でもなんかおかしいよ。さっきから」
「大丈夫だ」
きっと前世と違い。
この世界の優菜は良い奴なのだろう。
そうだ。
過去を棄てよう。
そしてこの世界をまた歩みだそう。
そう思えた。
優菜の事はまだ信頼出来ないけど。
いつか。




