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妻が寝取られたので自殺したらその妻の双子の妹に懐かれたんだが?  作者:
第一章 自殺した、先

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20/21

20、好き、スキ、隙?

優菜は記憶を失った。

世間一般にすれば都合が良すぎるとか声が聴こえるかもしれない。

だが優菜は現に全てを失った。

全てが分かってからショックで全てを失った。

花蓮は言う。


「ちょうど良いんじゃないかな」


と。

俺は河川敷から吸い込む様に夕日の明かりを吸収しながら歩いた。

花蓮は「私、おにーちゃんを好きになって良かった」と言う。

俺は「俺なんかを好きになってもな」と苦笑する。


「おにーちゃんは特殊。...30歳?40歳?そんなの関係ない。気持ちは若いんだから」

「...」

「私、優菜お姉ちゃんも鏡花にも勝つよ間違いなく」

「お前のスタンスは変わらないな」

「そうだよー」


それからエレベーターに乗り込もうとした時。

俺の手を優しく花蓮が自らの手で包んだ。

それから「私、楽しいよ。今が」と言ってから俺を見上げる。


「...花蓮...」

「おにーちゃんはきっと私にも鏡花にも振り向かない。だけど...」

「...勝つってか?」

「そうだね。勝つよ」


そして4階にエレベーターは着いた。

それから花蓮は「じゃあね」と言ってから去って行った。

俺はその姿に小さく手を振り5階のボタンを押す。

するとスマホが鳴った。


「もしもし?」

「あの。この携帯は優さんの携帯ですか」

「...優菜か?」

「そ、そうですね」

「どうしたんだ?優菜」

「...その。声が何故か聴きたくて」

「そうだったんだな」

「そうです。ご迷惑をおかけします」


そんな優菜に対して俺は「ゆっくり休んでいるか」と閉まるドアを見ながら聞く。

すると優菜は「はい。ありがとうございます」と答えた。

俺は「...いや。構わない」と答える。


「...休むのが一番だからな」

「お優しいお言葉、ありがとうございます」

「...」

「その。私の妹さんはお元気でしょうか?」

「ああ。花蓮と鏡花だな?休んでいるぞ」

「...ですか」


ゆっくり聞いてくるその声に。

無意識に俺はスマホを握りしめていた。

怒りというか。

虚しさというか。

分からない。

そしてエレベーターは5階に着く。

そのエレベーターホールの椅子に腰かけた。


「私は...愚かですね」

「愚かっていうのは?」

「思い出せない。...全てを失ったから」

「...お前は確かに愚かかもしれない。だが...俺は今のお前には休んでほしいって思うよ」

「そういう考えが浮かぶからですか?」

「そうだな。それもあるが。...体調が変動するだろ。余計な事を考えると」

「...ありがとうございます」


正直、優菜を責める事しか出来ない。

だがそれをした所で優菜の記憶は元には戻らない。

だったら今は優菜を落ち着かせ。

ゆっくりやっていくしかないだろう。

そう考えながら俺はスマホを握る手を止める。

そしてゆっくり指を離した。


「その。...優さん」

「ああ。どうした」

「私が記憶を取り戻すのは1人じゃ厳しいと思います。手伝ってくれますか」

「...ああ。喜んで」

「花蓮さんと鏡花さんも私を助けてくれるでしょうか」

「...多分な」

「ありがとうございます」


それから優菜は「こんな私でごめんなさい」と謝ってから「お願いします」と言った。

そして俺はその言葉に「ああ」と返事をしてから天井を見上げてから視線を前に戻した。

優菜は「じゃあ今から検査があるので」と言ってから「また」と電話を終了しようとする。

俺は「ああ。じゃあまたな。優菜」と言ってからスマホを切った。



色々あり翌日になった。

俺はゆっくり起き上がるとスマホが鳴った。

その人物は鏡花だった。

俺は「朝早いな」と言うと鏡花は「ですね。早く声が聴きたかったので」と話す。

そして「ドア、開けてくれますか」と言ってきた。

直ぐに俺はドアを開ける。

するとそこに鏡花が立っていた。


「おはようございます」

「ああ。おはようさん。鏡花。元気か」

「元気です」

「...家に入るか?」

「入ります。...ご飯、準備しますね」


それから俺は鏡花を見る。

鏡花は髪の毛が何だかやたらに整っていて...ふわっと柔軟剤の香りがした。

甘い香りだった。

俺は「どうしたんだ鏡花。何だかイメージが...」と聞く。

すると鏡花は「プチイメチェンです」とニコッとした。

俺は「!」となる。


「好きな人に振り向いてほしいので」

「またそんな事を」

「私はお兄を異性として見ています。あくまでお兄ではない」

「...」

「だからお兄。...私を狙っても良いんですよ?ハートに銃を撃って良いんですよ?」

「お前な」

「...私はお兄が大好きですから」


それから鏡花はエプロンを着けて髪の毛を結んでから柔和になる。

俺はその優しげで。

花園の様な笑みに赤くなる。

そして「クソ」と言う。

実際、そんな感情は無い。

だがその優しげな笑みに揺らぎそうになる。

つまり花蓮と違いまた違う母性満載だ。


「お前な。他の男にそんな事をするなよ?」

「?...あくまでお兄しかしませんよ?」

「...それはそれでまた恥ずかしいな」

「そもそも男性はお兄だけしか見ていません」

「...お前なぁ」

「大人びた性格の。貴方が好きですから」


そしてフライパン。

それからパンなどを棚から取り出しながら「じゃあご用意しますね」と言う。

そうしてから「じゃあ座っていて下さい」と俺に笑顔を見せる鏡花。

これまた別の魔性の女だな。

困ったもんだ。

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