3話 蠱惑的なお姉さんに頭がおかしくなりそうです
思わぬ天啓を得た僕は、心置きなくお姉さんと恋ができると、学校が終わるやいなやお姉さんの家に突撃した。
ピンポーン、とチャイムを鳴らす。
鳴らしてすぐ、早まったと気づく。
いつもならLINEか電話で確認取ってから行くのに、それをし忘れてしまった。
もしかしたら居ないかも、なんて不安は杞憂だった。
「は〜〜い。どなたですかぁ〜?」
扉を開けてでてきたお姉さんは薄着で、なおかつぐでんぐでんに酔っていた。
僕は驚きから声を漏らす。酔っていたから……じゃない。あまりの色気に見惚れてしまって。
(なにその艶っぽい顔。めっちゃエロいし、なによりその薄着! ダボっとした半袖とか反則だって!!)
僕の心は阿鼻叫喚だった。
そんな僕の心情を知らず、お姉さんは僕を上から下まで眺めたかと思うと、花開くような笑みを浮かべる。
「ああ! ゆっくんだ〜! よく来てくれたね〜。さあ、お家にどうぞ〜」
ゆっくんとは、僕の愛称だ。裕貴人だからゆっくん。お姉さんが考えてくれた。
お姉さんはすごく嬉しそうに僕の手を引き、自宅へと招き入れようとする。
抗うことはできなかった。
普段とは違う様子に理性がやられ、ムスコを抑えるのに必死だった。
「珍しいね〜、連絡もなく来るなんて〜」
「お、お姉さんに早く会いたくて忘れちゃったんだ」
「そうなのぉ〜? うれしいなぁ〜」
にへへぇ〜っとお姉さんは笑う。その幸せそうな笑みを見てると、ものすごく罪悪感を感じる。
お姉さんは「こっちだよ〜」と案内しようとするが、壁に直進しようとしたため、とっさに繋がった手を引けば、
「へ?」
間の抜けた声をあげてお姉さんが僕のほうに倒れてくる。
中学生とはいえ、お姉さんよりも背の低い僕では支えることができず、2人ともども床に倒れ落ちてしまう。
上がるうめき声。背中に感じる痛みと、酒臭いにおいに紛れて漂うフローラルな香り、そしてなにより顔で感じる柔らかな感触。
(え、これ、もしかして―――)
臨界点を迎えそうになるキャパ。お姉さんが起き上がろうとして揺れる“ソレ”が僕の頬をビンタする。
(なんだこれなんだこれなんだこれ―――!?)
見間違いじゃない。間違いなく当たってる。
幸福感と困惑から固まる僕を見下ろし、お姉さんは不思議そうに首を傾げる。
「顔赤いけど、だいじょうぶぅ?」
「ひゃい!」
大丈夫と返そうとして、噛みに噛みまくって変な声をあげてしまう。お姉さんはそれを聞いて「なにそれ〜」と楽しげに笑い、人差し指で頬を突っついてくる。
その間も目の前で揺れる胸に僕の目は釘付けだ。
僕の様子から、どこを見ているのか気がついたお姉さんは胸を片手で隠し、
「えっちぃ〜」
責めるような目をむけてくるが、その口元はニヤニヤと笑っていた。
「いや……これは……えっと……」
必死に言い訳を考えようとして、それより先にお姉さんが僕の耳元に顔を近づける。
「なにしても良いよ、て言ったらどうする?」
僕の思考は今度こそ停止した。
上半身を起こしたお姉さんは、潤んだ瞳で僕を見つめる。
「ね、どうするのかな?」
愛おしげに頬を撫でるお姉さんが官能的で、生唾をゴクリと飲む。
お酒に酔うとお姉さんってこんな大胆なことをするんだとか、冷静にならなきゃとか色々な思いが頭を渦巻く。
けれど、カラダは正直なもので、お姉さんの下腹部に触れるその感触に、お姉さんはニヤリと笑う。
「そっかぁ、ゆっくんは私とそんなことしたいんだぁ〜」
「いや、これは………その……」
言い訳を紡ごうとする口を指で塞がれる。
お姉さんは「めっ」と叱るように言い、僕にしなだれ掛かってくる。
ドキリと高鳴る心臓、けれど、
「ねぇ、ゆっくん。聴いてくれる?」
沈むような暗い声音のお姉さんに、僕は冷静さを取り戻す。
(そうだ。お姉さんはこんなに飲むほうじゃない。少しだけ嗜むていどで、酔うほど飲まないタイプだ)
そんなお姉さんがたくさん飲むような何かがあった。
僕は性欲も忘れ、お姉さんを抱きしめる。
「聞く。それでスッキリするなら、いくらでも」
お姉さんは安堵したような、嬉しそうな吐息を溢す。
それが耳朶を刺激して興奮しそうになるが、無理やり抑えることで我慢する。
「ゆっくんは優しいねぇ。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。あのね―――私、彼氏と別れたの」




