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2話 様子がおかしいと女友達に心配されました

 お姉さんが、血の繋がった姉だった。

 その衝撃から立ち直ることができず、気がつけば起きたまま一夜を明かし、学校の教室にいた。

 目の下に隈を作った僕を、友達が大丈夫かと心配してくれた。

 僕は大丈夫だと、なんでもないと、無理な言い訳をして誤魔化す。

 心配してくれる気持ちは嬉しかったし、ありがたかった。でも今はひっそりとさせてほしかった。

 その日の昼食は、珍しく誰も来ないような階段の段差に座り、ボッチ飯を決め込んだ。

 母さん手作りの弁当を食べながら考えるのは、お姉さんのこと。

 

「実の姉、かぁ……」

 

 今まで面倒を見てくれていたのは弟だからで、そこにあるのは家族としての愛しかない。

 

(それゃあ、真面目に取り合ってもらえないわけだよ)

 

 家族とは結婚できない。

 ごく当たり前で、当然の事実。

 でも、それが辛く、悲しい。

 僕の恋は実らないのが確定したのだから。

 気がつけば箸が止まり、俯いていた。

 喉から嗚咽が漏れる。今になってその事実が追いついてきた。涙で歪む視界を、腕で擦る。

 

「やっぱり、大丈夫じゃなかった」

 

 喉が詰まる。

 反射的に顔を向ければ、上から僕を覗き見る1人の少女がいた。

 

「ゆみ」


 小さな声で少女の名を呼ぶ。ゆみは弾むように階段を駆け下りると、僕のまえに立って両手を腰にあてる。

 

「そんなバレバレな嘘で信じると思ったの?」

 

 責めるように見つめる瞳から、さっと顔を逸らす。

 けれど、頬に添えられた手に無理やり正面に戻される。

 すぐ近くにゆみの顔があった。

 思わず悲鳴が漏れた。ゆみは怒りを滲ませて僕を睨む。

 

「どうして悲鳴を上げたのかな? 上げる必要ないよね? 私が怖いのかな? 違うよね?」

 

 ゆみの怒涛の勢いに圧倒され、僕はブリキ人形のように頷くことしかできなかった。

 そんな僕にジト目を向けたかと思うと、ゆみは怒気を霧散させ柔らかく笑う。

 その笑みにドキリと心臓が高鳴る。

 僕の隣に腰を下ろしたゆみは、弁当から一つ、ウィンナーを手づかみで取り上げパクリと食べてしまう。

 メインの食材が一つ取られ、僕は情けない声を漏らす。

 ゆみはニヤリと笑い「嘘ついた代償」といって、また取ろうとしたため、届かない位置に持っていくことで今度こそ弁当を死守することに成功した。

 

「あら残念。でも、少しは元気でたでしょ」

 

 言われて気づく。さっきまであった暗い気持ちがどこかに行っていることを。

 まさかそれが狙いなのかと目をやれば、ダブルピースで答えてくれる。

 

「みんな気づいていたからねー。とくにその隈。絶対なにかあったってバレバレよ。先生が話を聞こうか迷ってたぐらいなんだから」

 

 そこは私が聞いてくるってことで代わったんだけど、とゆみは語る。

 自分では上手くやれていたつもりでも、実際はそうじゃなかったと突きつけられるのは、なんというか思い違いをしていたみたいで恥ずかしい。

 恥ずかしさから頬を掻く僕に、

 

「で、話を聞かせてくれる?」

 

 ゆみに逃さないとばかりにじっと見つめながら言われたため、諦めて事情を話した。

 近所に住むお姉さんのこと。幼い頃からその人に世話になっていて好きなこと。その人が腹違いの姉で、結婚なんてできないことを、恥ずかしさを噛み殺して赤裸々に語った。

 すべて聞き終えたゆみは腕を組み、悩ましげに唸る。

 やっぱりそうなるよね。僕の心に満ちる諦観。

 けれど、

 

「まさかそんな恋バナが近くにあったなんて」

 

 ゆみが抱いた感想は全然違った。

 思わずポカンと口を半開きにしてしまう。

 

「えっ、それだけ? もっと、こぉ……残念だね、無理なのは諦めようよとか、そんなこと言われると思ってたんだけど? えっ、ちがうの?」

「え?」

 

 なにそれ、とでも言いたげなゆみの表情。

 まるで僕の方がおかしいみたいな反応だった。

 いやいや違うだろと、僕は非常識を打ち倒すべく声を発する。

 

「家族と結婚なんてできないでしょ?」

「そうだよ?」

「じゃあ、お姉さんとは結婚できないじゃん?」

「えっ、どうして?」

「んん??」


 どうやらゆみの常識だと結婚できるみたいだ。

 困惑する僕に、ゆみは人差し指を一本立てる。

 

「一つ聞きたいんだけどさ。そのお姉さんとは家族関係にあるわけじゃないんでしょ? あ、書類上ね」

「たぶん、そうだと思う」

「家族じゃないなら結婚できると思うけど、違う?」

「――――――あ」

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歳上と同級生 永遠の究極の選択ですね!
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