1話 近所の優しいお姉さんが腹違いの姉でした
僕は近所に住むお姉さんに恋している。
母親同士の仲がよく、その経緯で幼い頃から僕の面倒を見てくれるような優しい人だ。
出会いはそれこそ僕が赤ちゃんの頃からで、かれこれ10年以上の付き合いになる。
僕にとって、実の姉みたいな存在だ。
身近にそんな人がいて惚れないわけがない。
むかし「大人になったら結婚しよ!」なんて、ありがちなセリフを言ったことがある。
そのときは冗談だと思われたみたいで、お姉さんは笑いながら「大人になったらね〜」と軽くあしらわれてしまった。
だけど僕は本気だ。本気でお姉さんと結婚する気でいる。
そのためならなんだってする覚悟もある………あるんだけど、いつまで経っても男として見てくれない。
これでも、もう中学生。性差だってちゃんと出てるはずだし、男らしさがでるように頑張ってもいる。
そのはずなのに、
『宿題頑張ったらなんでもして上げる』
宿題に手こずる僕の様子を見て、お姉さんはそんな提案をしてきた。
………してきたんだ。うん。
完全に子供扱いで、僕は不貞腐れた。
ならもう、いっそのこと、とんでもない願いを言ってやると意気込んだ末に、
「お、お姉さん!! ――っ! 膝枕お願いしても、良い?」
ひよった。
お姉さんはまぶたを瞬き、ふわりと笑う。
「良いよ〜。宿題頑張ったもんね」
お姉さんが膝をポンポンと叩き、誘導してくる。
ワンピース越しに浮彫になるお姉さんのお御足。贅肉がなく、すらりとしたその足へ、今から僕の頭を乗せる。
―――情緒がおかしくなりそうだった。
(自分で望んでおいて言うのもなんだけど―――無防備すぎる! 襲われる可能性を考えないの!? これでも思春期なんだけど!!)
男として見られていないのがショックでもあり、お姉さんに甘えられる関係が嬉しくもあり、僕の気持ちは複雑だ。
それでも、この機会を逃すはずがなく。赤くなる顔を隠すように俯きつつも、恐る恐る、壊れものを扱うかのように、慎重にお姉さんの膝に頭を乗せれば、強く感じるフローラルな香り。
膝に面した耳が感じるさらさらとした布地と、その奥にある人肌の温度。
至福。
緊張とか、羞恥とか、そんなのはどうでもよくなり、ただずっとここに居たい。堪能していたいと本能が訴える。
弛緩した僕の頭に乗るお姉さんの手。ゆっくりと、優しく、頭を撫でる感触が少しくすぐったくて、口から笑い声が漏れる。
「お疲れさま。疲れが癒えるまでこうしててあげるから、ゆっくり休んで良いよ」
柔らかな声と一定のリズムで頭を撫でる手の動きに誘導されるようにして、僕は抗うこともせずに眠りへと落ちていく。
これが僕の日常。面倒見の良いお姉さんが近所に住んでいる、ちょっと普通じゃない僕の日常の一コマだ。
―――そう、この日までは。
ガヤガヤとした声に意識が浮上する。
うっすらと目を開ければ、テレビがついており、どうやら音はそこから流れているようだ。
(今何時なんだろ)
そんな疑問を抱くが、確認する気力がない。ただぼぅっとテレビを眺めていれば、後ろから聞こえてくる2つの声。
「いつもごめんね。息子の面倒を見てもらって」
「気にしないでください。私が好きでしていることなので」
「それでもお礼を言わずにはいられないよ。大学生で忙しいなか相手してくれるんだから。嫌なら断ってくれても良いんだからね?」
「いえ、大丈夫です。息抜きになってますし。なにより―――お姉ちゃんですから。弟の面倒を見るのが当たり前です」
―――――ぇ。




