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どうするか考える。

走って逃げる?

けど熊じゃなくても熊みたいな体格をしているのだから速度も同じくらいある可能性が高い。

大声を上げる?

ずっと追い回してきて石を投げたら逆に姿を見せるような生き物がそれくらいで逃げて行くとは思えない。

死んだふり?

馬鹿。

結果残された選択肢は一つ。

背中を見せずのゆっくり後ろに下がる。

こういう怪獣に出会った時、一目散に逃げ出す奴はまず喰われると映画を見て学んでいる。

焦らず音を立てず慎重に一歩ずつ‥‥バキッ!

枝が折れる音。

ちょうど足を持って行った場所に木の枝が転がってるなんてこれも映画でよく見る展開。

「オーマイガー」とちょける暇は現実には無く次の瞬間には目の前から咆哮が聞こえてきたので結局背中を向けて逃げ出す羽目に。

しかしその熊exは思った通りの素早さで追ってくる。

振り返る度に距離は縮まってその焦りからか足はもつれて転んでいよいよ窮地に陥った碧は最終手段の死んだふりに移行。

馬鹿だと分かっているがもうこれ以外手段は思い付かなかった。

普通の獣なら追いかけて来た勢いのままに噛み付いて来そうだがそいつは変に賢いのか突然倒れた碧に警戒し様子を探ってくる。

震えが止まらない、止まれ止まれと身体に言い聞かせたって本能的な反応は止められない。そのまま去って行けと心の底から願うも向こうから見ればぶるぶる震える新鮮な獲物、見逃すはずなかった。

熊exの息遣いを顔に感じる、口を広げて食べようとしている。

やはり死んだふりなど意味が無い。

誰か助けて、心の中で叫んだ。

神なんて信じてなかったのにこんな時は神頼み、もはや奇跡に縋る以外に生き残る道がないのだから。

神様仏様とあらゆる神秘にすり寄って救いを乞う、それが功を奏したのか突如、木々の隙間から影が現れ、今にも碧を美味しく頂こうとしていた熊exの頭を剣で一瞬で斬り落とした。

大量に血が溢れる、グロ耐性はありますけど実際見ると気持ちも悪いしむせ返るような濃厚な血の匂いを間近で味わって吐き気を催し口を抑え必死に堪える。

そんな碧とは対照的にそれをやった人は何事もなかったかのように剣の血を払い、こちらを振り返り「そこのあんた、大丈夫?」と涼しげに一言、登ってくる胃の内容物をどうにか押し留め声を絞り出す。


「あ、はい・・・・ありがとうございます」


碧の危機を救ってくれたその人はとんでもない事に女の子、それも碧と同じくらいの年齢。

銀色の髪を肩あたりまで伸ばした凛々しい子。

そして一番の不思議は剣という存在。

模造品じゃない、切れ味抜群でどう考えても銃刀法違反。


「怪我は?」


「・・・大丈夫です」


そう返事を返した直後、吐いた。

原因は多くの血を見た所為でもあるがそれ以上に死にかけたと言う現実が今になって急激に恐怖を運んできたのだ。

彼女がいなければ喰われて死んでいた、死が背中まで迫っていた。

震えを止められずにいると「はい」と彼女が何かを手渡してきた。


「水、飲んだら少しは楽になる」


「・・・あ、ありがとうございます」


危ない人かと思ったが優しい。


「それであんたはこんな時間にこんなところで何してたの?」


冷たい表情をこちらに向けて聞いてきた。


「分からないんです、気付いたらこんな場所に居て」


「迷ったってこと?」


「いや誘拐されたのか目が覚めたらこんな森の中にいました」


「誘拐ですって!? 相手はどんな奴?」


「見てないんです。その瞬間の記憶がまるで無くて‥‥」


「魔法にでも掛けられたってこと?」


「そうとしか言えない感じですかね‥‥」


例えるならそう表現する以外に無いが今の碧にはそれがただの例えだとは受け取れなくなっていた。

目を覚ませば知らない場所、見たこともない熊ex、そして変わった服装に本当に斬れる剣を携えた女性、これらを繋ぎ合わせると想像力豊かな高校生は突拍子もない答えにも行き着くというもの。とりわけ碧はそう言ったものに造詣が深い。

ここが自分のいた世界と違う、そんな考えに至るのも仕方ない。

確かめるためにも碧は質問する。


「日本って知ってます?」


「ニホン? 聞いたことないけど、それがあなたの住んでいる場所の名称なの?」


「‥‥‥」


どうやら異世界っぽい‥‥‥。



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