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16 虫 ~レオナルド目線

レオナルド目線です

~レオナルド目線


寝言でマシューを呼んだあの日から、リリアは寝たり起きたりを繰り返している。


起きているときはいつものリリアだが、眠ればあの時と同じようにマシューを呼ぶ。


リリアは何も覚えてないようで、目覚めたときに俺がいることを確認すると安心したように笑う。


「レオナルド様、また手を繋いでいてくださったんですか?レオナルド様もお忙しいのに、ごめんなさい。でも、うれしいです」


「大丈夫だ。君が安心して眠れたなら、それでいい。仕事など夜に回せば済むことだ」


「それではレオナルド様まで体調を崩してしまいます。私の事より、ご自分の事を大事になさってください」


泣きそうな顔で俺の心配をするリリア。

そんなリリアの髪を優しく撫で微笑むと、申し訳なさそうに、しかし嬉しそうに笑う。


ああ、そうだ、笑ってくれ。

君が笑ってくれるなら、俺は君の夢の中になど干渉しない。


何も知らない振りをして、ずっとこのまま君のそばにいる。


「リリア、体調が良ければ中庭を散策しよう。紫陽花が見事に咲きほこっている」


「まあ!素敵。私、紫陽花大好きなんです!ぜひご一緒したいです!」




赤、青、ピンク、紫。

色とりどりの紫陽花に囲まれて笑う君は、まるで花の妖精だ。


リリアの髪色と同じピンクの紫陽花を、一本手折ってリリアに差し出した。


嬉しそうに受けとる君にキスをすると、真っ赤になってまた笑う。


「ありがとうございます。本当に綺麗、お部屋に飾りますね」


綺麗なのは君だ。

君の美しさにはどんな花も宝石も敵わない。


「さあ、あまり長く風にあたると体に障る。部屋に戻ろう」


俺が手を差し出すと、リリアはその白い手を重ねて、にっこりと微笑む。


これでいい。ずっとこのまま。



大きな桜の木には青々とした葉が繁り、心地よい日陰を作ってくれている。


このまま、このまま、君はここに。


秋になればコスモスにキンモクセイ、冬はスイセンに椿、そして、春にはこの桜の下で微笑んでくれ。

次の年も、またその次の年も、ずっとずっと。


真珠のネックレスのように幸せな日々を繋いでいけば、きっと君はマシューのことなど忘れられる。



リリアが突然、繋いでいた俺の手を離した。


「どうした?リリア」


「虫・・・・が・・・・・・」


虫?

ああ、桜の木から溢れ出した樹液に沢山の虫たちが集まっている。


「リリアは虫が嫌いなのか?」


それまで大事そうに持っていた紫陽花をポトリと落とし、後ろに二歩、三歩と後ずさったリリアはそのまま尻餅をついた。


「リリア、大丈・・・・・・」


「む、虫が、虫が!虫が来るよ!摩周、逃げなきゃ!早く!あたしたちも食べられる!!摩周、摩周!助けて!虫が来る!虫があぁぁ!!摩周ぅぅぅぅ!!!」


見たこともない顔、聞いたこともない声で

リリアはわめき、頭を掻きむしる。


「リリア!リリア!大丈夫だ!俺がいる!」


リリアを抱きしめ、その目を覆った。

リリア、マシューはいない。

君を守るのは俺だ。

俺が君を守るから、どうか泣かないでくれ。

その名を呼ばないでくれ!




俺の願いも空しく、その日を境にリリアは完全に、壊れた。



────────────────────

 17 リリアとトーマス

  ~レオナルド・ボンディング目線 へ




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