15 ナタリー ~トーマス目線
トーマス目線です
~トーマス目線
あれから二十日後、やっと俺は自由になった。
思ったより時間がかかった。
父上がゴネにゴネたからな。
リリアを諦め切れないのが丸わかりだ。
しかし、あのマサヤも今はアレクサンドラ王国を治める国王の身。
さすがに国を潰す訳にはいかない。
悩んだ末、俺の事は腹いせとばかりに廃嫡し、王弟、つまり父上の弟を王太子に据えることに決めたらしい。
予想通りだ。
これでリリアの元へ行ける!!
リリア、遅くなってゴメン。
体調はどうだ?眠れないよな、苦しいよな。
俺も苦しいよ。
ほら、俺の背中は脂汗でびっしょりだ。
今にも体が痙攣をおこして呼吸が止まってしまいそうだ。
「トーマス様」
あー、まためんどくせぇのが来た。
うざいんだよ、ナタリー。
ほら、得意の色仕掛けで次の男を探せよ。
俺はリリアの元に行く。
さっさと消えろ。
「王家を出てどこに行くの?リリアのところ?」
「は?お前には関係な・・・・・・」
「やっぱり『ヒロイン』には叶わないわね。まんまとやられちゃったわよ」
こ、この女、まさか・・・・・・
「・・・・・・お前も、転生者か」
「やっぱりあなたも転生者だったのね!そうよ、あたしは『アレクサンドラ王国の恋する乙女』の悪役令嬢、ナタリー・コービー。知ってたんでしょ?だからこんな事をしたんでしょ?」
悪役令嬢?それはフローレンス侯爵家の年増女だろう?
年甲斐もなく俺に色目を使ってはリリアに嫌みを言っていた。
あのゲームにナタリーなんて女、出てこなかったぞ?
「いや、知らない。あのゲームにナタリーなんてキャラが出てきた記憶はない」
「はぁっ? あんた、あたしのこと知らないでこんな仕打ちをしたっていうの?! ひどいわ!人間のやることじゃないわよ!」
「なんとでも言え。俺はリリアと共に有れたらそれでいい、消えろ」
「嫌よ。でも変わりにいいこと教えてあげるわ? リリアにも関係あることよ?」
リリアに関係? リリアを脅かす存在なら排除しなければ。
「さっさと言え」
「あたしも連れてってくれるなら教えてあげるわよ」
はぁ? マジでめんどくせーな。
俺は体調が悪いんだよ!
「めんどくせぇな、わかった、連れて行く。だからほら、早よ言え」
「キィーっ、あんた本性は俺様な男だったのね!・・・・・・まぁいいわ、教えてあげる。ナタリーはね、攻略対象の四人を全員攻略して初めて登場するキャラなのよ。ヒロインのリリアからトーマス殿下を奪おうとして、断罪される悪役令嬢ナタリー。その断罪の場で、ナタリーはトーマスから罰を与えられる。『魔物のようなお前には、あの男がお似合いだ。レオナルド・ボンディングの元へ嫁げ!』ってね」
「は?」
「で、ナタリーが泣く泣くレオナルドの元に嫁いだところから『アレクサンドラ王国の恋する乙女』の第2部が始まるの。ヒロインは勿論ナタリー、筆頭攻略対象はレオナルド・ボンディング。あのゲームはね、第1部はただのプロローグに過ぎないの。第2部がメインなのよ」
頭を強く打たれたような衝撃が走った。
「なんだと?! お前、何でそんな大事なこと黙ってたんだよ!!」
「人のせいにしないで頂戴! あんたが勝手にリリアを断罪したからじゃないの! あたしの代わりにリリアをレオナルドの所にやっちゃったでしょ、だったらあたしはトーマスと結ばれるしかないじゃない! だいたいあんた、そんなにリリアのこと好きなのに、どうして婚約破棄なんかすんのよ?! あんたがゲーム通りに動いてればあたしはこんな目にはあってないのよ!」
「こんな目?」
「そうよ! こんな目よ! うちの男爵家は潰されそうよ!王様マジで怒り心頭だわよ! そんであたしはみんなから疫病神扱いされて、家からも追い出されそうなのよ! どうしてくれるのよ? 責任取りなさいよ!!」
マジか、こいつ、ゲーム通りに動いてただけか、悪りぃことしたな。
「あー、わかった。責任をとろう」
「あんた、廃嫡されて一文無しでしょ!えらそーに言わないで頂戴!」
「大丈夫だ。10歳の頃から金は貯めてきた。お前くらいなら養える。お前を嫁に貰ってやる。だがドレスと宝石は我慢しろよ。」
「ほ、ホントに? キャー! 素敵! あたしはね、レオナルドはタイプじゃないの。トーマスが最推しだったのよ!ホントはリリアになりたかったの! ドレスも宝石もいらないわ!」
おい、変わり身早えーな。
ピンクゴールドのドレスはもういいのかよ?
「俺はリリアと長く離れ過ぎて体調が悪いんだよ、早く帰って荷造りしろ。期限は三日だ」
「了解!一応お父様とお継母様にもお別れしてくる!待っててね!絶対よ?置いていかないでよ?」
「分かったから。三日後、迎えに行く。準備して待ってろ」
はぁ、めんどくせーの拾っちまった。
まぁ、いいか。
このままこいつを見捨てても目覚め悪りーしな。
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16 虫
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