雷編 劉備軍進軍 下
雷編 劉備軍進軍 下
孟獲「くそ! 酷い目にあったぜ! これだから中華の連中は信用できねーんだ!」
南蛮兵「ほんとっすね! あっそれと最後の女のところですが……」
孟獲「何だ! また敗走してんのか!」
南蛮兵「いえ……取り込まれました」
孟獲「取り込まれたって……あっしの兵が寝返ったのか?」
南蛮兵「そうっす」
孟獲「あのぽちゃっとした奴だよな?」
南蛮兵「そうっす」
孟獲「一番、どんくさそうな女だったもんな……一体、何がどうなってやがる! 確かめに行くぞ!」
孟獲は魏延の元に向かった。
孟獲「おい! 何を勝手にあっしの兵を仲間に引き入れてくれんだ? ああ?」
孟獲は魏延に凄む。
魏延「あっ! 孟獲さん!」
魏延は座り込んで何かをしているようだった。
孟獲「ん? 何やってんだお前……あっしらとどっちが強いか勝負すんだろ?」
魏延「ごめんなさい。南蛮の人たち裸足だから痛いと思って石を……」
孟獲「石? 石なんて何処にあるんだ? っていうかよ……こんな砂地あったか?」
足元は南蛮では珍しい砂地があった。
魏延「痛くないように石をなくしてたんです」
孟獲「だから石なんて何処にあるんだ?」
魏延「この辺りは大体終わったから……あっまだここにありました」
魏延は拳程の石を掴む。
魏延「これを……こうしてぎゅっとして……」
魏延は石を両手で包み込むように握る。
魏延「こうして砂に変えてたんです」
魏延は手の平を見せる。そこには先ほどまで石であったものが砂に代わっていた。
孟獲「石って……あんな風になるのか……」
南蛮兵「大王! ここに石があるんでやってみるっす!」
孟獲「おうよ! 貸せ! んぎぎいぎいいいい!」
孟獲は全力で石を握る。だが石には何の変化もない。
孟獲「よおし! 帰るぞ!」
南蛮兵「え! この女との勝負はどうするんですか!」
孟獲「馬鹿野郎! あっしらの心配をしてくれる奴と戦えるか!」
南蛮兵「それもそうっすね……びびったわけじゃないっすよね……」
魏延「あっ孟獲さん! この先に劉備さんがいるので会って頂けませんか?」
孟獲「勝負は終わってぇねぇ!」
魏延「あっ……まだ途中でしたね! じゃあこれから戦りますね!」
魏延は武器を構える。
張飛「いたいた! 探したよ孟獲!」
張飛が現れる。
孟獲「ちくしょう! 二人がかりとは卑怯だぞ!」
孟獲は叫ぶ。
姜尚「張飛、魏延さん。そこまでです」
姜尚が現れる。
張飛「あっ兄ちゃん。そこまでって……まだ何もしてないよ?」
魏延「これから始まるところです」
姜尚「後方から見てたけど。勝負はついたよ」
孟獲「ははははは! こいつなら楽勝だぁ! そこのお前! あっしと勝負しろ!」
姜尚「僕とですか? 申し訳ありませんが僕では孟獲さんには勝てそうにありません」
孟獲「そんな命乞いをしても無駄だぞ! あっしの強さを……」
張飛「兄ちゃんに手を出したらお前殺すから」
魏延「姜尚さんはとっても優しい方です! 孟獲さん駄目ですよ!」
孟獲「ひっ卑怯だぞ! いや! 恥ずかしくはないのかお前! 女に守ってもらってよ!」
姜尚「いや……僕がお願いしたわけでは……」
馬謖「姜尚。おやっさんから水の確保が出来たと連絡があった」
姜尚「分かりました。張飛、孟獲さんを連れて来てくれ」
張飛「うん! 逃げられないようにすればいいんだね。孟獲、手……繋ごうか」
孟獲「ちゃんと洗ったんだろうな!」
こうして孟獲は姜尚達と本陣に戻って行った。
姜尚達が本陣に到着した時、驚くべき光景が広がっていた。毒沼があった場所は木々がなくなり開けた場所になり毒沼は消え綺麗な池が点々とあった。池は溝が掘られ繋がり流が出来ていた。
姜尚「凄い……これ程の工事を短期間で……」
ホウ統「よぉ。戻ったか姜尚」
姜尚「おやっさん! これは一体!」
ホウ統「水を作ったのよ」
姜尚「作ったでは収まる話ではないですよ!」
ホウ統「ははははは! そうか?」
ホウ統は機嫌よく笑う。
ホウ統「ちょいと説明するが。何故、ここの水は毒となった?」
姜尚「水そのものが毒なのでは?」
ホウ統「いんや。水は毒ではない。水が腐っていたんだ」
姜尚「水が腐る……」
ホウ統「正確に言うと水に溶け込んだ不純物が腐っているからと言うべきだったかな」
姜尚「それはもしかして炭作りに関係しているのですか?」
ホウ統「鋭いな。炭は水を濾過することに非常に長けていてな。一度では綺麗にはならないが何度も炭に水を透過させることにより飲める水に変えることが出来る。一度、沸かした方がいいがな」
姜尚「それで木々を燃やしていたんですね。ですがこの毒沼を浄化させたのは……」
ホウ統「簡単に言うと流れを作ったんだ。まず初めに稲わらを干した物を沼に敷き詰める。そうすると数時間で稲わらは汚れと共に沈殿する。そして湿地帯にあった大小様々な毒沼を一本の溝で繋ぎ合わせる。最後に最も低い場所へ流れるようにする」
姜尚「おやっさん! すみません! それだけでは説明不足です!」
ホウ統「おや? そうか……大前提に沼から湧き出る水は毒ではない。その場に留まることにより腐るんだ。流れを作るだけで浄化作用は機能する。川を見れば分かるだろ? それと一緒だ」
姜尚「じゃあ、作業は……」
ホウ統「いんや。まだだ。最後に沈殿した汚泥と稲わら等をすくい出す作業が残っている」
姜尚「凄いな……短期間でこんなことが出来るなんて」
ホウ統「元々、腐葉土が溜りすぎたことが原因だ。その木々もなくなりここは人が住める場所になった」
孟獲「おう! お前ら! あっしの土地を何勝手なことしてくれんだ!」
ホウ統「ん? これが孟獲か?」
姜尚「はい。張飛達に負けたので連れて来ました」
ホウ統「そうか」
孟獲「あっしは負けてねぇ! それよりもあしの土地になんてことしてくれんだ!」
ホウ統「毒沼に戻そうか?」
孟獲「いや! 戻さなくていい!」
ホウ統「ははははは! 素直じゃねーか!」
姜尚「ほんとにそうなんですよ」
ホウ統と姜尚は笑う。
張飛「いつまで孟獲のこと握ってればいいの? 張飛、疲れたよ」
ホウ統「嬢ちゃんが捕まえてたのか。そりゃ逃げるのも諦めるわな」
孟獲「馬鹿野郎! 何度も逃げようとしたけどビクともしねぇんだ! どうなってんだ!」
孟獲の言葉に皆が笑う。
黄忠「いた! 遂に見つけたわよ孟獲!」
黄忠が孟獲に詰め寄ってくる。
姜尚「あっ黄忠さん! 勝負は終わりです!」
殺気立つ黄忠に姜尚は叫ぶ。
黄忠「姜尚は黙ってて!」
黄忠は姜尚を制止すると上着を脱ぎ始めた。黄忠は胸を隠すさらし一枚となる。
黄忠「嗅いでみなさい」
黄忠は孟獲に上着を差し出す。
孟獲「馬鹿野郎! あっしの鼻が馬鹿になるだろう!」
黄忠「いいから嗅げぇえええ!」
孟獲「ぐっ……」
黄忠の剣幕に押され孟獲は黄忠の上着を嗅ぐ。
孟獲「あっあんまり臭くない……」
黄忠「あんまりではなく! 全然だろ!! お前の鼻は腐ってんのか!!!」
孟獲「ぐあ!」
黄忠は孟獲を殴る。
姜尚「一体なんなの……このやり取り……」
張飛「張飛も分かんない」
姜尚と張飛は顔を見合わせる。
ホウ統「えっと……結論から言ってどうなんだ? ちゃんと決着は付いたのか?」
孟獲「負けだ! あっし等の猛攻でもどうにもならんわ!」
黄忠「孟獲。貴様が弱いのではない。私が強く、美し過ぎたのだ」
張飛「うん。まだまだ強くなれると思うよー」
魏延「私、戦った覚えないんですけど……」
ホウ統「なるほど。姜尚の采配ってよりも相手が悪かったってとこだな」
姜尚「はい。指揮する身としては申し訳ないと思います」
孟獲「おいおい! お前が指揮してやがったのか! てめぇ……化け物ばかり送り込みやがって!だが男に二言はねぇ。同盟を受け入れよう……負けは負けだ! 飲まなきゃやってられねぇ!」
孟獲は腰の瓢箪に入った酒を一気飲みする。
ホウ統「ちょっと待て! 南蛮の酒なんて飲んだことねぇんだ! 一口飲ましてくれよ!」
ホウ統は孟獲に酒をたかる。
劉備「孟獲殿。同盟の申し入れを受け入れて頂きありがとうございます」
孟獲「ほう……劉備とは女だったのか……。この女性らしい優しさは……あの二人にはない魅力がある……ヒック」
孟獲は劉備の元に連れてこられ同盟を受け入れる旨を伝えたが。悪酔いしていた。
劉備「褒め言葉と受け取っておきますね。それと私は特別ですから」
劉備は勝ち誇る。
張飛「劉姉ー。それどういう意味ー?」
黄忠「なっ何!? 劉備様に言われると感じる……この敗北感は……!」
趙雲「孟獲殿も、やはり感じるのだな。劉備様の魅力を」
関羽「まぁ。張や黄忠には出せない魅力だからな」
張飛「関姉まで! うーん……でも大人の魅力って曲がり角でしょ? これから衰えるものだからいいか」
関羽「……」
張飛の言葉に何も言えない関羽であった。
関羽「仮にそれが一時的なものであったとしてもお子様に劣るものではない」
関羽は姜尚を見る。
姜尚「関羽さん。関羽さんは十分過ぎる程、素敵な女性ですから……張飛に張り合わなくてもいいんですよ」
張飛「関姉! 兄ちゃんに振るのはやめてよ! 兄ちゃん、私もあるよね! 大人の魅力!」
姜尚「ははははは」
姜尚は何も言わず笑う。
趙雲「張飛に大人の魅力とは口が裂けても言えないな」
黄忠「大人の魅力……劉備様や関羽殿と比べても私は負けていない……そう! 負けていない!」
黄忠は一人拳を握る。
孟獲「ガッハッハ! 見てるとなんだか楽しそうな軍だな! 見ていると……うっ……気持ち悪い……おえぇええええ」
姜尚「孟獲さん……もどす時は考えたほうがいいですよ」
魏延「姜尚さん! 二人でお食事に行きませんかー?」
魏延が突如、姜尚を誘う。
張飛「ああっ! 魏延負けたのに! 約束違うじゃん!」
魏延「ええ? 私の方が活躍したと思いますよ?」
張飛「絶対に張飛の方が活躍したって!」
姜尚「一体何の話をしてるんです?」
黄忠「姜尚殿! 早くこちらに来て下さい! 巻き込まれると面倒ですよ!」
姜尚「えっ、ええ……」
黄忠は姜尚の手を引っ張り逃げる。
魏延「黄ちゃん! 放棄したのにズルいですーー!」
張飛「ちょっと黄忠! なに抜け駆けしようとしてんの! 性格悪いなー! あの女!」
張飛は黄忠と姜尚を追いかける。
姜尚「何だか大変な目にあったな……」
結局、黄忠から離れた姜尚は陣に戻る。
馬謖「姜尚。まさか張飛、黄忠、魏延を使者として送るとは考えもしませんでした」
姜尚「孟獲さんの性格を考えると彼女達が使者になるのは適任。孟獲さんは豪胆で優しく男気がある。この展開は予想出来ていたよ」
馬謖「うーむ……孟獲の性格まで把握していたとは……先生が言われるのも頷ける。この馬謖も認めざるを得ない」
姜尚「ははは。そう言ってくれて嬉しいよ。共に成長していこう」
馬謖「うむ。良き友が出来たこと嬉しく思う」
ホウ統「姜尚。おっ、馬謖も一緒か」
ホウ統が現れる。
姜尚「おやっさん、どうかしましたか?」
ホウ統「黄皓が見当たらんのだが知らんか?」
姜尚「黄皓殿は旅の途中だった様で長居は出来ないとのことでした。お礼をと言って旅立ちました」
ホウ統「そうか」
ホウ統は納得する。
馬謖「黄皓?」
姜尚「馬謖君が気にすることはないよ」
馬謖「ならいいんだが。ところで先生と張任殿をまったくみかけないがどうしるんだ?」
姜尚「そういえばそうだね。何処に行ったんだろ」
ホウ統「なんだよ。孔明の奴、話してないのか」
姜尚「知ってるんですか?」
ホウ統「俺達が南荊州を出発して直ぐだったかな。曹操が涼州に侵攻したとの情報が入ってだな」
姜尚「では先生はその対策で……ですが何故、張任さんまで?」
ホウ統「まぁ慣れない場所ということで孔明が頼んだようだ」
馬謖「涼州か……確か涼州軍は馬超殿が長としているのだが……一体どうでるのか」
姜尚「……」
姜尚は運命が変わったことで馬超と馬岱の生死が気になっていた。
ホウ統「まぁ今は帰りを待とうじゃないか」
姜尚達は孔明の帰還を待つことにした。




