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雷子  作者: 三幸
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魏編 五丈原の戦い

魏編 五丈原の戦い



 魏軍は司馬懿の大敗で五丈原で最終防衛線を引くことになった。


 五丈原を抜かれれば長安が危険に晒されることとなり中華の大都市を領土から奪われることは隣の洛陽を奪われる危険性を持っていた。



 本陣にて張コウは対面する蜀軍を見る。


張コウ「蜀軍……いや恐れるべきは諸葛亮か……」

 

徐晃「張コウ。思い詰めてるわね」


 徐晃は張コウに声をかけた。


張コウ「徐晃……」


徐晃「ねぇ張コウ。曹操様が亡くなって魏軍の古参の仲間も随分少なくなったわね」


張コウ「ああ。本当に少なくなった」


徐晃「残された私達が出来ることを考えたんだけど……刃を振るうことしか思いつかないわ」


張コウ「それでいいんじゃないか? 俺もそれしか出来ん」


徐晃「そっか……それでいいか……」


張コウ「らしくないな。どうしたんだ?」


徐晃「ううん……何度も危険な目にあってきたけど、みんながいてくれたから私は今こうして生きてる……」


張コウ「まだ仲間ならいる。徐晃、そんな顔をするな」


徐晃「私ね……于禁が死んで分からなくなったわ……いつでも死ぬ覚悟なんてあると思ったのに……今は生きたいって凄く思う。本当に……」


張コウ「話は聞いた。于禁の死はそんな悲観することか? 俺はそうは思わない」


徐晃「え……」


張コウ「于禁の行動は逃げだと唱える者もいるかも知れん。死は全ての終わりと敗北と考えればそうかも知れんが。俺たちはどこまでいっても武将だ。死と隣合わせの世界に一般道徳やらを当て嵌めて考える必要ない」


徐晃「そう……そうよね……ありがとう。少し元気が出た」


 徐晃は笑顔を見せる。


張コウ「ふふっ……」


 張コウは徐晃に笑顔で返した。





満寵「鄧艾と鍾会が参られましたよ」


司馬懿「来ましたか」


 満寵に案内され鄧艾と鍾会が司馬懿の元を訪れる。


鄧艾「司馬懿さん……カク昭のこと聞きました」


司馬懿「ええ。惜しい……いいえ、可愛い後輩を失いました……」


鍾会「あと司馬懿さんが諸葛亮に敗れたことも」


司馬懿「くっ! それは!」


鄧艾「大丈夫ですよ。司馬懿さんが負けても別に誰も何も思いませんよ」


鍾会「諸葛亮、相手ですから」


司馬懿「全く、可愛くない後輩ですね!」


鄧艾「今までの経緯は聞きましたが、これからどうしますか?」


司馬懿「相手は諸葛亮です。先に動くと危険を伴う。ならば魏軍は防衛に徹するまでです」


鄧艾「司馬懿さん。諸葛亮が怖いみたいですね」


司馬懿「あなたには分からない苦労が多いのよ」


鍾会「ちょっとよろしいですか?」


司馬懿「鍾会……どうかしましたか?」


鍾会「何か見落としています。もっと根本的な何かを……」


鄧艾「ああっ! 実は俺も思っていたんだ……何故、蜀はこれ程早い北伐に拘るんだろうって」


司馬懿「はっ! これまでの蜀の行動は全て理知的行動でした。しかし今回、他に道があるにも関わらず何故、攻めに拘るのか……」


司馬懿は何かに気付く。


鄧艾「考えられるのは……いや……よそう」


鍾会「あなたの考えていることは分かるわ。しかしその仮説はあまりにも不透明ね」


司馬懿「確かにそうかもしれませんが……今までの行動の裏付けには、その理由しかありません」


鍾会「正気ですか? 司馬懿さんらしくない」


司馬懿「おだまりなさい鍾会! あの女に相手にする為にあ常識や理屈を捨てねばなりません!」

 司馬懿は一括する。


司馬懿「まぁ。結果はおのずと分かるでしょう。この戦、長引かせることが出来れば勝ちというわけですね」


 五丈原の戦いは魏軍の防戦によって互角の戦いが続いた。守りに徹すると言えど蜀軍の猛攻に耐えることは士気に関わると幾つかの部隊は攻勢に転ずるも一進一退の攻防に両軍に甚大な被害が出た。




 戦いが始まってからどれくらいの日にちを費やしただろうか。司馬懿の元に諸葛亮の死が知らせれ蜀軍が撤退していく。初めは疑問を持つも趙雲が単騎でしんがりを務めることを知り司馬懿は追撃を決断した。


 張コウと徐晃が趙雲を討たんと攻撃に移る。趙雲のことを張コウ達に任せ司馬懿は蜀軍の本体を追撃した。



 単身、魏軍の進行を遮る趙雲に魏軍の精鋭達は地を赤く染めていた。


徐晃「趙雲! やるわね!」


趙雲「徐晃! 張コウ! この趙雲! そう簡単には倒れんぞ」


張コウ「趙雲。俺が袁紹軍にいた時から何も変わっていないな!」


趙雲「張コウ! その言葉、褒め言葉として受け取るぞ!」


張コウ「ああ! 褒め言葉だよ! 趙雲! 何かと縁のあったお前がここで果てること! これ程悲しいことはない!」


趙雲「それは自分の言葉だ! 張コウ!」


 趙雲と張コウの激しい打ち合いが繰り広げられる。両者、一歩も引かない戦いだが徐晃は張コウが少しずつ押されていることに気付く。


徐晃「趙雲の死角に弓兵を待機させて」


曹操軍兵士「はっ!」


 徐晃は弓兵に攻撃させる準備をさせた。


徐晃「近い……少しでも張コウと離れてくれれば……」


 徐晃は間を測る。


趙雲「張コウ! 疲れが見えるぞ!」


 趙雲が張コウの肩を突き刺す。


張コウ「ぐあ!」

 張コウは後ろに退いた。


徐晃「今よ! 弓兵! 趙雲に一斉射撃!」


 趙雲に矢の雨が降り注ぐ。趙雲は矢の雨を槍を回し払う。


徐晃「矢を止めるな! 射続けろ!」


 徐晃は手を緩めない。やがて一本の矢が趙雲の身体に刺さる。それからは何本もの矢が趙雲に矢が刺ささり膝を付く。その光景を見て徐晃は矢を止めた。


張コウ「趙雲!」


趙雲「何て声を出すんだ張コウ……自分は敵なんだぞ……」


張コウ「確かにそうだが……俺はこんな形でお前と……」


趙雲「その言葉が聞けただけで十分だ……自分の負けだ張コウ……」


張コウ「ぐっ……!」


 一騎討ちを邪魔された張コウにやりきれない感情が込み上げる。


趙雲「ここまでか……劉備様、馬超……今そちらに……」


 趙雲は力尽きた。


徐晃「張コウ。言いたいことは分かるわ。ここで貴方を失う訳にはいかないのよ」


 徐晃が張コウに近づく。


張コウ「徐晃、お前!」


 張コウは徐晃を睨む。


徐晃「確実に勝てる相手なの? もう誰も失う訳にはいかないのよ……」


張コウ「俺が甘いのか……」


徐晃「ごめんなさい……張コウが怒ることは分かってたのに……」


張コウ「このような形で終らせたくなかった。趙雲とは俺が袁紹軍にいた時から知っている間柄だったからな……俺が唯一、嫉妬した男だ……」


徐晃「そうだったんだ……ごめん……」


張コウ「俺の方こそ怒鳴って悪かった……」


徐晃「ねぇ張コウ。戦いが終わる日までお互い生き残るって約束しない?」


張コウ「どうしたんだ急に。そういうことを言う奴に限って先に死ぬからな。まぁ、いいだろう」


徐晃「もう他にこんな約束できる人なんて残っていないから……嬉しいわ張コウ」


 こうして張コウと徐晃は趙雲を討ち取り追撃に移る。





 司馬懿率いる本体は蜀軍を追走する。


鄧艾「後方から歓声が聞こえるな」


司馬懿「趙雲を破ったのでしょう。計算していたよりも随分時間がかかりましたね。如何に趙雲が強くとも多勢に無勢……味方の為に単身残り戦い抜いた趙雲。敵ながら見事な武将でした……後、馬超様も……」


鍾会「司馬懿さんが誰かを褒めるなんて珍しいですね……あっ! 蜀の本隊に追い着いたわ! あそこに砂塵が!」


司馬懿「ん? あの丘の上に見える旗……誰かいますね? しょっ諸葛亮!」


 魏軍の前の丘に蜀軍の旗が見える。そこには遠目に諸葛亮らしき人物が一人だけ立つ。一人……たった一人だけ見えることが余計に司馬懿の恐怖心を増長させた。


鄧艾「あれが諸葛亮! 死は偽報か!」


鍾会「趙雲を殺し我らを誘き出す? そんな馬鹿な! ここは戦いましょう!」


 鍾会は司馬懿に追撃を促す。その時、丘の上から銅鑼が鳴り響いた。


司馬懿「いけません! 我らは諸葛亮の策略に嵌ったのです! 早急に撤退します!」


鍾会「司馬懿さん!」


 鍾会は司馬懿を諌めるように名を呼んだ。


司馬懿「これは罠よ! 孔明の罠!!」


 司馬懿の顔は真っ青になっていた。


鄧艾「鍾会! ここは退こう!」


鍾会「鄧艾まで! 本気で言ってるの!?」


司馬懿「今、ここで退けば我らの被害は最小ですみます」


鍾会「安全策……戦いを避ければ負けはないということか……」


司馬懿「そうです。趙雲を討ち取れただけでも魏軍の勝ちです」


 司馬懿達は本陣まで退却した。




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