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雷子  作者: 三幸
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魏編 潼関の戦い

魏編 潼関の戦い



 洛陽では赤壁の敗戦を埋めるべく多くの文官達が駆け回り体制を整えようとしていた。曹操もまた政務に従事し帳簿を睨む日々が続く。



曹操「惇、被害の報告を聞いたが赤壁の戦いの敗北は痛いな」


夏侯惇「そうね。今も皆が江陵と合肥で戦ってるのを思うと胸が痛いわ」


賈ク「胸が痛むのも終わりです」


夏侯惇「賈ク。どういう意味?」


賈ク「涼州の馬超が動きました」


曹操「やはり動くか……馬超の家族を処刑したことが仇になったか」


夏侯惇「孟徳! それは違うわ! 先に孟徳暗殺を企んだのは馬超の父よ!」


 曹操暗殺。献帝が強大化した曹操を暗殺しようと馬超の父『馬トウ』と『劉備』をに署名させたことがあった。その計画は露見し曹操ば馬トウを処刑した。


賈ク「夏侯惇殿。落ち着きなされ」


 興奮した夏候惇をなだめる。


曹操「ふふっ。嫌な相手だな……」


夏侯惇「孟徳。少し嬉しそうよ……あんた政務に飽きたんでしょ」


曹操「戦ほど熱くなれるものはない。赤壁での鬱憤を馬超に叩きつけてくれるわ」


賈ク「曹操様。お願いがございます」


曹操「何だ」


賈ク「本拠を留守にするにあたり、留守を任せたい者がおります」


曹操「誰を残すつもりだ」


賈ク「司馬懿は私の一番弟子でございますが他に三人の高弟がおります。名は鄧艾、鍾会、カク昭と申します」


夏侯惇「そんなに沢山の弟子がいるなんて。賈クは教育熱心ね」


賈ク「ありがとうございます。三人とも文武共に優れており忠心厚く曹操様の留守を守るには適任でございます」


曹操「好きにしろ……賈ク、その中に男の軍師はいるか?」


賈ク「鄧艾がおります」


曹操「分かった。遠征から帰って来たら会わせろ」


賈ク「分かりました」


曹操「惇、張コウと淵を筆頭に涼州に向かわせろ。俺達は後詰にまわる」


夏侯惇「分かったわ」


 曹操と夏候惇は出陣の準備に向かった。


賈ク「まただ……何故、男の軍師に拘るのだ。またあの書に関わることなのか……」


 賈クは曹操のこだわりに疑問を持った。





 涼州軍の反乱により先行隊として夏侯淵と張コウが数万の兵を率い涼州を目指した。涼州の地は洛陽から西に位置する大都市『長安』かあ更に西に向かった場所になる。




 長安を過ぎ涼州軍の拠点である潼関の手前に曹操軍は到着していた。


張コウ「夏侯淵殿。涼州の騎兵はやっかいですね」


夏侯淵「ああ。騎馬さながらの機動力にあの大きな馬体……初手で止めねばどうにもならん」


張コウ「以前に戦ったことが?」


夏侯淵「董卓討伐の時にな。その時は呂布が率いていた。あの時は悪夢だった」


張コウ「確か劉備・三姉妹が追い払った時の話ですね」


夏侯淵「あの時の関羽と張飛の働きには惚れ惚れした。あの呂布にまともに向かっていけるのはあいつらくらいのものだ」


張コウ「呂布……最強の名を欲しいままにした男……一度、見てみたかった……」


夏侯淵「暴力という言葉をそのまま体現した様な男だ」


曹操軍兵士「夏侯淵様。後詰を率いる曹操様が到着しました」


夏侯淵「そうか」


曹操「淵。戦況はどうだ」


夏侯淵「知っているくせにわざわざ聞くのか」


曹操「淵ならもしかしてと思ってな」


夏侯淵「涼州の荒れた土地では隠れる場所もない。砦を築こうと思ったがそんな間時間は与えてくれんだろう」


張コウ「敵は潼関を拠点とし守りを捨て攻めの一手。留守を狙い拠点を落としたいところではありますが……」


曹操「こちらの守りが薄くそれどころではないか」


張コウ「はい。北平の騎兵は俊足を活かした機動力が主になっていますが涼州の騎兵は突撃を主にした攻撃的な騎兵……ただの騎馬隊と考えておりますと足元をすくわれます」


曹操「ふむ。まともにぶつかるのは危険か……」


夏侯淵「川を挟み布陣すれば騎馬の力を殺せるだろうが……渡河中に襲われることを考えると迷うところだ」


曹操「少し長引く戦いになるかもしれんがここは渡河する。馬超ごときに無駄な戦力消耗は避ける」


夏侯淵「分かった。一応、渡河までの間は防衛に厚みを持たせ二部隊を追加しあたらせよう」


曹操「そうしてくれ。ところで賈クを知らんか? 姿が見えんのだ」


夏侯淵「いや。見ていない」


曹操「やれやれ。俺の軍師は一体何処をほっつき歩いているのか」


 曹操は潼関から数里離れた河を挟み拠点を築くことを決めた。曹操軍は河を渡る為の準備が始められた。


 その光景を涼州軍の偵察が眺め潼関に戻って行った。


 


夏候惇「砂埃が凄い……よくこんな所で暮らせるわね」


許チョ「夏候惇……ここはお米が育たない」


 潼関の荒れ地を夏候惇と許チョが眺める。


夏候惇「ええ。涼州は遊牧民だからお米はあまり食べられないの」


許チョ「許チョはそんなところに長くいたくない……」


夏候惇「なら早く馬超をやっつけないとね」


許チョ「馬超を殺したら帰れる?」


夏候惇「そうよ」


許チョ「分かった……馬超は許チョが殺る……」


満寵「惇姉。もうすぐ渡河の準備が終わるから夏侯淵さんが呼んでこいって」


夏候惇「分かったわ。あれは何の部隊? 索敵にしては随分多いわね」


 夏候惇は丘を駆け上がる曹操軍の部隊を眺める。


満寵「守備隊のようです。渡河中に襲われないようにって」


夏候惇「あれだけいれば安心ね」


 夏候惇達は河に向かった。




 渡河しようとする曹操軍の報が涼州軍に伝えられた。


馬岱「兄貴! 曹操軍の奴ら川を渡るみたいだ!」


馬超「川を渡る? この馬超も舐められたものだ。俺が背を向かれ動かないと思っているのか……ここで父と弟の敵は討たせてもらう」


ホウ徳「我ら重騎兵の恐ろしさ思い知らせてあげましょう」


馬超「生温い平原の民に荒野で生きてきた者との違いを教えてやるといいホウ徳」


ホウ徳「当然です! 馬騰様は私にとっても父同然の方でした。曹操の首は馬超様にお譲りしますが、それ以外の者は是非、私に!」


馬岱「俺にも少し分けてくれよホウ徳殿」


ホウ徳「勿論です。独り占めするほど性格の悪い女ではありませんから」


馬超「先陣は俺が行く。馬岱は俺の後に続いてくれ」


ホウ徳「馬超様。私に馬超様の後詰を任せて頂けませんか?」


馬超「いや。ここは馬岱がいい。先に行く。馬岱、頼んだぞ!」


馬岱「分かったよ兄貴!」


 馬超はその場を去る。


ホウ徳「いつも馬岱は馬超様の近くに……」


馬岱「大事にされてるんだよ」


ホウ徳「そうですよね……」


馬岱「多分ね」


ホウ徳「馬岱!!」


馬岱「はははは! 冗談さ!」


 馬岱とホウ徳は馬超を追いかける。


 馬超は騎馬隊を率い曹操の元へ向かった。



 曹操軍は河を渡る。岸は輸送船によって埋め尽くされていた。


曹操「まずは物質を先に運べ」


曹操軍兵士「分かりました」


夏侯淵「孟徳。お前だけも先に渡ったらどうだ」


孟徳「何もない場所に一人でか?」


夏侯淵「柄にもないことを言うな。大将が討たれたらそれで終わりなんだぞ」


孟徳「淵と共に酒を飲み渡ろうと思ったんだが」


夏侯淵「仕方がない奴だよ。お前は……」


夏候惇「孟徳! 淵!」


 夏候惇が現れるがその表情が険しい。


曹操「どうした惇」


夏候惇「丘の向こうで砂塵が! 恐らく涼州軍が!」


夏侯淵「守備にはかなりの戦力を割いた。そんな簡単には突破出来ないと思う。だが用心に越したことはない。渡河を急がせよう」


曹操「淵。船上での一杯はお預けだな」


夏侯淵「帰りでいいじゃないか……なっ!!」


曹操「どうした?」


 曹操と夏候惇は夏侯淵の表情を変えた丘の上を見る。そこには涼州軍の『馬』の旗を掲げた軍勢がいた。


夏侯淵「りょっ……涼州軍!!」


夏候惇「そんな! あれ程の守備隊がこんな早く壊滅するなんて!」


曹操「渡河は中止だ! これより背水の陣にて涼州軍を迎え討つ!」


 曹操の号令と共に曹操軍は涼州軍に構える。無陣である。騎馬の突撃を遮るものは何もない。絶望的な条件で戦いは始まった。


 涼州軍は丘を一気に下り曹操軍に襲いかかる。連携のとれない曹操軍の兵士は重騎馬で踏み潰され阿鼻叫喚の光景が広がる。馬超の突撃で半分近くの兵を失い死体が敵の騎馬の歩みを遅くした時、曹操軍の反撃は始まった。夏侯淵と満寵は弓兵を率い騎馬隊の先行を集中的に狙い動きが鈍くなった敵を夏候惇、張コウが遊撃隊として戦う。涼州軍とは互角の戦いを見せているように思えたが馬超の部隊だけは誰にも止められなかった。馬超は曹操の眼前にまで迫っていた。



馬超「そこにいるのは曹操か!」

 馬超は曹操に向かって叫ぶ。


曹操「馬超! 父の敵はここにいるぞ!」

 曹操は馬超に応える。


馬超「はははは! 観念したか曹操!」


 馬超は曹操に剣を振り下ろす。


馬超「!!」


 剣を振り下ろしたはずの馬超が馬ごと吹き飛ばされる。


馬超「何者だ!」


 曹操の前には許チョが立ちはだかった。


許チョ「馬超……曹操様は殺させない」


馬超「俺の一撃が……信じられない……だが面白い!」


 馬超は許チョに目掛けて突撃する。二人が交差する瞬間、互いの武器がぶつかる。


曹操「ほう。許チョ相手にまともに戦えるか」


 曹操は二人の戦いを眺める。


許チョ「馬超……重いな……お前の剣は……」


馬超「曹操軍に青い髪の剛腕の女がいることは聞いている。お前は許チョか」


許チョ「そう……許チョだ」


馬超「お前を抜かねば曹操の下に辿り着けない」


許チョ「抜いてみるといい……」


 馬超と許チョの激しい討ち合いが始まった。


 気がつけばその一騎討ちに周り者は歓声を上げ行く末を見守った。

 




 戦いが広げられる場所から離れた丘に賈クは立つ。


賈ク「馬超……あの男は危険ですね」


 渡河中の奇襲を遠くから賈クは眺める。


曹操軍兵士「賈ク様! 涼州の韓遂殿から呼応の返答が来ました!」


賈ク「流石は韓遂です。戦うことの無益さを良く分かっている。馬超、息を巻いてのはお主だけよ」


曹操軍兵士「韓遂殿は潼関を襲撃し間もなくこちらに援軍が参ります」


賈ク「これでこの戦いは終わる。華やかな一騎討ちの場を与えたのは私からの手向けだ馬超よ」



 涼州軍が襲いかかってきた丘から韓遂の騎馬隊が涼州軍の背後を襲う。



韓遂軍は潼関が落ちたことを叫び涼州軍は拠点の陥落に大混乱し飛散した。馬超もまた許チョとの一騎討ちを止めざるを得なくなり曹操を目前にしながらも撤退した。


曹操「あれが馬超か……許チョとこれだけ戦える者も珍しいな」


許チョ「曹操様……お腹が……」


曹操「好きなだけ食べるといい。直ぐに用意させよう」


許チョ「曹操様……申し訳ありません……」


曹操「どうした? 馬超を討ちとれなかったことを気にしているのか?」


許チョ「許チョは……あのまま戦ってれば……馬超に……曹操様を守れませんでした」


曹操「俺が今、生きているのは許チョのおかげだろう。自分の成した事に誇りを持つといい」


 曹操は許チョの頭を撫でた。


許チョ「はい……」


夏候惇「孟徳! 許チョ! 無事だったのね!」


 夏候惇達を含め味方の将兵が集まる。


曹操「赤壁の敗北より冷やりとしたよ。危なかったな」


夏侯惇「あんた。死にかけたのに余裕ね」


夏侯淵「渡河中での奇襲……完全に死地だった」


賈ク「韓遂を上手く味方に付けることが出来良かった。離間の計とでも言いましょうか」


 賈クが現れる。


夏侯淵「韓遂は涼州の人だ。よく説得出来たものだ」


賈ク「ええ。韓遂は朝廷に何度も足を運んでおります。涼州の生活よりも都会暮らしや権威に憧れておることは知っておりました。此度の戦いの功労として官位を約束したのですが……」


曹操「ふっ……独断でそこまでの約束をしたのか? 韓遂には好きな官位をくれてやるといい」


賈ク「ありがとうございます。韓遂も曹操様への忠誠を誓うでしょう」


曹操「しかし、賈クの離間の計で何とか生きることが出来たが俺の知らない強敵はまだまだいるようだ」


曹操軍兵士「曹操様。敵将のホウ徳を捕えました」


ホウ徳「くっ……」


 ホウ徳は逃げ遅れ曹操軍に捕縛された。


曹操「先程の戦いは胆を冷やしたぞ」


ホウ徳「強さでは私達の方が強い! 私達は計に敗れただけです」


賈ク「これはこれは。私にとっては嬉しい言葉ですな」


曹操「馬超の方が強いか……そうかも知れんな」


夏侯惇「孟徳?」


曹操「個の強さで馬超と戦える者は曹操軍にも多くはいない。だが馬超は戦いをあまりにも知らない」


ホウ徳「ぐっ……」


曹操「戦は個の力だけでするものではない……ホウ徳、曹操軍に降る気はないか」


ホウ徳「お断りします」


曹操「そうか……馬超はお前を見捨てた男だぞ。義理を立てる必要もないだろう」


ホウ徳「馬超様が! そんな筈はない! そんな筈は……」


曹操「それを確かめてからでも遅くないだろう。ホウ徳、馬超がお前を捨てたのであれば曹操軍に降れ。そうでなければ馬超の元へ返してやろう」


ホウ徳「その言葉信じても……」


夏侯惇「信じていいわよホウ徳。あなたが曹操軍にいる限り涼州の民は悪いようにしないから」


ホウ徳「あなたは夏侯惇殿ですね」


夏侯惇「そっ、良くわかったわねって……隻眼の女武将は他にはいないか」


夏侯淵「ホウ徳。自分で答えが分かるまで曹操軍に客人としていれば良い」


ホウ徳「あなたは夏侯淵殿?」


夏侯淵「おっと、俺のことも分かるのか?」


ホウ徳「曹操軍屈指の美形と謳われる方ですから……」


夏侯淵「俺が美形? そうかな? あまり自覚はないな」


ホウ徳「なら自信を持ってもいいでしょう。馬超様に劣るものの綺麗な顔立ちです」


夏侯淵「ははは。ありがとう。綺麗なホウ徳に言われては少し自覚もしてみよう」


ホウ徳「……」


夏侯淵「どうした? 何か気の障ることを言ったかな」


ホウ徳「軟派です……曹操軍は軟派です。涼州軍は馬超様率いる硬派の集団……女性に綺麗だとかはあり得ない言動です!」


夏侯淵「そうか……なるべく控えよう」


ホウ徳「いいえ! 私に関しては一切の遠慮は無用です! 一日一回までなら褒めて下さって結構です!!」


夏侯淵「あっああ……」


夏候惇「涼州って女は住みにくいのかしら……ホウ徳……完全に卑屈になってるわね」


許チョ「ホウ徳……私は世間で何と言われているのだ……」


ホウ徳「あなたは?」


許チョ「許チョだ」


ホウ徳「許チョ殿は……いえ……止めておきます……」


許チョ「夏侯惇……ホウ徳が許チョのことを苛める……」


ホウ徳「苛めるなんて! ただ……ちょっと……」


夏侯惇「何か言いにくいことみたいね」


許チョ「ホウ徳……言って……」


ホウ徳「虎痴と……呼ばれています……」


許チョ「こち? 何だそれは……」


夏侯惇「あ……それは聞いたことあるわね……」


夏侯淵「許チョが虎のように強いって意味さ」


許チョ「そうか……許チョは『こち』か」


ホウ徳「あの、意味は……」


曹操「ホウ徳。出来れば許チョには内緒にしてくれ」


ホウ徳「その方がよさそうですね」


 曹操軍は韓遂の占拠した潼関に向かった。


賈ク「ホウ徳殿。少しよろしいですか?」


ホウ徳「賈ク殿……別に構いませんが……」


賈ク「曹操様のことで少し貴殿にお話して置きたいことがありましてな」


ホウ徳「曹操殿のことですか? 大体のことは知っているつもりです」


賈ク「そうですか。まぁ知らん人はいないでしょうな」


ホウ徳「何か特別に話す様なことが?」


賈ク「貴殿と私は同じ境遇にいるので」


ホウ徳「同じ境遇? どういうことです?」


賈ク「私は以前、張繍殿の元で曹操様の暗殺を企てた……しかし、曹操様を殺すことは出来なかった」


ホウ徳「そんなことが……涼州は僻地だからその話は知りませんでした」


賈ク「その時に曹操様は親衛隊長の典韋殿を亡くした。いや、私が殺したのです。しかし時の流れと共に張繍殿と曹操様へ降ることになりました。あの時、曹操軍の多くは私を処刑するべきだと……」


ホウ徳「私でも同じことを言ったでしょう」


賈ク「しかし曹操様は私の才を高く評価し軍師に抱えて下さったのです」


ホウ徳「それは賈ク殿だったからでしょうね」


賈ク「いいえ、違います。曹操様は覇者としての裁量をお持ちだからです」


ホウ徳「私は曹操殿のことを少し誤解しているのかも知れませんね」


賈ク「全ては時が教えてくれるでしょう」


ホウ徳「分かりました。曹操殿への偏見は捨て、私なりに曹操殿を見させて頂きます」


賈ク「ありがとうございます」


 賈クはホウ徳に笑顔で礼を言った。


賈ク「あっ、そうだ。それからもう一つ。曹操軍には暗黙の規律があります」


ホウ徳「暗黙の規律?」


賈ク「はい。許チョ殿には優しくすることです」


ホウ徳「別に意地悪をしようとは思いませんが……分かりました」


賈ク「私が殺した典韋殿は許チョ殿の双子の姉妹です。許チョ殿に肉親はおりませんゆえ」


ホウ徳「曹操殿はそれで許チョ殿に……」


賈ク「はい。幸せになって欲しいと願っているようです」


ホウ徳「それなのによく馬超様と戦わせましたね……」


賈ク「正直、皆が驚いております。許チョ殿と戦うことの出来るのは関羽と張飛だけだと思っておりましたので。逆に馬超の強さが何故、広まっていないかが不思議でなりません」


ホウ徳「涼州は気性の荒い者が多く馬超様は全て力だけで束ねました。内陸の者達がどれ程かは知りませんが許チョ殿と渡り合ったことでその実力は分かっていただけかと思います」


賈ク「確かに……ですが報告を聞く限りホウ徳殿もかなりの者ですな」


ホウ徳「涼州軍、唯一の女武将ですから。正直、馬超様以外に負けるとは思いません」


賈ク「これからの活躍を楽しみにしております」


ホウ徳「客将の範囲であればいつでもお声掛け下さい」


 賈クとホウ徳は潼関に歩を進めた。


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