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雷子  作者: 三幸
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魏編 武装集団

魏編 武装集団




 鄧艾達は楽進の捜索に向かう。初めて兵を率いる三人には熟練の統率者のようでとても初めてとは思えない程、堂々としていた。


 許昌を離れ二日目、荷が奪われた地域の近くまで到着する。


鄧艾「荷が奪われたのはこの先だ」

 

鍾会「なんで分かるのよ」


 鄧艾の言葉に鍾会は疑問を持つ。


鄧艾「三里前に南陽に入ったじゃないか」


鍾会「三里前? ただの平原だったじゃないのよ……どこが境界線かよく分かるわね」


カク昭「ほんと鄧艾って地理に詳しいよね」


 鄧艾と鍾会の会話にカク昭が割り込む。


鄧艾「別に詳しいってわけじゃないさ。何となく分かるんだよ」


鍾会「なによそれ。ずるいわね……お師匠様が鄧艾に任せた理由は卓越した地理感か」


鄧艾「ふふ。ずるいか……鍾会なりの褒め言葉かな?」


カク昭「鄧艾。鍾会は素直に人を褒めることの出来ないへそ曲がりだから」


鍾会「へそ曲がりですって!? カク昭!」

 鍾会はカク昭に怒る。


カク昭「ほらほら鍾会。目を釣り上げるとただでさえ細い目が余計に細く見えるよ?」


鍾会「!!」


 鍾会はカク昭の言葉で指で目を広げる。


鄧艾「カク昭。そういうことは口にするものじゃない。鍾会もそんなことしても目は大きくならないよ……」


鍾会「くっ! 頭が良くて顔も整ってるのに! どうして私の目はこんなにも鋭いのよ!」


カク昭「あんまり気にしないほうがいいよ鍾会。鄧艾だって細いしさ」


鍾会「男はいいのよ! 女の目は大きい方がいいんだから!」


鄧艾「そうか? 俺はそうは思わないけど」


カク昭「良かったね鍾会。鄧艾が将来もらってくれるってさ」


鍾会「鄧艾が? 無理ね。子どものころからずっと一緒なのよ? そんな風にみれないわ」


カク昭「これは……鄧艾が振られたのかな……」


鄧艾「カク昭、冗談はそこまでにしておけよ。俺達は大事な任務の途中なんだ」


カク昭「へへ。ごめんね」


鄧艾「お師匠様からの大事な任務だ。奪われた物資を盗賊から取り返す」


鍾会「盗賊風情に私たちが送り込まれるなんて……一体奪われた物資って何?」


鄧艾「何でも金に変えられない程の物らしい。そもそも相手が盗賊とは限らない」


カク昭「普通さ! 奪い返したら何割かくれるよね? そしたら僕達大金持ちだよ!」


鍾会「馬鹿言わないでカク昭。物資は曹操様のものなのよ」


 カク昭の軽率な口振りを鍾会が制した。


鄧艾「大体の目星は付いている」


鍾会「何でそんなことまで分かるのよ」


鄧艾「野盗が隠れそうな場所はそう多くない。その中でも特に分かりにくい場所が一つだけある」


カク昭「流石は鄧艾……地形からそんなことまで分かるなんて……ちょっと特殊だよ」


鄧艾「はははっ」


 鄧艾は笑う。鄧艾達は野盗の根城に向かう。南陽を更に南に下り川にぶつかる。


 そして川に沿って上流に向かった。そこは既に川と呼べるものはなくなり崖があった。


鄧艾「到着だ」


鍾会「何ここ……野盗が根城にするにはあまりにも便の悪い場所ね」


カク昭「鄧艾の読みも流石に外れたかな」


鄧艾「いいや。ここで当たりだ。鍾会、カク昭あそこを見てごらん」


 鍾会とカク昭は鄧艾が指さした場所に目を向ける。


カク昭「何も見当たらないよ」


鍾会「ふーん。そういうこと……」


カク昭「何? 鍾会は分かったの!? 僕にも教えてよ!」


鍾会「野営した後がある。鄧艾は楽進殿の進んだ道を探していたのよ」


鄧艾「楽進殿は近くにいるはずだ。この辺りを探そう」


 鄧艾の言葉に二人は頷いた。




 鄧艾達が捜索を開始してからしばらくして陣営を発見する。


カク昭「あれは……楽の文字が旗に……」


鍾会「楽進殿ね! 急ぎましょう!」


鄧艾「ああ!」


 鄧艾達は楽進の陣に向かう。曹の旗を掲げ鄧艾は陣に近づく。旗のおかげで陣に通された鄧艾達は楽進と合流することが出来た。


楽進「お前達は誰だ? 見ない顔だな」


 楽進が三人を出迎えた。


鄧艾「賈ク様の弟子。鄧艾と申します。後ろにいるのが鍾会とカク昭です」


カク昭「楽進さん! よろしくね!」


鍾会「ご無事で何よりです」


楽進「無事で? 一体どうなっているんだ俺は……」


鄧艾「行方不明になっています」


楽進「そうか……」


 楽進の顔が曇る。


鄧艾「どうかなさいましたか?」


楽進「進捗を何度か賈ク殿の元に向かわせたが届いていないってことは伝令は全て殺されたってことだからな」


鄧艾「楽進殿。俺達はお師匠様からあなたの救援と任務の完遂させる為に参りました。現状を教えて頂けませんか」


楽進「そうだな。まず敵は賊の類ではない」


楽進の言葉に鄧艾達は妙な緊張感を覚えた。


楽進「初めてあいつ等と戦った時……ある敵を思い出した」


鍾会「ある敵? 随分と含みを持たせますね楽進殿」


楽進「それだけ厄介な連中を思い出したんだ鍾会。話を続ける。元々物資が奪われた場所はここより北に位置する場所だ。俺は手当たり次第に賊を追いかけまわした。だがほとんどの賊が小規模でとてもじゃないが曹操軍を的にかける連中じゃなかった。そこで俺は一部の部隊を物資運搬の輸送隊に見せかけ荷を運ばせた」


カク昭「じゃあ。その偽の輸送隊に……」


楽進「ああ。見事に引っかかってくれたよ。俺は一気に殲滅しようとしたが予想以上に手強い連中だった。正直、張遼でも連れて来れば良かったと思ったよ」


鄧艾「今の話で分かるのはそいつ等は明らかに曹操軍の物資を狙っているということですね」


楽進「その通り。だがあいつ等と戦った時に俺は上手く言えないが訓練されたならず者達を思い出したんだ。そう……董卓軍だ」


 「!!」

 董卓という言葉に鄧艾達は驚いた。


楽進「驚くのも無理はない。俺自身馬鹿なことを言っていると思う」


カク昭「そんなことないよ楽進さん! 貴重な意見だよ!」


楽進「ありがとよカク昭。ところでどうして俺がここにいると分かったんだ?」


鄧艾「楽進殿が生きている前提で仮説を立てました。必ず人目の付かない、水を補給することが出来る場所にいるだろうと……何か所か思い当たる場所がありますが、ここだと確信したのは許昌に最も連絡しやすい位置だったからです」


楽進「大したもんだな。そんなことで居場所が分かっちまうのか。現に伝令は何度か出しているが許昌には届いていない。間違いなく殺されている。まったく気持ち悪いぜ。相手からは丸見えなのに俺からは何も見えないなんてよ」


鍾会「これからどうするつもりですか?」


楽進「敵の出方を待とうと思ったが、お前たちが来てくれたんだ。一から考えないとな」


鍾会「偽の輸送隊はもう通じないかしら」


楽進「普通ならないな」


鄧艾「曹操軍の物資を狙うか……金品目的なら他にいくらでも狙う対象はある」


鍾会「鄧艾。何とかならないかしら?」


鄧艾「そんなこと言われてもな……」


カク昭「可愛い子を狙ってるのかなぁ? だったら僕が囮になろうか?」


鄧艾「カク昭……絡みづらいよそれ……」


カク昭「鄧艾……絡んで欲しくて言ったわけじゃないんだけど……」


 カク昭は少しむくれる。


楽進「まず敵の根城はこの辺りにあるかどうかという点だ。もしかしたら他にあるのかも知れない」


鄧艾「だとしたらここにいる意味は……いや間違いなくこの辺りにあるはずです」


カク昭「何で分かるのさ」


鍾会「曹操軍の物資を狙っているのなら最も高価な物資は間違いなく許昌から運ばれるからでしょ」


鄧艾「ご名答。流石は鍾会」


鍾会「別に褒めらる程のことじゃないわ」


鄧艾「楽進殿。地図はありますか?」


楽進「ああ。これだ」


 楽進は地図を広げる。


楽進「今はここだ。そして偽の輸送隊が襲われた場所はここ」


 楽進は地図を指さす。


鄧艾「出発地点はどこですか? それと出発してから襲われたまでの時間は?」


楽進「輸送隊が出発したのはここからで……襲われたのは……そうだな……一刻経つか経たないか……くらいか」


鄧艾「……」


 鄧艾は地図を睨む。


鄧艾「分かった。敵の根城はここだ」


 鄧艾は地図を指さす


 「!!」

 鄧艾が指を指した場所に皆が驚く。


鍾会「ちょっと待って! ここって私達が通って来た場所じゃないの!」


カク昭「そうだよ! それらしいものなんて何もなかったよ!」


鄧艾「この崖の下。きっと何かある」


楽進「崖の下か……どうやって行き来してるんだ……船が使える程の水位もないぞ」


鄧艾「それは行ってからのお楽しみにしましょう。どんな、からくりがあるか楽しみだ」


楽進「よし。行ってみよう」


 鄧艾達は楽進と共に崖に向かった。





鄧艾「思ったより深いな」


 崖の下を覗き込む鄧艾はこぼす。


楽進「縄を繋いで下に降りるしかないな」


カク昭「無理! 僕こんな所、降りる自信ないよ!」


鄧艾「だったら上でお留守番かな」


カク昭「またそうやって意地悪言うんだから!」


楽進「しょうがねーな。俺の背中に捕まってろ。一応、縄で縛れば怖くないだろう」


カク昭「流石! 楽進さん! やっぱり僕が可愛いから?」


楽進「……」

 カク昭の言葉に楽進は沈黙する。


鄧艾「楽進殿。一発くらい殴ってもいいと思います」


鍾会「二、三発の間違いじゃない鄧艾」


カク昭「もう! 何でそんなこと言うのさ!」


楽進「はぁ……まぁ今はカク昭が可愛いってことで……」


 「大人!!」

 楽進の言葉に鄧艾と鍾会は声が揃う。


鍾会「あれ? ちょっと待って! 普通は女性の私がおぶってもらうんじゃないの!?」


カク昭「楽進さんは僕がいるから駄目だよ。鄧艾にお願いしなよ」


鄧艾「俺は無理」


鍾会「いいわよ! 崖くらい一人で降りれるわよ!」


 鍾会は声を張り上げた。




 こうして楽進達は崖を降りる。兵達もゆっくりと縄を握りしめ崖の下を目指す。まず楽進がカク昭をおぶって降りその後に鄧艾、鍾会が続いた。


 まずは兵の半数が崖下に降りることになりもう半数は待機となった。


カク昭「楽進さんの背中大きいな……」


 カク昭が楽進の耳元で囁く。


楽進「カク昭……頼むから今は変なこと言わないでくれ……」


 縄を握る楽進の手がプルプルと震える。


鄧艾「上からだと気がつかなかったけど下は結構広いな。そう思わないか鍾会?」


 鄧艾は上の鍾会を見上げた。


鍾会「ちょっ! 上を見るんじゃないわよ鄧艾!」


 鍾会は鄧艾に下着を見られることを恐れ鄧艾に怒鳴る。


鄧艾「ああ……ごめん……」


鍾会「まったく……」


 崖は何本もの縄が降ろされた続々と兵達が崖の底を目指して降りていく。


 



 崖のまで残り少しの位置まで到達した時。


 ある異変が起きていた。


鍾会「やばっ……もう……無理……」


 鍾会の握力が限界に近づいていた。鍾会の握力は限界に近くプルプルと手が震えていた。


鄧艾「鍾会! 後少しだ! 何とか頑張れ!」


 異変を察知した鄧艾は鍾会を励ます。


楽進「何だ!? 大丈夫か鍾会!」


カク昭「鍾会! ここでやらなきゃ女が廃るよ!」


 楽進は鍾会を心配しカク昭は鍾会を煽った。


鍾会「はぁ!? 一番楽してるあんたに言われたくないわよカク昭!」


 鍾会はカク昭に言い返す。


鍾会「あっ……」


 カク昭に言い返した反動で鍾会の手は体重を支えることが出来なくなった。


鍾会「きゃぁああああああああ!」


 鍾会は絶叫しながら縄を伝い下に落ちる。


鄧艾「ぐぉ!!」


 鍾会が肩車のように鄧艾に落ちる。鄧艾は鍾会を支えきれずそのまま楽進の元に落ちていく。


楽進「嘘だろおい!!」


 鄧艾と鍾会が落ちてくる光景に楽進の血の気が引く。カク昭に関してはあまりの恐怖に声が出ない。


 崖の底から鈍い音が響いた。



楽進「痛……!」


カク昭「ちょっと……ほんとに勘弁してよ……」


 楽進とカク昭が緩衝材となり鄧艾と鍾会も軽症で済んだ。


鄧艾「俺が悪いんじゃない! 鍾会が上から振って来たんだ!」


鍾会「悪いのはカク昭よ! くだらないこと言うから!」


楽進「みんな無事で良かった。しかし何だここは崖の下にこんな大きな空間があるなんて」


 楽進達の見た光景は上からでは全く分からなかった広い空間があった。僅かな光が差し込み幻想的とも言える光景に一同は驚く。


鍾会「水の流れで崖が下の方だけ削られたようね」


カク昭「でも何で水は流れていないんだろう……」


鄧艾「雨季になれば水位は上がるだろうが……どうやら敵さんは根城を転々としているようだ」


鍾会「季節限定の根城ってことか……素敵な秘密基地ね」


楽進「まずは兵が降りて来るのを待とう」


 兵の多くが崖の底に到着し楽進は達は崖の底を上流に向かって行く。




 そこには洞窟があり松明が灯されていた。


鄧艾「これじゃあ見つからない訳だ」


鍾会「どうする? 一気に行く?」


 鍾会が鄧艾に尋ねる。


鄧艾「楽進殿。ここはあなたが大将です。決めて下さい」


楽進「兵の半数をこの場に残す。残りの半数で洞窟に入ろう」


鄧艾「分かりました」


 楽進が指示を出し洞窟内に突入しようした矢先に洞窟内から武装した集団が現れる。




鍾会「あら。手間が省けたわね」


カク昭「ふーん。入り口を塞がれると思ったのかな? だとしたら出入りはここだけってことだね」


楽進「お前達。戦いの心得は?」


鄧艾「実戦は初めてです。ですが賊に劣らないという自負は持ち合わせています」


楽進「そいつはいいね」


 楽進は口元を緩め突撃の号令をかける。


 曹操軍と得たいの知れない敵との戦いが始まった。楽進は先頭に立ち敵をなぎ払い鄧艾は二本の剣で首を刎ねていく。鍾会とカク昭は兵達に細かく指示し楽進と鄧艾が戦い易い展開に運んだ。


このまま戦局を優位に運び勝利を掴もうとした時、背後から敵の増援が現れた。


鄧艾「まいったな……下流の方も調べておくべきだったか……」


楽進「今更、後悔しても遅い。だが崖を降りるところを狙わなかったことを考えると、こいつ等はどこまでも自分達が何者かを隠したいようだ!」


鍾会「ふん。崖の下で片づけたなら形跡が残らないって考えたのね。相手の力量を完全に読み間違えた馬鹿な連中」

 鍾会は吐き捨てるように言った。


楽進「鄧艾! 鍾会! カク昭! 前方の敵は任せる! 背後の敵は俺に任せろ!」


鍾会「ですが楽進殿!」


 鍾会が楽進を気遣う。


楽進「いいんだよ! 曹操軍の武将って奴は死線を好むってことを覚えておけ!」


 「!!」

 楽進の放った、たった一言が三人の心に刺さり心に火を付けた。


 戦況は不利かと思われたが敵は大将の楽進を狙いを定めている間に鄧艾達は敵を切り倒すし数の有利は揺るぎないものになった。


楽進「やるなぁ。これは将来が楽しみな連中だ」


 楽進は鄧艾達の働きに感心した。やがて崖の下は曹操軍の兵士達だけが立ち、後は屍となった。風の通りが少し悪いのか崖の底は死臭が蔓延した。


楽進「これで悠々と洞窟に入れるな」


鄧艾「はい。早速、洞窟内を調べます」


楽進「待て」


 楽進が鄧艾の肩を掴む。


鄧艾「どうかされましたか?」


楽進「そんなことは兵に任せろ」


鄧艾「しかし……」


楽進「鄧艾。お前の言いたいことは分かる。だが兵に任せてもいいことは任せるんだ。それは自分の命を少しでも危険から守る為だ」


鍾会「楽進殿。鄧艾を含め私たちは命をかけて任務を遂行する覚悟があります」


楽進「模範的な回答だな鍾会。賈クの弟子であるなら将来は軍師を目指しているんだろ? 何でもかんでも自分で動くつもりか? だったらそれは大間違いだ。人を使うことに自分の観念を乗せるな。ゆくゆくは武将達に死を命じるような任務を任せることもあるだろう」


 楽進の言葉に三人は何も言えなくなった。


 楽進は兵に洞窟の捜索にあたらせた。




 洞窟内の捜索が開始され鄧艾達は休憩を取ることになった。


鄧艾「……」

 

 鄧艾は岩に腰を落とし一点を睨み付けるように考えごとをしていた。


カク昭「鄧艾。顔……怖いよ」


鄧艾「正直、舐めてた」


カク昭「……」


 鄧艾の言葉の意味を理解し自分にも当てはまると思ったカク昭は黙る。


鄧艾「俺は今の今まで自分は色んな意味で『かなりやる』と思ってた。だが楽進殿を見てまだまだ及ばないものが沢山あることを思い知らされたよ」


鍾会「楽進殿は曹操軍の中では中堅所……楽進殿よりも上がいるってことは如何に自分が未熟なのか思い知らされるわね」


鄧艾「曹操軍の武将って奴は死線を好む……久しぶりの嫉妬だよ。そんな環境下にずっと居たのかと思うと俺はどれだけぬるま湯に浸かっていたんだ」


カク昭「もっと一緒に戦いたいな」


 「ほんとそれ!」

鄧艾と鍾会の声が揃う。


鍾会「まだまだ多くの武将が曹操軍にはいる。そんな人達と肩を並べて戦いたい。考えただけでも震えるくるわ」


楽進「そんな考えは苦労の元だぜ」


鄧艾「楽進殿」


 楽進がいつの間にか鄧艾達の近くに来ていた。


楽進「言っとくが俺はかなりまともな方だ。曹操軍の武将は灰汁の強い連中だ。そんな連中を従えるなんて頭の毛がなくなっちまうぜ」


カク昭「それはちょっと嫌だなぁ……」


楽進「洞窟の捜索が終わった。盗まれた物資は全てあったようだ。どうやらここは一時的な保管庫の役割をしていたようだ」


鍾会「では任務は……」


楽進「ああ。終わりだ。無事、完遂してな」


カク昭「はぁ……崖を上るのか……」


楽進「俺が先に上がって縄を下ろすから引っ張り上げよう。それなら楽だろ」


鍾会「私もそれでお願いします!」


楽進「ああ。いいぜ」


 こうして物資は崖の上に運ばれ兵達も順に上がっていった。残るは少数の兵と鄧艾達だけになった。


鄧艾「さてと……そろそろ上がろうか」


鍾会「じゃあ。私は先に行かせもらうわ」


カク昭「僕が縛ってあげるよ鍾会。一点だと危ないから上半身に二点で支えれば安定すると思うよ」


鍾会「ありがとうカク昭。お願いするわ」


 カク昭は鍾会の胸の下と腰の位置を支点とし縄を縛った。鍾会の身体は横になり上に引き上げられていく。


 

 最後の鄧艾と兵達は縄を上って行った。


曹操軍兵士「鄧艾様……目のやりばが困りますな」


鄧艾「そうか? 俺は小さい頃から見てるから何も思わないが……でも立派に大きくなったな」


曹操軍兵士「そう思うなら夏候惇様や許チョ様を見ればもっと驚かれますよ」


鄧艾「やめてくれよ。変な期待をしてしまう。……それにしてもカク昭の悪戯も困ったものだ。まぁ……兵達の目の保養になれば鍾会も本望か……」


 縄を上る鄧艾と兵達の目の前に引き上げられる鍾会がいた。ただしカク昭の悪戯により縄で縛った時に服の裾を縄に巻き込まれお尻が丸見えになっていた。当然のことながら鍾会は気付いていない。そして上る兵達は鍾会の上がる早さに合わせて上っていった。




楽進「やっと上がって来たな」


鄧艾「はい。これよりお師匠様の元へ物質を運びます」


楽進「ああ。賈ク殿も帰りを待っているだろう。物質は俺が運ぶからお前達は先に戻るといい」


鄧艾「ありがとうございます」


鍾会「楽進殿。今度お会いする時は戦場にて」


楽進「その時は優しく扱ってくれよ。鍾会軍師殿」


 楽進の言葉に鍾会は顔を赤く染めた。


カク昭「僕は楽進さんに優しくして欲しいな」


楽進「まったく甘えん坊かよカク昭は……」


 楽進はカク昭の頭を撫でる。


それを見た鄧艾と鍾会はやっぱり楽進は大人だと思った。こうして敵の存在は分からなかったものの無事に物質を取り戻し鄧艾達は許昌にいる賈クの元へ向かった。


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