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雷子  作者: 三幸
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呉編 赤壁の戦い

呉編 赤壁の戦い



 奴隷商人達の討伐から数日が経過した。呉軍は絶えず内陸からの情報が届く。


 その中で最も驚くべき情報は呉を大河を挟んで曹操軍が布陣したということだ。岸を埋め尽くさんばかりの大軍は闇夜の暗黒な世界にはっきり分かる程の光で呉を威圧していた。 


 宿舎で休む呂蒙に周瑜からの呼び出しがかかる。


呉軍兵士「呂蒙様。周瑜様がお呼びです」

 

呂蒙「周瑜様が? 分かった。『直ぐに参ります』と伝えてくれ」


呉軍兵士「はっ」


呂蒙「……」

 呂蒙は難しい顔する。


陸遜「お姉様。周瑜様の元へは行かれないのですか?」


呂蒙「あっ、あぁ勿論行くさ……ただ……」


陸遜「曹操軍との戦いが近いことですか」


呂蒙「うん。それもあるんだけど……周瑜様の前に出ると緊張するんだよなー」


陸遜「らしくないですね。うふふ」

 普段あまり見ることのない呂蒙に陸遜は笑った。


呂蒙「素晴らしい方なんだけど、ちょっと尊敬の念が強すぎて……はは……そうだ伯言も一緒に行こう」


陸遜「私もですか? 新参者の私が会える方ではないと思いますが……」


呂蒙「大丈夫だって! なっ! 一緒に行こう!」


陸遜「分かりました。私も周瑜様には一度お会いしてみたかったので」


 呂蒙と陸遜は周瑜の元へ向かった。




 呂蒙と陸遜は周瑜の執務室へ入る。


呂蒙「失礼します。呂蒙参りました」


周瑜「呂蒙。忙しいところすまない」


呂蒙「いえっ、とんでもない!」


周瑜「そちらの方は?」


陸遜「呉軍に入隊しました。陸遜と申します」


周瑜「あなたが陸遜か報告は受けています。中々の素質を持っている様ですね」


陸遜「いえ、そんな……」


周瑜「謙遜しなくてもよい。乱世では力ある者が優遇される」


陸遜「……」

 陸遜はここで返事をしてはならないと思った。


呂蒙「周瑜様。今日はどの様なご用件ですか?」


周瑜「劉備軍の使者。諸葛亮殿が今、孫権様と会談している」


呂蒙「あの天才軍師殿が……」


周瑜「内容は君達であれば分かるだろう」


陸遜「同盟の申し入れ……ですね」


周瑜「そうだ。呉の方向性は決まっている。曹操と戦う」


呂蒙「呉の未来を考えるのであれば当然の判断かと。周瑜様は会談に出席されないのですか?」


周瑜「下手に出て行くと文官共がうるさい。孫権様には私の主旨は伝えてある。それに甘寧も同席させてある」


呂蒙「甘寧も? それは……」

 暴れん坊の甘寧を同席させたことに呂蒙は驚いた。


周瑜「短気な者は会談で強弱を付け、話を纏める隙を作ることが出来る。勿論、最終的に決済を下す人物が必要だが」


陸遜「話を伺うにあたり周瑜様には必勝の計が有るとお見受けします」


周瑜「そう見えるか……無い訳ではないが……」


呂蒙「何か我らでお役に立てるのであれば」


周瑜「ありがとう呂蒙。劉備軍との同盟は受けるが実際には呉軍で曹操と戦うことになる。しかし我らだけでは勝負にならない」


周瑜「そこで頼みがある。この手紙をある人物に届けて欲しい」


呂蒙「ある人物?」


周瑜「ホウ統と言う者だ」


陸遜「鳳雛のホウ統ですか!」


呂蒙「まさか! 呉にいるのですか!」


周瑜「放浪好きな男だが先日呉の領内の酒場で目撃された報告を受けた。この男の存在が私に曹操軍との戦いを決断させた。ホウ統がいれば勝てる」


呂蒙「分かりました。必ずやホウ統殿を見つけ出します!」


周瑜「呂蒙、陸遜。頼みましたよ。私もそろそろ天才軍師殿の会談に行きます。それと奴隷商人の討伐は見事なものでしたね」


呂蒙「ありがとうございます。実際には商人達を捕らえることは呉の損失と考えたことは申し訳ありません」


周瑜「それでよい。討伐後に商人達から帳簿の記載漏れがあった自己申告があった……反省しているようですし成果は十分でしょう」


呂蒙「では、税を収めたのですね」


周瑜「これでもかと言わんばかりの金を……許してくれと言わんばかりの額だ」


呂蒙「受け取ったのですよね?」


周瑜「当然」


呂蒙「実は曹操軍に呉の情報が流れている可能性が高く……」


周瑜「喜ばしいことではありませんか」


呂蒙「え……」


周瑜「商人達が得る情報など役に立つものではありません。呉の軍事力はどれほどだと思いますか?」


呂蒙「確か……十万程かと」


周瑜「一般的に公表している軍事力はその通り。実はその倍が呉が抱える兵力です」


呂蒙「驚きました……」


陸遜「周瑜様、一体、どうやってそれほど兵力をごまかすことが出来るのですか!? 食糧等から算出すればとても隠せるものではありません!」


周瑜「そこに疑問を抱けるのは陸遜は逸材ですね……答えは簡単です。四編成、絶えず巡回に当たる兵を四つ分割し領土内に残る正確な兵を数え難くすることです」


陸遜「あっ……兵の所在地を交代で転々とさせることで……私には考えもつかないことです」


周瑜「話はここまでホウ統の件、頼みましたよ」


 周瑜は会談に向かった。


呂蒙「さて……ホウ統殿を探すとするか」


陸遜「お姉様。あてはあるのですか?」


呂蒙「いや、全然」


陸遜「そうですか……取りあえず目撃された酒場に行きましょう」


呂蒙「そうだな」


 陸遜と呂蒙は酒場に向かった。






 昼間から酒場に向かう道中、建業の街は曹操との戦いが始まるかも知れないことから至る所で戦争の話で持ちきりだった。貿易を生業とする商人達は戦争が莫大な利益を生む可能性を秘めていると考え仕入れに頭を悩ませていた。


 街を通り抜け酒場に二人は到着する。


呂蒙「さて、着いたな」


陸遜「ええ、お姉様。あそこに人だかりが出来ていますね」


呂蒙「本当だ。行ってみよう」


 


 酒場の隅の一席で多くの人が集まっている。呂蒙達はその場に向かう。


黄蓋「ふぉるふぉる」


ホウ統「あんた結構いける口だな」


黄蓋「ふぉるふぉる」


ホウ統「そうかそうか!」


 酒場の一席で二人の男が酒を酌み交わしている。


陸遜「何だか……逞しいおじいさんが半裸で……随分目立つ方ですね。あんな人がいれば人だかりも出来ますよね。お姉様」


呂蒙「あれは……黄蓋……殿?」


陸遜「えっ? あの人が重臣の黄蓋殿なのですか?」


呂蒙「うん……」


 半裸で赤い衣服を身につける男は黄蓋であった。黄蓋は呉に古くから仕える重臣である。


陸遜「変わった……いえ。奇抜な方ですね」


呂蒙「孫家三代に渡り仕えている重臣だ。このまま去るのも何だから挨拶だけして行こう」


陸遜「はい」


 呂蒙と陸遜は黄蓋の元へ向かう。


呂蒙「黄蓋殿、失礼いたします」


黄蓋「ふぉる?」


呂蒙「呉軍武将の呂蒙です。ご挨拶をと思い……」


黄蓋「ふぉるふぉる」


陸遜「?」


 呂蒙が何を話しかけても『ふぉる』しか言わない黄蓋に陸遜は困惑する。


呂蒙「はっ! ありがとうございます」


陸遜「お姉様! 言っていることが分かるのですか!?」


呂蒙「いや、分からん。適当に合わせているだけだ」


 呂蒙は陸遜に耳打ちする。


陸遜「…………」

 呂蒙の適当さに陸遜は呆れる。


ホウ統「黄蓋殿の知り合いかい?」


黄蓋「ふぉるふぉる」


ホウ統「そうか。じゃあ一緒に一杯どうだい?」


陸遜「お誘いは嬉しいのですが今は任務の途中でして」


ホウ統「ん? ホウ統を探しているんじゃないのか?」


 「!」


呂蒙と陸遜は任務を言い当てられ驚いた。


ホウ統「ははっ! 図星かな」


呂蒙「何故分かったのですか……」


ホウ統「今の呉軍が置かれている状況を考えれば俺を探しに来ることは分かっているさ」


陸遜「では、あなたがホウ統殿……」


ホウ統「そう。俺がホウ統だ。よろしくな」


呂蒙「ホウ統殿。何故、黄蓋殿と一緒にいるのですか?」


ホウ統「美味しそうに酒を飲む黄蓋殿を見つけてな。少し酒をあやかろうと思ってな」


陸遜「私の想像とは全く違いました……」

 陸遜は本音をこぼす。


ホウ統「想像と違って悪かったね、お嬢ちゃん。だが良く言われるよ」


陸遜「あっ、すみません!! もっ申し遅れました。呉軍の陸遜と申します」


ホウ統「陸遜殿か……良い目をしているな」


陸遜「そっそうですか。ありがとうございます」


呂蒙「ホウ統殿。我らは周瑜様の命を受け、あなたにこの手紙をお渡しする様にと……」


 呂蒙はホウ統に手紙を渡す。


黄蓋「ふぉる?」

 周瑜の名に黄蓋が反応する。


ホウ統「周瑜殿からか。ちょっと読ませて頂こう……なるほど……ふむ……悪くない……だが肝心な所は秘密か……報酬は呉に滞在する間の酒代は国費で賄うか……太っ腹だな」


ホウ統「周瑜殿には了解したと伝えてくれ」


呂蒙「えっ? それだけですか?」


陸遜「何が書いてあるか気になりますね」


ホウ統「曹操軍との戦いに必要なことが書かれているんだよ陸遜殿。後……」


 「後?」

呂蒙と陸遜は聞き返す。


ホウ統「成功すれば報酬として呂蒙殿と陸遜殿の二人を好きにして構わないと書かれている」


 「何ですってぇえええ!」

 陸遜と呂蒙は大声を出し驚く。


ホウ統「はははっ! 冗談だ! 黄蓋殿見たか! 今の二人の顔!」


黄蓋「ふぉふぉふぉふぉふぉる!」


 ホウ統と黄蓋は大いに笑う。


 「……!」

呂蒙と陸遜はからかわれたことに顔を歪めた。


ホウ統「さてと……俺は行くとするよ」


呂蒙「もう行かれるのですか?」


ホウ統「ああっ。ちょいと急ぎだ。黄蓋殿、機会があればまた一緒に飲みましょう」


黄蓋「ふぉるふぉる」


 黄蓋は笑顔でふぉるふぉると言いホウ統はその場を去る。


陸遜「何だか掴みどころのない方でしたね」


呂蒙「うん、不思議な方だ。いやらしさがないな」


黄蓋「ふぉるふぉる」


 黄蓋が陸遜に話しかける。


陸遜「お姉様! お願いします」


呂蒙「えっ! 私も分からないんだけど」


韓当「ふぉるふぉる」


 呂蒙と陸遜の前に黄蓋と瓜二つの男が現れた。


陸遜「黄蓋殿が二人!?」


程普「ふぉるふぉる」


 呂蒙と陸遜の前に更に黄蓋と瓜二つの男が現れた。


陸遜「いや! 三人!?」


呂蒙「伯言。韓当殿と程普殿だよ」


陸遜「そんな……姿恰好から喋り方まで同じだなんて……」


呂蒙「私も始めは驚いたよ。見分け方は色だ……」


 黄蓋は赤い服で韓当は白い服そして程普は黄色い服であった。


陸遜「兄弟なのですか?」


 「ふぉる!」

老臣一同は声を荒げる。


呂蒙「今のは何となく分かった。違うって言ってる気がする」

 呂蒙は初めてふぉる語を理解出来た。




 呉と劉備軍との同盟が結ばれたことは呉の国内に一気に広がり民は動揺を隠せない。移住を決める者、戦うことを決める者、それぞれの思惑が交錯する中、慌ただしい日々が過ぎていく。

 



周瑜の元にある一報が届く。


呉軍兵士「周瑜様! 曹操軍の船団が鎖に繋がれました! 更に黄蓋殿が曹操軍への投降に受け入れにも成功したようです!」


周瑜「準備は整った! 今晩、曹操軍に奇襲をかける! 全軍に指示を出せ!」


呉軍兵士「はっ!」


周瑜「劉備軍への援軍の要請と孫権様への報告も忘れるな!」


 周瑜は立ち上がり、将兵に出撃の伝令を飛ばす。



 呉軍は全将兵が港に集まり出航の準備が出来た船から港を離れた。



 

陸遜「お姉様! 曹操軍に奇襲をかけると伝令が!」


呂蒙「ああっ! きっと私達の知らない所で何かが始まっていたんだ。悔しいな」


陸遜「早く上に行きたいですね」


甘寧「呂蒙! 陸遜! じいさま達知らねーか?」


 甘寧が現れる。


陸遜「じいさま達?」


呂蒙「黄蓋殿達のことだよ伯言。私達は知らないよ甘寧」


甘寧「そうか……何処に行ったんだよ。変態じじい」


呂蒙「三人ともいないのか?」


甘寧「ああ」


陸遜「おかしいですね。重臣三人がこんな時にいないなんて」


呂蒙「まさか! 周瑜様の計略……」


甘寧「何ごちゃごちゃ言ってんだよ」


呂蒙「甘寧。黄蓋殿達は恐らく曹操軍に向かった」


甘寧「はっ!? だったら無茶し過ぎだぞ! 早く行かないと!」


陸遜「甘寧さん。落ち着いて下さい。恐らく周瑜様の作戦だと思います」


甘寧「周瑜様の? そうか……あんなじいさま達はとっとと死んだ方がいいもな」


呂蒙「失礼なこと言うな甘寧! 変態のような格好しでいるが変態かどうか分からないだろう!」


甘寧「まぁ……確かに……」


呂蒙「うん? やけに素直だな甘寧」


甘寧「は? 俺は元々素直だろ! 俺は介推の様な男だからな」


呂蒙「以外だ……甘寧が介推を知ってるなんて……」


陸遜「……」


朱桓「甘寧さん! 呉軍出撃してますよ! 凌統さん達も出ちゃいました!」


甘寧「はぁああああ!? 凌統が俺を置いて出撃だとー!?」


朱桓「私は甘寧さんが来るまで待った方がいいと言ったんですよ!」


甘寧「俺を置いて行くなんて! 朱桓付いて来い! 凌統に追い付くぞ!」


朱桓「あっはい!」


 慌しく甘寧と朱桓は凌統を追いかける。


呂蒙「おい! 甘寧! そこは曹操軍を倒しに行くぞ! だろ!?」


陸遜「ふふふ」


呂蒙「まったく。緊張感のない奴だ。私達も行こうか伯言」


陸遜「はい。お姉様」


 呂蒙と陸遜も曹操軍との戦いに出撃した。




 出航した呉軍はある異変に気付く。対岸に布陣する曹操軍の陣営が妙に明るいことに。先に出航した呉軍の先陣は既に曹操軍と接触していた。船を走らせる呉軍に鎖で繋がれた曹操軍は一方的に攻撃されているように映る。だが曹操軍から呉軍への反撃はほとんどない。呉軍どころではない状況に陥っていたのである。


陸遜「お姉様! 戦が始まっています!」


呂蒙「曹操軍陣営に火が! 一体どうやって曹操軍陣営に火計を!」


 曹操軍の大船団からもくもくと煙が上がっている。


陸遜「周瑜様の策であることは間違いないと思います」


呂蒙「そうだね……でも、おかしい……火のまわりが早過ぎる!」


陸遜「お姉様、あそこ!」


呂蒙「黄蓋殿と韓当殿と程普殿……何やら曹操軍の船団に投げつけている……」


陸遜「あれは魚油の入った壷です! 魚油は燃える時に大量の煙が出ます! 煙幕となり呉軍の攻撃の助けになると思います!」


呂蒙「周瑜様はそんなところまで考えていたのか……火と煙に包まれた曹操軍は大混乱だろう。私達も行こう! 伯言! 今なら簡単に接近出来る!」


陸遜「はい! お姉様!」



 呉軍は火計にて大混乱の曹操軍にほぼ無傷で接近することが出来た。呉軍は全兵力で曹操軍に挑む。大河は大小様々な船で埋め尽くされた。火から逃げようとする曹操軍の船を呉軍は囲み襲った。各個撃破の戦法は数の優位さに関係なく呉軍は一方的な戦いをみせた。鎖で繋がれた曹操軍の船団は動くことが出来ず火が燃え移る。それでも多くの曹操軍が陸地に残されていた。呉軍は陸に上がることはせず船上の敵に的を絞る。夜の河を真っ赤に染める曹操軍の大船団は墨となり川底に沈む。そして多くの将兵が河に落ち魚の餌となった。



 夜が明ける頃、大船団の影はなくなり曹操軍の布陣していた陸地もまた炭と化していた。


周瑜「よし! 曹操軍の船団は壊滅した! このまま追撃戦に移る! 合肥に甘寧、凌統、程普、周泰、蒋欽を! 残りの者は私と江陵に向かうぞ!」


 周瑜は曹操軍の領土を奪う為に合肥と江陵に狙いを定める。




 伝令は即座に伝わり、呉軍は曹操軍を追う。





 曹操軍追討戦に合肥向かう部隊は馬を走らせる。


甘寧「やったな凌統! 一緒に合肥攻めだ!」


凌統「ふふっそうだな甘寧」


蒋欽「お前ら……ちょっと気持ち悪いぞ……」

 甘寧と凌統のやり取りに蒋欽は口を歪める。


凌統「止めろよ蒋欽! 気持ち悪いのは甘寧だけだ!?」


甘寧「そりゃねーだろ! って言うか蒋欽! 俺達のどこが気持ち悪いんだ!」


周泰「そんなことも分んないの? 甘寧が凌統にベタベタし過ぎなのよ!」

 甘寧の返しに周泰が突っ込む。


甘寧「そんな言い方ねーだろ! 仲が良いだけだろ!」


程普「ふぉるふぉる!」

 程普が割って入る。


甘寧「程普のじいさま……」


凌統「合肥攻めは、程普殿が大将なのか?」


程普「ふぉるふぉる」


 (何を言ってるか分からねー)

 甘寧達は困惑する。


程普「ふぉるふぉる……ふぉる?」


凌統「分かりました! 合肥に到着次第、陣を構え攻撃の準備に入ります!」


 凌統の言葉に程普は笑顔で去っていく。


甘寧「えっ? 凌統って、じいさまの言うこと分かるの?」


蒋欽「あー……あれは多分、分かってねー。呂蒙がいつもあんな感じで答えてるから真似したんだろ?」


周泰「凌統って……順応性高いよね……」


 周泰の言葉に甘寧と蒋欽は頷く。




 一方、周瑜は半分の兵を率い江陵に馬を走らせていた。


周瑜「呂蒙いるか!」


呂蒙「はい! ここに!」

 呂蒙は周瑜の横に馬を並走させ陸遜も呂蒙の横を馬で駆ける。


周瑜「我らは江陵攻めだ。指揮は私が執るが窮鼠猫を噛むことを考え、慎重に攻略する」


呂蒙「分かりました。江陵を包囲する様に致します」


周瑜「そうしてくれ」


陸遜「お姉様! 江陵を包囲するのですか?」


呂蒙「ああっそうだ」


陸遜「周瑜様! 包囲するにあたり、ご提案があります」


周瑜「大丈夫だ陸遜。敵の退路までは断たん」

 周瑜は陸遜の言わんとすることを読み答える。


陸遜「あっ……申し訳ありません。出過ぎたことを……」


周瑜「いや、陸遜。私の考えを察してくれる頭脳がいてくれることを嬉しく思う」


陸遜「あっ、ありがとうございます!」


呂蒙「そうか……完全に包囲すると殲滅に時間がかかる。不利な状況に追い込み、敵を撤退させた方が早いということか」


周瑜「その通り。まぁ、他にも理由はありますが」


陸遜「他の理由?」


周瑜「劉備軍の動向だ。今は江陵を落とす。さぁ行こう」



 赤壁の戦いで曹操軍に勝利した呉軍はそれぞれ合肥と江陵に向かう。曹操軍は既に合肥と江陵に守備隊を向かわせていた。






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