↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷子  作者: 三幸
48/134

黄皓

黄皓





蜀の防衛線の剣閣に現れたのは数万の兵を率いる鍾会であった。


鍾会「あれが蜀の最終防衛線、剣閣か……一筋縄でいきそうにないわね。まぁ時間稼ぎだし適当にやらせて貰うわ」


 鍾会は適度に剣閣を攻める。被害が大きくなる前に撤退するつもりだが剣閣の姜維達を剣閣に閉じ込めておくことに重きを置いた。




 それは別働隊の存在があったからだ……。



 益州の裏道を別動隊の鄧艾が進む。


鄧艾「険しい道のりだったな。いくら剣閣の攻略が難しいとは言え、これ程の遠回りになるとは……」


魏軍兵士「ですが陳倉の民によりますとこの道しかないとのことで……」


鄧艾「分かっている。蜀軍による陳倉渇水の件……まさか領土内の民に裏切られるとは思いもよらなかっただろうな……当然か住む場所を荒らされれば……」


魏軍兵士「全てはカク昭様の仁徳かと……」


鄧艾「僅かな水を民に残したことは聞いている……これはカク昭への弔いでもあるんだ、必ず成都を攻略する」


 鍾会が剣閣を攻めているころ鄧艾は大きく迂回して成都の裏まで軍を進めていた。道なき道を進み崖を降りまた登る。崖の下に命を落とす者は数百人にものぼった。だからこそ守るべき蜀軍はおらず鄧艾は虚を突けることを確信していた。


 陳倉の民により魏軍は益州の険しいながらも唯一の裏道を知った鄧艾は作戦を結構、蜀軍を剣閣に釘付けにし一気に成都を目指す作戦であった。




 剣閣の魏軍は攻めては後退しまた攻める……執拗な攻撃は一切ない……蜀軍は数万の敵に連弩を使い戦いを有利に進めていたが姜維はとてつもな不安に襲われていた。


姜維「何だ……この魏軍の戦い方は……」


孟獲「どうした? 何かあんのか?」


姜維「気持ち悪い戦い方です。まるで敢えて長期戦に持ち込むような……魏軍にとって長期戦は何の利も生まないのに……」


孟獲「何かあるってことか……」


姜維「援軍の到着を待っているのかも知れません。もしそうなら一気に討って出ねば袋の鼠です」





 剣閣の鍾会の元に一報が届く。


魏軍兵士「鍾会様! 鄧艾様率いる遊撃隊が成都を落としました!」


鍾会「そう。鄧艾も上手くやったわね。剣閣の残党も直ぐに降伏するでしょう。引き揚げるわよ」


 鍾会は剣閣から引き揚げる指示を出す。魏軍は悠々と剣閣を後にした。





魏延「魏軍が引き上げて行きます! 私達、勝ったんですね!」


孟獲「へっへー! やったぞ! あっしらの強さが分かったみたいだな!」


 撤退する魏軍に魏延と孟獲は喜ぶ。


姜維「やっぱりおかしい……一体、何が狙いなんだ……」


 姜維達の元に一報が届く。


蜀軍兵士「ほっ、報告します! 魏軍の別働隊により、成都陥落! 黄皓殿を筆頭に全面降伏しました!」


 「何だって!!」

 姜維と孟獲は成都陥落に驚く。


姜維「そんな……では今の魏軍の攻撃は陽動だったのか……」


魏延「馬岱さんは! 馬岱さんはどうなったんですか!」


蜀軍兵士「馬岱様は……黄皓殿に処刑されたとのことです……」


孟獲「何てこった……」


魏延「そんな……」


姜維「黄皓……許せない……」


孟獲「ん? 魏延ちゃん! 何を!」


 孟獲が魏延の顔を見ようと振り向いた時、魏延が自分の首に剣を据える。


魏延「私……もう生きていたくありません……生きていても辛いことばかりなんですもの……このままみんなが死んで私、最後の一人になるなんて耐えられない!」


姜維「魏延さん! 早まらないで!」


孟獲「魏延ちゃん!」


 姜維と孟獲は魏延が自決しようとするのを止める為走り寄る。


魏延「さようなら、姜維さん……孟獲さん……」


 刃が魏延の首を裂き魏延はその場に崩れた。


姜維「こんな結末ってあるのか……一体どうして……」


孟獲「おい! 姜維! まだ終わってねーぞ! まだやることがあんだろ!」


姜維「孟獲さん……」


孟獲「せめて、黄皓のくそ馬鹿野郎をぶっ殺さねーと気が済まねー!」


 姜維と孟獲は全軍を率い成都に向かった。


 魏軍から成都を取り返し黄皓を殺すことを目標にした蜀軍は決して多くはなかった。撤退した魏軍の牽制の為に剣閣に兵を残さなければならなかったからだ。




 綿竹関を抜け成都目前の街道で異変気付く。


蜀軍兵士「姜維様! 魏の大軍に囲まれております!」


姜維「くっ! 勧告か!」


 成都に向かう途中、姜維達蜀軍残党は魏軍に包囲された。


黄皓「おやおや。そこにいるのは謀反人の姜維と孟獲ではありませんか」


孟獲「やい! 黄皓! てめぇ! 自分が何をしたか分かってんのか!」


黄皓「勿論です。無益な争いを避け、益州の民を守ったのです」


孟獲「おもしれーなてめぇ!」


姜維「何故、馬岱さんを処刑した!?」


黄皓「馬岱? ああっ! 謀反人の手先でしたので……恨むならご自分を恨みなさい。無力な自分を……」


孟獲「黄皓! 八つ裂きにしてやるからそこを動くんじゃねーぞ!」


黄皓「野蛮人は嫌ですねー。私は魏軍を引き連れ、あなた達の命を救いに来ましたのに。降伏はしそうにありませんね」


姜維「…………」

 姜維は睨み付ける。


黄皓「まっ、降伏しても殺すつもりでしたが……」


孟獲「何処までも舐めくさりやがってー!」


黄皓「あっそうだ! 姜維、最期に一つ教えて差し上げましょう。おやっさんが死んだのは私が張任に情報を流したからです」


姜維「何だと!!」


黄皓「かかって来なさい。終わらせましょう」


姜維「黄皓ぉおおお!」


 黄皓の言葉に生まれて初めて純粋な殺意が姜維の心を染めた。


 魏軍の大軍が姜維達に襲いかかる。


姜維達は応戦するも圧倒的な戦力差に一人また一人と倒れていく。気が付けばその数は百を切る程まで減っていた。



 姜維も孟獲も身体中に傷を増やしていく。


孟獲「くそ! 切りがねー!」


姜維「孟獲さん! 大丈夫ですか!」


孟獲「おうよ! 姜維……お前だけでも生き延びろ……」


姜維「何言ってるんですか!」


孟獲「馬鹿野郎……今のままだと二人とも殺されちまう」


姜維「それならこのまま二人で散りましょう!」


孟獲「姜維! 悪いな!」


 孟獲は力いっぱい姜維を殴る。


姜維「くっ! 孟獲さん……何を……?」


孟獲「この一発を黄皓に利子付けて返してくれや」


姜維「孟獲さん……?」


 姜維は孟獲の考えていることが理解出来ない。


孟獲「お前さえ生きていれば何とかなりそうな気がすんだ……姜維頼む。今は生き延びてくれ……あっしが時間を稼ぐ」


姜維「孟獲さん……くっ……分かりました……必ず黄皓に利子を付けて返します……」


孟獲「姜維お前は素直ないい男だよ! じゃーな姜維! 頼んだぜ!」


 孟獲は魏軍に一人向かっていく。


姜維「孟獲さん……!」


 姜維は孟獲の後ろ姿を後ろし走った。



黄皓「ん? 姜維が逃げる? 冷たい男ですねー。孟獲を盾に自分だけ逃げるなんて……姜維を逃がしてはなりません! 捕えなさい!」

 逃げる姜維に黄皓は追ってを向ける。


孟獲「はん! そんなことさせねーよ!」

 孟獲は魏軍に立ちはだかる。


 姜維はひたすら馬を走らせた。何処にも行く宛てなどない。


姜維「この屈辱は絶対に忘れない……忘れないぞ……!」


 姜維はこの日から姿を消した。



この後、益州は魏の管轄下となり鄧艾と鍾会が益州をしばらく統治することなる。



 劉備の作り上げた蜀は消失し中華の勢力の均衡は一気に崩れることとなった。


蜀編はこれで終わりとなります。

次の投稿からは呉編となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。