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雷子  作者: 三幸
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陳倉の戦い 下

陳倉の戦い 下



 


 魏延は水に流されるが捜索し何とか発見された。


魏延「んっんん……ここは……」


 魏延が気がついた。


魏延「私……岩盤を割って……それから……」


 意識がはっきりとしないながらも魏延は自分の記憶を辿る。


魏延「思い出した。沢山の水が出て流されたんだ……」


 魏延は天幕の入り口から差し込む僅かな光から助けられたことを知る。


魏延「みさなんに迷惑……かけちゃったかな……あれ? 私……服が……私の服がない!」


 魏延は自分が一糸纏わぬ姿であることに気付く。


諸葛亮「ん? 魏延……目が覚めましたか……」


 孔明は目を擦りながら魏延が起きたことを確認した。


魏延「こっ孔明軍師! って! ええぇえええ!」


 魏延は驚いた。孔明までもが自分と同じ様に何も着ていない姿だったからだ……そして何故か自分の隣にいることに……。


諸葛亮「どうかしましたか? ああっ……水で身体が冷え切っていたので一緒に寝させて頂きました。寒くはありませんか?」


魏延「はわわ……孔明軍師が私に添い寝を……」


諸葛亮「大変でしたよ。流されて崖に落ちてしまっては危険だと思って全軍で捜索し何とか見つけ出せました」


魏延「すみません……でも崖の下に流される前に助けてくてありがとうございます」


諸葛亮「発見したのは崖の下です」


魏延「え!?」


諸葛亮「濁流で崖の下に流され、どうして無事なのか不思議でなりません。結果的に無傷だったからよかったものの……」


魏延「あの……私の服って……」


諸葛亮「当然、私が脱がせました。孟獲があっしに任せろとか言って脱がせようとしたので一発入れておきましたので安心してください」


魏延「そっ……そうなんですか……ありがとうございます」


諸葛亮「身体が大丈夫なら現場を見に行きましょう。服は乾してそこにあります」


魏延「あっはい!」


 孔明と魏延は着替え現場に向かった。




孟獲「おらぁ! じゃんじゃん崩せ!」


 孟獲は大声で指揮を執る。兵達は魏延作った水路に土砂を崩し放り込む。今まで土を掘りそして運ぶとういう作業が土を崩し水に投げ入れるだけの作業となった。


姜維「あっ先生! 魏延さん!」


孟獲「おお! 魏延ちゃん。身体はもういいんか?」


魏延「みなさん。ご心配をおかけしました。それにしても凄いですね」


諸葛亮「この光景は魏延の功績です。他人ごとのように言わなくても結構」


魏延「ええ! だって私! 岩しか砕いていませんよ!?」


諸葛亮「それが一番大きいのではありませんか」


姜維「魏延さんのおかげで作業が飛躍的に進んでるんだよ!」


孟獲「楽勝だぜ! 水の中に土を放り込めばそれだけで流れてくんだからよ!」


魏延「私……みんなの役に立てたんだ……」


諸葛亮「後は岩盤に沿って広げていくだけです。魏延はしばらく給仕の任に専念して下さい。後はこちらで進めますので」


魏延「分かりました」


諸葛亮「お願いしますね。魏延の料理をこれから存分に堪能させて頂きます」


魏延「はい!」


姜維「先生。この調子でいくとどれ程で陳倉の水は無くなるでしょうか?」


諸葛亮「何とも言えませんがそれでも数日は必要でしょう」


姜維「ではある程度作業が進み次第ここを離れるわけですね」


諸葛亮「ええ。カク昭は陳倉で篭城することが困難になることが分かれば早い段階で撤退を開始しるでしょうから……」


姜維「趙雲さんと馬岱さん。大丈夫かな? 何か聞いていますか?」


諸葛亮「ええ。もちろんです。これでもかと言う程に攻城兵器を壊しているようですね。カク昭から見れば完璧な防衛にさぞ気分をよくしているでしょう」


姜維「後、数日で自分が撤退することなんて思いもよらないんだろうな」


諸葛亮「通常、井戸の深さは約五丈程です。その井戸の水が枯れ新たに井戸を掘るでしょうが一向に水は湧いてこない。約束された勝利を捨てるは正に天地をひっくり返されるような気分でしょうね」


 孔明は陳倉の方角に目を向ける。






 陳倉では趙雲と馬岱が頭を悩ませていた。


馬岱「趙雲殿! 既に七割の兵器が破壊されてますよ!」


趙雲「分かっている! このままでは約束の二十日間も攻めることが出来ない! だが馬岱! 安心してくれ! 自分に考えがある!」


馬岱「趙雲殿の考え? 何です……ちょっと不安ですが……」


趙雲「ふふふふ。それは壊れた兵器の部品を組み合わせ組み立てる!」


馬岱「おお! それならいけますよ!」


 馬岱は趙雲の案を讃える。


趙雲「明日は城攻めなしだ! 兵器を組み直し明後日から一気に行くぞ!」


馬岱「はい!」


 趙雲と馬岱は兵器を組み直す。






魏軍兵士「カク昭様。敵に動きがあるようで何やら壊れた兵器を回収しているようです」


カク昭「ふーん。組み直すんだ。分かってないなぁ……兵器って割りと精巧に作られてて簡単には組み直しなんて出来ないんだよね」


魏軍兵士「そうなのですか?」


カク昭「そういうものなの。まぁかなりの兵器を壊すことが出来たから蜀軍の兵器も残り僅かってところかなぁ……この分だと明日は何も無さそうだし兵をゆっくり休めようようか」


魏軍兵士「本当ですか!?」


 兵は嬉しそうに尋ねる。


カク昭「もちろんだよ」


魏軍兵士「皆に伝えて来ます!」


 兵はその場を去る。


カク昭「この陳倉の守りは完璧だな。蜀軍の撤退が待ち遠しいな……その時は追撃に移りたいけど……司馬懿さんから防戦に徹底しろって言われてるしなぁ」


 カク昭は城壁から蜀軍の壊れた兵器を眺めてる。








趙雲「駄目だ! これも合わない!」


馬岱「くそ! 何で同じ兵器なのに合わないんだよ!」


 趙雲と馬岱が兵器の組み直しに苦戦する。


趙雲「設計だ! 設計が駄目なんだ! 誰だこれを考えた奴は!」


 当然、孔明である。


馬岱「ほんとそれですよ! 何でズレが生じるのかわけが分からない!」


趙雲「ああぁ! 後少しで填まるのに!」


馬岱「ここを少し削って寸法を合わせましょう!」


趙雲「おお! そこか! そこが原因か! やるではないか馬岱!」


 趙雲と馬岱の兵器の組み直しは昼夜行われた。





趙雲「出来た……」


馬岱「ええ……ですが一台だけですね……」


 組み直しされた兵器は衝車であった。


馬岱「苦労して作ったこの衝車に愛着が湧いて仕方がありませんね」


趙雲「うむ。せっかくだから名前を付けようではないか」


馬岱「いいすっねそれ! 何にします!?」


 馬岱は興奮気味だ。


趙雲「そうだな……自分と馬岱が作ったこの衝車は如何なる城門を破るであろう。その意味を持って『月下美人』何てどうだ?」


馬岱「すみません。城門を破る前振りからどうやって『月下美人』何て名になるんですか!」


趙雲「はははは! 青いな馬岱! 自分と馬岱にはそれくらいの伴侶が居てもおかしくはないだろう!」


馬岱「益々すみません! 城門の降りは忘れていいんですよね!? それなら『月下美人』で構いません!」


趙雲「決まりだな! 最強の衝車『月下美人』で明日はカク昭に目にもの見せてやろうではないか!」


馬岱「はい!」


 趙雲と馬岱の作った歪な衝車『月下美人』の誕生の瞬間であった。


 夜が明け日が上り始める。蜀軍は残りの攻城兵器を並べ陳倉に総攻撃を仕掛ける。もちろんその中に月下美人もあった。




 陳倉へ蜀軍の攻撃が始まる。


魏軍兵士「カク昭様。蜀軍が向かって来ます!」


カク昭「いつも通りでいいよ。兵器は油と火矢で燃やせばいい」


魏軍兵士「はっ!」





趙雲「おお! 月下美人が進んでいくぞ!」


馬岱「何て勇ましい姿なんだ……こりゃ陳倉陥落は目前ですよ!」


 月下美人が進む姿に趙雲と馬岱は大興奮だ。慣れない工具を持ち二人で研鑽を重ね睡眠時間を削った衝車に自分達の目的を完全に忘れていた。


趙雲「はははは! カク昭! もうすぐ月下美人が陳倉に到達するぞ!」


馬岱「お前が悪いんだぜカク昭! 直ぐに逃げなかったことを後悔するがいいさ!」





 月下美人の存在が魏軍に発見される。


魏軍兵士「カク昭様。攻城兵器が間もなく到達します」


カク昭「うん……」


魏軍兵士「カク昭様? どうかされましたか?」


カク昭「いや……あれ何だろう? 変な衝車が近づいてくるんだけど……」


魏軍兵士「ん? 本当ですね……ずいぶんと不細工な衝車だ……」


カク昭「僕、醜いのって嫌いなんだよね。あの不細工な衝車に的を絞って先に壊そう」


魏軍兵「はっ!」






趙雲「いっけぇえええ! 月下美人! お前はどんな兵器よりも美しいぞ!」


馬岱「一撃で陳倉なんて壊しちゃえ! 何ならカク昭もやっちゃて!」


 好き放題? 親馬鹿全快の二人に応援され月下美人は進む。そこに陳倉から一斉に油の入った壷と火矢が放たれる。月下美人は一瞬で炎に包まれる。

 


「げっかびじんーーーーー!」

 趙雲と馬岱の悲痛な叫び声が陳倉に響き渡る。







 その日、蜀軍の総攻撃は失敗に終わった。月下美人は完全に灰となり趙雲と馬岱は悲しみに暮れる。


趙雲「カク昭……許さん……自分達の苦労と努力の成果を一瞬にして灰にしおって……」


馬岱「月下美人を集中狙いしてきましたね……この代償はきっちり取らせてもらわないと……」


 二人は陳倉を睨む。


蜀軍兵士「報告致します。諸葛亮様から作業の目途がたったので陳倉の包囲を解きカク昭の退路に伏するようにとのことです」


 趙雲と馬岱は月下美人の弔い戦が近いことを知り猛る想いを鎮め陳倉包囲を解く準備にかかる。





カク昭「どうやら敵の兵器は底を付いたようだ……これで蜀軍は陳倉を眺めることしか出来ないな」


魏軍兵士「カク昭様! 大変です! 井戸が渇水しております!」


カク昭「何だって!? 調査はした!?」


 魏軍兵士の報告にカク昭は焦る。


魏軍兵士「はい! 井戸の底を掘っておりますが水が出る気配がありません!」


カク昭「最悪だ……なんでこんな時に……」


魏軍兵士「いっいかがいたしましょう」


 兵の声は不安そうだ。


カク昭「水がなくなってしまっては……もって三日。撤退を考えると一日しか猶予はない。その間に水を確保しなくちゃ……今は交代で井戸を掘り深めて」


魏軍兵士「はっ!」


 カク昭は何とか水の確保を試みる。





 

 


諸葛亮「かなりの水が流れ出ましたね」


姜維「ええ。泥水から澄み切った水に変わりましたしとても冷たい。地下水ってこんなにも沢山あるんですね」


 姜維と孔明は作業場を眺める。深く掘られた水路とも呼べる土掘り場は広く拓かれ水が大量に流れ続ける。


孔明「そろそろ陳倉の水が枯れてもおかしくありません。既に趙雲殿と馬岱が敵の退路に伏しているので私たちも向かいましょう」


姜維「分かりました。直ぐに支度します」


 姜維は将兵を陳倉周辺に向かわせる。








カク昭「どう? 水は出た?」


魏軍兵士「いいえ。どれ程、掘っても水が出る気配がありません……」


カク昭「蜀軍の包囲は既に解かれたみたいだし……出るなら今か……」


 カク昭は水が枯れたことが蜀軍のものによることとは思いもしなっていなかった。


カク昭「陳倉は惜しいけど水の出ない城に価値なんてない。これより撤退するよ」


魏軍兵士「はっ」


 魏軍は陳倉から撤退を開始した。


カク昭「水がある場所までは極力体力を温存しておかなきゃ……」


 魏軍はカク昭を含め昨日から水を口にしていない。樽に貯めておいた水が陳倉の最後の水でそれは陳倉で暮らす民の為に残してきた。本来であれば一刻も早く進みたいところだが喉が渇くようなことでけはけっしてしたくなかった。その為、ゆっくりとした行軍となった。


 ジャーン! ジャーン!

魏軍の誰もが銅鑼の音を耳にする。


趙雲と馬岱が騎馬隊を率いて撤退する魏軍に襲いかかる。魏軍は突然の急襲に大混乱した。


カク昭「全軍散会! 固まらないで! 四方に散るんだ!」


 カク昭は蜀軍の待ち伏せに応戦せずに逃げることを将兵に促した。この状況では勝てない。そう判断した。


魏軍兵士「カク昭様! 後方から砂塵が!」


カク昭「まさか……陳倉の渇水は蜀軍によるものなのか……でなきゃ僕が撤退することなんて分かるはずもない……鄧艾、鍾会……もう会えないかも知れない……」


 カク昭は青ざめる。魏軍は水を口にしていない為か逃げ切れない者が多く趙雲と馬岱の部隊にことごとく刈られる。


馬岱「そこにいるのはカク昭か!」


 馬岱がカク昭を発見した。


カク昭「ぬわっ! 油断してた!?」


馬岱「お前だけは逃がすわけにはいかない! 仇を討たせてもらうぞ!」


カク昭「誰の仇か知しらないけど君の相手をしてられないんだ!」


 カク昭は馬を返し馬岱に背を向け走る。


馬岱「待てよ! 俺から逃げ切れると思うなよ!」


 馬岱はカク昭を追いかける。


カク昭「くっ! しつこいな! 僕は美しいものにしか興味がないんだよ! 相手にして欲しかったらもっと綺麗で可愛くなってからにしてよ!」


馬岱「だから月下美人を狙ったのかよ!」


カク昭「はぁ!? 一体何のこと!?」


 カク昭は困惑した。身に覚えのない仇討ちに。


趙雲「月下美人の仇ぃいいいい!!」


カク昭「え!?」


 突如、趙雲が現れ趙雲は渾身の一閃をカク昭に浴びせる。カク昭の首が地面に転がり次に馬上から首のないカク昭の身体が地に落ちた。


馬岱「趙雲さん!」


趙雲「馬岱か。すまんな……二人で仇をとれればと思っていたがカク昭を見た瞬間に自分を抑えることが出来なかった」


馬岱「いえ……」


趙雲「ん? どうした馬岱……怒っているのか?」


馬岱「さっきカク昭が言ってたんです。美しいものにしか興味がないって……」


趙雲「何だ……と……ではカク昭は月下美人の美しさに魅了されて……」


馬岱「間違いありません……まったく美人薄命とよく言ったものですよ……」


趙雲「とても……とても複雑な気分だ……本当は月下美人を拿捕したかったのだろうな……それが叶わぬことだと知り月下美人を……哀しいな。これが戦争か……」


馬岱「はい……せめてあの世で月下美人と共に過ごして欲しいものですね」


趙雲「うむ……」


 趙雲と馬岱の仇討ちはカク昭の首と引き換えに終わった。


姜維「趙雲さん! 馬岱さん!」

 

 姜維が現れる。


馬岱「姜維。終わらせたよ」


趙雲「孔明軍師の策でこの通りだ」


 趙雲はカク昭の首の方に目を向ける。


姜維「そのようですね……今、先生達が陳倉の住民に新たな水源場所に案内しています。一緒に合流して下さい」


趙雲「悪いが自分達はやることがある」


姜維「やること? 魏軍なら軍容を保てずこれ以上の追撃は無用かと思いますが」


馬岱「カク昭を丁重に葬りたいんだ」


姜維「カク昭を……分かりました! 先生には僕から上手く言っておきますので!」


趙雲「うむ。助かる」


 姜維は趙雲と馬岱の敵にも寛容な心構えに感服した。趙雲と馬岱はカク昭の遺体を丁重に葬る。


 陳倉の戦いに蜀軍の犠牲は軽微なもので済むことになった……この戦い方が後に大きな災いを呼ぶことになろうとは誰もが予想していなかった。








姜維「先生。これでまた一歩前進ですね!」


諸葛亮「ふふふ……貴重な一歩です。しかし、ここから先は魏も黙っていないでしょう」


 蜀軍は陳倉の攻略を終え更に北に向けて進軍していた。


姜維「何だか先生棘が無くなりましたね」


諸葛亮「あら? 姜維は私のことをそんな風に見えていたのですか?」


姜維「そうではありません。ただ呉との戦いから先生の笑った顔を見ることが少なくなったので」


諸葛亮「確かにそうかもしれませんね……何かと辛いことが続きましたし……」


魏延「孔明軍師! これ食べて下さい!」


 魏延が握り飯を持って来た。


諸葛亮「魏延。いつもありがとう」


 孔明は笑顔で魏延に礼を言う。


姜維「魏延さん。僕にはないの?」


魏延「あっ! ごめんなさい! 孔明軍師に早く食べて欲しくて忘れちゃいました……」


姜維「そっそうなんだ……」


魏延「あっちにあるからどうぞ」


姜維「……」


魏延「ん? どうしたんですか?」


諸葛亮「ふふっ……ははははは!」


 孔明は大きな声で笑った。


魏延「どうしたんですか孔明軍師!?」


諸葛亮「魏延。姜維が寂しがっているのでちょっとおかしくて」


姜維「別に寂しがってなんかいませんよ!」


諸葛亮「本当に?」


姜維「そっそれは……まぁ少しは……」


魏延「何が寂しいんですか? 姜維さんの分はあっちにちゃんとありますよ?」


姜維「うん! 魏延さん! ありがとう!」


 どこか投げやりな返事をする姜維であった。


諸葛亮「魏延。姜維は魏延と一緒に食べたいそうですよ。一緒に行ってあげなさい」


魏延「ええ……私、孔明軍師と一緒に食べたいです!」


諸葛亮「まぁまぁ。いつでも一緒に食べれるではありませんか。今は姜維と……ね?」


魏延「はぁ……じゃあ姜維さん。行きましょうか」


姜維「僕は孟獲さんと一緒に食べたいので失礼します」


 姜維はその場を去る。


諸葛亮「拗ねてしまうなんて姜維もまだまだ子どもですね」


魏延「追いかけた方がいいんですか?」


諸葛亮「もちろんです。行ってあげて下さい」


魏延「分かりました。ちょっと行って来ますね。孔明軍師、夜は一緒に食べましょうね」


諸葛亮「ええ」


 魏延は姜維を追いかけた。


諸葛亮「不思議なものですね……接点のなかった魏延と仲良くなれるなんて……あの魏延が今や蜀軍に欠かせない存在にまでなるなんて……長沙の時では思いもよらなかったことです」

 孔明は胸に手を当てる。


諸葛亮「棘が無くなったか……自分でも気付かないことを姜維は突いてきますね。感情の変化は死期が近いからなのか……死ねない。あの子達を残してまだ死ぬ わけにはいかない……劉備様……あなたは一体どんな思いもで旅立ったのですか……」


 孔明は空を見上げた。


劉備軍兵士「報告します! 魏軍の司馬懿率いる軍勢が向かって来ております」


諸葛亮「司馬懿……ついに来ましたか。街亭での借りを返させて頂きましょう。私が生きている間はこれ以上の仲間を失うようなことはさせません」


 孔明の眼が鋭くなる。

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