怒りの矛先
怒りの矛先
劉備軍は漢中を手に入れたことにより領土を大きく広げることとなった。南荊州、益州、漢中……それは既に呉を上回る程の広さになり常に財政難であった劉備軍にとって以前では考えられないものであった。
反曹操を掲げる劉備の元には軍への入隊希望者が後を絶たず、また膨大な政務によって文官の登用が進められ武将達は訓練に明け暮れ日々を送り、軍師である者達もまた政務に励む日々が続いていた。
漢中で平和な時間が流れるも曹操軍の報が劉備に伝えられた。
劉備軍兵士「報告します! 曹操軍が漢中に向かっております!」
劉備「孔明これは!」
劉備は兵からの報告を聞き孔明の方を見る。
諸葛亮「漢中は非常に守りに適した地形です。そう簡単に攻め落とせないことは、曹操ならば分かっていると思いますが……」
劉備「夏侯淵の仇討ちでしょうか」
諸葛亮「おそらくは……」
孔明は曹操軍の意図が分からず曖昧に劉備に返事をした。
姜維「では敵は大軍で来る筈ですね」
諸葛亮「情報が足りない以上、何とも言えないですね。姜維、覚えて置いて下さい。百の仮定より一つの確かな情報の方が有益です。今、曹操軍が漢中に向かって来ているという事実。そして動機は夏侯淵の仇討ち、これは私達の仮定です。ここから情報や経験を元に戦略を練ります」
姜維「はい」
姜維は孔明の教えを聞く。
諸葛亮「気になることはこの戦いは曹操軍に取って『鶏肋』である恐れがあります」
姜維「鶏肋……ですか?」
諸葛亮「鳥のアバラ骨のことです。捨てるには惜しいが肉も少なく得るものが少ないと言うことです」
姜維「なるほど……」
諸葛亮「激情家の曹操のことです。夏侯淵への仇討ちの為に我慢が出来なかったのでしょう」
姜維「それも仮定の話ですね」
諸葛亮「ふふっ。そうですね」
姜維の返答に自分の言ったことが早速理解していることに孔明は喜ぶ。
劉備「何だか孔明は姜維君と一緒にいると楽しそうですねー」
諸葛亮「そんな風に見えますか?」
姜維「僕は先生と一緒に居て楽しいです」
諸葛亮「えっ! そっそうですか……ごほん。確かに姜維を軍師として育てている身ですから弟子の成長は楽しみではあります……」
姜維「先生ありがとうございます」
諸葛亮「えっええ。姜維、精進するのですよ」
姜維「はい」
劉備「ではこれよりどうしますか?」
諸葛亮「曹操軍は漢中の北から進軍しておりますので出来れば補給線を短くし戦いを優位にする為にも出来るだけ奥まで誘いたいところですが……」
姜維「不利だと分かっていながら誘い込めるかどうか……ですね」
諸葛亮「ええ。それほどの戦果をあげられない状況で果たして……」
姜維「待ちますか……」
諸葛亮「それがいいでしょう。全軍にいつでも出撃できるよう準備をして下さい」
姜維「分かりました。曹操軍の情報もこれからまた入ってくるでしょうしね」
諸葛亮「ええ。今は出方をみたいところですね」
孔明は違和感を感じながらも情報収集に努めることにした。
既に曹操軍の侵攻は劉備軍に伝わっていた。
馬超「子龍! 聞いたか!」
趙雲「ああ。聞いている」
馬超「何度でも打ち破り曹操の首に俺の一撃を食らわしてやる」
趙雲「曹操の首を狙うのは馬超だけではないことを忘れてもらっては困る」
馬超「こればかりは俺に譲ってもらうさ」
馬超は趙雲と共に曹操軍と戦えることを喜ぶ。
魏延「あのぉ……」
魏延が現れる。
趙雲「魏延。どうした?」
魏延「戦いってすぐ始まるんですよね?」
趙雲「ああ。当然だ」
魏延「そっか……」
馬超「何か困ったことでも?」
魏延「これ舐めてみてください」
魏延は少し赤っぽい石を差し出す。
「?」
馬超と趙雲は差し出された石を見て普通の石にしか見えなかったがそれを舐めろという魏延の意図が分からない。
趙雲「石を舐めるのは……」
魏延「普通の石じゃないんですこれ。私も始めてみたんですが……岩塩なんです」
馬超「岩塩……これが……話には聞いていたが……」
趙雲「ほう……どれ。少し味見させてもらうか……」
趙雲は岩塩を舐める。
趙雲「むっ……確かにしょっぱいが……少し舌が痺れるな」
趙雲の顔に皺が寄る。
魏延「そうなんです。でもこの強烈な塩見は料理に使えるんじゃないかと思って」
馬超「この岩塩と戦いが何か関係あるのか?」
魏延「いつも死んだ軍馬はそのまま放置されたりしてますがこの岩塩を使えば保存食を作れるんじゃないかと思って。戦いの度に沢山の馬肉が手に入るので」
馬超「なるほどな。燻製にするのもいいが手間暇をかければ塩漬けが一番だからな」
魏延「そうなんです。だから馬が沢山死ねばいいのにと思って……」
「……」
趙雲と馬超は魏延に悪気がないことは分かっているが共に騎馬隊を率いる身としては複雑な思いであった。
趙雲「だが岩塩なんてよく見つけたな」
魏延「定軍山の近くで沢山採取出来る場所を散策中の兵に教えてもらいました」
馬超「海から遠いここでは貴重な資源だな」
趙雲「後で孔明軍師に言ってみてはどうだ? きっと喜んでくれるだろう」
魏延「はい! そうしてみます!」
魏延は嬉しそうに応える。
趙雲「では馬超。行こうか」
馬超「先に行っててくれ。俺は魏延殿と少し話をしてから行く」
趙雲「分かった」
趙雲はその場を去る。
魏延「馬超さん。何か?」
馬超「いや。俺も味見をさせてもらおうかなと思って」
魏延「あっはい……」
魏延は新しく岩塩を取り出す。
馬超「それじゃなくて……さっき子龍が舐めた方でいい」
魏延「そうですか……どうぞ」
魏延は言われた通りにした。
馬超「ありがとう」
馬超は岩塩を舐めるのはなく。口に放り込む。
馬超「んんーー!」
馬超が悶絶する。しょっぱいのかそれとも違う意味があるのか。
魏延「……」
魏延はその姿を見てほほ笑むが何故か水を用意する気になれなかった。
曹操軍侵攻の報から数日が経過した。
諸葛亮「姜維。曹操軍の侵攻ですがその後の報告は聞いていますか?」
姜維「はい。ゆっくりと進んでいるようです。こちらの待ち伏せを警戒してのことでしょうか?」
諸葛亮「……」
姜維「先生。何か引っかかりますか?」
諸葛亮「憶測ではありますが全ての行動に理が適う……それが気持ち悪いのです」
姜維「それは僕も同じでした。何でしょう……怒涛の侵略を得意とする曹操軍らしくないと思います」
諸葛亮「そこです……如何に曹操自ら率いていないとはいえ……」
その時、斥候からの報が届く。
劉備軍兵士「敵の大将が分かりました。張コウを大将とし軍師の名がカク昭と言う者のようです」
諸葛亮「張コウ……曹操軍の実力者ですね。それにカク昭……初めて聞く名です」
姜維「張コウは長坂で戦いましたね。趙雲さんにも劣らない手強い相手でした」
諸葛亮「何か狙いがあるのでしょうか……益州は内地の情報が入りにくいので、いまいち敵の動機が分かりません」
馬謖「先生。曹操軍の件ですが……」
諸葛亮「馬謖何かありましたか?」
馬謖「はい。身の程を分かっておりますがどうしても先生に進言したく」
諸葛亮「上下関係を気にしなくて結構。考えがあるのであれば聞かせて下さい」
馬謖「ありがとうございます。既に曹操軍の侵攻の遅さは聞いていると思いますがこの戦いに大きな意味を持つことは敵味方共にありません。完勝する為に待ち受けることに固執するよりも一刻も早く撃退し敵の真意を探るべきかと」
諸葛亮「馬謖……あなたの言う通りです。どうも頭が固くなってしまいましたね」
馬謖「いえ。先生の足元にも及ばない若輩の身ですが一考していただけるきっかけになり私も嬉しく思います」
姜維「馬謖君は結構、好戦的なところが僕は好きだな」
馬謖「好戦的? 馬鹿なことを言ってもらっては困る。これでも姜維がいたからこその考えではあるんだ」
姜維「え? 僕がいたから?」
馬謖「ああ。定軍山の戦いは如何に策を弄しても夏侯淵は討てなかった。最終的に力技の様な勝ち方だがあれは私にとっても中々衝撃を受けた」
姜維「何だか嬉しいよ。となると馬謖君はこの戦いを……」
諸葛亮「こちらから敵の意図を探る為にも『動を以って策を弄す』と言ったところですね」
馬謖「はい」
諸葛亮「これより曹操軍を迎撃に移ります。善は急げです。直ぐに向って下さい」
「はい!」
姜維と馬謖は孔明の指示の元に曹操軍の迎撃に向かう。
迎撃に向かう劉備軍はほぼ全軍とも言える軍容であった。一刻も早く殲滅し隙あらば北上し更に領土拡大に向けて動くことも考えての規模である。軍師として姜維と馬謖が共に同行するが二人は曹操軍の狙いか何かを知る為に重きを置いていた。
漢中もまた益州程ではないにしろ山岳地帯であり、行軍は緩やかなものになった。
趙雲「短い期間で曹操軍とこれ程渡り合える力を付けたこと……長坂の時点では思いもよらなかったな」
姜維「本当に……劉備さんの徳と先生の知……そしてみんなの武があってこそ」
趙雲「うむ」
趙雲は劉備軍の大将として曹操軍の迎撃に向かう。
姜維「趙雲さん。この先に曹操軍の陣営があります。山岳の戦いは道も狭く突破力のある趙雲さんと馬超さんで向かわれるのが一番かと思います」
趙雲「分かった。ではそうしよう。姜維はどうする?」
姜維「僕は馬謖君と山に上り戦況を把握したいと思います」
趙雲「はははは! 随分と軍師らしくなったではないか」
姜維「はい。敵の伏兵の位置を予測し伝達しますので」
趙雲「ああ。頼んだ」
姜維と馬謖は戦況が把握出来る山に登る。山道は狭く軍が通れる道は限られる。それは待ち伏せや伏兵に襲われる心配があることから知識の多い馬謖と共に戦況を見極める為に別行動をとった。
日が暮れる頃、軍師の二人は戦場となる場所の山頂に辿り着く。
馬謖「姜維。戦いは明日の朝からだ。今日は二人で野営だな」
姜維「うん。敵に位置がばれるから火は起こせないのが辛いところだね」
馬謖「ふふふ。そう思っていいものを持ってきた」
馬謖は灯籠を取り出す。その灯籠は光が漏れ過ぎないよう作られ遠くからは分からない。
姜維「さすが馬謖君!」
暗闇の中で一晩過ごすことに憂鬱だった姜維は喜んだ。
馬謖「まあな。備えあれば憂いなしとはよく言ったものだ」
姜維「馬謖君は今までどんなことを勉強してきたの?」
馬謖「私か? うーん……あまりにも多くて一言では中々言えるものではない」
姜維「そうなんだ……沢山勉強したんだね。僕は先生から戦いのことばかり教えてもらったよ」
馬謖「私とは逆だな」
姜維「え? ちょっと意外……」
馬謖「乱世だからこそ先生は軍略を教えたのだろう。私は兄達から為政のことばかりを教えられた。乱世はいつか終わる……終わった時、求められる人材は政治手腕に長けた者だと言ってな……」
姜維「へー僕には全然分からないや」
馬謖「私はな……為政者が別に嫌ではないんだが……乱世を終わらせる者になりたいんだ。先生から軍略の指南を受けたいが為に私はここにいる」
姜維「……」
馬謖の初めての心の内を聞き姜維は黙る。
馬謖「乱世はいつか終わる……そのいつかは私にとっては不安の種でしかない。終わらなければ始まらない……生かされない知識……生殺しだ」
姜維「そういう意味だったんだね」
馬謖「ああ。姜維はどうなんだ?」
姜維「僕はこの世界の価値観を変えたいと思う……」
馬謖「価値観を? 随分と傲慢だ」
姜維「そうかも知れない。根本的におかしいんだよ……僕は……」
馬謖「ふふっ。おかしいか……自分でも自覚しているのであれば私は言うことはない」
姜維「やっやっぱり変かな!?」
馬謖「ああ変だ。母をほったらかしにしている時点でな」
姜維「何で知ってるの!?」
馬謖「張飛殿から聞いた」
姜維「張飛か……仕方がないね」
馬謖「私がこんなことを言うのも間違っているが戦いを終わらせ母の元に帰ることが姜維にとって一番なんじゃないのか? まぁ帰る場所が分からないのなら仕方がないが……」
姜維「うん。そうしたいとは思ってるけど……今は自分が決めた道をみんなで進みたい」
馬謖「やっぱり変だ」
姜維「どこが?」
馬謖「分からないならいい」
姜維「ちょっと教えてよ!」
馬謖「うるさいな……静かにしろよ。客観的に自分を分析すればいいだろう?」
姜維と馬謖の二人のやり取りは夜更けまで続き気がつけば二人とも眠っていた。
馬謖「姜維起きろ!」
馬謖の声で姜維は目を覚ます。
姜維「馬謖君。早起きだね……」
馬謖「何を呑気なことを言っているんだ! 戦いが始まろうとしている!」
姜維「え!?」
馬謖「聞こえるだろう」
銅鑼の音が聞こえる。
姜維「敵陣を確認しなきゃ!」
姜維は曹操軍の方へ目を向ける。
姜維「これは……何で……」
馬謖「驚くのも無理はない。私も初めは目を疑った」
曹操軍は長く続く山道に沿って展開しており、それはまるで物質を運ぶかの様に一直線になっていた。
姜維「そうか……趙雲さんはこの状況を知って攻撃を始めたんだ。まさに好機といえる」
馬謖「ああ。少しここから様子を見るしかないな。この先どうなるかは火を見るより明らかだ」
劉備軍は曹操軍に斬り込んでいく。横槍を入れることの出来ない状況に劉備軍の主力は曹操軍を蹴散らす。
曹操軍は退路は味方で埋め尽くされどうすることも出来ず一方的な猛攻により多くの戦死者を出していた。
張コウ「引き時だな。カク昭帰るぞ」
カク昭「分かったよ。張コウさん」
劉備軍からの猛攻に多くの犠牲を出し張コウはカク昭に撤退する旨を伝えた。
張コウ「劉備軍の奴ら俺達が夏侯淵殿の仇討ちに来たと思っているだろうな」
カク昭「一方的だもんね。さぞ気持ちいいんだろうな」
カク昭は金髪の長い髪から女性と間違われることが多いが性別は男である。文学を好み初めて軍師として同行することが許された新参軍師だ。
張コウ「夏侯淵殿の仇討ちが、こんなことで終る訳がないのに」
カク昭「ホントだよ。虚実とはこういうこと言うの!」
張コウ「孫子か?」
カク昭「我の戦わんと欲せざれば地を画して之を守ると雖も敵の我と戦うを得ざる者は其の之くところをそむくなり」
張コウ「カク昭……悪い。もう一回言って」
カク昭「…………」
カク昭は張コウの返しを聞こえない振りをし合図を送る。曹操軍の長い列の三分の一辺りから煙が上がる。そこに多くの木材があり火が付けられた。
張コウ「ここまでする必要があるのか?」
カク昭「こうでもしなければ劉備軍は止められませんから」
カク昭は軍の三分の一を見捨て山道を火で塞いだ。劉備軍の追撃から残りの兵を逃がす為である。
張コウ「顔に似合わず随分と冷酷なことだ」
カク昭「可愛い顔に似合わずと言って下さい。多くの兵はおそらく投降します。甘い劉備軍は投降した兵を暖かく迎えるでしょう」
張コウ「好きにはなれんな。その策は」
カク昭「武人ならではの考えですか? そんなこと言ってると目的を果たせません」
張コウとカク昭は急いで撤退した。
二度に渡る曹操軍との戦いに勝利した劉備軍の陣営は歓声が上がり、誰もが劉備が曹操を打ち破ることが現実ではないかと思い始めていた。
趙雲「またも曹操軍を撃退した……だが定軍山の様に激しい戦いではなかったな」
張飛「何か余裕だったね」
趙雲は表紙滑けし張飛はあまり楽しめなかったようだ。
姜維「おかしい……」
姜維は圧勝した戦いの結末に疑問を持つ。
張飛「兄ちゃん。どうしたの?」
姜維「張飛。もし大事な人の仇を討つとしたらどうする?」
張飛「えぇっ……分かんない。でも必死になると思うよー」
姜維「やっぱりそうだよね」
趙雲「どうしたんだ姜維」
姜維「いえっ先ほどの戦いに違和感が……すみません。僕は先に戻ります!」
姜維は自分の直感を信じ孔明の元に急いで向かう。
趙雲「違和感? 張飛何か感じたか?」
張飛「えー。張飛が強くて曹操軍が弱かった……いつものことだよー」
馬謖「私は姜維の違和感が分かります。戦闘開始から撤退があまりにも早い」
張飛「結構やっつけたからじゃないの?」
馬謖「結果としてはそうですが……やっつけさせたと言わんばかりの展開でした」
馬謖「上から見ていたから分かることです。何だろう……この胸騒ぎは……」
趙雲「そう思うのなら馬謖も早く戻るといい。片付けはこちらでやっておく」
馬謖「はい。そうさせていただきます」
馬謖は姜維を追いかける。
趙雲達は投降した曹操軍の兵を捕虜にし物資を奪う。捕虜になった兵を劉備軍に迎え入れる者はそのまま編成されるが拒否した者は牢獄に入れられ強制的に労働を科せられた。
姜維「先生! お話があります!」
城に戻った姜維は真っ先に孔明の元へ向かった。
諸葛亮「姜維。曹操軍のことですね」
姜維「おかしな戦いです……とても仇討ちと言った戦い方ではありませんでした」
諸葛亮「そのようですね。それに軍勢の数もそれ程でもない……始めから負けることを前提に戦っていた……」
姜維「負けることを前提に?」
諸葛亮「考えられるのは益州の劉備軍を釘付けにする為……」
姜維「では……曹操軍の狙いは……まさか!」
諸葛亮「そのまさか……関羽殿です」
姜維「では直ぐに関羽さんの所へ援軍を!」
諸葛亮「守りに徹した関羽殿を曹操軍だけで破るは至難の業……まだ何か……」
劉備「孔明! 先ほど伝令が!」
劉備は血相を変えて現れる。
諸葛亮「伝令? 荊州からの伝令ですか?」
劉備「ええ。曹操軍と呉軍が同盟を結んだと……」
諸葛亮「曹操軍と呉が同盟! 信じられない……一体どうして……」
孔明は爪を噛む。
姜維「このままでは関羽さんが両軍から攻撃に孤立してしまう!」
諸葛亮「関羽殿は軍神と言われた武将。そう簡単に敗れることはありませんが曹操と孫権の二人を相手にするには難しいでしょう」
劉備「雲ちゃんを死なせる訳には!」
諸葛亮「劉備様。伝令には何とありましたか」
劉備「雲ちゃんは曹操軍の拠点の樊城に侵攻したみたいで……」
諸葛亮「関羽殿にはあれ程、守りに徹しろと伝えたのに……」
孔明の顔が曇る。
劉備「それで南荊州は呉軍の手に落ち、雲ちゃんはその事実を知らない様なの……完全に情報を遮断されているみたいで……」
姜維「関羽さんは荊州の拠点が落ちたことを知らずに戦っているのか……」
諸葛亮「完全な死地です……」
劉備「孔明! 一体どうすれば雲ちゃんは助かるの!」
諸葛亮「今回の曹操軍の進行は我らを欺く為のもの……周到に用意された見事な策です……呉軍と曹操軍の同盟……関羽殿の勝手な行動……」
孔明は目を閉じ思考を巡らす。
諸葛亮「劉備様。お任せ下さい! この孔明、今出来ることの全てをさせて頂きます!」
孔明は必ず関羽を助けると言い切れない。
劉備「孔明! ありがとう!」
孔明の言葉に僅かな光に劉備は喜ぶ。




