成都攻略 下
成都攻略 下
巨大な成都は劉備軍を丸々、収容出来ることが出来、占拠してから行動は順調に進んだ。劉璋軍の兵は武器を捨て劉備軍に編成されることになる。
それぞれが兵糧、宝物庫、台帳、あらゆるものを調べ大忙しの状況が待ち構えていた。
成都に入り城を占拠した劉備軍は軍議を開いていた。
諸葛亮「姜維。作戦は見事成功しましたね」
姜維「やはり劉璋軍は劉備さんを狙って討って出て来ました」
諸葛亮「はい。それも馬超殿がいてくれたおかげで撃退することが出来ました」
姜維「馬超さんと馬岱さんの強さは張飛や趙雲さんに遅れをとらないものだと感じました」
諸葛亮「錦は伊達ではありませんか……」
劉備「馬超さんが守ってくれたので私は心強かったです」
馬超「ふっ……我が武勇を早速、劉備様にお見せ出来たこと嬉しく思います」
劉備「ところで劉璋殿の処遇はどの様になりましたか……」
姜維「はい。成都攻めで民への被害はありませんでした。劉璋殿は劉備さんが危険を冒しても民へ被害を与えない様にした戦いに感服し益州を劉備さんに譲ることを決め将兵に劉備軍に降るよう指示し隠居することにしたようです」
劉備「そうですか……せめて御挨拶だけでも」
諸葛亮「劉備様なりません。劉璋殿は劉備様に敗れ隠居された身。ここで会っては劉璋殿を辱めることになります……心中お察し下さい」
劉備「分かりました。益州を曹操軍から守り平和に導くことが劉璋殿に出来ることと考えます」
諸葛亮「はい。曹操軍と戦うに益州は劉備軍にとって大きな要になります」
馬謖「報告します! 曹操軍が漢中に侵攻! 漢中を治めていた張魯軍は曹操軍に投降した模様です」
「!」
馬謖の報告に一気に空気が張り詰める。
馬謖「敵大将は夏侯淵! 定軍山に布陣しているとのこと!」
姜維「ついに来たか……また曹操軍との戦いが始まるのか」
馬謖「これは良い機会です。曹操軍は呉との戦の最中で漢中に援軍を送るのは難しいでしょう」
この時、曹操軍は赤壁の敗退から呉軍からの侵攻を受け、江陵、合肥にて激戦を繰り広げていた。
劉備「曹操軍と初めて真っ向から戦うことになるのですね。私は……いえ、劉備軍は昔の劉備軍とは違います」
諸葛亮「敵は定軍山に布陣したのですね馬謖」
馬謖「はい! 山頂に陣を構え鉄壁の守りを構えているとのことです」
諸葛亮「直ぐに向かいたい所ですが成都の治安維持に劉備様と私は残ります」
馬謖「え!? 夏侯淵相手に軍師はいないのですか!?」
諸葛亮「姜維がいるではありませんか」
馬謖「!」
馬謖は姜維が軍師として指揮をすることに驚きと嫉妬の念が込み上げる。
姜維「先生! 曹操軍相手に僕ではまだ力不足かと思います!」
諸葛亮「いいえ。やってごらんなさい」
姜維「ですが……」
馬超「姜維殿。俺や子龍がいるんだ。安心するといい」
姜維「馬超さん……分かりました。必ずや勝利の報をお届けします!」
諸葛亮「ええ。楽しみにしております」
姜維「では明朝出発するので格将兵に伝えて来ます」
姜維達は戦いの準備に向かう。その場に残されたのは劉備と孔明だけであった。
劉備「孔明。姜維君に曹操軍の相手はまだ早いのでは?」
劉備は不安そうな声で孔明に問いかける。
諸葛亮「早い……でしょうね」
劉備「ならどうして……」
諸葛亮「私がいては姜維の成長の妨げになります。以前お話しした通り姜維は可能性を秘めています。ここで開花してもらわねば軍容が大きくなる劉備軍に未来はありません」
劉備「確かにそうかもしれません……おやっさんが亡くなり孔明一人に大きな負担をかけることになってしまいますものね」
諸葛亮「……」
孔明はホウ統の死によって愛弟子を早すぎる戦地に送り出さねばならないことに師として複雑な気持ちを抱く。
劉備「孔明。一つお願いがあるのですが……」
諸葛亮「どうかされましたか?」
劉備「馬謖さんのことです。よく見ておいて下さい……己の勉学に自信があるのは結構ですが考えを改めることがどうも……」
諸葛亮「軍師であればみんな頭でっかちになるのは馬謖に限ったことではありません。馬謖の自負はその才能と積み上げた知識故かと」
劉備「その自負がいつか取り返しのない事態を招かねばよいのですが」
諸葛亮「その点なら大丈夫です。まだまだ馬謖に何かを任せることはありませんので」
劉備「なら安心です」
劉備は胸を撫で下ろした。
成都では内政よりも曹操軍との戦いに向けての動きが優先された。兵の再編成、補給の段取り等、それぞれゆっくりと勝利の余韻に浸る間もない。
趙雲「馬超。ここにいたか」
馬超「子龍! 子龍が俺を訪ねてくるなんて……いっ一体どうしたんだ……」
兵舎の馬超の一室に趙雲が訪ねて来た。
趙雲「成都攻略は自分達では到底成せるものではなかった。馬超の活躍があってこそ。その礼を言いに来た」
馬超「そんな……俺は劉備様の命に従っただけで……」
趙雲「そう謙遜するな。自分も馬超に負けずと結果を出さねばな」
馬超「!」
何でもない趙雲の言葉が馬超の心に響く。
馬超「子龍……少し話しを聞いてくれないか……」
趙雲「うん? ああ、自分でよければ構わんが」
馬超「俺は今まで恵まれた環境の中で育って来たんだ……父は涼州の長で俺はその長男。将来を約束された男だと周りから思われていたんだと思う」
趙雲「……」
馬超「いつからだったんだろう……常に先頭を走る俺の横に誰もいないと気付いたのは。振り向けば誰かがいた……馬岱と涼州の仲間達。だが隣に誰かがいたことなんてあっただろうか……」
趙雲「共に肩を並べて戦う仲間がいなかったのか」
馬超「俺は……俺は本当に強いのか? みんな俺に遠慮して……」
趙雲「それはない」
趙雲は馬超の言葉を否定する。
馬超「え……」
趙雲「馬超。兵を率いる者はいつも孤独だ。兵の生死を背負い自分の信じる道を行く。それは自分に課せられた宿命だ。その宿命に迷いはいらない」
馬超「なら子龍は……」
趙雲「一切の迷いはない。幼少の頃から槍を持ち戦場を駆け自分の横に誰かがいたなんてことは劉備様にお仕えしてからだ。馬超、お前の居場所はここだ」
馬超「そっそうか……おれの居場所はここなのか……」
趙雲「共に駆けようではいか」
馬超「ああ! これからの戦いが楽しみだ!」
馬超の心は熱くなる。
宝物庫の帳簿付けをしていた馬謖は馬謖を尋ねる。
馬謖「姜維」
姜維「馬謖君何かあった?」
馬謖「成都の宝物庫を調べていたら珍しい物があった」
馬謖は亀の甲羅を出す。
姜維「これが珍しい者なの?」
馬謖「星亀の甲羅だ。古くかこの甲羅を焙りその割れ方で運命を占っていたようだ」
姜維「へー。面白いね……って言うか勝手に持ち出して良かったの?」
馬謖「このご時世に価値なんてない。気にするな。四枚あるんだがどうだ? 占ってみるか?」
姜維「曹操軍の戦いの前に面白そうだね」
馬謖「そしたら……」
馬謖は甲羅を二枚、取り出そうとした。
張飛「へへへへ……聞いちゃった」
黄忠「何、二人だけで楽しそうなことをしてるんですか?」
張飛と黄忠が現れる。
姜維「張飛に黄忠さん」
張飛「馬謖。張飛も占ってよ」
馬謖「ええ。もちろん構いませんよ」
張飛「どうするの?」
馬謖「甲羅に血を垂らしそのまま焙るだけです。割れ方で吉兆を占うというやり方です」
黄忠「ふーん。馬謖は分かるの?」
馬謖「もちろんです。一応、その手の文献は読んでおりますので」
姜維「そっか。じゃあやってみよう」
姜維達は短刀で指先を切り甲羅に血を垂らす。
馬謖「ではそのまま焙ってみようか」
火を起こし甲羅を焙る。
姜維「結構時間かかるのか?」
馬謖「どうだろうか。私も初めてだからな……」
ピシと黄忠の甲羅に亀裂が走る。
黄忠「あっ私の甲羅が……これはどうなの?」
馬謖「これは……あれ? 想い叶わずかな?」
黄忠「馬謖……訂正しなさい」
黄忠が馬謖を睨む。
馬謖「ちょっとそんなこと言われたって!」
ピシピシ
馬謖「今度は私のが……」
張飛「馬謖は何?」
馬謖「私は……無念か……」
黄忠「ちょっと大丈夫? この占い……」
黄忠は不安になる。
馬謖「まぁ占いは占いですからね」
ピシ
張飛「ああ! 今度は張飛のが割れた!」
馬謖「張飛殿は……新たな友達が出来そうですね……」
姜維「友達か……やっと良さそう結果が出たね」
張飛「誰だろ……ちょっと楽しみかなぁ」
黄忠「人だったらいいわね」
張飛「どういう意味よそれ」
黄忠「そういう意味よ」
姜維「まぁまぁ、占いですから」
張飛「兄ちゃんのは中々割れないね」
姜維「うん。なんだろう湿ってるのかな?」
馬謖「そうかもしれんな。何だか当てになりそうもないな所詮は占いか」
張飛「なんかつまんないな。地味だし」
黄忠「全く。無駄な時間を過ごしたわ」
姜維「明日に備えてもう休もうか」
馬謖「それもそうだな」
姜維達はその場を離れる。
バギャッ
姜維の甲羅が粉々に激しく砕け散った。




