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雷子  作者: 三幸
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暗雲 上

暗雲 上

 

 

 姜維が軍師となることは劉備軍の将兵に伝えられ劉備軍は孔明、ホウ統、姜維、三人の軍師を抱えることになった。これまでは孔明一人の指揮も多展開、広域戦も可能な状態に劉備軍は活気づいていた。


 南荊州の領土を手に入れたことで自立することになった劉備軍は大幅な戦力増強と税収を確保することが可能となり、拠点を領土の最北端に置く事で防衛に優れ、いち早く情報を入れることに重きを置いた孔明は内政に力を入れようと劉備に進言し劉備もその進言を受け入れた矢先、事件が起こる……。



 

張飛「兄ちゃんー聞いたよー。孔明に『姜維』って名前貰ったんだよねー」


姜維「かっこ良くて嬉しいんだけれどまだ慣れないんだよね」


張飛「いいなー。張飛も違う名前欲しいなー。あっでも姜維になっても兄ちゃんは兄ちゃんだから呼び方変わんないねー」


姜維「張飛の場合はそうなるね」


 姜維は軍師として南荊州の地理を把握する為に張飛を連れて街道を下見し陣に戻ろうとしていた。長沙を含め他の郡に劉備軍をまるまる収容できる施設はなく、城の近くに陣を張り将兵達は兵舎の完成まで仮住まいすることになっていた。


馬謖「すみません。ここは劉備軍の陣営ということでお尋ねしたいのですが」

 

 姜維に金色の長髪に丁寧な喋り方。育ちの良さを伺わせる青年が訪ねる。


姜維「何か御用ですか?」


馬謖「こちらに諸葛亮先生はいらっしゃいますか?」


姜維「はい。今は来客中ですが……」


馬謖「良かった。あっ申し遅れました。私、馬氏五常の末弟。馬謖と申します。以後、お見知り置きを」


姜維「僕は劉備軍軍師の一人。姜維と申します。隣におりますのが……」


張飛「張飛って言うの。よろしくねー」


馬謖「天下無双の豪傑張飛殿! まさかこんなに可愛らしい方とは!」


姜維「初対面だと誰でもそう思いますよね」


 馬謖の反応に姜維は一人納得する。


諸葛亮「何をしているのです?」


 来客を終えた孔明が姜維に声をかけた。


姜維「あっ先生! こちらの馬謖殿が先生のことを訪ねていらっしゃいました」


諸葛亮「馬謖? たしか白眉の馬良殿の弟で……」


馬謖「はい! いつも兄がお世話になっております」


諸葛亮「いえいえ。馬良殿にお世話になっているのは私の方です。今日はどのような御用件で?」


馬謖「はい! 諸葛亮先生にご指導を仰ぎ劉備軍に加えて頂くべく参りました!」


諸葛亮「これはまた……馬謖殿。あなたの智謀の高さは馬良殿からも聞いております」


馬謖「では!」


諸葛亮「はい。喜んでお迎えいたしますよ」


馬謖「ありがとうございます!」


 馬謖は馬氏の五常の末っ子である。劉表が存命の頃、その才能から馬氏の五人兄弟を重用し政治の中枢を任された。特に白眉の馬良は馬謖の一つ上の兄で五人兄弟の中でも頭一つ出る才覚を持つ。末っ子である馬謖は優れた兄達から英才教育を受け将来を楽しみにされていた。


諸葛亮「後で私と一緒に主君・劉備様の元に参りましょう。それから指導についてですが私が忙しい時は姜維から学びなさい。私の一番弟子です」


姜維「先生が僕のことを一番弟子と……おっと……一緒にがんばろう! よろしく! 馬謖君」


馬謖「そうですね……」


 姜維は一番弟子と呼ばれたことに嬉しく共に同じ師を持つことになった馬謖に声をかけるが馬謖の返事はどこか暗いものだった。


張飛「孔明。お客さん長かったねー。何かあったのー」


諸葛亮「ええ。益州の劉璋殿から曹操軍侵攻を防ぐ為の援軍要請がありました」


馬謖「曹操軍は赤壁での損害を漢中で補おうとしているのですね。漢中を抑えられると事実上、中華全土の三分の二を掌握されてしまう」


諸葛亮「馬謖は状況を良く把握していますね」


馬謖「ありがとうございます! ふふふ」


姜維「では此度の援軍要請。引き受けるのですね」


馬謖「姜維殿それはそうでしょう。曹操の動きを見ていれば当然です」


姜維「えっ……? そうなの?」


 姜維は不思議そうに反応する。


諸葛亮「そこで関羽殿、趙雲殿、周倉、私の四人はここに残り南郡の治世及び、呉の動向を見張ります。益州への遠征には劉備様、張飛殿、黄忠殿、魏延を主軸に軍師をホウ統とした軍で向かって貰います」


姜維「僕も荊州に残れば良いですか?」


諸葛亮「いえ。副軍師として遠征に同行して下さい」


馬謖「えっ……」


姜維「僕が副軍師ですか! 務まるのでしょうか」


諸葛亮「大丈夫ですよ。劉備軍が益州に入れば曹操軍も簡単には手出し出来ません。それにホウ統もいます」


姜維「そうですよね……おやっさんも一緒だし大丈夫ですよね……」


諸葛亮「突然のことで不安もあるでしょうが、これは決定事項です。馬謖も遠征に参加して下さい」


馬謖「分かりました……」


 

 劉璋軍への救援と言うことで姜維は益州へと足を運ぶこととなった。益州は中華の南西部に位置し深い山岳地帯である。だがそこは緑多く人によっては楽園と呼ぶ者もいる。山岳地帯は防衛戦を圧倒的に有利に運ぶ。そのことで益州へはこれと言った侵攻を受けず財政豊で安定した軍事力を抱えていた。

 

 それでも尚、劉璋にとって曹操軍は恐ろしい存在だった。劉璋は劉性で劉備とは遠い親族ということもあり劉備に助けを求めたのである。益州の最大の弱点は戦争経験が極端に乏しいこと……それを劉備軍を迎え客将として曹操へと牽制にしようとしたのが事の発端であった。


 益州の援軍要請の件はあっと言う間に広がり劉備軍は大忙しで準備をすることとなった。


  

 



劉備「雲ちゃん……また離れちゃうね……」


関羽「劉姉。以前とは全く意味合いが違います。それがしは命を賭して南郡をお守り致します。張、後は頼んだぞ」


張飛「うん。でも張飛は劉姉より関姉の方が心配だなー」


関羽「張、お前に心配されるとは……」


周倉「劉備様、張飛さん! おいらが姉御を支えるから大丈夫です!」


張飛「周倉かー。ちょっと頼りないんだよねー」


周倉「張飛さん! 命に替えても関羽の姉御を守って見せますよ!」


張飛「だからそれが頼りないんだって」


周倉「そんな!」


劉備「周倉ありがとう。雲ちゃん、私には南郡よりも雲ちゃんの方が大事だから。くれっぐれも! 無理のないようにね!」


関羽「劉姉……」


諸葛亮「劉備軍が大きくなれば成る程、役割と責任が大きくなります。各々が責務を果たすことによって、平和な時代が訪れるでしょう」


劉備「出来れば周倉だけでも連れて行きたかったんだけど……」


諸葛亮「劉備様。それはなりません」


劉備「孔明は残るんですよね……」


 なぜか劉備の目に妬みが滲み出る。


諸葛亮「もっもちろん適材適所の為であって深い意味はありませんよ!」


   「ガシ!」

関羽が劉備と孔明の頭を掴む。


関羽「御二方……なにやらそれがしの周倉に色々やらせてるようですね……」


「ひっ!」

劉備と孔明はガタガタと震える。


関羽「まったく。毎晩のように周倉を呼び出すとは……」


劉備「違うの雲ちゃん! 孔明がね!」


孔明「劉備様! そこで私の名を出しますか!?」

 劉備と孔明は焦る。


関羽「しばらくは禁止です」


「……」

関羽の言葉に劉備と孔明は黙る。


張飛「周倉。何のこと言ってんの?」

 関羽達のやりとりが理解出来ず張飛は周倉に尋ねる。


周倉「多分おいらの握力が強くなったことだと思う」


張飛「握力? ちょっと握ってみて」

 張飛が手を差し出す。


周倉「その役目は姜維に譲ります……」

 小さな張飛の手に黒い気を感じる周倉であった。手を差し出したら最後だと本能的に感じ取ったのだ。







黄忠「姜維殿」


姜維「黄忠さん。どうなさいました?」


黄忠「遠征軍の副軍師に任命されたと聞きご挨拶に参りました」


姜維「そうでしたか。僕自身まだ軍師としての勝手が分からないので、おやっさんに頼りっぱなしになると思います」


黄忠「おやっさん? あぁ……ホウ統さんのことですね。最近、皆おやっさんと呼んでいますね」


姜維「ホウ統さんが皆におやっさんと呼んで欲しいそうなので」


黄忠「そうなのですか? 何だか変わった方ですね……」


姜維「そうかも知れませんが優しい方ですよ」


黄忠「それは私も魏延から聞いています。ホウ統さ……いえ、おやっさんが劉備軍にいてくれて良かったと」


姜維「それは魏延殿だけではありませんよ」


黄忠「それと……女性の家に夜分訪れるのは関心しませんね」


姜維「もちろんです。ですがどうしても必要なことでしたのでお伺いしました」

 姜維は笑顔で返す。


黄忠「ふむ……一つ聞いてもよろしいですか?」


姜維「どうぞ」


黄忠「どうして私の所にはこなかったのですか?」


姜維「そっそれは……えっとですね! 黄忠さんはしっかりされているではありませんか! 魏延さんはほら、ふわふわっとした感じでしたので!!」


黄忠「なるほどそれなら納得です」


姜維「でしょ!? 納得でしょ!?」


黄忠「で? 私の任務は何ですか? 誰の護衛をすればいいのですか?」


姜維「それは……劉備さんの……かな?」


黄忠「劉備さんの……いいですよ! やりますよ! 大切な主ですものね!!」


姜維「なぜ……なぜ怒ってるんだ……」

 姜維には理解出来ない。正確には男性には誰も理解出来ないことであった。




周倉「お! 姜維! ここに居たか!」

 

周倉が二人の前に現れる。


姜維「周倉君。どうしたの?」


周倉「どうしたとは何だ! 姜維の好敵手であるおいらがしばし離れるから会いに来てやったのに」


姜維「そっか。ありがとう。周倉君」


黄忠「周倉殿はこれから南郡の守りでしたね」


周倉「その通りです。本来の実力から考えれば遠征軍においらの力は必要不可欠なのだが……」


姜維「周倉君と離れるのはちょっと寂しいよ」


周倉「まあそう言うな。関羽の姉御のことを思えばおいらは南郡に残らざるを得ない……きっと孔明軍師もおいらの気持ちを汲み取って南郡に置いてくれたんだろーな。だから姜維! 遠征軍として姜維が行くのはおいらの代わりに行くんだからな! しっかり任務を全うするんだぞ! じゃーな!」


姜維「はははっ。ありがとう」


周倉はどこか照れた表情で去っていった。


黄忠「周倉殿は可愛いですね……もっと素直になればいいのに……」


姜維「確かに周倉君に癒されることは多かった……色んなことを教えてくれたのは周倉君だし、遊びも昼寝も一緒だったな……」


黄忠「劉備軍は本当に仲がいい……」


姜維「そうかも知れません。いつも誰かと一緒にいます……そして初めて離れる」


黄忠「劉備軍の今までの動向は知っています……寂しいですか?」


姜維「寂しくないと言えば嘘になります。でも再会の楽しみが先にあると思えば……」


黄忠「再会……か。姜維殿。失礼します」


姜維「黄忠さん?」


 黄忠はその場を去るが姜維は再会の言葉に反応した黄忠に違和感を抱いた。







魏延「おやっさん、益州の遠征楽しみですね」


ホウ統「そうだなー。遊びに行くわけじゃないが色んな所で地酒が飲めるのは楽しみだなー」


 ホウ統と魏延は長沙から零陵に先に向かっていた。益州への道の入り口は零陵にあり遠征軍の軍師であるホウ統は事前準備の為に先に出発していた。


魏延「あっ! あそこに誰か倒れています!」


ホウ統「んんっ? 行き倒れか? 行ってみよう」


 魏延とホウ統の前に恰幅の良い男が倒れている。


恰幅の良い男「……」


魏延「大丈夫ですか?」


ホウ統「生きてはいるようだな」


 ホウ統と魏延は恰幅の良い男に近づき顔を覗き込む。


恰幅の良い男「うーん……」


魏延「あっ気が付きました」


恰幅の良い男「はっ! ここは一体! 貴様達は何者です!」


ホウ統「おいおい落ち着きなって。俺達は別に怪しい者じゃない。あんたここで倒れてたんだよ」


恰幅の良い男「私がここで……? そうだ……私はあの方に……」


ホウ統「あの方?」


恰幅の良い男「いっいや! 何でもありません」


ホウ統「少し気が動転しているようだな。あんた自分の名前を言えるか?」


黄皓「私はちょ……黄皓と申します」


魏延「黄皓さん?」


黄皓「はい。黄皓と申します……」


ホウ統「そうか黄皓と言うのか。随分と良い服を着ているが……貴族かな?」


黄皓「えっ?」


 紫の衣服を身に付ける者は当時、皇帝や一部の富裕層しか身に付けていないものであった。


魏延「おやっさん。話は黄皓さんが落ち着いてから聞いた方が……」


ホウ統「そうだな。黄皓さんよ。ここは劉備軍の領内だ。何があったか知らんが少し休んで行くといい」


黄皓「あっありがとうございます……」


ホウ統「ああ。俺はホウ統と申す者だ。皆にはおやっさんと呼ばれてるがね。こっちは魏延ちゃんだ」


魏延「宜しくです。黄皓さん」


黄皓「こちらこそ……あの少しお聞きしたいのですが……」


ホウ統「うん?」


黄皓「今の時勢を教えて頂きたいのですが……」


ホウ統「面白いことを聞くな黄皓殿。いいぜ。ちょいと長いが幾らでも話してやる」


 こうして黄皓はおやっさんに時世を聞くことになる。長沙から零陵までの道のりをホウ統は今までの中華の歴史を語ることになった。


 遠征に編成された将兵は零陵に向かい旅路の準備で慌ただしい。劉璋軍からの援軍要請から四日が経過していた。道中の補給は劉璋軍からされることとなっており軽装で出発することとなった。武器よりも食料と水が八割を占める物資にちょっとした旅行の様な感覚が軍に漂っていた。


 


間もなく出発という時、馬謖は一人、物資の台帳を片手に荷にもたれ掛かる。


馬謖「くっ……諸葛亮先生はどうして姜維をあそこまで評価しているのだ。馬謖こそが先生の一番弟子に相応しい筈なのに。姜維よりも優れていると言うことを証明してみせることが出来ればその時は私こそが……」


劉備「馬謖さん? 独り言ですか?」


 荷の影から劉備が顔出す。


馬謖「劉備様! いえ、何でもありません!」


劉備「そうですか」


馬謖「益州に到着した後の曹操軍との戦い方を考えておりました」


劉備「頼もしいですね。でもそれはおやっさんと姜維君のお仕事ですからあまり思い詰めなくても大丈夫ですよ?」


馬謖「はい……おやっさんは鳳雛の異名を持つお方です。私も勉強させて頂きたいと思っております……ところで劉備様はなぜこんな所に? あれ? その手に持っているのは……」


劉備「ふふふ……ちょっとだけ先に頂いちゃいました」


 劉備は皮袋の中から酒と干し肉を取り出す。


馬謖「益州に向かう為の物資からですか?」


劉備「そう」


馬謖「そんなことをなさらなくても沢山あるのではありませんか?」


劉備「実はね……これ、おやっさんが厳選したお酒みたいなの。私もお酒にはちょっとうるさくて……」


馬謖「そういうことでしたか。ならばこの馬謖にお任せ下さい。台帳からお持ちになられた分は抹消しておきますので」


劉備「あら? そういう所は姜維君よりも気がき利きますね!」


馬謖「もちろんです! 軍師を目指すものであればそれくらいの気遣いは当然です!」


劉備「期待していますね」

 劉備は馬謖に礼を言った。


黄忠「劉備様、出発の準備が整いました」


劉備「分かりました。では出発しましょう」


黄忠「劉備様。私は姜維殿から劉備様を護衛するよう言われております。これからは出来るだけ同行させて頂きますので宜しくお願い致します」


劉備「あら……まさか早速、飲み友が現れるなんて」


黄忠「飲み友? いえ、私は警護をですね……」


劉備「いいのいいの! 長い旅路も酒と仲間がいればより楽しいものになりますよ」


 劉備は黄忠の肩を抱き出発に向けて軍の先頭に向かう。


馬謖「ふう……驚いた……私は思い詰めると独り言を言う癖があるのか……気を付けなければ……それにしても自由奔放だな……大徳とはああ言うものなのだろうか……」


 馬謖は劉備の後を追う。

 

 劉備達は零陵を出発し益州の成都に向かう。山岳に囲まれた険しい道も多いが商用に整備された道も多い。遥か昔、未開の地と揶揄された益州であったが中華統一を成した秦の始皇帝によって開拓され辺境でありながら十分な農地と山岳を利用した防衛に適した場所に作り変えられていた。その恩恵は現在も受けており益州は侮れない地方都市と知られている。

 

 軍は道を全て塞ぐ様な進軍はしない。半分は必ず開け商人やそこで暮らす人々の弊害にならぬように進む。その為、長蛇の列の様に長く伸びるもすれ違う人々は劉の旗に頭を下げた。今や中華で劉備を知らぬ者はおらず曹操に敵対出来る唯一の存在と人望を得ていた。


劉備「益州は険しい山岳と聞いていたけれど本当にその通りですね……道こそあれど新たに開拓するとなると何年かかるでしょう」


馬謖「ここは天然の要害。曹操軍もそう簡単に踏み込めない土地です。開拓し平地にすることは長所を短所に置き換える愚行と言えるかと」


姜維「馬謖君は物知りだなぁ。心強いよ」


馬謖「姜維は副軍師だろ? その位のことは頭に入れて置いてくれないと困る」


劉備「馬謖さん。姜維君はどこか遠くの土地から来たのです。仕方がありません」


馬謖「しかし兵法において地の利を活かすことは軍師の采配に必要不可欠です。事前に頭に入れて置いて頂かなければ困ります」


姜維「劉備さん。馬謖君の言う通りです。今の僕は軍師……知らなかったなんて言い訳は出来ません」


劉備「姜維君……」


姜維「多くを学び必ず劉備さんのお役に立って見せます!」


劉備「うふふ、期待してますね!」


馬謖「是非そうして頂きたいものだ」


劉備「ところでホウ統さん。あちらの方は?」

 劉備は黄皓に目を向ける。


ホウ統「黄皓ですな。行き倒れになっている所を魏延ちゃんと発見しまして……」


劉備「今回の遠征に同行させるのですね」


ホウ統「申し訳ありません。黄皓はどうも記憶があやふやの様で……」


劉備「旅は大勢の方が楽しいですものね」


ホウ統「ありがとうございます。おーい! 黄皓!」


黄皓「おやっさん。何でしょうか?」

 黄皓はおやっさんに駆け寄る。


ホウ統「劉備軍・君主の劉備様だ」


黄皓「これはこれは劉備様。私、黄皓と申します。この度は見ず知らずの私にこの様なご親切。誠にありがとうございます」

 黄皓は膝を付き頭を下げる。


劉備「そんな大袈裟な……まだ病み上がりなのに遠出させることになってしまい……申し訳なく思います」


黄皓「ありがたいお言葉恐れ入ります」


劉備「遠慮はいりません。何かあれば近くの者に頼りなさい。皆、優しい者達ばかりですから」


黄皓「ははーー」

 黄皓は更に頭を下げる。


 劉備達の遠征は続く大小、何個の山を越えたであろうか。零陵を出発して何度かの朝を迎え補給の物資も減り遠征の進む速度は日に日に早くなっていた。

 


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