特別編:ミリア──概念の魔女が生まれた日
特別編:ミリア──概念の魔女が生まれた日
◆ 1. 収容区画・第七実験棟
鉄の匂い。
薬品の匂い。
そして――
深層の“ざわめき”。
白い壁に囲まれた部屋で、
ミリアは小さな弟ミランの手を握っていた。
ミラン
「……ミリア姉……
今日も……実験……?」
ミリア
「……うん。
でも……大丈夫。
私がいるから。」
震えていたのはミランだけじゃない。
ミリアも同じだった。
ミリアとミランは深層への適性が高いというだけで攫われてきた子供である。
研究員
「被験体07、08。
入室を。」
ミリア
「……行こう、ミラン。」
ミラン
「……うん。」
二人は手を離し、
白い実験室へと歩く。
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◆ 2. 深層接触実験
深層波形が満ち、
空間が揺れ始める。
研究員
「深層接触レベルを上げろ。」
深層が“触れた”。
ミランの身体が跳ねる。
ミラン
「っ……あ……あああああ!!」
ミリア
「ミラン!!」
拘束具が軋む。
ミリアは腕が千切れそうなほど暴れる。
研究員
「被験体08、反応過多。
深層拒絶の兆候――」
ミランの瞳が白く濁る。
深層が彼を“外側”へ押し出す。
ミラン
「ミ……リ……あ……ね……
こわ……い……」
ミリア
「ミラン!!
ミラン!!
お願い……お願いだから……!!
こっち来て!!」
研究員
「被験体08、消失。
記録しろ。」
ミリア
「記録……?
記録って……何……?
ミランが……
ミランが……!!」
研究員
「被験体07、精神反応が異常だ。
拘束を強化――」
ミリア
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
その瞬間――
深層ではない“何か”がミリアの中で弾けた。
世界の“意味”が揺らぐ。
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◆ 3. 概念操作の覚醒
ミリア
「返して……
返してよ……
返してよぉぉぉ!!」
涙が落ちるたび、
空間の“概念”が震えた。
ミリア
「ミランは……
“ここにいる”の!!」
ミリアの指先が震え、
言葉が世界に突き刺さる。
ミリア
「――《存在固定》!!」
深層波形が止まったように“見えた”。
止まったのではない。
深層を観測する装置の
「揺らぎを検知する」という概念が消えた。
研究員
「な……に……?
波形が……読めない……!?」
研究員B
「計測器が……“揺らぎ”を認識していない……?
いや……認識する概念そのものが……?」
研究員C
「深層が異常なんじゃない……
観測側の前提が……崩れている……!」
ミリアは深層に触れていない。
深層を止めてもいない。
ただ――
深層を“どう認識するか”という概念を操作しただけ。
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◆ 4. 保護機構の突入
爆音が響く。
???
「突入!
深層実験者保護機構だ!!
生存者を確保しろ!!」
研究員
「くそ……!
保護機構が来た……!」
黒装備の部隊が雪崩れ込み、
研究員たちを制圧していく。
ミリアは崩れ落ちた。
ミリア
「ミラン……
ミラン……
返して……
返してよ……
お願い……」
隊長はミリアの頭にそっと手を置いた。
隊長
「……もういい。
君は……よく耐えた。」
ミリア
「……私……
守れなかった……」
隊長
「君は深層に触れていない。
深層が奪ったんだ。
君のせいじゃない。」
ミリアの涙が床に落ちる。
その涙は、
深層ではなく――
世界の“意味”を震わせた。
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◆ 5. 保護機構での育成
ミリアは最初、訓練を拒否した。
ミリア
「……また……
誰かを壊すかもしれない……」
教官
「君は壊していない。
壊したのは深層だ。」
ミリア
「……でも……
私が……何かした……」
教官
「違う。
君は“概念”を操作しただけだ。
深層には触れていない。」
ミリア
「……深層は……怖い……」
教官
「だからこそ、
深層に触れない君の力が必要なんだ。」
ミリアはゆっくりと拳を握った。
ミリア
「……二度と……
誰も……あんなふうに……
失いたくない……」
それは“守る”ではなく、
“繰り返したくない”という恐怖だった。
だが、その恐怖が
ミリアを強くした。
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◆ 6. 日本潜入任務
隊長
「ミリア。
君に任務がある。」
ミリア
「……深層実験……ですか?」
隊長
「そうだ。
日本で……ミランのような子供が出る可能性がある。」
ミリアの表情が変わる。
ミリア
「……そんなの……
絶対に……嫌。」
隊長
「理由を聞いてもいいか?」
ミリア
「……止めたい。
あの日の続きが……
誰かに起きるのを……止めたい。」
隊長
「それで十分だ。」
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◆ 7. 日本潜入
ミリアは喫茶店「ルミエール」に潜入し、
そこで“異常な少年”と出会う。
悠斗。
深層に触れながらも、
深層に飲まれない少年。
ミリア
「……あなた……
どうして……消えないの……?」
その疑問は、
ミランを失った日の記憶を呼び起こした。
ミリア
「……あなたを放置すれば……
また誰かが……消える……」
だからミリアは動いた。
“守る”ために。
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