第二章 第64話 ──帰還──
第64話 ──帰還──
深層が閉じ、
遺構は静寂を取り戻した。
だがその静けさは、
戦いの余韻を含んだ重いものだった。
紗月
「……終わったんだよね?」
玲奈
「うん……
でも……なんか……まだ信じられない……」
ミリアはまだ意識を失ったまま、
紗月が抱きかかえている。
オルタはミリアの額に手を当てた。
オルタ
『精神の深層が……拒絶に触れてる。
でも……大丈夫。
時間が経てば……戻る。』
紗月
「ほんと……?」
オルタ
『うん。
深層拒絶は“意味を奪う”けど……
ミリアさんは概念系。
意味を取り戻すのが……得意だから。』
玲奈
「よかった……」
悠斗は、
自分の右腕と左足を見下ろした。
そこに“ある”のに、
動かない。
深層が認識していないから。
悠斗
「……これ、戻るのか?」
オルタは悠斗の手をそっと包んだ。
オルタ
『戻るよ。
深層拒絶は“深層の反応”。
深層核の私が……
あなたの存在を“意味づけ”すれば……
世界が認識する。』
悠斗
「……頼む。」
オルタは目を閉じ、
悠斗の腕と足に触れた。
深層がわずかに揺れ、
世界が“書き換わる”。
オルタ
『……はい。
もう大丈夫。』
悠斗は右手を握り、
左足で床を踏んだ。
悠斗
「……動く……!」
紗月
「すご……!」
玲奈
「オルタちゃん……本当に……なんでもできるんだね……」
オルタは首を横に振った。
オルタ
『なんでもはできないよ。
深層核は……深層の形を決められるだけ。
でも……
“あなたの存在”を守るくらいなら……
簡単。』
悠斗
「……助かった。」
オルタは微笑んだ。
オルタ
『助けたかったから。
それだけ。』
玲奈
「……帰ろう。
ここにいても……もう危ないだけだよ。」
紗月
「うん。
ミリアも運ばなきゃ。」
悠斗
「出口は……?」
オルタは遺構の奥を指さした。
オルタ
『深層拒絶が消えたから……
遺構の“本来の構造”が戻った。
出口は……あっち。』
四人はゆっくりと歩き出した。
遺構の壁は静かに光り、
深層の波形は穏やかに揺れている。
まるで――
戦いの終わりを祝福するように。
玲奈
「……ねぇ、悠斗。」
悠斗
「ん?」
玲奈
「今日のこと……
誰にも言えないよね……?」
悠斗
「……まぁ、言ったところで信じねぇだろ。」
紗月
「学校で“戦略級魔法師と戦ってきました”なんて言ったら
保健室送りだよ。」
玲奈
「だよね……」
オルタは静かに言った。
オルタ
『言わなくていいよ。
深層の事もそうだけど……
知ってる人だけが知っていればいい。』
悠斗
「……そうだな。」
遺構の出口が見えてきた。
外の光が差し込み、
風が吹き込む。
玲奈
「……帰ってきた……」
紗月
「やっと……外だ……!」
悠斗
「……長かったな。」
オルタは外の光を見つめ、
小さく呟いた。
オルタ
『……世界って……
こんなに……明るかったんだ……』
その声は、
どこか寂しげで、
どこか嬉しそうだった。
悠斗
「オルタ……?」
オルタ
『ううん。
なんでもない。
帰ろう、悠斗。』
四人と一人は、
遺構を後にした。
深層拒絶の戦いは終わった。
だが――
それぞれの胸には、
まだ言葉にできない“違和感”が残っていた。
それが何なのかは、
まだ誰にも分からない。
ただ一つだけ確かなのは――
深層に触れた者は、
もう元の世界には戻れない。
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