第二章 第63話 ──深層修復──
第63話 ──深層修復──
深層拒絶が消え、
戦略級魔法師の姿が深層の底へ沈んでいったあと。
遺構は静まり返った。
だが――
静寂は“終わり”ではなかった。
床の紋様がひび割れ、
天井の根が軋み、
深層の光が不規則に脈動している。
紗月
「……まだ揺れてる……
深層拒絶の余波……?」
玲奈
「遺構が……壊れちゃう……?」
オルタはゆっくりと遺構を見渡した。
その瞳は、
深層そのものの色をしていた。
オルタ
『深層拒絶は消えた。
でも……“痕跡”が残ってる。
深層の形が歪んだまま。』
悠斗
「……このままだと?」
オルタ
『遺構が崩壊する。
深層構造が壊れたままだから。』
紗月
「そんな……!」
玲奈
「どうすれば……?」
オルタは悠斗の手を握った。
オルタ
『悠斗……
あなたの“欠損”を貸して。
深層の歪みを削る。
私が形を整える。』
悠斗
「……深層の修復か。」
オルタ
『うん。
深層拒絶の残滓は深層の“反応”。
深層の穴(欠損)で削れば消える。
でも……削ったあとは
深層核の私が“形”を決めないと
遺構が壊れる。』
悠斗
「任せろ。」
オルタは微笑んだ。
オルタ
『ありがとう。
あなたがいないと……できない。』
深層が開く。
空間が沈み、
遺構全体が深層の光に包まれる。
紗月
「……すご……
遺構全体が深層に……!」
玲奈
「オルタちゃん……本当に深層核なんだ……」
オルタは深層の波形に手を触れた。
その瞬間――
深層が“従った”。
波形が整い、
歪みが浮かび上がる。
オルタ
『悠斗……
あそこ……削って。
深層拒絶の残滓。』
悠斗
「ああ。」
空間欠損が開く。
深層の穴が、
深層拒絶の残滓を吸い込んでいく。
拒絶の残滓は、
触れた瞬間に“意味”を失い、
深層の底へ消えた。
オルタ
『次……あそこ。
深層が裂けてる。』
悠斗
「任せろ。」
深層欠損が裂け目を削り、
オルタがその形を整える。
深層が修復されていく。
紗月
「……二人とも……すごい……
深層を……扱ってる……」
玲奈
「まるで……
深層そのものが……二人の手の中にあるみたい……」
オルタ
『悠斗……
最後の一箇所……
“あそこ”が一番深い。
戦略級魔法師が落ちた場所。』
悠斗
「……あいつが深層に飲まれた場所か。」
オルタ
『うん。
深層拒絶の“核”が残ってる。
そこを削って。
私が閉じる。』
悠斗
「行くぞ。」
深層欠損が開く。
深層の底に、
黒い“穴”があった。
深層拒絶の残滓。
深層の反応が暴走した“痕跡”。
悠斗
「――《空間欠損》!」
深層の穴が、
深層拒絶の核を吸い込む。
黒い反応が消え、
深層が静まる。
オルタ
『……閉じるよ。』
オルタが手を伸ばす。
深層が閉じ、
遺構の光が安定し、
空間が元の形に戻っていく。
紗月
「……終わった……?」
玲奈
「遺構が……元に戻ってる……!」
オルタは静かに頷いた。
オルタ
『うん。
深層拒絶の残滓は全部消えた。
遺構も安定した。』
悠斗
「……オルタ。
あいつ……戦略級魔法師は……
なんで深層に飲まれたんだ?」
オルタは少しだけ目を伏せた。
オルタ
『……深層を扱うには“深層核”が必要。
深層核がない人間が深層に触れると……
深層に“意味”を奪われる。
だから……飲まれる。』
悠斗
「……そうか。」
オルタ
『あの人は……深層を扱おうとして……
深層に拒絶された。
それだけ。
意思も……目的も……
もう残ってなかった。』
玲奈
「……ただ深層核に引かれてただけ……?」
オルタ
『うん。
深層核は深層の中心。
深層に飲まれた存在は……
そこに引かれる。
反応として。』
悠斗
「……終わったんだな。」
オルタは悠斗の手を握った。
オルタ
『うん。
あなたのおかげで。』
深層が静かに閉じた。
遺構は完全に修復され、
深層拒絶の影は消えた。
そして――
静寂が戻った。
だがその静寂は、
次の物語の“始まり”でもあった。
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