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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第8章 人生、狩られる前に先手必勝!

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第80話 弓×馬?×クラブ活動


「わあ、すごい天気だねえ」

「え?…シャルちゃん、空、真っ暗よ?」

「曇りって、涼しくていいじゃない!」

「そうだね、今暑いし…夏服に変わったから、マシだけど」


(もう…空を飛びまくるメガホン鳥も見慣れちゃった…)


そう。怒涛のデビュタントの興奮もだいぶ落ち着き、制服もいつの間にかブラウスとベストと、夏制服に変わったばかりという今日この頃。

学院はあとひと月後に控えている夏休みと、その直前にある学院の大型の催し行事に向けて、静かな慌ただしさが始まっている。

私は、目の前をふよふよ飛んでいたメガホン鳥の一匹を指ではじいた。

パチン、と音がしてその鳥が持っていた噂が羽根になって消える。


「ふうん……」


不思議なことに羽根は消える瞬間、私の脳内スマホに噂の正体をばらして消滅するらしい。

今浮かび上がった噂は【エイデン兄弟って実は仲が良くないらしい】というもの。

こういう小さい鳥が抱えるみみっちい噂は、辿っていくと、大抵は双子達に対する嫉妬とか、そう言う悪意のあるものばかりだと最近知った。

だから、真実とかけ離れすぎて、あまり大きくならずに消滅してしまうけど、例えば小さい鳥同士がすれ違って合体(?)すると、大きな噂に変わったりもする。


(こいつら…一応《生きている》のよね。だから合体するし、分裂するし、変異もする)


今のところ、似たようなものばかりで「大きな噂」というのが見当たらない。一時期、【リッハシャル=ルドヴィガは、実は男好き】などと言う失礼な噂もあったけど…弓矢で貫いてやったわ。

そして…あることを思いついたのだ。


「え?入部希望?」

「はい」


そう、それは「アーチェリー部に入部すること」である。

そうすれば、弓矢持っていても怪しまれないし、訓練に事欠いて鳥どもを倒せる、と考えたのだ。早速行動に!と言うことで、到着した部室にいたのは…茶褐色の髪と瞳の眼鏡男性。

部長と思しき人物は、じっとりとこちらを見つめる。


(ちょっと、ヤな感じ)


「…ルドヴィガ令嬢、あなたともあろう尊き家の出の方がこのようなクラブに?弓はお嬢様のおもちゃではなくて、武器の一つで」

「あ、それなら…部長さん、私と弓で対決しませんか?」

「え?!」

「尊き出の家であろうと…そこまで言われては黙っていられません。さあ、いざ尋常に!」

「ちょ、ちょっと待って」


突然おろおろしだす部長を笑顔で見つめてやる。…いいから、とっとと勝負しろ。と言うのを我慢してるんだから、感謝してほしい。


「なあ、リオドール部長。シャル、驚くほど腕はたしかだよ?」

「!え、エイデン」

「ケディ?…あ、そうか。剣術クラブ」

「や、シャル!男臭い訓練場に来る女性なんて珍しいから、みんな噂していたよ」

「うーん…やっぱり女性部員はいないのね。でも、禁止とは書いてませんよね?」

「それは…まあ」


リオドール部長は、何か言いたげだ。

…事情がありそうね。


「そう言えば、今日は髪は後ろで縛ってるんだ。それ、似合うね」

「あら、ありがとう」


ケディはいつも、女性に対してのさりげない気遣いが素晴らしいと思う。

…よくもまあ、そんなポンポン誉め言葉が出てくるなあ。


「あー、ええと、そこまで言うなら…」

「なあ、何だったら僕のほうの剣術クラブでも大歓迎だよ?」

「うーん…天才様の腕を近くで見れるのは楽しそうではあるんだけど」

「ち ちょっと待って!…わ、わかった。入部を認めます…でも、その前に簡単な試験をしても?」

「ええ。構いません」


本音では、部長さんをとっちめた方が早いんだけどな、と思いつつ…承諾した。

無論……弓は50発中50命中。無事、入部に踏み切ることができた。そして、驚愕の事実が発覚。なんと、総部員数がたくさんいても、まともに機能してるのはほんの一握りしかいないらしい。


「す、すまない。弓ってどうしても、掛け持ち側の優先度が低くなりがちで」

「まあ…随分入部試験が難しかったですものね」

「それは…だって、そうでもしないと、評価数稼ぎの幽霊部員が増えるばかりだったから」

「評価数、ねえ……」


実を言うと、以前私が起こした学院の不正金の汚職事件以降…隠れ項目だった【評価数】が、正式な評価項目として導入された。

現代で言う「内申」のような物で…卒業する時に様々な特典がつくらしいのだけど、その加点ポイントが何処なのかまでは公表されておらず……皆部活を掛け持ちしたりすることも多い。

結果として、このアーチェリークラブのように、幽霊部員だらけなクラブも増えたりするのだ。


「まあ…私は、弓を射る練習ができればいいので」

「弓の練習…?令嬢は、変わったご趣味をお持ちだな」

「リオドール部長、令嬢と呼ばれるのはあまり好きではないので…リッハシャルで構いませんわ」

「え?!…あ、う、うん」

「あ!じゃあ僕も掛け持ちしようかな!」


・・・と、やって来たのが。


「ケディ…さっきからどうしたの?」

「ん?いや、シャルがやるなら僕もやろうかなって」

「エイデン…本当か?!」

「うん、いいよ!」

「やった!…二人が入れば型演舞部門の優勝も狙える!!」

「優勝…って。もしかして、7月にある【グラン・トゥルノワ】?」

「そう!クラブ対抗戦、入賞するとクラブの予算が上がるんだ!」


あらら、なんだか随分青春的な王道展開に。

……こう、物事が都合よく進むと、警戒してしまう。


(……まあ、クラブに入るのを決意したのは私だし)


この学院には、多種多様なクラブがあり、大きく分けて、文系、武術系、美術系とある。

7月にある【グラン・トゥルノワ】は、弓術・馬術・剣術・槍術のクラブ所属生徒の成果発表の場。開催期間は約5日間、最終日は各競技の予選と本戦が行われる。内容は様々で、実際に戦うより型の美しさを競い合うものもある。

最終日には優勝者たちによる表彰式が執り行われ、その間、クラブに属さない他の生徒たちはその期間中応援に回ったりする、ちょっとした祭典行事。中でも、剣術部は部員数が多く、最終日にはアズレア各地の騎士団のスカウト部隊がずらりと並んで観戦に来るらしい。


「エイデンのいる剣術部は、部員数が多いし…部内対抗個人戦でもやるのかい?」

「ああ、そうだね。主に個人戦で、最初の三日間は部内戦。上位入賞者は、最終日のトーナメント試合の本選の参加資格がもらえる。試合さえ出ればいいから、結構時間はあるんだよな」

「…さすがケディ。ちなみにアーチェリー部の成果発表って?」

「馬術部と共同でやる、騎射試合だよ!」

「え?!う、馬に乗るの…っ?」


―――と、言うわけで。

私は急遽、馬に乗る練習をしなければならなくなってしまった。


(うーん…ひと月でどうにかなるものかしらね)


「ん…?」


辞退するのもありかなあなどと考えていると……少し離れた上空に、やたらと大きいメガホン鳥が浮いているのを見つけた。


「今、手に持っているのは……これ、か」


実は、先日以降、メイドのエイルに借りている飛び道具がある。それは…超小型のアクせサリー・ナイフだった。制服の胸ポケットに収まるサイズで、投げて人に当たらなければ大丈夫!な逸品だ。

弓程うまくはないけど…周辺を警戒して、思い切り鳥に向かって投げつける。

パン!とはじける音共に…羽根が散らばった。


「…【フォーレスト=エイデンは、時期後継に指名される予定らしい】……?随分、具体的な」

「あ、シャル見つけた」

「え?!」


心臓が飛び出しそうな程驚いた。


「け、ケディ…?!」

「あ、ごめん。驚かせた?」

「い、いや…ちょっと考え事してて」

「ふうん…?なんか顔色良くないけど、大丈夫か?」

「だ、大丈夫…びっくりしただけだし……どうしたの?私を探してたって」

「あ……うん、良かったら馬術、僕が教えようか?」

「え?それは助かるけど…ひと月やそこらでどうにかなるものでも」

「シャルならいけると思うよ?僕がきっちり教えるから」

「それは助かるけど……」


この様子なら、やっぱり噂は噂ということ?

でもあの大きさなら、結構広まってるような気がするんだけど……などと言う私の心配をよそに、ケディはパッと笑顔になった。


「じゃあ!今週の土曜から練習しよう?馬術部に友人がいるから、貸してもらえると思うよ!」

「ありがとう。でも、いいの?」

「勿論!あ、ごめん戻らないと。それじゃ、土曜日…近くなったら手紙で渡すから」

「うん、よろしく」


元気よく去っていく後姿に手を振りながら、先ほど投げたナイフを探す。


(あれ??小さくてわかりにくいな…)


「探し物はコレ?」

「あ……」


今度やって来たのは…カシオス様。

なんだか久しぶりに見るような気がする。受け取ろうとすると、なぜかつい、と持ち上げられてしまった、


「あの…返してくれないんでしょうか」

「……これは、随分小さいナイフだね」

「メイドに借りた物です。気になる虫がいたもので」


すると、カシオスは一度ふっと笑った。


「なるほど。……でもこれ、抜き身のままだと危ないだろう?」

「小さすぎて鞘がないんです。ただの飾りですから!」

「なら、今度僕がもっといい物を買ってあげる」

「え?……ええと、そう言うつもりでは」

「いいんだ。僕が君にあげたいだけだから。…君は実用的なものの方が好きそうだし」

「ならば、私も…何かカシオス様に差し上げなければ」

「どうして?」

「そりゃ、対等に行きたいじゃないですか!」


一瞬、面食らったような顔をして…カシオス様は声を出して笑った。


「あはは!君らしい。じゃあ……今度二人で出かけようか?」

「え?」

「誕生日、近いんだろ?」

「……あっ!」


そう言えば…すっかり忘れていた。


「もしかして…忘れてた?」

「さ、最近忙しくて」

「じゃあ、日にちは僕が決めても?」

「あ、はあ」


(あれ?なんか…いつもはもう少し強引なんだけど。先回りして予定を決めるっていうか…それがない)


久しぶりだからだろうか。

なんだか、妙にそわそわしてしまった。




読んでいただきありがとうございます!チャンスを逃さぬ男共。

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