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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第7章 人生、二度目のアオハルはまさかの戦場だった。

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第79話 ラストダンスはあなたと


「教えてあげないって…」

「あら、だーってあまりにも面白くない答えなんですもの、可哀想になっちゃって」


(可哀想…)


ダイアナの容赦のない言葉に、唖然としてしまう。

その様子をさも面白そうに見やり、煙草をふかす姿は、呆れるほど悠然としている。


「知ってる?ランザの大王には……ええと」


少し間が空き、続けた。


「30人くらい?の妻がいるけれど、みんな等しく「幸せだ」って言うの。……50人以上いる子供たちと妃を全員幸福にするのはとても難しい!と、良くぼやいているわ」

「……」

「面白いことに、財政だったり国政だったり…そう言う業務は幸福度が高い人ほど、成果が上がるらしいわよ?だって、国は人でできてるもの」

「それは……そうでしょう。同時に、国を壊すのも、人だ」

「……王子様」


(そう、人は生きてるから、難しい)


感情があって、心があって…命を賭して守ることもあれば、花を折るように簡単に人を陥れる。

でも、生き続けるのは見えないモノが内側にあるからだろう、とも思う。


「あなたはきっと難しい人生を歩いてきたのね」

「別に、今更です」

「あら、今更だなんて…まだ若いんだもの!知ってる?人生の失敗は、未来の自分へのギフトよ?」

「嫌な贈り物ですね」

「うふふ。そう思うのは、まだその途中だから、よ。アー・シャルだってまんざらでもなさそうだし…まあ、ライバルはたっくさんいるみたいだけど?」


すると、ダイアナはすっと道を開ける。


「ま、気張りなさい!」


そしてひらひらと手を振り、その場を去っていった。

少し歩いていくと、王家の象徴とも言われる「アズール・ロサ」の薔薇園に入る。…そこに、彼女がいた。


「!!……シャルとセフィール」


思わず近くの物陰に隠れてしまう。


(何で隠れる必要が……)


出ていこうか逡巡していると…一瞬、言葉を失う。

流れる音楽に合わせて踊る二人は、とても美しい。

まるで、そこだけ舞台の1シーンの完璧で…足首に巻かれたハンカチが少し気になるが、それを感じさせないようなステップにターン。

羽根のように軽やかなセフィールのリードに、嫉妬を感じてしまう程。


「僕の時は…あんな風に笑っていなかった」


先ほどダイアナとの会話が脳内に何度も再生され、じわじわと効いてくる。

―――その後、カシオスがダンスホールに現れることはなかった。


**


「あれ?…カシオス様がいない」


ホールに再び入ると、丁度9曲目の音楽が流れている最中だった。

幾人か知っている顔を探してみるが、どこにいても360度目立ちそうなカシオスの姿が見当たらなかった。


(別に…何か用があるわけじゃないけど)


喉が渇いたな、と思いテーブルの元へ行こうとすると…厄介な人物に遭遇してしまった。


「やあ、リッハシャル!」

「……」


無視をするわけにもいかないので、無言で礼をする。

イリシユだった。


「あ、ま 待って!…その、この間のお礼を言いたくて」

「…礼?臣下として、当然のことをしたまで」

「そんなことを言わずに…君のおかげで、オレの尊い命は救われたんだ。命の恩人と言っても過言ではないさ」

「大げさです、…では」

「あ、ちょちょ!」


(しつこいなあ)


振り切りたいところだけど…と考えていると、イリシユが動いた途端。グラスを持ったウェイターにぶつかってしまう。


「!あぁッ」

「ん?」

「っ!」


ぐらりとグラスが傾き…ウェイターの青い顔がパッと目に入る。


(こ…この人、王族相手なんかに粗相をしたら…)


多分、きっと絶対怒られる。最悪、クビ?!

そう思ったと同時に、イリシユの腕をがっしりと掴む。

へあ?などと言う間抜けな声が聞こえると、そのまま腕を引っ張り、不本意ながらもダンスホールまで連行した。そして…


「お礼は結構です。それより、人ごみではあまり大仰に動かぬようになさって。危ないでしょう?」

「は、ハイ…」

「ダンスは?」

「あ、あまり得意では」

「仕方ありませんね」

「あっ……」


くる、と右足をかばいつつ軽くターン。

何度からしいステップを踏むと……音楽が終了した。ちらりとみると、先ほどのウェイターは、シルバートレイ上の洪水だけで済んだようだ。


(ふぅ。頑張る人は応援したい…!)


「あの…」

「!…では、これにて失礼いたします」

「……す、素敵だ」


回れ、右。とそのまま振り返らずに歩いて行ったので、イリシユの最期のつぶやきは聞こえなかった。


(あの人が絡むと、男女逆じゃない?的なトラブルが多いような)


「シャル」

「あ!…お父様」

「大活躍だったね。…足は大丈夫かい?」

「何とか。セフィール公子様が応急処置をしてくださいました」


その名を出すと、レイドックが一瞬真顔になる。


「ふむ。……ヴァラモの小増か」

「あはは…それより、お父様。ラスト・ダンスは私が選べるのでしょう?お願いしてもいいですか?」

「ああ、勿論。……娘の晴れ舞台の締めをまかせていただけるとは、光栄だ」


そして…夜は更けていく。

ラスト・ダンスの音楽が流れる中、カシオスはダンス・ホールが見渡せる場所で、手に持った二つの指輪を並べ、眺めていた。


「……君なら、レイドックを選ぶと思ったよ」


(本当に、こうしてみているだけで幸せなのに…どうしてこう、彼女の前では、制御できない)


こうしたら、どんな反応をするだろう?

笑ってくれる?それとも…怒るかな?

反応をくれるのが嬉しい。言葉を返してくれるだけで。


「でも…それじゃあ、自己満足だ」


ダイアナの先ほどの正解は、もうわかってる。

―――気が付いてしまった。


「難しいな…全く」


悲喜交々。

色々な感情が交差した、リッハシャル=ルドヴィガのデビュタントは、こうして幕を下ろした。


**


「はあ……」


ゴロン、と横になり、今日一日起きたことを反芻してみる。


(色々あったなぁ……人生で一番踊りまくった一日だったわ)


楽しいことも、面白かったことも。

トルソーに飾ってあるドレスを見ると、ついにやけてしまう。


「ホント、綺麗なドレス……ちょっと、夢みたい」


どこかふわふわしているような、そんな幸せな気持ちになる。

ただ、同時に明日から起きる出来事を考えると、自然とため息が出る。

帰り際、ご機嫌のラシーから思いがけない情報を貰ってしまった。


「シャル、明日の新聞の見出し、楽しみだね!!」

「え…それって」

「何言ってるの。現在トレンド真っ最中!な男性陣がこぞってシャルとのダンスを競い合ったんだもん。新聞記者が見逃すわけないじゃん」

「え?!だって…一応デビュタントって外部の人は立ち入り禁止で」

「そんなモンみんな守ってると思う?」

「そ、そう言うもの??」


と、言うわけで。ラシーは華々しい社交界デビューだね!などと笑っていたのだが。


(まあ……しょうがないかぁ……それよりも)


そう。楽しかったことは変わりない…でも、問題も増えた。

―――ガチャを、誰かが私の替わりに動かしている。

あのガチャが現われたせいでトラブルが増えたのか、元々そう言うありえないトラブルを自分が呼んだのか?とにかく。濃厚なイベント?が多かったように思える。


(こればかりは、ガチャのせいとは言えないし…そうだ)


本当は触りたくもないが、例の日記を手に取ってみる。


「やっぱり更新されてる…内容は、【素敵だった。】…… …阿保がッ。ん?」


無言で床に投げつけようとするが、ちらりと開いた前のページを見て、目を疑った。

「あの子、メイド服に合うかな」のくだり。


「あの子、メイド服似合うかな」

コメントが追加されました。

--どんな子?画像希望

--なになに?異世界系に行ってる系?マジ?

--創作にしては良作。フォローしてやる


見るたびに髪のページに文字が浮き上がり、自動的に刻まれていく。


「ウソでしょ…、これ、どこにつながってるの?」


それ以前のページをめくっても、変化はない。

突然、今日からその「コメント」は追加されているみたいで、とても不気味だった。


(もしかして…これもガチャの何かの効果ってこと?!なにそれ)


思い返せば、今日遭遇したガチャはどこか違うように見えた。


『さあ!ギャラリーはあなたのヒロインとしての行動を期待してます!もしやここで、大番狂わせ薔薇の貴公子様きた?!もう一人の幼馴染?それとも我らが主人公?!』


そう…ガチャは、【ギャラリー】という言葉を使っていた。

つまり…この一部始終を見ている者がいるということ。最初は、その会場にいる全員のことか、もしくは神様とかそう言う類と思っていたけれど、もしかして。


「このコメントする人たちが【ギャラリー】……」


考えたくはないけど、このガチャを引いている人物が何かの物語を進めていて…それに自分が巻き込まれているのかもしれない。

 

「物語性を持った人…?うーーん……」


現段階では、主人公らしき行動している人はいまいちよくわからない。

何しろ、もし何かの物語に巻き込まれているのだとしてても、そのジャンルはおろかどういう結末のストーリーなのかすら、想像できない。

あまりにも、情報が少なすぎるのだ。


(今更、物語の中でしたーって言われても。……そもそも、このガチャを回している奴が、私と同じところにいたとは限らない)


日記の内容からして、近くにいる人物のように思えるけれど。


「せめてこの物語のタイトルとか…ジャンルだけでもわかればいいのに」


暦は6月。

あとひと月もすれば、サマータイムバケーションの季節になり、学院から遠のく。


「よし…夏休みまでに、この日記の主を絶対見つけよう」


そして、決意を新たに…床に就いたのだった。





読んでいただき、ありがとうございます!精進します!

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