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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第7章 人生、二度目のアオハルはまさかの戦場だった。

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第73話 シャルVSカシオス


美しいシャンデリアに豪華な王宮の大ホールでデビュタントを迎えた今日。

その日、最も注目されている人物、カシオス=セレストが華やかなインシグニス・ブルーの衣装をまとって、彼自身もデビューを果たした。


「……今、礼をしなかったよな」

「ああ、あれは…国王夫妻に対して失礼が過ぎるのでは」


ざわつく外野の音など気にしない様子で、カシオスはぐるりと周囲を見渡す。


「お父様…大丈夫でしょうか」

「……まあ、クロムでも同じ立場なら、同じ振る舞いをするだろうよ」

「よく似ていらっしゃること。…ん?」


呆れたように見ていると、なぜか視線がばっちりぶつかった。

…そして、にっこりと、悪魔の笑みを浮かべ、そのまま真っすぐこちらに向かってくる…!

床に見えない赤い絨毯でも敷いてるの?ってくらい優雅なウォーキングでやってきて、彼は私の前に立つ。


「……っあの」

「デビュタントおめでとう、レディ・ルドヴィガ」


一瞬惚けるが、この方も一応王族!

私は一拍おいて胸に手を当て最上の礼をする。


「あ、ありがとうございます。カシオス殿下も…」


そのままする、と私の手を取ると……なぜかそのまま膝をつく。


(え?え?何してるの?!ちょっと待って、何よこの状況?!)


逃げるわけにもいかず、笑みを崩さぬまま耐える。

内側は大嵐の如く荒れまくってるけど、バレぬよう。


「ええと…カシオス様?これは一体どういうおつもりで」

「丁度、尊敬すべき我が代父もいらっしゃる…なんとも都合のいいことだ」

「つ、都合?!」


ああ、だめ。お父様!暴れないで!

頼みの綱のダイアナ叔母様は…なんだかとても楽しそうに観察している。そして…周囲は異常な状況にも関わらず、事を起こしているのが王子殿下であるため、だれも止められず固唾をのんで見守っていた。


(だ、だめだりゃ)


「レディ・ルドヴィガ。どうか私をあなたの伴侶に選んではくれないか?」

「はん…りょ」

「そう。……私と結婚してほしい」


ざわ、とギャラリーが揺れる。

そして、上空に浮かぶ神様ガチャ!


(あ。ああ…!あああ―――!!全員の好感度下がるかも?!とかってやつの効果?!嘘でしょう?!)


そうか、このバカバカしいほどの王道展開、更にはよくある華やかな大舞台の場!!

完全に、物語の舞台装置が整っている状態。イエスでも、ノーでも、どちらを選んでも待つのは……ガチャめ、仕組んだな?!よく聞くのは婚約破棄だけども!!


(は?…婚約破棄ではなく、結婚してくれ?)


「ええと…き、ききまちが」

「ああ、何度でも言おう。私の妻になってはくれないか?」

「か、カシオス殿下…あの」


落ち着こう。

いや、深呼吸しよう。


(だ、だだだれか助けて!!)


「お待ちください!!」

「!」


突如、私はぐっと肩を引っ張られ、一歩下がる。


「大衆の面前です。場をわきまえて頂きたい」


さらりと長い髪を揺らしながら、明かに不機嫌なオーラを放ち、私の前に出たのは――なんとフォーレストだ。


(え?な、何この展開?!)


「ああ、君は僕の従兄に当たるエイデン侯爵家の()()殿()ではないか。…愛しい人に愛を告げるのに、理由と場所が必要かな…ああ、それとも。知らぬうちに君を不快にさせてしまったか」

「不快なのは俺ではなく、リッハシャルでしょう?16歳を迎える花の日に、望まぬ厄介ごとに関わる羽目になっているのですから」


(な、なんでフォーレが来るの!?正直助かっ いや、そうでもないような…)


あ、そう言えばフォーレ、制服のまま…わざわざ来てくれたの?それは嬉しいけども?!

しかし、私のことを放ったまま二人はにらみ合いを始める。


(ああ、視線が痛い…もういい加減にして)


『運命ガチャを引きますか?』

「!」


突然、私にしか見えない神々しい光が天井から降り注ぐ。


(きた…神様ガチャ…このタイミングで)


本当、どこの神様だか知らないけど、絶対!私の運命をおもちゃにして遊んでいるに違いない。


(ずえったい!幸せになって、普通の人生で、普通に年を取ってこの世界を全うしてやる…!)


そして、私はまたガチャの引鉄に手を伸ばすのであった。

でも、ちょっと待って。

私はガチャ権利をはく奪されたのよね?なのにどうして?


『ヒロインは誰を選ぶ?』

『完全無欠の王子様、それとも知的な幼馴染。それとも?』

『誰誰?!』


言葉が、雰囲気が…まるで悪魔か人間のそれ。

―――以前このガチャ自体神様なのか、悪魔なのか悩んだこともあったけど。

こんなの、絶対神様じゃない。


『さあ!ギャラリーはあなたのヒロインとしての行動を期待してます!もしやここで、大番狂わせ薔薇の貴公子様きた?!もう一人の幼馴染?それとも我らが主人公?!』


(…主人公?もしかして、あの日記の主のことね?…そいつを選ぶってことは)


あの、変態キモオタメイドフェチ男の…あぁキモ!絶対にイヤ!!!


(冗談じゃないわ……私は誰にも選ばせない。選ぶのはこの私!)


「お二人とも」

「!」

「シャル…」


す、とカシオスから手を離す。

そして、私の肩を掴むフォーレの手も。


「カシオス王子殿下、それにフォーレスト=エイデン。今、この場がどういう場所かわかったうえでの振る舞いですか?」


シーン、と辺りが静まり返る。


「今日は16歳の女性たちが社交界を華々しくデビューする、彼女たちが主役の日。高潔なお二人がその場を乱すのは、私以外の女性たち全員に対して礼をかく振る舞いだとご自覚くださいませ」


ぱっと手を胸に当て、真っすぐカシオスを見る。


「よって…あなたもご自身の立場を忘れず、私の意を汲んで…この話は一度引いてくださいますね?」

「……失礼」


じっと見つめる目の力は翳ることがない。

むしろなんか益々生き生きしてない?!カシオスはそのまま引き下がるかと思いきや。

私の手首のダンスカードに、さらさらと名前を書いた。


「ファーストは彼に譲るけど、その次は、僕がもらう」

「…光栄ですわ」


(ふざけるなぁああ!!ったくもうーーー)


「私も、失礼いたしました」

「!フォーレ」


そして、フォーレはその次に名前を記す。

あんたもかい!!とひきつった笑みを浮かべるけれど、フォーレは真っすぐ私を見た。


「必ず、あとでお迎えに上がります。レディ」

「……はい」


カシオスはすっと立ち上がると、くるりと大衆に向かう。


「失礼!紳士淑女の皆さま…心揺らす余興はお楽しみいただけましたか?」


瞬間、お父様は楽団の指揮者に目と気迫で合図し、手を挙げ…再び音楽が流れ始めた。

戸惑いながらも、観衆から拍手が上がると、そのままカシオスは国王夫妻の方を向いた。


「さあ…華やかなるデビュタントの始まりの合図を」

「……ふむ。よかろう…ここに、デビュタントの開始を宣言する」


そして…歓声が上がる。

その様子を見て、私は気絶しそうになりそうなのをこらえた。支えてくれた叔母さまは、私に向かって軽くウィンクする。


「いいじゃない。よくあの場を収めたわ」

「はい…」


(はぁああ…あ。ガチャの気配は、もうないわね)

フン、ざまぁ!よ。


「ごめん、シャル」

「!フォーレ…こっちこそ、ごめん」

「ううん……」


よく見れば、フォーレは制服のまま…こんな日でも偉いなあ。


「今日は…手伝いだったのね」

「あ、うん……その、みんなみたく正装じゃないけど」

「何言ってるの!制服のなにが悪いの?華やかな世界は、裏側があってこそだもの!」

「……うん、ありがとうシャル」


すると、向こうからお父様が戻ってきた。


「シャル」

「お父様!…じゃあ、フォーレ、あとでちゃんと来てね!」

「ああ、よろしく」


フォーレに見送られ、私はお父様に手を引かれていく。


「…全く。カシオス様には困ったものだ」

「本当。……結果的には、一番美味しいところをカシオス様が持って行ったような」

「シャル。社交界にはあれ位の紳士が顔をそろえてお前を待っている。……気を抜かないように」

「はい」

「それと、利用できるものは立場でも何でも、どんどん利用してやりなさい。全ては、未来の自分のための投資になるのだから」

「はい!」

「それから――」

「…お父様ってば」


よく見れば、お父様の目は少し赤い。


「もう音楽が始まります。ちゃんとエスコートしてくれないと!」

「……そうだったな」

「大丈夫ですよ、お父様……私にはお父様も、邸の皆も…相談できる人はたくさんいます。勿論、何かあったときは、真っ先にお父様に相談します。だって、一番私の信頼できる人ですもの!」

「リッハシャル……ああ、悪い男に絡まれたら、私に言いなさい。社会的に抹殺してやろう」

「……あはは」


最後の部分だけ本気だわ、きっと。

やがて、音楽が流れだす。

三拍子のワルツ…伝統的なアズレアの定番だ。


「……リア―ネが、もし生きていたら。何と言うだろう」

「きっと、この日を楽しみにしてくれていたと思います」

「当然だろう。……お前は、私達の娘なんだから」


くるり、と緩やかなターン。

足のポジションは丁寧に、手の位置はしっかり。


(…うーん…なんだかんだで、セフィール先生の教え方、やっぱり本当に上手かも)


「ああ…ダメだな。やはり、年を取ると涙腺が弱くなってしまって……本当に、大きくなったな」

「お父様、我慢して!……私の晴れ舞台ですよ?」


冗談交じりに言うと、困ったように笑う。


「心からお前の未来を祝福するよ。リッハシャル…お前はお前が選んだ道を進んでいくといい。私は、その後姿をいつまでも見守っているから」

「……はい。信じてます」


ぴたりと音楽が止んだ。

お父様が名残惜し気に手を離す。


「ちゃんと、帰ってくるんだぞ?」

「はい、お父様」


そして、ケディが私の元にやって来た。


「さあ、レディ。…僕とダンスを」

「はい」


そして、その手を取った。



序話からの、続きです!読んでいただきありがとうございます!評価やブックマークも嬉しいです!精進します。

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