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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第7章 人生、二度目のアオハルはまさかの戦場だった。

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第71話 そして、運命のデビュタントへ


「ああ…首にやはり少し痕が……」

「大丈夫、大したことないって。ほらほら、このドレス、ホルター・ネックで首回りは見えないから!」


ああ、メイド達の「お嬢様ぁああッ!!」の声がそろう…大げさなのよ、と言いたいけれど、それを言ったらまた怒られてしまいそう。


「全く。ルルはお嬢様のその大らかさはとても魅力だと思っていますけれど…、もう少し控えめでもいいのではないかしら、と思うこともありますわ…」


ルルが言うのはもっともかもしれない。


「でも、素敵なドレスよ?」

「それは間違いではありませんけれど。…足を見せるスカートをお召しになるのは、お嬢様だけでしょう。紳士様方は釘付け、ですわよ、きっと!」

「うん…まあ、慣習破りは今更だもの」


さて、色々あったけど…ついにデビュタントの当日を迎えてしまった。

鏡の前に立ち、思わずため息が漏れる。


光を受けて淡く輝く、白が基調な左右非対称のこのハイ&ロウドレス。

上半身はホルター・ネックでシンプルに…胸元にはルドヴィガの印章であるブルースターの花とランザ王国で最もポピュラーなプルメリアの小花模様の刺繍が散りばめられている。


(ホントキレイ…ククナとお母さまのデザインと、マダム・ルーランで用意してくれたドレス…!)


左側が波のようなフリルが足元まで連なり、腰から右側に広がるスカートのレースとフリルの花びらは、何層も連なり大きな白いカメリアの花に変わる。ところどころにククナの渾身の大小の赤・黄・水色のコサージュの飾りが散りばめられていて、まるで咲き誇る花園のよう。


「では、最後の仕上げです」


ルルが開いた箱には、お父様がデビュタントのお祝いにと、私にプレゼントしてくれたブルースターのチョーカーと髪飾り、イヤリングが入っていた。


「順番にお付けしますね」

「うん!」


実は、胸元の刺繍の他にも、ブルースターのモチーフはいたるところに使われている。グローブの飾りも、バックにある留め具も全部星型の模様だ。

どうやらお父様がククナたちにこっそり注文したらしく、それに合わせてこのチョーカーとイヤリングも職人につくってもらったんだとか。


(最初見た時は驚いたけど…とても嬉しい)


更にこのドレス…仕込みがある。


「ねえ、どうかな?」


くるりと回転すると、左右非対称の裾が綺麗な円を描く。


「わあステキ…!」

「えへへ、くるっと回ると、上から見たら花の形になるように作ってくれたんだって!」

「お嬢様そのものがカメリアみたいですね…!」


(まさか私自身が花に、だなんて)


初め、私はシンプルなデザインのロングドレスを想像していた。

けれど、なぜかククナが「ダメ!!綺麗な足を隠すのはもったいないと思うの!!」と譲らなくて…、見かねたククナ母が「じゃ、両方にしちゃいましょう!」と、このような形になった。


「左はアズレアの海と風で流れるような長いフリルに。右側は、フリルとレースを花びらにして、裾は短めにしましょうか。…まさに、風に揺れて歩くカメリアの花、ですわ」

「じゃあ、上はシンプルにして…シャルちゃんの鍛えぬいた綺麗な身体の曲線が出るようにして…!」

「き、鍛えぬいた曲線?!」

「そうですわ…!引き締まった筋肉、すらりとした腕に()()()()()()()()()!肉欲的な女性よりもよほどスレンダーでとっても素敵です!!」

「……そ、そう?」


(弓を弄り過ぎたかしら。ちゃんと厚手のグローブを嵌めよう…ホント、親子だなあ、この二人。)


と、――ほめられているのか、苦言を言われているのわからなくなってくるやり取りもあったのだけど。

この度、ククナとミナルにオーダーしたのは「二つの国の春をイメージしたドレスで、基本はランザのドレスのように、何層にも生地を重ねる事。形はお任せ、レースとフリルはアズレアの物を使ってほしい」…と、割とわがままなお願いだった。

でも、二人は見事にそれを成し遂げてくれた…本当に感謝している。


「…よし、気合十分」


今回のデビュタントは、私にとってはとても大事な勝負どころでもある。

正直、誰と踊ろうが何しようが、関係なくて。お父様と一緒に会場に行って、デビューすることの方が重要だったりする。

そう、ルドヴィガ伯爵家の次期後継として…初めて大衆の前でのお披露目なのだ。


「シャル。準備はどうかしら?」

「ダイアナ叔母様!」

「まああ!ステキ…美しい花園がそのまま歩いているみたい…!あら、これはランザの白じゃない。それに、ランザにしか咲かない…プルメリアの花。モチーフに、わざわざこれを選んでくれたの?」

「はい。右は…私も好きだったし、お母様も好きだったカメリアの花です。ククナが作ってくれたんです…綺麗でしょう?」


すると、ダイアナ様は、一瞬惚けた表情になって、そのまま涙を流してしまった。


「?!…せ、せっかくのお化粧が崩れてしまいます」

「もう、いいのよ!そんなの…ああ、本当は思いっきり抱きしめたいけど……せっかくのおめかし、崩れてしまうもの。…後でぎゅっとさせてね?」

「はい!」

「さあ、そろそろ行きましょうか。…レイドックが下で待ちくたびれているわ」


玄関には、白の正装のお父様がいた。


(おお…!やっぱりカッコいい!)


「シャル」

「お父様!…え、もう泣いてるんですか」

「違う…目にゴミが入っただけだ…ううっ」

「もう…」

「でも…本当に綺麗だよ、リッハシャル……」

「お母さまとどっちが?」


からかい半分に私が聞いてみると…お父様は一瞬表情が固まるが、


「それは……選べるわけがない」と、答えた。


(それにしても…色々あったなあ)


丁度、この世界に来て10年?になる。

運命ガチャから始まって…リア―ネの幽霊に遭遇して、意地悪な継母にいびられもしたけど、何とかやってこれた。

双子とも出会えて、色んな人と出逢えて。


「そろそろ出発だけど…ここは親子二人きりで譲ってあげる。あとでね、アー・シャル!」

「はい、叔母様」


ふと、青い空を見て思い出す。


(そう言えば……随分昔にガチャのバグだか何だかで、一瞬見知らぬ場所に飛ばされたことがあったような)


そう。確か、あの時は前世のリッハシャルがエイデン兄弟のどちらかと口喧嘩をしているシーンをたまたま過去を見れるチケットで見て…でも続きがうまく見れなかった時。

その後、ガラス張りの…どこかの温室のような場所に行ったことがあった。

ふと青いイメージとネモフィラの花が脳裏をかすめる。


(ネモフィラ…それに、青。空みたいな……)


「あ」

「どうした?シャル」

「…ううん」


馬車に乗り込み再び思案する。


(あの時…私、一瞬誰かと遭遇しなかったっけ。言葉を交わす暇もなかったけど)


――君は?


って、誰かが私に聞いた。

そう、空を映したような青の髪…それに、不思議な色の瞳の男の子。


「………カシオス?」

「殿下?!…まさか、来てるのかっ?!」

「あ、違います。ちょっと思い出したことがあって」

「思い出したこと?」

「ええと、カシオス様って、ランザに行く前までこちらにいたんでしょう?」

「ああ。郊外の森の奥に、先王の別荘があってな。ガラス張りの広い温室がある場所で、そこで10年近く過ごされていた」

「ガラス張りの温室」

「ああ」


あれ?それって…もしかしなくても、私がガチャのせいで瞬間移動した場所じゃない?!


(……カシオス様に懐かれている(?)理由って…ソレ?)


「…そう言えば、シャルは誰かと約束をしたのか?その…か、カシオスとか」

「え?違います……あ、一応ケディと」

「……ケディック=エイデン……」


随分と忌々し気に名をつぶやくと、しばし何か考えてから、言葉を続けた。


「ふっまあ、そこそこの相手だな」

「そこそこ……ふふっ。そう言えば聞きました、エイデン侯爵夫妻のデビュタントエピソード!お父様は?どんなデビュタントだったんですか?」

「……そうだな、ロザベーリ=ヴァラモに追いかけられていた」

「え?!」

「いい思い出などはないな」


(わあ…バッサリ)


なんだかんだでロザベーリ=ヴァラモって、結構本気でお父様の事好きだったのね。


「恋愛かあ……」

「……き、気になる異性でも…?!」

「あ、いいえ……なんか、面倒くさいなって」


すると、ぱあっとお父様はいい笑顔を見せてくれた。


「そうか!…うん、うん。したい時にすればいいものだから、焦ることはない!」

「はい。それに、私が伯爵家が継ぐ為には…お婿さんを迎えなきゃならないし」

「婿などいらん」

「もう、お父様ってば……」


(…カシオス様は、私を好いてくれてるかもしれないけど…それって、本当に恋愛のそれ?単に刷り込み現象ってことでは?うーん…よくわかんないなあ……)


これでも、人生としての経験はある程度つんできたつもりだけど…。

社畜時代は、SNSをやっていたわけでもないし、特別可愛いわけでもない普通のモブだったし。何より毎日仕事に追われて、そんな暇はなかった。

異性との交流で言うと、おっさん上司共か…あとは同僚、それと時折社内で人気だった後輩に声をかけられた程度だった気がする。その程度で、何がわかるというのやら。


(そう言えば…ゲーム好きでお菓子をやたらくれる後輩がいたけど、あの人苦手だったな)


もので機嫌を取る?みたいな考え、キライなのは…もしかしてそこが原因かも。


「……シャル」

「はい?」

「ありがとう」

「!」


不意な真っ直ぐな言葉に、背筋が伸びた。


「……5歳位の頃から、お前が私に歩み寄ってくれたから、今がある」

「そ、そんな」


あの時は、そう…生き延びるための最善をしただけだった。


「そうじゃないまま……いたら。なんて、考えるだけで恐ろしい」

「……お父様」


そう。

もし、私があの時あの選択をしなかったら。

お父様は、ロザベーリとの間に血がつながっていたかもわからない子供を育てて、リッハシャルはどんどん孤立していって……最後は。


「私も。あの時選んだ行動が間違いじゃなかったって…今なら確信できます」

「……そうか」


ガタン、と音を立て、馬車が停まる。


「さあ、ついた」

「…はい」

「手を…お前の、デビュタントだ」



服の描写って難しい…読んでいただき、ありがとうございます!精進します。

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