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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第7章 人生、二度目のアオハルはまさかの戦場だった。

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第70話 男性陣のかくかくしかじか…VSリッハシャル


「……はあ」

「ちょっとお、フォーレスト=エイデン!」

「……ふう」

「おーーい!聞いてるのー?」

「……くそ」

「も―――」


ゴン!突然頭に衝撃が当たる。

…フォーレは、一瞬目の前に星が見えた気がした。


「おい!話聞いてるの?って!例の窓落下事件の話、聞いた?」


ここは、生徒会室。

高等部の日当たりの良い場所にある部屋で、4階になる。


「聞いてる…ラッセル=ニッカ。頭突きはないだろ頭突きは……イテテ」

「ねえ!シャルがケガしたって。…イリシユ王子をかばって」

「それも聞いた。でもシャルは元気みたいだ」

「そこじゃない!……女の子が怪我したのよ?普通は心配するものじゃないの?」


(心配…か)


事の詳細は、既に噂になっていたので、フォーレも知っているし、何より先ほどケディ本人から聞いたばかりだ。

巷の話では、窓ガラスが落ちた後、その場に居合わせたケディックが救出し、どこかに連れて行った。医務室はイリシユが休んで占拠していたため、避けたのではないか、とそういうことだった。


「ケディが一緒にいたらしいから、大丈夫だろう」


すん、といつも通り書類選別をするフォーレを見て、ラッセルはため息をついた。


「それで拗ねてるのー?お子様だねぇ…」

「別に拗ねてない!それより、他にそう言ったところがないかキチンとみておかないと!」

「フォーレストって、結構ブラコンよね」

「な…?!」

「あたしはお兄様とかいないからわかんないけど…いっつも遠慮して、誰にも幸せにならないことしてる感じ!」


ぐさりと、言葉の刃が突き刺さる。


「し、しょうがないだろ…!色々と事情が」

「事情かあ……私はこれでも、フォーレストの事、応援してるんだけど。フツー好きな子が怪我したら大丈夫?って言いに行くものじゃない?」

「……」


(ラッセルの言う通り、だけど)


さっきからずっと、ケディに言われた言葉が頭の中で繰り返している。


「ファーストダンスを申し込んで、了承を貰った。意味は…分かるよな」


―――今、会いに行って…彼女はどんな顔しているんだろう。喜んでるかな?それとも。


(それを見るのが怖い)


「もおぉお…くさくさしてぇえ」

「…別に、ラッセルには関係ないだろう。見回り、行ってくる」


そのまま、バタン、と無情に扉は閉じられた。

…ラッセルは追いかける間もなく、近くの椅子に腰かける。


「うーん、なんっか、ほっとけないんだよねえ……」


ラッセル=ニッカは、アズレアでも随一の衣料メーカーの一人娘である。

アズレアシェアNO1!貴族の御用達で子供から大人まで、一人の男性の人生をプロデュースする紳士服のブランド「フィリントン・ニッカ」では、エイデン侯爵家も勿論お得意様の一人である。

ラッセルが中等部に進学したとき、同じ生徒会にフォーレストがいたのがきっかけで、以来付き合いが続いている。


(長年生徒会長と副会長のコンビをやっていたからかな?情が移っちゃったというか)


フォーレスト=エイデンは、とても真面目な努力家。

兄のケディとは違って、人が集まるような性格ではないが…ラッセルが知る限り、フォーレストは男性よりも女性に人気がある。

ケディが誰に対してもフラットで隙が無い付き合い方をするのに対し、フォーレストはどこか人間らしいというか、意外と情に脆く、とても優しい。

ラッセルからすれば、中々手の内を見せないのがケディックで、実は少し苦手だったりする。フォーレストのように素直な性格でわかりやすいタイプは、心地がいい。

だから猶更、好きな女の子がいるなら応援したいと思ってしまうのだ。


(とっとと、シャルちゃんとうまくいってたら、()()()()()()んだけどな……そしたら私も)


突然、入れ替わりにドアが開いた。


「ラッセル!いるー?」

「!!は、ハイ!っいるよーー!」

「ごめんちょっと手伝ってもらいたいことがあってさー」

「い、いく行く!ラシーちゃんにお任せーー…」


(……あれ?なんか今変なこと、考えていたような??なんだっけ)




校内を歩き回り、フォーレは各所の窓をチェックしていた。


「ここも大丈夫か…後、窓がおかしいという噂があるのは…美術室の窓か」


学校には様々な噂がある。

誰と誰が仲がいいとかそう言ったものは無数にあるが、そのほかいわゆる「物」にまつわる噂も多い。


(どこどこの立て付けがおかしいとか、あそこのドアが壊れてる、とか…意外と多いような)


それを追っていくと、本当に壊れかけていたり、留め具が外れていたり。

直せるものはフォーレが自身で直す物も多い。三階にある美術室は、いつも鍵がかかっているが、なぜか窓が開いているらしいのだ。

今日も、校庭から確認したとき窓が開いているのが見えた。

職員室で鍵を貰い、ドアを開くと。


「あ」

「え?」


丁度、開いた窓から…リッハシャルが入ってくるところが見えた。


「シ、シャル?!」

「あれ。フォーレ……?!なんでここに」

「何でここにって…それはこっちのセリフだよっ!!な、なんで…目の前に」


すると、シャルはばつが悪そうに笑った。

盛大に狼狽したフォーレだが…状況を見て、色々おかしいこと気が付く。

開いてる窓、大きく伸びた木の枝。そして…そこから侵入する女学生。

……色々と、変だ。


「あーはは…ここ、いっつも開いてて、つい」

「つい……樹を昇って窓から入るの??」

「えへへ……」


見れば、手にはグローブを装備し、弓を肩に担いでいる。


「……射的?」

「あ?!違う…はないけど!別に、人に当てたりしないよ?!そう、ゆ、弓の手入れ!美術室って、木工彫刻の余り木とかあるから!」

「…まあ、確かに結構上等な木を使ってはいるけど。だめだよ、勝手に持って行ったら」

「う、うん…ごめん」


平然と接していながらも、フォーレは心底焦っていた。


(どうしよう…まさかここで遭遇するなんて…)


先ほどまで、あれやこれやと悩んでいたせいか、ついつっけんどんな態度をとってしまう。


「ええっと……フォーレはなぜここに?」

「えっ…あ うん、見回り……」

「見回り?」


(平常心、平常心)


「今日の昼休み、上から窓が落ちる事故があったろ?…君が被害者で」


見れば、首元に巻いた包帯が少し痛々しい。

その視線に気が付いたシャルは、髪の毛で首元を隠した。


「大丈夫、ではあるのよ?全然!」

「…うん、まあ、樹を昇って窓から入るくらいだしね……」

「あ、アハハ…」

「最近聞いた、設備に関する噂を調べていたんだ」

「!噂?…どんなの?」

「美術室の窓……いつも開いているのは、立て付けが悪いから、って聞いたから」

「ああ…なるほど。これね」


両開きの窓を開いてしっかりと鍵をかけると、彼女はこちらを見てにっこりと笑った。


「ねえ、その校内見回り…私も一緒にしてもいい?」

「一緒に?…それはダメ」

「ええ?!」

「ケガしてるだろ?ていうか、大事故になるところだったんだ!なんで平然としてるんだよ!」

「けがだって、ほんのすこーし切ったくらいだし!ケディも直してくれたし、平気だよ」

「!!」


(そうだ……ケディが事故直後、シャルを助けたって。あ、そうか…その時、シャルに)


ずきん、と心が痛む。


「………ファーストダンス、OKしたって」

「え?」

「ケディと」

「あ、う、うん…勝負に負けちゃったし」


むくむくと湧き上がる得体のしれないものが急にしぼんだ。


「し、勝負……?」

「そう。一度、本気出した天才剣術士・ケディック=エイデンと戦ってみたくて。つい、無茶無理な賭けをしちゃったの。…それで、見事敗北」

「……そりゃ、勝てないだろ。っていうか……それだけ?!」

「そうだよ?」


思っていたモノとは違う答えが返ってきて、フォーレは絶句した。


(え?勝負して…負けた、だけ)


そして、あまりにもあっけらかんとしたシャルの様子に、ある疑問が浮かび、はっとなる。


「あの…シャルは、それについて、どう思ってるの…?」

「それって…ファーストダンスの事?カシオスが言っていたわ。男性側には初めてをエスコートできる度量が注目されて、女性は、以降のダンス相手を選ぶ基準がその人になるって」

「!!!…しかも、カシオス殿下が」

「……え、何その反応。ち、違うの?」

「……俺は今、少しケディに同情をしてる……」

「な、何何なに?!…みんな意味深けに言うけど、どういうことなの?!」


(嘘だろ…?そうか、シャルには女性の身内がいない…だから、そこは重要視してないのか?!)


ふと、カシオスはそれをわかっててわざと言ったのでは、という確信を感じた。


「あー…っと。シャル…これを男性の俺から言うのはちょっと気が引けるんだけど。そ、そうだな。うちの父上と母上の話をしようか」

「え…侯爵様と、ゼネシア様?」

「うん。うちの両親て、いわゆる…政治的ではなくて、恋愛結婚だったんだ」

「え?!そうなの!すごい…ステキね」


(あ、そう言う感覚はあるんだ)

そこは、なぜか安堵した。


「それで…先王クロム様の奥様、アステル様と親しかったのもあって…元々父上も母上と面識は昔からあったみたいだったんだよね」

「うんうん」

「で、二人がデビュタントの時、母上が父上にファーストダンスを申し込んだんだって」

「う?うん……その、どういう意味があるの?」

「親族との最後のダンスをした後の初めての相手……それを、事前から約束をするっていうのは、その。フライング・エンゲージって言って、今後はあなた以外とは踊りませんっていう暗黙のアプローチなんだよね」

「?…??あなた以外は踊りません、て」

「つまり、女性側から言うのは「あなたに捧げる、心を通わせている」っていう周囲に対する無言の宣言で…逆は」

「逆。……逆は、私?あれ?」


――いや、これ以上は辞めておこう。

(言いたくないし、俺が言うことじゃないし)


「……これ以上は、当日ケディに聞いて。ほら、今日は帰るよ!」

「え?え?え?」


勝手に悩んで、空回って。

言わなきゃよかった…でも、心は晴れ晴れとしてる。


(先を越されたけど…まだ、負けてない。)

読んでいたき、ありがとうございます!また読んでいただけたら幸いです!うじうじしてんなあ、フォーレ…。でも、ガチな本命が多そうな子だと思ってます。

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