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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第7章 人生、二度目のアオハルはまさかの戦場だった。

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第69話 ルドヴィガ令嬢の花婿候補リスト2 ケディック=エイデンの本気


「あれ?なんだケディック。随分とご機嫌じゃないか」

「ん?まあな!」


名前は、ケディック=エイデン。

緑色の瞳に、ヘイゼルの髪は光によっては透き通って見える。

その華やかな容姿もあって、彼の周りには自然と人が集まる。基本的に明るくて人当たりのいい性格で、誰とても仲良くなれるコミュ力を持っている。

女性よりも男性の方に好かれる傾向が強く、一見すると友人はとても多い。


「なんだよ、さぼってたかと思えばその笑顔。何かいいことでもあったのか?」

「それは内緒!……でもまあ、僕にとっては本当にうれしいことが起きたのさ!」


だが……実のところ、誰とでも平等に接してはいるが、親友と呼べる人間はあまり多くない。むしろ、人付き合い全般で、誰に対しても一線を画している。

それは、ケディックが数少ない侯爵家の嫡男であり、同時にあらゆる場面で多くの人は彼を一人の人間ではなく、「侯爵家の跡取り」という肩書で見ていることに起因している。

彼自身、誰に対してもフラットに、そして警戒心を抱いて接しているからかもしれない。


「よし、チェック」

「……はあ、また負けた」

「ルウトはいい奴だな。非情になり切れないところ、昔からかわらない」

「盤上演習でお前に勝てる奴はそういない……」


盤上演習…いわゆる、ボード型戦略術実習というもので、六角形の盤面(ヘキサ・ステージ)という。

『地形』『廃墟』『建物』がそれぞれパズルのピースのようにはめ込まれたフィールドで、いわゆる立体チェスのような、駒を動かす盤面授業である。今回のテーマは「個人戦」。

全部で4人でチームを組み、与えられた五個のコマ(王、城、騎、歩兵×2)で勝負を進めるものだが、全員の持ち城にケディの駒が置かれている。


「大抵の奴は、お前と試合したらそのギャップに驚くだろうな…ほら、みてみろ。」


ルウトはそう言って、コテンパンに負かされ、肩を落とす学友たちを指さした。


「別に、僕は必要なところに必要なものと情報を置くだけだよ。…あとは、地形の利、確実に駒を使っていけば、自然と道が出きるじゃないか」

「それが全員出来れば苦労しはしないって。それにお前は容赦って言葉を知らないから」


ルウト=ヴィレンツェは、ケディックの数少ない【友人】の一人。

幼いころからの付き合いで、双子と仲が良い。包み隠さず物事をはっきりと言うところが、よく気が合う。


「容赦ねえ…そんなものに何の意味がある?」

「面白そうな戦い方をするな、ケディは」


ざわ、と周りはざわめく。


「カシオス。…どうだい?僕と一戦!」

「……うん、いいよ。面白そうだ」

「じゃあ個人戦にしようか!持ち駒は全部で5個。何だったら、もっと増やしてもいい」

「そうだな。…それより、余興として、これを使わない?」


カシオスがそう言っておいたのは…『女王』のコマ。


「それぞれの陣に女王を一つ。駒は『城、騎兵二個、歩兵、弓兵、王、女王』――全部で7つ」

「……いいね。じゃあ勝利条件は王の撃破ではなくて、女王の奪取。それでいい?」

「受けてたとうか」


すると、戦術教官の一人が、その様子を面白そうに見た。


「ふむ…なら、せっかくならフィールドも、私が作り直す。地形効果は有効だ。森は移動ー1、高台は+1。補給ルールはどうする?」


すると、ケディはカシオスに促した。


「駒かいルールは、カシオスが決めていい」

「…へえ、自信があるのか。なら、補給による駒の復活はなしでいい。マストアタック制…隣接すると駒同士の戦闘を必ずすること。どうだろう?」

「いいよ」


二人のやり取りを見守るルウトだが、それよりも王子殿下に対して物おじしないケディが気が気ではなかった。


(この状況をフォーレが見たら絶句するだろうなあ……)


「では、審判員は私がする、…では、賽を振る。偶数はカシオス、奇数はケディックが先行だ」


そして、戦闘開始のベルが鳴る。

途端に空気が張り詰め、クラスメイトは二人の動向に全員が注目する。

ケディは軽く笑みを浮かべたまま…だが、瞳は盤面を鋭く見据えている。対して、カシオスは顎に手を当て、白刃のように銀色の瞳はすっと冷え込む。

カロンと落ちたさいころは2を示した。


「じゃあ、僕が先行か」

 

カシオスは真っ先にクイーンを動かし、盤面の右下…高台の地形に設置した。


「へえ、カシオス。あなたは女王を隠さないんだね」

「守ればいいだけの事。隠れていては、心配だろう?僕にとっては王よりも重要なものだから」

「なら、こちらもクイーンを…」


そう言って、ケディは盤面右側の森地形にクイーンのコマを設置する。


「クイーンは象徴だけど、どの駒よりも強いからね」

「…君は隠すんだ」

「そう。森は視界が狭い。弓兵の射線も通りにくい。…さあ、次の一手をどうぞ」

「……では、これで」


カシオスは次の一手でキングを前に出す。


「単騎突撃?意外だな…思ったよりも、好戦的だ」

「なら僕も」


同じような対極の位置にケディはキングを置く。

それを見て、ルウトはうなった、


「……そんなに前に出たら、一息で倒れてしまうんじゃないか?」

「隠れてしまえばいい。森の地形効果を使ってしまえば手が出せない」

「なら…僕は正攻法で行くとしようか」


カシオスはナイトを前進させ、自分のキングの横に置いた。


(でも、ケディの狙いはそこじゃない…何処だ?)


「君のクイーンを狩りに行けばいいだけの事…僕は弓兵を動かすとしよう」

「……では、こちらは歩兵を」


そして、淡々と戦闘は続いていく。

戦局が傾いたのは…カシオスの騎兵のコマの内、一つが歩兵の挟み撃ちに会った瞬間だった。


「!…いいのか?ナイトの後ろにはもう一騎いるよ。二人を犠牲にしてナイト一人を葬ることになる」

「でも、歩兵は一人残る。そして、隣接したときマスト・アタック方式なら、地域効果であなたはこのナイトで歩兵と始末しなければならない。…つまりは、他の駒の動きは完全に封じられたわけだ」

「……囮、ね」


湖と森が背後にあっては、ナイトはその場所から撤退することもできない。

つまりは、ケディの言う通り、ナイトは戦闘でターンを消費してしまった。


(なるほど、やられた…)


「まだ、だよ。…カシオス、僕の狙いは、女王の奪取」


そして、二手目で森に入った弓兵の射程距離が到達したとき……女王は、ケディの弓兵の手に落ちた。


「……チェック。僕の勝ち」


二ッとケディが笑うと、カシオスは、参ったとばかりに両手を広げた。

瞬間、わっと周囲が沸いた。


「すごい…王子殿下に勝った!」

「エイデンは…手を抜かないのか」

「もしかして……俺たちでもさ」


同時にざわつく声がすると、ルウトはすかさずフォローした。


「かといって…お前らがカシオス殿下に勝てるだなんて思うなよ?…無論、ケディに全敗中で、そんなこと夢にも思わないだろうけどな」

「べ、別におもってな」

「じゃあ、今度は僕が君と勝負をしようか?」

「え?!」

「ああ、でも君らの言う通り、慣れてないから……本気でやるしかないけれど」


すごすごと引き下がる姿を見て、カシオスふっと笑った。

そして、ケディに握手を求める。


「ケディック。今回の勝ちは君に譲るけど」


ぐっと握った力を強めた。


「次はこうはいかないよ」

「…望むところだよ、カシオス。僕も譲らない……本気で獲りに行く」


そして、互いにがっしり握手を交わしたのだった。



―――放課後、わざわざフォーレはケディの教室にやって来た。


「ケディ……カシオス様と、盤上演習でバチバチにやったって」

「ん?ああ!カシオスは強いなあ!久々に緊張感のある授業だったよ」

「緊張感、て……」

「気に入らない?」


試すような言い方に、フォーレは少しだけむっとした。


「気に入らないって……そうじゃない!」

「フォーレが思っていること、当ててやろうか。カシオス様相手に、なぜ手を抜かないんだ?かな」

「……手を抜く、って。その」

「僕が盤上演習で負けないことを、フォーレは知ってるよな…僕は勝つだろうって」

「………」

「花を持たせないでいいのか、とか。相手は王子殿下だから、とか?」


身分ある者と下位にある者。

暗黙のルールとして、王族相手に本気で戦おうと思う貴族はいない。

絶対君主たる存在に刃を向けるのは、曲がり間違えば、『王族に対する侮辱』に映るからである。


「そんなこと、する方が失礼だろ。カシオスに対しても、僕自身に対しても……勝負は勝負。譲れないものもあるし、互いにプライドを持って正々堂々戦うことの何が失礼だ?」

「……!…それは」


戸惑うフォーレを、ケディは真っすぐ見つめた。


「……フォーレ。お前にも言っておくよ。僕は、シャルにデビュタントのファーストダンスを申し込んで、了承を貰った」

「!!」

「意味、分かるよね」


(あの感じでは…カシオスにも伝わっている気がするな。だからこそ、絶対に負けたくなかった)


「兄さん……本気なの?」

「………いったろ?この一年。全部を後悔しないように何もかもを全力でやるって。僕の未来は、僕自身が決めたいからね」

「勝手、だな」

「勝手かどうか……それは、フォーレが決める事じゃない」


これは、拒絶ではない。

どういったら伝わるだろうか?と考えつつ、ゆっくりと丁寧に言葉を重ねた。


「ケディック=エイデンの未来も、フォーレスト=エイデンの未来も、誰かが決めることでなくて…自分達が選んで勝ち取るものだよ。僕は決めたことをやる。それだけだから……フォーレも覚悟を決めろよ」

「覚悟…って」

「僕は一足先に望むものを見つけた。…だから、手を抜かない。それでだめなら、それは仕方がない。だから、フォーレも、本気でやってくれないと困る」

「俺も?」

「そうだよ。いやだよ、僕。お前がもそもそしてたせいで未来が決まっちゃうなんて…お前はお前。僕は僕……得意なことも、苦手なことも全然違うんだから、同じ場所でやらないと」


その言葉は、フォーレにひどく響いた。

……何かの許しを得たような。そんな気分になったから。


この盤上演習ゲーム架空だけど、やってみたい。…お読みいただき、ありがとうございました!ブックマーク等も嬉しいです。精進します!」

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