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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第7章 人生、二度目のアオハルはまさかの戦場だった。

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第66話 利用できるものを利用してみた結果…VSメガホン鳥


「ねえ知ってる?例の入学式の話…」

「あ!あれでしょ、あの黒髪の子が王子様に迫ったとかって…」


突如、ヒュン、と風を切る音が聞こえたかと思ったら…何かが壁に当たって落ちた。


「……え?」

「な、何これ…石?」

「ヤダ、怖い…い いこ!」


彼女達の目には見えない羽毛がふわふわと宙を漂う。

すぐそばの木の陰で控えていた私は飛び出し、メガホン鳥の残骸を握りつぶす。まるで空気に消えるようにそれは消失し、開いた手のひらには何も残らなかった。


「噂の種、ねえ。これで何匹目だろ…なんで私が、あの変態王子に迫らないとならないのよっ」


入学式以来、ちらほらと聞こえる噂がある。

そのほとんどが、「黒髪の子が男に迫った」的な内容ばかりだった。

勿論、第二王子と第三王子の不仲程のインパクトはないにしても、中々立ち消えることがない。そしてその噂が出始めた場所を辿っていくと、やはりあのメガホン鳥が飛んでいるのだ。

どういう理屈か知らないけど、今はもういたるところに雀や小鳥と一緒になって遊んでいる。

石が当たりさえすれば勝手に消滅するので、退治するのに手間がかからない。しかし、数が多すぎて手が回らないのもまた事実である。


(噂のメカニズム?みたいな奴も勉強する方法ないかなー…)


「あ!お嬢様!!」

「あら、エイル」


と、向こうからエイルが走ってやって来た。


「もう…従者の私を撒くご主人って、どういうことですかあ」

「アハハ、ごめん、まあでも…エイルも私にばっかりついてちゃあ退屈でしょ?」

「そんなことありませんよ…それで、何か異常でも?」

「うん…ちょっとね」


ふと、考える。

いっそのことエイルに話してみようかな?

この子は忠誠心はぴか一だし、口も堅い。私を変な目で見ることもないだろうし……それに。

ちらりとエイルの腰に下げたポーチを見る。

…実は、あの中には大量の投機と、小型のナイフが入っている。


――それは、ここに来る前の事。


「お嬢様に、先にお伝えしておこうと思いまして」

「私に?」

「はい!このポーチ…中をご覧になりますか?」


そう言って見せてくれたのは、いつも腰に付けている丈夫ななめし革でできたベージュの携帯用ポシェット。大きな鷹の刺繍があり、赤と青の紐でくくられている。

雨風に強そうなこの造りは…恐らくうちの騎士団にちなんだもののような気がする。


「リッハシャルさまは、私がルドヴィガの騎士団の「鷹」の一人なのはご存じですよね?」

「うん。知ってる!私の護衛に抜擢されたから、メイド業もやってるって」

「はい!」


この世界の騎士と言うのは、少し変わった制度がある。

王家に属する親衛隊や近衛、実践的な任務をこなす騎士達は王家が雇い主で、いわゆる『公務員』なるけれど……有力な家門、爵位の高い家門に属する騎士団は雇用主がその家門になる。


で、長子以外の者は成人したら自由騎士の身分になり、後に他の家門の騎士団への志願が可能になるのだ。だから、エイルのように騎士と共に何かを兼業にさせるのも、雇用主の方針次第となり…割と自由度の高い職業の一つでもある。


「私は北の山岳地の出身ですが…ルドヴィガ騎士に憧れて入団したんです!」

「正統派なエイデン騎士団や、クオンタ騎士団もあるのに?」

「だって!ルドヴィガの鷹と言えば、隠密専門…カッコいいじゃないですか!…で、このポシェットの中身はと言うと」


す、と赤い紐を引っ張ると、ふたがはがれた。

そして、ジャラ…という重そうな音が聞こえてきて、私は驚いた。

ずらりと並んだ投擲的武器差しに一変したのである。


「え?!すごっ」

「えへへ―。おほめ戴きありがとうございます!凄いでしょ?私の母の手作りなんです。で、青い紐を引っ張ると」

 

シュルルと元のポシェットの形態に逆戻った。


「わあ…カッコいい!」

「と、言うわけで…何か危険があっても私が必ずお守りしますから!このエイルちゃんにお任せを!」


―――と、言うわけで、彼女は投げ武器専門の護衛騎士でもあるわけで。


(メガホン鳥退治に使えそうな投機…ありそうなんだよね)


すると、丁度すぐ近くにのろのろと浮遊する小さい、メガホン鳥を見つけた。そいつをわしづかみ、エイルに見せてみるけれど。


「コレ、見える?」

「…??見えない何かが、お嬢様の手にいるんでしょうか?」

「だよねえ……」


何か、可視化できるようないい方法はないだろうか?


(あ、そうだ)


「…実は、リッハシャル・ルドヴィガは、イリシユ王子が大嫌いらしい」

「それは…存じてますけど」


すると、メガホン鳥は急に発光し、勢いよく飛んでいった。


「…風?」

「あ、それはエイルも感じるんだ」


(なるほど、噂を吹き込めば発光する仕組みなのかな?サイズも一回り大きくなったし)


「エイル。今、私はある一つの噂をばらまくことに成功したわ」

「噂…さっきのは、真実であって噂になったところで…」

「そ、そうじゃなくて。それは私を知っている人が見たら周知の事実だけど、他の人はそうじゃないでしょ?だからいまだに私が、イリシユに迫っただの求婚しただの、意味不明な噂が広がるのよ」

「それと、さっきのは何か関係が?」

「実はね…私は誰にも見えない噂の種と言うか、発生源が見える特殊能力を持っているの」

「?!そ、そうなんですか??」


うーん、この子はほんと素直で、だましてるわけじゃないけど……良心がちょっと痛む。


「まあ、ちょっと数日待ってみて。あの噂…すぐ広まるよ」


そう、これは実験。

あのメガホン鳥の生態を研究するためには…逆に利用してみて、効果を確かめないと。


(どうせなら…こっちに利益がある噂を流さないと)


噂がばらまかれて、イリシユが私を避けるなら万々歳!

そう思っていたけど。


「僕を嫌いだという噂を聞いたけど…本当なのか?!リッハシャル=ルドヴィガ!」

「………」


(まさかご本人が登場するなんて…)


現在、私は食堂に向かってる最中。

そしたら、なぜか、例の取り巻きの子たちと一緒にイリシユがやって来た。


「あの…何の話ですか、突然」

「そう言う噂を聞いたもので、いてもたってもいられなくて…!」


…の割には、どうしてこの人の目は輝いているのかしらね。


「そーよそーよ!」

「ひどいわ!」


(うるさい取りまきの女の子達だなあ…メガホン鳥もうじゃうじゃいるわ)


「噂の通りです…王子殿下と言えど、私の個人的感情は変えられませんわ」

「そんな…!それを変える方法はないのか?」

「ありません。こういう、道端で声をかけるのも…正直迷惑ですから」

「…迷惑?どんな風に?」

「え…だから」


ぐぐっと、前のめりになるこの王子様は、めげるところか、むしろ喜んでない?

え?もしかして、そう言う…冷たくすると喜ぶ系?


(き、きもぉ……)


瞬間、考える。

どうしよう…いくらでも冷たい言葉も軽蔑する言葉も並べられるけど…!それを言うと、この人は喜ぶってこと?え?じゃあ嫌いって言ったら大好きになるの??


「さあ!もっと!僕が嫌いなんだろう?!」

「もっとって……えぇ…」


どうしよう。どうやって振り切ろう……。こんなの初めて!

その間、多分数秒だろうけど、宇宙が見える…っ。


「何なの……イリシユ様を独り占めして」


ぼそっと聞こえた声。


(え?今の気のせい?)


ふ、と嫌な気配を感じ上を向くと…一瞬メガホン鳥っぽいシルエットが見えたような気がした。

そして…急激に膨らんで、はじけた。

同時に、どこからかミシ…っという音が聞こえたかと思うと…悲鳴が上がる。

まるで映画のワンシーンみたいに…上から小さな窓ガラスの破片が降ってきた。


(ガラスが…降ってくる?!)


「お嬢様!」


咄嗟にエイルの声が聞こえて…何処からかイリシユ様!みたいな声も聞こえた。

でも、迷ってる暇はない。


「伏せて!」

「え?え?」


ぐ、とイリシユの腕を引っ張り、

そのまま押し倒す。


「…っ!」

「きゃあーー!」


は?きゃあって…イリシユの悲鳴??


「ふつう逆じゃない!…ったくもう!」


私が毒ついた瞬間、ガシャン!!と派手な音を立てて、破片が飛び散った。


「…ふう」

「……っ……」


がくがく震えるイリシユと至近距離で目が合う。

気持ち悪い男子だなあと思いつつ、手を差し出すと、彼は恐る恐る手を伸ばした。

そのままグイ、と引っ張り立たせ、制服についた破片と埃を払ってあげた。


「一応、医務室に行かれた方がいいかと」

「…あ、助けて、くれたのか…?」

「王族を守るのは、私達の役目でもありますから」

「…!!」


(…ん?なんか、何だろう…寒気が)


「リッハシャル様!!!」

「エイル…」

「お怪我は?!すみません!!私がいるのにっ」

「いいから、とりあえずここから離れよ」


ちらりと呆けたイリシユを見る。

わらわらと人だかりができているので、まあ無事だろう。


「シャル!大丈夫か?!」

「あれ?ケディ?!何でここに」

「いや、騒ぎがあったの見てたから…そんなことよりけがは?どこか痛いところは」


すると、さっと顔色を変えて私の頬に触れた。


「…血」

「え?!あ…鏡ないからわかんないけど…うわ?!」

「医務室!!血、すごい出てる!!」

「えええ?!!…い、痛くないけど」


そのまま軽々私を抱き上げて、その場から連れ出してくれた。


(こう、行動力……)


「あ?!ちょっと待って!医務室は嫌。イリシユが来る!」

「は?そんなことどうでも」

「お願い、ケディ…なんかあの人苦手なのよ……」

「シ、シャルがそう言うなら…あ!そうだ」


すると、ケディは急ブレーキを踏んで、全く反対側の方向に走りだしたのだった。


「?!こっちって…剣術訓練場?」

「そう。あ、エイルさんもついてきて!迷いやすいから」

「は、はい!」


(…とりあえず、ちょっと安心した…何なのあの変態。それに、あの窓)


「……ダメだ、考えるのはひとまずやめよ」


こういう時、身体が大きいケディは寄りかかりがいがあるなあ、と、そんなことを思った。



読んでいただき、ありがとうございます。

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