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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第7章 人生、二度目のアオハルはまさかの戦場だった。

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第65話 ダンス再び?……VSセフィール


名称【メガホン鳥HP10 特徴:羽根の生えたメガホン形状で噂があればどこへでも飛ぶ。誰かが呟くと、それを察知し、引き寄せられる。その後、人に伝わるごとに成長、分裂を繰り返していく生態である】


瞳を閉じると、浮かび上がった辞書にはこう書いてあった。

パッと目を開くと、…そこは、私の寮の部屋。

貴族階級の恩恵もあり、有難いことに一人部屋・1LDKである。ちなみにエイルの部屋は、隣に二畳ほどの部屋があり、何かあったらすぐに飛んできてくれる造りとなっている。


(分裂を繰り返すって…だから妙に小さいのがうろうろしていたわけだ。)


つまり、あれが全部【噂の種】……、あの時、イリシユの周辺に突然現れたのも、そう言う理由?

そもそも何であんなのが突然出現しだしたのだろう。


「やっぱ、こいつ?」


私は、家から持ってきた例の日記を手に取る。

本日の内容は―――「あの子、メイド服似合うかな」で、ある。


「………ッ こんのゴミがッ!」

「お嬢様?!」


ベシン、と床にたたきつけると、エイルが心配そう顔をのぞかせた。

…しまった。


「あ、大丈夫…ちょっと気持ちを落ち着かせるために本を床に投げただけだから」

「……お疲れですか?何かあったら、呼んでくださいね……?」

「ありがと……ふぅ」


何なのコレ。見間違いじゃないよね?!

最近「つぶやき」みたいになってきてて、まるで見たくもないスレッドが延々と続いているような…読みたくもない奴のフォローをしているような、そんな気分になる。

いっそ、破るか燃やす貸してしまおうとも考えたけど……これは内容がどれほどクソであろうと、これから絶対に必要になる、そんな気がしている。

ただ、象徴的なヒントもいくつかある。

例えば「コンカフェ」とか、「ヌルゲー」とかそう言うこの世界に絶対にありえない言葉がいくつかあるということは…この主は恐らくある程度の成人男性で、それなりに収入がある身分…もしかしたら、会社員とかだったかもしれない、と思う。


「今分かるのはここまでかな……あとは」


再び目を閉じて…浮かんだのは、今私が使える神様ガチャアイテムのストック。

まるっきり忘れていたし、もう使うこともないと思っていた過去の遺産だが、面白いことに不要なアイテムを練成(?)して、使えそうなものに変換できるらしい。


(これから増えることはないから……使えそうなものは、使うようにしよう)


一度だけ開けれる魔法の鍵、体力増進チケット(時間制限あり)、空を飛べる等々。

好感度チケットだのはもう必要ないので、Nランクチケットは、ランクアップアイテムに……必要なのはやっぱり鍵開けとか、能力向上系?

そんなことを延々と繰り返し……朝を迎えてしまった。


「やっぱりお疲れなのでは?顔色が良くないです……」

「あ…へへ。大丈夫だいじょーぶ……」


(しまった、徹夜をしてしまうという大失態……)


そんなぼーっとしている間に、エイルは手早く私の髪を整えてくれた。

今日はざっくりねじりの三つ編みサイドハーフ。うん。これなら前かがみになっても垂れてこないし、華やかな印象になる。


「今日はダンスの講義がある日でしたよね?丁度ターンすると綺麗に見えるように整えました!」

「……え?あ そうか、ダンスの初講義…あー、うん」

「お嬢様……もしかして、忘れてました?」

「…へへ」


そう、すっかり私の頭の中ではすっ飛んでいた。

……デビュタントが、あと二か月後に控えていたことを。


「お嬢様。…他のお嬢様方はもぉうっきうっきですよ?!なんたって、ダンス講義の先生があの方なんですから!!」

「あの方?って……?」

「では、この髪飾りで、差をつけちゃいましょう♪」

「??」



エストランテ学園、高等部内内部にある小ホール。

一台の大きなグランドピアノと蓄音機が置いてあるこの場所は、主にダンスの練習として使われている。

男女混合で行われる授業の一つで、デビュタントが始まる四月から五月にかけて集中的に行われ、全学年合同の公開ダンス授業も月一で定期的にある。

お目当ての他のクラスの異性と交流したりもできる為、生徒たちはその日をめがけては猛特訓する。これも一種の社交授業で、一度踊ったパートナーとは、二度は踊れないルールもあるらしい。

そんな、学園のメインともいえるこの授業……なぜ他のお嬢様方がうっきうき。なのかと言うと。


「初めまして。ダンス講義担当、講師のセフィール=ヴァラモです。よろしく」


きゃ、とかウッとか、小さな悲鳴が聞こえる……ああ、この圧の強い張り付いたエンジェル・スマイル。

もうすでに何人かの女の子が眩暈を起こして倒れそうになっている。対照的に男子生徒たちは、と言うと。


「本物だ…」

「実在したんだ…!すごいな…洗練されたあの佇まい、第三王子に負けていない…!」


(え、男子たちにも人気なの、この人……うーん、カリスマってやつ?)


「今回は卒業生の特別枠の講師として、ここに立っている。皆、ダンスの基礎と言うのは習得済みだろうけど、ただ知っているだけでは、大人たちもそろう社交の場ではあまり役に立たない。あらゆるシチュエーションやトラブルにもきっちり対応できた時、君たちは自らの価値を高めることになる。…覚えておくように」


本当、この方は歩くだけでも華やかさがあるし、姿勢も崩れない。

彼が言う言葉はとても説得力があるし、手の先の仕草、立ち振る舞いも堂々としていて、とても綺麗だと思う。視線一つで男も女も虜にするのは、才能なんだろうけど。


「………では」


(こっち、見んな……この人は、顔が綺麗すぎて苦手だわ)


「最初の手本に…リッハシャル=ルドヴィガ」

「っ?!」

「お手合わせ、願おうか。デビュタントでは王宮円舞曲の8番が必須……できるね?」

「……はい……」


うわあ、気まずい……全員の視線が痛い。

何っでわざわざこの人は…。と考え、はっとなる。


「俺も()()()()だから、よろしく」


そう言えば、噂で聞いたことがある。

あのアリスト・クラッツ・フェアー以降、この人は公の場で誰ともダンスを踊ってないって。


(まさか?な…なんで??え、そういうものなの?!)


「ほら、他の事を考えている余裕はないよ」

「!」


そうだわ!切り替えていかないと。

ここで失敗したら……


「何よ…」

「お手本になるほどお上手なのねえ」


(――色々とマズイ…そうよ!!これは授業!ただ模範として!!行くよッ)


蓄音機特有の座座、とノイズが一度走ると、流れるようなヴァイオリンの音が広がっていく。


「その調子……やっと、君と踊れる」

「職権乱用って言葉、ご存じですか?」


にっこりと肯定とも取れる笑顔を見せる、セフィール。


「まずは基本姿勢とホールド。腕の力で支えるのではなく男性は肩甲骨から腕を前に出し、パートナーと一定の空間を作る。大きな円を意識して…背中から緊張しすぎるとこの時動きが硬くなり、その後の流れが台無しになる…まずは互いにリラックス。手の握り方はこう。」


そのまま大きな手が包み込むと、私の身体は少し引っ張られた。


「!」

「肩に力が入りすぎているよ。気合いを入れるのはいいけれど…」


失敗は君の望むところではないだろ?とでも言いたげな表情。


(く…なんか悔しいッ。確かに姿勢が楽になったしっ!)


「次…互いに胸を張り、男性の手は肩を下げ、肩甲骨に。女性の手は男性の右腕に。これが基本ホールド姿勢…つま先を意識して、左にスライド、ナチュラルターン……」


その後も流れるように次々と、スライドステップ、ナチュラルターン、リバース…と、基本ステップのルーティンを繰り出していく。

何とかこなせるものではあっても、実践的なところは自分でもわかるくらいに拙く、ほとんど見えないところでの彼のリードのおかげで、何とか私はこの窮地を脱したのだった。


「で、クローズど・ホールド……と、ここまでが宮廷円舞曲の全容。基本の繰り返しをいかに美しく見せるか……そこにダンスの真髄がある」


す、と名残惜し気に手を離されると、私はそのまま元の位置に戻った。


(…っなぜかしら、この敗北感と疲労感を同時に感じてしまう)


すると、ククナが目をキラキラさせて迎えてくれた。


「すごいね!シャルちゃんステキだったよっ」

「そ、そう…?ひとまず、ミスはしなかった かな」


ちら、と周りを盗み見ると……あ、男女ともに皆目がハートになってる。

私の事など、もう眼中にない。

セフィールのカリスマ性に助けられたと言っても、過言ではなさそうだ。


「……セフィール先生、ねえ」


彼の実力は認めざるを得ないし、教え方も上手で……講師としては本当に適任だけど。

私は、彼にも周りにも、のまれないように本当に気をつけよう……。


「リッハシャル」

「!」


帰り際、セフィール先生は私のところにやって来た。

さっきまで女生徒たちに囲まれていたのに、どうやって抜け出してきたんだろう?

と、廊下の窓際できゃあきゃあと言う女のコたちの声が聞こえた。


「こういう時、無能な主でも役に立つときもある」

「むっ……のう、ですか……?」


それって、もしかしなくてもイリシユの事だろうか。


「その髪飾り」

「え?」

「もしかして、無自覚だったかな。だとしたら…君の侍女にいつか礼を言わないと」


さっと私の頭に触れると、赤い金の刺繍が入ったリボンをほどき、口付ける。


「あ!それ……あっ」

「後ろ、むいて」


さら、と髪が解け、開いた窓から風が流れた。

セフィールが盾になってくれたおかげで、私の髪はそれ以上崩れることはなかった。

そしてぱぱっと髪を整えると、満足げに笑う。


「はい。うん……よく似合う」

「あ、ありがとう、ございます…」

「では、次の授業で」


去り際も優雅。

その後姿をぽかん、と私は見送るしかなかった。

ああ、顔が好みなのって本当、厄介よね……。



読んでいただきありがとうございます!評価やブックマークもありがとうございます。きゃっきゃうふふな学園編です…また読んでいただけると嬉しいです。

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