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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第5章 主人公(仮)VSヒロインにさせられそうな主人公

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第48話 双子の心の内②


「あ、手紙!…シャルからだ!」


それは、春の日差しが暖かくなってきたある日。

窓から柔らかい光が白い封筒を照らし、ケディック=エイデンあての名前を映す。ルドヴィガ伯爵家を冠する五弁のブルースターの花は、後継であるリッハシャル専用の模様だった。


(簡潔な内容に、軽い挨拶。…シャルらしい)


「あ…そうか、明日帰ってくるのか…!」


迎えに行こうか、などと考えていると、弟のフォーレがノックもなしに部屋に入ってきた。…その表情はどこか怒っているようで…呆れているようにも見える。


「また、さぼったな」

「さぼったというか…回避したというか…おっと」


ずい、とこちらに向かってくるなり胸倉をつかむ。


「ケディが来ないせいで、俺が行く羽目になったじゃないか…!」

「あのサルーンは、僕よりフォーレの方が顔見知りも多いだろ?…僕が行ってもみんな喜ばないって」

「そう言う問題じゃない!!」

「こら、手を離せ。シャツが伸びる」


尚も力が強くなってきたので、仕方なく手刀で払う。


「ったく…いつになく苛々してるじゃないか。…また、断ってきたのか?」

「!…ケディに関係ないだろ」


エイデン侯爵家には、嫡男が二人がいると言われている。

先に生まれたのは僕だけど…ひとりは勤勉、社交界にも知られているフォーレスト=エイデン。

そして、一人は剣術の練習ばかりに打ち込む社交界に怠惰なケディック=エイデン。

16を過ぎ、社交界にも顔を出す機会が増えた僕たちは…少しずつ、色々な【差】が出始めていた。


「誰にでもいい顔して対応するから、勘違いする女性が増えるんだろ。誤解されてもしょうがないよ」

「……今日も聞かれた。エイデン家はどちらがお兄様で、どちらが弟君なの?って」

「まあ、事実上は僕が兄だけど…今はフォーレが後継だって言っても、みんな納得するんじゃないか」

「だから!そう言う…」


そう、僕は…この侯爵家を継ぎたくない。


「なんで?…お前だって、そうじゃないの?」


僕とフォーレは双子だ。考え方も、感情も、プレッシャーも…形が違うだけで結論は同じ。自分のことのようにわかる。

でも、一つだけ違うことがある。それが…


「感情の問題じゃないのくらい、わかってるだろ?!俺は次男で、ケディが長男!!…それは変わらない」

「生まれた順番?…そんなの、どうでもいいだろ。望むものが望む地位に就く…自然なことだ」


フォーレは昔から…その座にこだわっているのを、僕は知っている。

山のように来る夜会の招待の目的は、「次はどちらが爵位を継ぐのか?」「継がない方を、うちの家と縁を繋ぎたい」ほとんどそれだ。

だから、そう言った場所でフォーレは女性に人気が高い。


「そうじゃなくて!!…俺が言いたいのは」

「僕は行かないよ…お前が行けばいい」


いつしかその【差】は…埋められないくらい、深い溝になっていた。



「…あなた達、またケンカしたの?」

「ケンカ…じゃなくて、意見の相違だよ」


朝一番、中庭で騎士達の訓練に混じっての練習を終え、部屋に戻って来た時…母の第一声はそれだった。

現在3歳になった妹のアメリが駆け付け、僕の身体に抱き着いた。


「ケイお兄様!」

「こら、汗臭いよ、僕」

「ほんとだ、くちゃーい」

「うっ…は、はっきり言うなあ」

「高いたかーいして!」

「はいはい!ほら!」


キャッキャと喜ぶ妹とひとしきり遊ぶと、むすっとした表情のフォーレが顔を出した。

目が合うと、ふい、とそらし、小さくつぶやく。


「出かける」

「あら何処に?」

「…ちょっと、帰りは遅くならないと思うけど」


いつもよりどこかそわそわして、服装もしっかりと洒落たものを着ている。そして極めつけは…胸元の青いハンカチ。


(あいつ…)


そそくさと出ていくフォーレをしっかり見送った後、立ち上がった。


「僕も行こうかな」

「あら、あなたまで?」

「うん…多分、フォーレと目的地は同じ気がするけど…」

「…?あ、もしかして」


みるみる母は顔をほころばせた。


「ちゃんとエスコ―トしてあげるのよ?ケンカしないで、二人で、ね!」

「……状況による」


そう、青いハンカチはあの子と同じ瞳の色。

先を越されたか。やっぱり、考えることは大体同じだなあ、とため息をつく。


(あの子なら…シャルはなんていうんだろう、今の僕らの現状……)


ちゃんと顔を合わせて会うのは…恐らく一年ぶりくらいか。

僕らが中等部を卒業したあたりから、シャルはルドヴィガ伯爵家の後継教育を本格化させているらしく、会う機会は激減してしまった。

今回の隣国の視察もその一端らしく、高等部の入学に合わせて帰るという日にちが今日。

つまり、フォーレも彼女に会いに港に行ったんだろう。

港があるポートエリアに行くと、いつもよりも人通りが多く、どこか浮足立っている。大きな船や、他国の商船が停泊する時の独特の雰囲気で、商売っ気のある連中は一斉に露店や屋台を広げ、一種お祭りみたいな空気になる。…それが、実は結構好きだ。


「へいヘイヘイ!兄さんイケメンだねえ~イケメンは可愛い女性にプレゼントを贈るものだよ!」


そう言ってよくわからない文句で呼びつけたのは、肌が朝黒く、眼も黒い。……恐らくランザ王国からの商人だろうか?並べられているのはアズレアではめったに見ないような薄緑色のネックレスや、色とりどりの反物ばかり。


「へえ…すごい。色んなものがあるね」

「おうよ!…どうだい。これ!翡翠っていうんだ、綺麗な髪飾りだろ?」

「髪飾り?…細工が細かいな。なあ、じゃあカメリア?だっけ、あの花の細工のものもある?」

「いいねえ、お目が高い!あーでも髪飾りは売れちまったけど、こっちの櫛ならあるよ!」


そう言って見せてくれたのは…赤い塗料が塗られた五弁の花の意匠の櫛だった。


「こりゃあ、漆塗りって言って、結構貴重なんだよ?今ならこの刺繍の袋もつけるよー」

「じゃ、それを」

「はい毎度!」


(ものはよさそうなのに…みんな遠巻きに見てる)


確かに見た目は異なるかもしれないけど、何がそんなに気になるものか?と疑問にすら思ってしまう。

まあ、だからこそ、逸品を見つけてこうして購入できるわけだけど。

すると、進んだ先が妙に騒がしいことに気が付く。


「…ん?」

「こらこら、押さないでくれるかな」


(うわ…あいつ)


かぐわしい香水が漂うその中心にいるのは…最近有名になってきた、第二王子イリシユだった。

身分を気にせず、街を歩いては女性を引き連れている……という噂は、いくら社交界に疎い僕の耳にも入ってくる程有名な話。

今もほら。大量の女性に囲まれている…


「まさか、本当だったとは…んで、あっちにいるのが」


そして、もう一つ…そのお目付けというのが。


「はあ…素敵」

「憂いた顔をしてらっしゃるわ…何を見てるのかしら」


憂いた横顔で、街灯に寄り掛かりながら港の方を見つめる一枚の絵画……ではなく、いとこにあたるセフィール=ヴァラモらしい、と言うのだ。


(混ぜたら、だめだろ…あんな危険なやつら)


随分と巷をにぎわす美形な連中がそろって何を見てるのやら。

…ん?待てよ?


「第二王子は知らないけど…セフィールって確か」


シャルにダンスを申し込み、バッサリと切られた話は有名だ。

むしろ、自分もあの場にいたので、色々な要因で場を滅茶苦茶に壊されたセフィールに同情すら覚えた。以来セフィールはよほどのことがない限り自分から女性にダンスを申し込まないらしい。

それが結果的に女性ファンたちの人気に拍車をかけているわけだが。


(まさか…シャルに会いに来た…わけじゃないだろうな?)


目立つ二人を横目にしつつ、こっそりとその場を抜け出す。

だだっ広い広場の向こうに、大型船専用の停泊所が見えてきた。今もどこかの商船が停まっているようだが、その二つ横のドッグスペースが空いている、となると。


「あそこかな、ランザの定期船…ん?」


そして、見つけてしまった。人ごみに紛れて自分とよく似た人影が。


「やっぱり…フォーレ、みっけ…あれ?」


しかし、隣にいる女性は誰だろう?


(あれ?あいつついに彼女ができたのか…?!)


こっそり近くに行き、様子をうかがう。


「ねーねーねー船まだかなー♪」

「…先輩、うるさいです」

「も――フォーレ君は相変わらず、固いねえ」


目が覚めるような派手な金髪…中学時代、生徒会でフォーレと並んでるのを何度か見た。


(えーっと…あ、そうだ。服装メーカーの令嬢、ラッセル=ニッカだ)


「あれ?二人は一体…」


すると、ひときわ大きなラッパの音が鳴り響く。

穏やかな水平線に浮かぶ、ランザの国章旗…赤い太陽のような模様は青い空に良く映える。途端に港は沸き立ち、海兵隊が錨を卸す。

次々と荷物が下ろされ、いよいよ搭乗していた人々がおりてきた。


「あ…レイドックおじさ…え?」


レイドックらしき人影を見付け、続いて見つけたのはその娘のリッハシャル。…と。


「シャル、大丈夫?」

「大丈夫ですから…そうくっつかないでくださいますか」

「いやいや、足を踏み外したら大変だ。…担いでおろしてあげたいくらいだ」

「カシオス様……過保護です。くっつきすぎです。近すぎです!」

「あはは…ん?」


一瞬、シャルの隣にいた青い髪の男がこちらを冷ややかな目で見つめてきた。

本来なら、理由なくにらみつけられるいわれはないわけだが…いかんせん、こちらも同じような気分だ。

その視線を臆することなく正面から受けて立つ。

…それが、始まりの合図だった。



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