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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第5章 主人公(仮)VSヒロインにさせられそうな主人公

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第45話 異文化交流


「お待たせ」

「おお!良く染まってらっしゃる。今年も良い出来ですね!」


水色に緑を足したような不思議な色合いの衣が風になびく。

カシオス様が着ているのは、短めの薄手のジャケットに似た、ランザの軽量正装【シェルワニ】だった。巻いているストールは青に薄い緑を足したような不思議な色で、つい見入ってしまう。


「すごくきれいな色…青だけど、青じゃない…緑、でもないし」

「これは、この時期にしか出せない色…水浅葱という色だよ」

「水浅葱?」


なんとも懐かしい言葉のイントネーション。


「綺麗な色でしょう?鸞坐王国にとって、たくさんの野草が競うように咲き誇る今の季節は、染職人の我々にとって、いい季節なんです」


そう言って、水浅葱の生地をじっと見つめるロズハンさんは、どこか誇らしげだ。


「…何か、特別な理由でも?」

「若い芽しか取れない色、新緑の色…この時期にしか出せない色も多い。何より、山から下りる雪解け水がいい仕事をしますしね!」

「雪も降るの?」

「平地の方では雪は降らないけれど、山の方では普通に雪は積もるよ。低温であればあるほど、染まる色は複雑にできるんだ」

「へえ…!」


凄い、なんて贅沢な国。

思わず山の方を見るけれど、あいにく霧がかかっていて遥か上の方が目視すらできない。


「この時期下流へと流れる水の量は多く温度も冷たい為、【水浅葱】のような淡い色を作り出すには絶好の季節。…坊ちゃまの着ている色もそうです」

「…うん。綺麗…あれ?でも」


そう言えば、お父様はカシオス様ご同行するって言っていたけど…この正装は、どこに行くんだろう?

私の怪訝な表情を見て、カシオス様が何かを察したようだった。


「もしかして…これからどこへ行くかは伝えてないの?」

「……いえ、まあ。あの…黙っているというわけではありませんが」


ごにょごにょとお父様らしくない。

…なんだが、私よりカシオス様の方がお父様の事をよくわかっているみたいで、ちょっと悔しい。

代父というくらいだもの。考え方によっては、私とカシオス様は兄妹…みたいな立ち位置になるのだろうか、と妙なことを気にしてしまった。


「がはは!お嬢様。男ってのは、見栄を張りたい物なんですよ」

「見栄って…」


私の考えを見透かしたようにロズハンさんが笑う。


「そうだわ、お嬢様もうちの服、着ていきます?!」

「え?!き、急に?」

「?!ちょっと待って…シャルを正装させるのは…あまり」


なんだかさっきからお父様は何かを隠してるみたい?


「…わかりました、じゃあお願いします」

「!あ、それなら僕が選んでも?」

「え?!い、いいえ」

「うーん…それは残念。…いや、でも。セレン、いいかな」


セレンさん?とみると、どうやら奥様の名前がセレンさんらしい。

…なんだろう、この目のキラキラは。初めてマダムの店を訪れた時、こんな表情されたような


「まあまあ!もちろんですわ坊ちゃま!!では早速行きましょう!」

「うん、良し!」

「よしって?!ちょ 私は着せ替え人形じゃ」


あ、お父様の微妙な表情が目に留まる。

(もう、なんなの!知らない!)


「あ…」

「ありゃりゃ、伯爵さま。()()()のところに行くんでしょう?お嬢様に隠したくなる気持ちもわかりますけど…年頃の娘さんてのは、難しいもんですからねえ」

「いや…うーん、た、確かに」


半ば連行され、やって来たのは…工房がたくさん並ぶ岩場から少し離れたところにあるコテージのような大きな天幕がたくさん並んだ場所だった。

白い生地に鮮やかな色模様がたくさん刺繍されていて、目がちかちかしそう。それぞれ何かしらの役割があるらしく、たくさんの人たちが行き来している。


「えっと、ここは?」

「ここは、衣裳造りのコテージです。毎日たくさんの布が上がってくるから、市販生産されるものを分けた後、直接オーダーメイドとなる衣裳もこちらで制作してしまうんです」

「デザイナーさんもいるの?」

「ええ。マダム・ルーランもこちらの出身ですのよ」

「あ、なるほど…」


ざっと見る限り、ここで働いている人の中にはアズレアっぽい人も多くいるみたい。

アズレアではありえない光景だけど、ランザ王国では、国の垣根を越えてみんな同じ場所で働いているのが当然のよう。


(国によって、どうして…ここまで差が出るの?)


「シャルはアズレアに長くいるから…この国の様子は少し違って見える?」

「!はい…アズレアでは、その…」

「……うん。このランザと同じ光景というのは難しいだろうね」


カシオス様は通り過ぎる人みんなとあいさつを交わしている。

まるでそれが当然のように。


「あちらで聞くランザの話と、実際で見るランザやキアルーンのこの地方の話は全く異なっています…作為的みたいに」


そう、国が示している政治的な情報操作と宣伝広告の賜物、というものだ。

でも、何故?


「ここですわ。さあどんなお衣装にしましょうか!」

「え…」


ひときわ大きなコテージに入ると、壁一面にならんだハンガーにありとあらゆる女性の衣裳がずらりと並んでいた。中には大人の女性が着るような薄い勝負服まで…!


「え?!ちょ、ちちょっと待って?私、こんな派手な露出の高い服は着ませんよ?!」

「大丈夫。キアルーンの女性の正装は重ね着が主だから」

「何が大丈夫ですか!へ、へんな服、選ばないでくださいね?!」

「そうだな…僕はシャルがあの薔薇男のパーティーに着ていったドレスも拝めなかったし」

「薔薇男…あ、ヴァラモ家の…って、何それ…くく」


なんて絶妙なあだ名なんだろう。確かに最もらしくてぴったりの名前だ。


「……笑ってくれてよかった」

「え?」

「いや…君らしい衣装、探そうか」

「…私も選びますからね!」


あれ、なんだかいつの間にか、普通にしゃべれてる?

そうか、良かった。なんだ、案外普通でいいのかもしれない。そう思った瞬間…心の何処かで固く閉ざしいていた何かのロックが外れたような、そんな気がした。


結局…ああだこうだと色々と着せ替えられはしたものの、結果、肌の露出は控えめで!と言う私の強い意志は尊重され、タートルネックのレースを何層にも重ねたマキシレングスのシルクドレスを着用することになった。

ランザの女性が着る正装は、長い布をたくさん重ねて着る物が多く、一枚だと透けて見えるくらい生地がうすいのが特徴なので、今私が着ている衣装はまさにアズレアとランザのハイブリッドドレスとなるかもしれない。…勿論、始終カシオス様が上機嫌なのは言うまでもない。

結局最後まで父に行き先を告げられないまま馬車に乗り込んだ私は、大きな門を潜り抜け止まった馬車の外に出て、言葉を失った。


「嘘…百華城??」


どうしてこれを黙っていたのか、半ばせめるような目つきで父を見ると、ようやく閉じていた口を開いた、


「まあ…あの方は豪快だし、細かいことを気にしない性格だから」

「そんな情報いりません!ど、どうして黙っていたんですか?ここに来るってことは絶対貴賓以上の方とお会いするってことでしょう?」


もし万が一王様とかそれに連なる方たちだったとして、無礼があったら大変だ。

しかも事前知識もない状態で、これは何の罰ゲームなの??


「別にそこまで礼儀とかにこだわらない人だし…大丈夫、本当はこんな正装しないでもいいくらいだ」

「そ、そんなこと言われても?」


それにしても、この人達の言う「あの人」とはいったい誰の事なのか。

会えばわかるよと言われたところで何がわかるというのか。色々なシチュエーションと情況を脳内シミュレーションしていると、心の準備がままならぬというのに、王宮内に行くための扉が開かれた。


(ど、どうしよう、とりあえず落ち着いて)


「あらーーー!!まあ色男がたくさん」

「きゃー!お久しぶりですわあ、伯爵さま!」

「……ああ、どうも」

「え?」


聞えてきたのは、黄色い声…そして、目をそらしたくなるくらい薄着の出るところがはっきりと出ている魅惑的な女性が複数人。

わらわらとまるで娼館(行ったことないけど)よろしく、あっという間に女性に取り囲まれているまるで無表情の父の姿だった…。


(え?え?どういうこと??)


カシオス様も…同様に、美しい女性に取り囲まれ、こやかに対応している…うわ、なんかコナレ感?みたいなものがあって、思わずじっとりと見つめてしまう。

瞬間私の目が合うと同時ににこやかな表情は困惑に代わり、瞳に動揺の色が見える。


「?!いや、待って。シャル!これは別に」

「い、いいえ。あの、見てすいません」

「ちょ、ちょっと待って!ここは」


おろおろとカシオス様が慌てているけど、私はさっと目をそらした。すると…豊満に張り切った柔らかい胸が顔に迫ってきた。


「?!」

「まあ!懐かしい顔ね!」

「は え?な、なつか?…うっ」


ぐいぐいともみくちゃにされ、息もできずあわあわしていると、ややしばらくしてから私の頬に冷たい雫が落ちてきた。


(え?この人…泣いてる?)


真っ直ぐで綺麗な黒い髪の女性。すごくいい香りに包まれれていると、彼女がそっと私の頬を両手で触れた。じっと見つめる黒い瞳は、どこか哀しそうで…でも、顔は笑っている、不思議な表情だ。


「あの…」

「可愛い…食べちゃいたい」

「え?!」

「ちょ?!」


なぜか狼狽するカシオス様の声が聞こえたと思ったら、私はいつの間にか両足が地面から離れていた。

一瞬何が起こったかわからなかったけど…私はどうやらたくましい腕で持ち上げられているらしい?視界ががらりと変わり、お父様の取り繕った表情が目に映る。


「…お久しぶりです。蘭坐王国の主にして、キアルーンの太陽。キアロ陛下」


え?なになに、どういうこと?


「わっはっは!何を遠慮している婿殿よ!!そして…ようやく俺の前に連れてきてくれたか!我が孫よ!!」

「は?」


え、孫。この人今、私を孫と言った?

父を見て、その陛下と呼ばれた私を抱っこしている人の顔を見た。

髭で肌が黒くて、黒い角刈り…たくましい胸元を惜しみなくさらけ出す、私の腕の5倍はありそうな太い腕。何よりもこの人、身長がとてもデカイ。

だってお父様を見下ろす視界ということは。


「おっきい……」


事もあろうか、これがキアロ陛下に対する第一声となった。




お読みいただき、ありがとうございます!

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マ?シャル王族ってこと?
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