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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第5章 主人公(仮)VSヒロインにさせられそうな主人公

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第40話 まだ私が知らない物語


「ふう……」


キアルーンの春の季節は、少し寒い。

特に昼と夜の寒暖差が激しくて、こうして窓を開けながら一人でいるとショールを羽織らずにはいられない。私はハンモックチェアに座りながら、先ほどククナ達と一緒に買ったばかりのお茶と、同じく購入した香を焚き自室でゆっくりと過ごしている。


「あ、ちょっと甘い…うん、美味しい」


このランザ王国ではお香をたくのが一般的だという。

街に並ぶ屋台にもつるし型の香炉が必ずおいてあり、それぞれのお店ごとに香の配分が違うため、市場を歩けば様々な香りが鼻をくすぐる。

でも、全然不快じゃないどころかそれも含めて「キアルーン地方」の香りなんだと思えるから、この地に根付いた文化なんだろう。


(今日は……色々なことがあった)


あの後…私は、あの方になんて答えたのかというと―――


「君の力を貸してほしい」

「………き、急に言われても」


そう、本当に急。

こちらとしては、ただでさえガチャの爆弾宣言を食らったばかりなのに、その後のあの衝撃的な再会に加え、今度はお父様の本職(?)も明らかになったばかり。

それにそれに、名門とも言われるルドヴィガ伯爵家の伯爵が教育係として勤める人間なんて、ただものではないだろうし、何よりあの容姿だし…!

しかも家名は「セルリア」ではないにしても、あの方の青い髪と銀色の瞳が全てを物語っている。

もう限界、容量オーバー。

その王子様らしき人が私に片膝ついて「力を貸して」なんて、無理無理無理!!!

さすがに高貴な方(?)なので手を払いのけることもできず、私はぬるりと手を滑らせ、大げさに腕を振るい『✕』印を作った。


「す」

「す?」

「すすすいませんっ!!!無理です!!!」

「え…」

「し、しし、失礼、します!!」


そして…あっけにとられる皆をおいて、私は回れ右、で全速力で走り出したのだった……


(うう、我ながら情けないっ…!でもだからと言って即答できるわけないじゃない?!)


今、思い出しても恥ずかしい限り。

あの場で即答する方が失礼とも思う…なんて、自分に言い訳をしてしまったけれど。


「はあ……もう何なのよぉ」


(いいえ…そうよ。一度、私の脳内を紙に書いて一度整理しよう)


本当は、もう見るつもりもなかった。

かといって、家に置いておくのも心配だったので、持ってきてしまった…私の【日記帳】。

この世界に来た時から、10歳くらいまでずっと毎日つけていた。ただ、時間が追うごとにあちらの文字も徐々に薄れていって…実はもう、あの世界の事は明確に覚えていない。

それが自然なもので、作為的なものでないことを祈りたい。パラパラとページをめくると…私は自分の目を疑った。


「何…これ。続きが…更新されてる?!」


私の筆跡は、10歳の頃で終わっている。

そこから…書かれているのは、多分『日本語』。このランザの国の言葉の形とよく似ていて、一度見れば、毎日飽きるほど書いていた字だもん、嫌でも思い出す。

バラバラとパージをめくってみると…それは、まるで誰かが書いた物語のよう。


「そうか…小説。コレ…小説になってる!!…一番最新の日付は あった!」


―――それは、突然起きた。目が覚めたらそこは()が知らない世界だった。


「…彼?それって……だれの、こと?」


どういう仕組みか、真っ白い紙に勝手に文字がつづられていく。


「…シャル」

「!!!あっ やば…」


驚いた拍子に、手に持っていたコップを日記の上にぶちまけてしまった。


「大丈夫か?」

「お、お父様?今開けます!」


適当な布で押し付け、私がドアを開くと…


「あのー…なんだか顔が」


げっそりとした表情の父の姿があった。

なんだか、10歳くらい、老け込んだみたい。


「……今日は、二人だけで晩餐をしないか?」

「あ、でも…」

「あー…彼には、丁重にご自宅に帰っていただいた」

「わかりました…」


(大丈夫、だよね?)


私は机の上に置いたままの日記帳をちらりと後ろを振り返る。そして、扉を閉じた。



――――その間にも、日記帳に書かれた文字はつづられていく。

まるで誰かの視点を映すように、別の物語へと切り替わった。




「!」


突然ばしゃん、と温いお湯が頭上に降ってきて…ふ、と消えた。


(なんだよ、怪奇現象?)


「あの…イリシユ様?」

「ああ。……続きを頼めるかい?」

「は、はい」


そう言って、メイドのアリッサは頬を染めてうつむいた。

ひとたび優し気に微笑むだけで、女性が皆絵にかいたように顔が赤くなる。


(顔面力ってすげえ)


「これがこの国の詳細な地図と、各地方の家門の一覧ですわ」

「ああ」


大きな大灯台に、大きな港。

そして、中心に城があり放射線状に街が広がっていく。


「で、オレがいるのは…ここか」


とんとん、と指で叩いた場所は…首都部の中でも海と真逆の郊外にある小さな邸。

小さな、と言っても恐らく首都部にある住宅よりは大分大きく、かつ豪華な造りであろう。


(この、イリシユという名前の男は、ずっと狂人として過ごしていたらしい…随分と顔面力も高いし身分は勿論、話を聞く限りでは相当強力な後ろ盾もあるようだが)


鏡の文字を見る限り、彼は常に異常と正常の挟間をさ迷っていたのだろうか、とも思う。

あいつがどうなったのか…自分が今自分であるならそれでいい。邪魔さえしなければ。


「アリッサの家は?」

「あ…私の家は、そこまで大きな家門ではないので…地方の男爵位にすぎませんわ」

「ふうん…今現在第一位は王族、侯爵家。次点に公爵ね…で、伯爵、子爵、男爵…」

「デュークスの地位にいらっしゃるのは、現状イリシユ様、それに兄君のレオン様…それと、先王の御姻戚であられるサー・エイデンでございますわ。…丁度、17歳になられる御子息がお二人いらっしゃいます」

「へえ」


(正直、男はどうでもいいな…それよりも)


「公爵家ってのは…母上のヴァラモ家と、他には?」

「いくつかございます。イリシユ様が表舞台に立たれた暁には、皆あなたの前にひれ伏すことでしょう」

「…それも悪くないけど」


この世界に来てから、一つ分かったことがある。

それが女の目を見てほほ笑むだけで、夢見心地になり、自分のために尽くしてくれるようになること。このアリッサもそうだ。

もしかすると、いわゆる『魅了』ってスキルなのかもしれない。


(最初は警戒してても、面白いくらいにトロンと目がハートになる。マジで簡単、ヌルゲーだな)


「そう言えば…昔、いとこのパーティーに行ったことがあるよね?」

「え?」


この身体の主の記憶をたどっていったとき…一人、気になる女がいた。

それはまるで、ゲームの画面のよう。自分の視点で歩いて、見て言葉を発するのをオレが見ている。


「空飛ぶ車に乗ってきた…ヒロイン」


(ヒロイン…?ああ、これか)


黒い髪、青い瞳、赤い花のドレス。


「見つけた…あの子、だ」


そうだ、(あいつ)が迎えに行くって言ったんだっけ。




「?!」


なんだか、ゾッと寒気がした。


「シャル、大丈夫か?」

「あ、はい…ちょっと肌寒くて」


すると、エイルがショールを持ってきてくれた。


「ありがと、エイル…それで、お父様。お話があるんでしょう?」

「……うむ。その前に、お前の質問には全て応えよう」

「うーん…聞きたいこと。その、何時からあの方とは」

「…まず、この話をした方がいいな。私の、亡くなった親友の話だ」


そう言えば、学園でクオンタ学園長が赴任したばかりの頃、少しだけ聞いた気がする。


「クオンタ学園長の兄君…ですよね。一度だけ聞きました、お父様と、エイデン侯爵様と仲が良かったと」


そう言うと、お父様は少しだけ寂しげに笑った。


「……ああ、いい友人だった。実は、私とリアーナとの結婚をお後押ししてくれたのも、クロムだった」

「そうなんですか?!…あ、でも確かに」


何度か思ったことがある。

どれだけ大恋愛で、ロザベーリ夫人と不仲だったとはいえ、妻帯者の身でそんなに簡単に他国の踊り子と結婚できるのかって。


「確か…ヴァラモ公爵家に融資を頼んで、その条件がロザベーリとの結婚だった、と言うのは聞きました」

「その通り。…以前も話したが、当時、急に改編された法案で我々ルドヴィガの主戦力だった染織物が王家と取引できなくなり、一度没落しかけたことがある。その見返りとして迎えたのが、ヴァラモの娘との婚姻だった」

「……はい」


そう、過去にあった例の学園汚職事件で、ヴァラモ公爵家がどれほど勢力を伸ばしているのか…彼らが何を求めているのか何となく理解できた。


「あの人たちが求めているのは、血統の支配…アズレア王国全体にいる各貴族の家系図を塗り替える事、ですよね」

「その通り。…お前もまた、それに巻き込まれている最中だな」


と、突然お父様の目つきが鋭くなった。

実を言うと…あのアリスト・クラッツ以降、年に一度の誕生日の日には必ず、「セフィール=ヴァラモ」から大量の誕生日プレゼントが贈られてくる。

お父様的には、娘の誕生日を盛大に祝い、パーティを開きたがっていたけれど…そうなるともれなく彼が名乗り出てくるので、ここ数年、ルドヴィガ家では大きな夜会を開いていない。

私が社交デビューとなる「デビュタント」を迎えていないのもあって、今まで丁重にお断りしてこれたけれど。


「ええ…あと半年で私もデビュタントになりますし……」

「適齢期を迎えると…全員悩むことだろう。しかし、お前は私の後継。そう簡単に他家にはやらん!!!」

「はい、仰る通りです!」


よし、これで数年は安泰ね。


「それで…よかったら、お父様とお母さまのなれそめの話、聞かせてほしいです!それに先王様も関わってるなんて」

「ん?そ、そうだな…まあ、お前もそう言う年齢だし。……少し、長い話はなるが」

「じゃあまずは食事をとりましょう?それからゆっくり聞かせてくださいね」


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