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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第5章 主人公(仮)VSヒロインにさせられそうな主人公

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第38話  主人公交代?!…でも、物語は続く


「わあああ‥‥!!」


鸞坐王国、首都・秋霖。

山脈を背に正面に海を見据えるこの街の中心には王国の象徴、白い宮殿白華城(ビャッカジョウ)が建っている。

建物は全体的に低く白く、色彩の街という異名の通り壁には色とりどりのタイルや石がちりばめられ、街を彩るように鮮やかな模様の布の旗が風にたなびいている。

 海側には名物の市場通りが並び、山側に行くにつれ、染料や衣装を作る機織りなどの固定店舗が並ぶ工房地区が増えていく。

ククナは中央の風見鶏がある赤い建物につくと、そこから放射線状に伸びた市場通りへと案内してくれた。


「ここが中央広場。迷ったらまずここに来てね!」

「わかった!この中も市場なの?」

「ここがメインの市場の心臓部で、固定の店舗があるところ。外側にある屋台とは値段も質も全然違うものばかり売ってるわ。…で、その裏側に行くと食べ物とか食材がたくさん売ってる【ゴウバン通り】、そのまま真っ直ぐ行くと、調理器具や食器を作る工房がたくさん並ぶ【職人通り】に出るのよ!」

「へええ!それにしても…すごい屋台の量」


視線をぐるりと見渡すと、どこを見ても屋台、屋台…どれ一つと同じものはなく、200メートル程真っすぐ伸びた道に所狭し並んでいる。

入り口にはアーケードがあり、横には大きな看板が設置されていた。


「ランザは雪が降らないから、自分達でお店を作るときは屋台を作るの。だから、毎日店の並びが違うのよ!」

「え?それじゃ買いに来る人、困らないの??」

「だからね、その日の店の並びが店ごとのシンボルマークのシールになってて、この看板を見たらわかるの」


ククナの言う通り、看板には色々なシンボルマークが張られている。可愛い物から綺麗なものまで、看板だけでもみる価値がありそうだ。


「へぇ…大らかな国だね」

「あ、サイハリ通りはこっちの方!」

「!わあ…」


そして案内された通りに出て、私は言葉を失う。


(右を見ても、左を見ても色、色、色…!!)


「うふふ、驚いた?シャルちゃん、目が真ん丸になってる!」

「い、色で目がちかちかしそう…」

「ランザってとにかく色の種類がすごく多いのよ。国民一人一人の数ほど色彩があると言われてるくらい」

「そんなに?!」


色鮮やかな反物や生地、外套の素材となる絹…服飾に関連する道具が全てそろう【サイハリ通り】は、生地の色彩も豊富で黒色だけでも全200種類くらい、白だけでもなんと300種類を超えるという。赤色と一区切りで語るには尽くせぬほどの種類がある。

しかも、それぞれにきちんと名称があるようで、覚えるだけでも日が暮れてしまいそうだ。


「さすが色彩の街…!」


しまった、さっきからへえとかほおとかばっかり。

でも…目に入るものすべてわくわくするのに、胸の奥が少しだけ切ない。

それは多分、どこかしら私が元居た世界に似ているところもあり、もう二度と戻れない郷愁?に近いのかもしれない。


(でも…それでいいんだろうな)


多分、私はあそこに戻ることはもうないだろうし…こちらの方がより多く大切な人がいる。


「ね、じゃあどこから行く?市場巡りもいいけど、観光案内もいいかも」

「そうだね…市場なんて言ったら、今日一日丸々潰れそうだし。王道だったら、やっぱり観光案内かなあ」


そう、自由時間とはいえ、私はあくまでルドヴィガ伯爵の助手としてきているのだ。数日後にはこちらの国の晩餐会にも招待されているし、自分が知る本での知識よりも目で見て感じる歴史の方をもっと知りたい。


―――そうして、一通りククナとエイルと三人で街を回った。

この街の移動手段はなんと三輪自転車。車夫と呼ばれる運転士が、屋根と座席付きの乗り物を人力で運転してくれるという。

肌も筋肉も頭もつやつやなおじさまが案内してくれて、アクティビティ感がすごかった…。

途中、ゴウバン通りを回り、名物のミカン飴というものを食べたり、こちらでは人気のスパイスティーなんかも試したりと、エイルも一緒になって三人で楽しい時間を過ごした。

夕暮れ時、街を見渡せる高台公園にて。

白い石灰の壁が夕焼けに照らされ、全体的に広がる赤い光がキラキラ輝く海面に反射していた。今日一日に想いを馳せていると。


「すみません…責務を忘れてはしゃいじゃいました…」


エイルが突然しょんぼりと言い出した。


「あはは、全然気にしてなかった…二人とじっくり回ることができて、私は楽しかったよ?」

「そうは言っても…すみません、ついお嬢様に似合いそうな髪飾りやら何やらを買いあさってしまい…」

「私もシャルちゃんとエイルさんと一緒ですっごく楽しかった!…こうやって、私の故郷をもっと知ろうと思ってくれてる、二人の心がとっても嬉しいよ」

「うん…私も。人生で一番楽しかったかも…」


ふと、高台公園から見下ろしたすぐ近くの方に、青い絨毯みたいに広がったスペースを見つけた。

…それと同時に、()()気配も。


(ガチャだ)


私にとっての災厄…本当、嫌ね。


「ねえククナ!あそこ、何?」

「あれ?…あそこ、私も知らない…最近できたのかな?行ってみる?」

「うん!階段降りたらすぐみたいだし…ちょっと見てくるね」


…ここで、私が急に一人になりたかったのは理由がある。


「え?!!お嬢様!おひとり様での行動は…」

「すぐ戻る―!」


(勿論、青い絨毯が気になったのは本当だけど…でも)


階段を降り切った後、先に見えたのは…青い花の群生地。

その入り口で、初めて私は見た時から比べて大きくなった翼をはためかせ…ガチャは降り立った。


『運命ガチャを引きませんか?』

「引かない」


私は即答した。


「前にも言ったでしょ。あんた達の思惑通りに動くのは御免よ」

『……それは残念です。あなたがこの神聖なるガチャを拒否した回数は100を超えました。これを拒否した瞬間、あなたの運命ガチャを引く権利をはく奪します』

「…すきにすれば?」 


本当は、少し怖い。


(でも、退かない)


今までの私の人生は、この運命ガチャから始まった。

この力を実際活用して不利な状況を打破したことも何度もあった。

…でも、奇跡みたいなことが続く度、何か大切なものを失っているような、大事なことを忘れているようなそんな感覚になってしまう。


(…いつまで続けるの?まさか、死ぬまで?)


自分が認知しない場所で起きる変化は、正直怖い。

人の心が簡単に変わったりするものもあり、長い目で見たら私にはリスクしかない…でも、同時に、完全拒否することで、私自身も消えてしまうんじゃないか、ってその気持ちに負けそうになる。


「これは賭けよ。…私はガチャを拒否する、神様だろうとなんだろうと…私は私のまま進む」


しばらくの沈黙が下りる。

そして…ガチャが言う。


『わかりました…では、この物語は終了です』

「…終了…って」

『主人公は変更、別の物語へと進化します』

「主人公を…変える?!」

聴衆オーディエンスは質が良く消費できる物語を求めています。ただ…あなたの今までの功績に敬意を表し、新たなる物語の登場人物となっていただきましょう』

「はぁ?!どういうこ…」


突如カッと眩い光がガチャから発せられ、私は思わず目を閉じた。


「…っちょっと!!待ちなさいよ!!」


声を出した瞬間、そこにガチャがもうなかった。


「…なん で」


そして、はっとなる。

その場所は、先ほどの公園から切り離されたような場所だった。

小さな森になっているのに、見上げた空だけぽっかり開いている。

天然のスポットライトに照らされ、こじんまりとまるで身を寄せ合うように咲いていたのは…ネモフィラの花だった。


「これ…ネモフィラ?」


ネモフィラと言うと、かつて学園にいた茶髪先輩を思いだした。彼からもらったネモフィラのしおりは今でも使っているし、私の大切な思い出の一つ。

彼が卒業してからめっきり会うこともなくなったのだけど…その時ふと、ある思い出というか、記憶というか。夢のような、不思議な体験を思い出した。


(そう言えば…ネモフィラにまつわる記憶でもう一つあったような)


この世界に来たばかりの事、ガチャの暴走か何かで、一瞬だけ別の場所に瞬間移動させられたことがあった。まさにほんの五秒くらいの出来事で…私はそこである一人の少年を見たことがある。


「青い髪で…銀色の」


あれ?銀色?

私と似た年齢の男性で銀色の瞳なんて…今の王室には


「……すごいな」


突如聞こえた声にどきりとした。


「まさかここで会えるなんて」


(あれ?この声って)


ざあ、と風が吹き木々がざわめく。

私は立ち上がり、後ろを振り返ると、一人の男性が立っていた。


「…?あの」


少し驚いたように銀色の瞳が大きく見開き…やがて、ふっと笑った。

その色は吸い込まれそうなくらい綺麗な色だった。


(まるで、空を映したような青色の髪に、銀色の瞳)


すらりと伸びた手足に、身分の高い人が纏う【カリュン(長布)】についたタッセルが揺れる。その色は、とても深い藍色…限られた人しか身に着けることも許されていない、特別な色のはず。

それを、何故?


「…やあ、リッハシャル」

「……ええと、あれ?」


柔らかく微笑む顔に見覚えがある。

どこか鋭い氷を秘めたような冷めた口調も、声も。でも、見た目が全然違うわけで…髪の色も、でも瞳の色はよくわからないから、更に確証がない。


「俺の事、忘れてないよね?…それとも」


そう言うと、彼は私の顔を覗き込んだ。


「忘れてしまった?」

「え…え?えぇっと……あの、知ってる人によく似ているような 気も」

「ふうん、それは誰?」

「あー……と、もしかして、本が好きだったり」

「うん、シリエルの瞳は今でも好きかな。あと、キアルーンの民俗話も」


その言葉で、確信する。


「えっと、でも 髪の色が…」


すると、彼はさらりと私の髪に触れ、口づける。


「知ってる?…君のような美しい黒髪は難しくても…俺のような髪はいろんな色に染まりやすいんだ。例えば、茶色とかね」

「……あ あ あなたの、お名前は?」


信じられない、どういうこと?

混乱している私を見透かしたように、彼は笑った。


「俺はカシオス。…元はクロノという名前を使っていたんだ」

「?!やっぱりせんぱ」


そうして、抱きしめられた。


「…久しぶり、シャル」


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