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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第10章 人生、叶う夢と叶わない夢があると知っている人ほど、世渡り上手

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第117話 どんな契約書でも、隅々までしっかり読みましょう。


「雇用契約書……って、なにこれ……」

「お嬢様…ひとまず、お茶を!」

「う、うん……ええと、雇用主はカシオス様で、契約者は私…で給料は」

「一度の夜会・晩餐会・パーティーにつき、20万ギル?!!破格ですね……っ」

「……エイル、惑わされちゃダメ。給与が大きい=その分大変、てことなのよっ!!」

「あ、そ それはわかりますう……」


昔の会社員の癖と言うか、なんというか染みついた習性?か……こういう契約書は、一行目から小さい文字までしっかり読むのがコツ。

微妙な部分とか、こちらの不利益になりそうなことは小さく、ちっちゃーく書いてあるのが世の常。


(基本は、カシオス様からの申し込みで、その窓口が……お父様?!)


「あ、これは……伯爵さまも容認されていらっしゃるんでしょうか?」

「そ、そうみたい……」


お、おとう様ぁ……これじゃ、私断れないじゃないぃい~


「……エイル、私宛の招待状ってあったりする?」

「あ、いまルルさんと確認してきます!!」

「うん、お願い……」


―――このアズレアでは、16歳以上は成人となるが、扱いは現代で言う成人と扱いは異なる。

基本的に、私はデビュタントを済ませたとはいえ、いまだ学生の身。

夏休みにはいる事で、社交への露出は多くなるにしても、限度がある。

あまりに遅い時間までやるような夜会や、貴族の娯楽で有名な仮面舞踏会みたいなものも招待状は送られて来ないし、同様に個人で開かれるパーティは必ず誰かと同伴することになるわけだけど。


(この契約内容で言うなら…ほぼ全部、カシオス様のパートナーを務めることになるってこと?!)


「えええー……何それ、大変そう」


そう言えば、カシオス様と再会した手の時に言われたことがある。


「君をアズレアとキアルーンを結ぶミューズにしたい」、と。

それを今、あの方は実行しようとしているということ。


(全部の準備ができたんだ……セレスト王家認可の貿易市場)


本当に……時々恐ろしく感じる。

カシオス様は、どこまで見ていて、どこまで先を狙っているのだろう、と。


「で……注意書き?多すぎぃーーー」


①カシオス=セレスト以外の人間の同伴を務める時は、必ず報告すること

②着用する衣装は全てこちらで用意する

③必ず20時には退場すること

④必ず保護者に報告すること 等々


「……なんだろう。時々お父様の心配性とカシオス様の独善的な部分が混ざってる気がする……」


読み進めていくうちに、なんだか私は徐々に怒りを覚えてきた。

そうよこれ、全体的に一方的過ぎじゃない?!


「お嬢様!大変です!カシオス様がいらっしゃ……ひっ」

「ふざけるなよ……カシオス様め……!!!」


ぐしゃ、と思わず私は契約書をにぎりつぶしていた。


「望むところ…エイル!!至急準備!!」

「え?!あ、はい…で、ででも もうすでにいらし」

「そんなの待たせればいいよ!それよりも、ドレスはこれとこれ!!」

「つ、遂にそれを!!」

「勝負服よ、勝負服……!!面接には絶対必要じゃない!!


クローゼットの中から取り出したのは…これこそ、この、アズレアにはこれまでの歴史で誰も着たことがないであろう、【パンツドレス】である。

これはもうまぎれもなく、私の趣味で合体してルミノ親子にお願いした新作—―-いわゆる現代的に言うフォーマルパンツスーツのアズレア版だ。

一般的にみんなが着ているドレスは、どれもフリル・スパンコールでキラキラした飾りばかりだけど、これは全部なくして、いたってシンプルに作った。

上は華やかなジャケット、中はジレっぽい長めのベスト。下はすらっとした幅広パンツで、腰回りは完全にシルエットがドレス。

まず足をがっつり開いて歩ける!!

裾が広めなので、歩いたらひらひら揺れる!

肌を見せる構造が多い中、これはしっかり肌を隠す長袖ジャケットがポイント!!色は青の入ったグレーで、スーツっぽい!!


(……問題は、私の身長が足りないことかな…)


「お嬢様!どんまいです!!まだ成長期ですから!!」

「く、苦しいフォローありがと……」


そう、まだ158センチには未来がある。まだ16歳だし!!


「よっし!!迎え撃つよ!!」

「はい!頑張ってください!!あ…そういえば」

「な、なに?」

「お嬢様あての招待状、今のところ3通届いてました」

「三通?赤い薔薇の紋章……ルビエルと、ラシーのおうち、それから……」


ぴたり、と手が停まる。


「エイデン侯爵家……これは、ゼネシア様ね。あ、そうか……」


夏の終わり、秋の始まりになるこの季節は、ケディとフォーレの誕生日。私の誕生日はもう少し後だから、二人は……ついに18歳になる。


「………フォーレ、ケディ。大丈夫かな?」

「お嬢様……」

「うん」

「あ、あのう、カ、カカ、カシオ」

「やあ、いつまで僕を待たせるんだい?マイ・レディ」


軽快なノック音に、私にこの呼び方をする方は。


「……今そちらにお伺いしますわ。カシオス様」


カツッとわざとかかとを鳴らしてドアをゆっくり開く。

さあ、来い、カシオス様!


「ようこそいらっしゃいました。私、カシオス様にお伺いしたいこと……たっくさんございます」

「僕に会いに来てくれる予定だったんだ?それは嬉しいなあ」

「はい!手間が省け……いえ、カシオス様からご足労いただくなんて、恐悦至極ですわ」

「アハハ。なんだか棘があるようだけど…いいな。そのドレス、初めて見る型だ」

「ええ。しっかりと準備いたしましたから……これのことで、聞きたいことがたくさんございまして!」


そして、握りつぶした雇用契約書を見せる……が。


「!」

「うん、良かった。破り捨てられて暖炉に放り込まれたら大変だから……頑丈に作って正解だったね」


そこはキアルーンの最新技術を用いたガラス紙。形状記憶のようでほんの少しの歪みで収まっていた。

ぐぬぬ、なんか悔しい……


「つまり、内容に不備があると?」

「不備というか、不満はあるかな?って」


(じゃあ書くなああっ!!!)


「つ、つまり……私からの要望を聞いてくださる余地はある、ということですよね?」

「あ 嬉しい、要は契約自体は受け入れてくれるということかな?」

「その契約について、不明な点が多々ございまして……受理するかどうかも含め、検討したくございますわ。できるなら、総合合意の元、要望が偏ることなく話を進めていただきたいな、と思いまして」

「……うん、やっぱりシャルはいいな」

「?!」

「僕にああいえばこういう風に返せるのは、君とレイドックだけだ」

「……」


ハッ。

ほだされてはいけない。この楽しそうな笑顔がとても子供っぽいからと言って、騙されちゃダメ。


「すうぅぅう……はあーーー……。では!応接室でよろしいでしょうかっ?!」

「うん!」


(なんだかすごくご機嫌なカシオス様を見て、危うく出鼻がくじかれるところだった……)


こういうとき、とても拍子が抜けるので本当に困る。

やってることは徹底してるし、冷徹な司令官な癖に、こういう時々ふっと気が抜ける瞬間を見ると、可愛げを感じてしまうところに、この人の妙なアンバランスさをいつも感じてしまう。


「ねえ、シャル。そのドレス、誰が考えたの?」

「!……私です。女性ばかりドレスを着用するなんて、不公平じゃないですか」

「不公平か。……だから、やっぱり君がいいな」

「??」


終始ほんとご機嫌ね。


「ロゼネイの衣裳もいいけど、僕はこちらの方が好きだな。君と戦えなくて、残念」

「………ははっ」


(やっぱバレてたか)


「ロゼネイは故郷に帰ったんでしょう?試合ができなくて残念で……」


応接室にいたのは……お父様と、なぜかセフィール様…は私に気が付いて軽く会釈する。

ん?あれ??


「あのお、お父様が新しく雇った秘書官て……」

「よろしく。レディ・ルドヴィガ」


あ、お父様がものすごく眉間にしわを寄せてる……背に腹は代えられないって感じ?


「…お前にはしっかりと紹介してなかったか」

「あ、はあ……」

「まあ、そう言うことだ」


ちらりとセフィール様を見る。

前に言っていた「手を打っていた」は、こういうこと…


(華麗なる転身と言うか……本当。何でこう私の周りってこういう計算高い人が多いんだろ)


全く、見習いたいものだ。


「……お父様。今回は、私が皆様をお迎えしている立場ということでいいんでしょうか」

「!……そうだな。私は今、カシオス様の側近としてここにいる」

「わかりました…では、私がこの場を仕切らせていただきます」


ならば、と私はカシオス様を向かいの席に座るように促した。

表情を変えないも、内心とても心配しているであろう、ルルとエイルにお茶を出すように指示する。


「この、契約書」

「……読んだか?」

「はい。一通り目を通しました。それを踏まえたうえで、何点かご確認したいことがあります」


さあ、今回は―――元・現代会社員だった時の、本領、発揮させてもらうよ。





―――その頃、エイデン侯爵家では。

例の試合以降、重ぐるしい空気が漂っていた。


「ねえ、お母様。フォーにぃは?」

「……今は少し、元気がないみたい」

「元気がない?おなかいたいの?」


無邪気なリバティアに、思わずケディは笑った。


「お腹っていうか、心が元気ないかも……僕のせいだけど、ね」

「んー…けんか?よくないよ!」

「ほんとにな。……僕も、だいぶ反省してるんだ……」


フォーレスト=エイデンとケディック=エイデンは双子である。

エイデン家は由緒ある家門で、アズレア王国では数少ない侯爵位の資格と権限を持つ、格式ある家柄。しかも今代は二人の男子がいる……その状況で、大人たちは常に二人を見ている。


「本当にいいの?あなた」

「ああ、できるだけ多めに招待状を。……二人の誕生日に、次の後継を公表する」

「そうね……」


その全てが今……一つの区切りを迎えることとなる。




読んでいただいてありがとうございます!契約書の小さい文字は大抵不利益なことが書いてるので、自分の為にもしっかり読む方がいいと思ってます…(元営業より)

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