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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第10章 人生、叶う夢と叶わない夢があると知っている人ほど、世渡り上手

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第117話  花びらの開いた1輪の薔薇


月明かりの中、浮かび上がったシルエットを見て、ルビエルは息をのむ。


(ああ……でも、これで)


「……ありがとう」

「!」

「あなたは、私に勇気をくれました」


すっと出た、その言葉。

けれど、綺麗にひらいた1輪の深紅の薔薇を表す言葉は


「……【ずっと、あなただけを思う】」

「ルビエル様……」

「ずるい方ですわ。あなたが私に贈ってくださったのは、愛を告白する薔薇ではない」

「……ルビエル様、あなたはもう、自由だ。その自由を僕に使うことはありません」

「ひどいことを仰るのね。私がどこに飛び立とうと、誰も止めることはできないというのに」


(わかっているわ。……けれど)


「……貴方が陛下にあの願いを口にした瞬間、私の心は自由の翼を手に入れた。だから――」


ルビエルが伸ばした手を見て、ロゼネイは静かに首を振る。代わりにアズレアローズのメダリオン(勲章)を置いた。


「…!」

「これは、僕がこの場所にいたという証です」

「ロゼネイ様」

「僕はここに留まることが許されません。ですから、どうか…」

「待って!」


途端にひゅう、と風が吹く。

ロゼネイは最後にマスクを外し、高く舞い上がった。


「どうか、お元気で―――あなたの心を、これ以上縛ってしまう前に……」

「私も…っ!」


瞬間、透き通った青い瞳がぶつかる。


「!!」

「さよなら。ルビエル=ヴァラモ」


ひらりと一枚の薔薇の花びらが散る。

―――そして、そこにはもう誰もいなかった。


「ロゼネイ様……本当に、ありがとう。私の心を救ってくれて」


**


「…ッと」


私は慎重に慎重に木の枝を伝っていく。


(こ、ここでバレたら終わりだ……)


そう、戦闘にはとても向いているこのロゼネイの衣裳は、以外と重さがある!!

ヴァラモのお邸はただでさえ、広いし大きいし、警備もしっかりとしているので……侵入するのにもだいぶ苦労した。そのために運動能力瞬間UPチケットを使い切ってしまったのは、痛恨のミス。

残念ながら、演出のためにも失敗は許されない。

後腐れるわけにはいかないし、妙に思い残してもらうわけにはいかないし!

下には広がる薔薇の庭園を見て、思わずため息が出る。


(うわああ、とげが痛そう……警備兵もうじゃうじゃいるし、も~)


「侵入者がいるって?」

「あちらで物音がしたような…」


やばいやばい、騒ぎが大きくなってきてる。

と、次の瞬間ぐらりと視界が揺れる。


「げっ?!ヤバ…足っ」


このままカブトムシみたいに落下する?!

そう思った瞬間、思った衝撃よりも柔らかい直地に、目をぱちくりさせる。


「!」

「君は、よく上から落ちてくる」


すっと帽子が外され、見上げた先にいたのは、赤い髪の――


「……セ、セフィール、様……っ」

「こっちへ」

「な、なんでここに??むぐ」


力強く引っ張られ、再び帽子を顔から被せられた。


「こっちは入り口と真逆の方。…警備も厳重だし、君は本邸にでも向かうつもりだった?」

「嘘?!……そ、それは困ります」

「なら、静かに」


しまった、どうやらいつの間にか逃げてるうちに逆に進んで、迷子になっていたらしい。


(ひ、広すぎ……)


「誰だ!」

「!!」

「失礼、レディ・ルドヴィガ」


低い声が耳元で聞こえてくる。


(こ、この言い方をするときって……!)


「…ぅ わ?!ちょっ バレっ」

「野暮だな」

「あ、セ、セフィール様」


バッと帽子が再び外され、白く染めた髪があらわになる。

顔バレする?!そう思った瞬間そのままダンスのリフトよろしく、ふわりと持ち上げられた。


「見ての通り……邪魔をしないでもらいたい」

「し、失礼いたしました…!」


律儀にも一礼をして去っていくあたり、この邸でのセフィール様の立場がよくわかる。


「うん。灰色も悪くない……でも、君は黒髪の方がよく似合う」

「そ、それは…どうも。あ、歩けます よ?」

「その恰好で?」

「う」


今はしっかりと抱きかかえられているので、服装は、はた目からわからないと思う。

ただ、腰には鞘のままの剣はあるし。どうしよう。


「……あのお、重く、ないですか?」

「別に……そうだな、せっかくだし、あの人の力を借りよう」

「あの人?」


ふわ、とさっきとは違う花の甘い香りを感じた。


(あれ?この香り…薔薇じゃない、ような)


セフィール様は、どんどん奥に進んでいく。

割と近くに赤い塔が見えて、一抹の不安がこみ上げてくる。


「あ、あのどこに」

「まさかこのまま帰れるとでも?」

「え…ま、待って!」

「ふふ、こっち」


(ど、どういうこと?!私、大丈夫?!だってこれじゃ)


途中、何度か警備兵と遭遇するも、全員姿を見るなり一礼をしてそそくさと去っていく。


「へ、へへ変な噂が立ちません?!」

「別に?俺は構わない。さあ、ここだ」

「!わあ……」


そこは、一面の紫色の薔薇が咲いた、小さなお邸だった。

ていうか、このヴァラモ公爵家ってこんな敷地内に家が並ぶとか、どれだけ仲が悪いの……??


「セフィール様、このようなお時間に一体どうされました?」


門番らしき年配の騎士が首をかしげる。


「少し母と話がしたくて」

「レイラ様……?少々お待ちを。あの、そちらの女性は?」

「え?!」

「それも含めて、母に伝えておいてもらいたい」

「は、はあ」


(ちょ、ちょっと待って……お、お。お母さま??)


「お、おお おか?!」

「大丈夫、悪い人ではないし……君にぜひ会ってもらいたいと思って」

「そ それは」

「……【ヴァラモの花】……この言葉を、母はひどく嫌っている」

「!!」


……正直、驚いた。

そんな人が本当にいるんだろうか、って。

私が知っているのは「ソレ」を最上の喜びとしていた女性たちばかりだったから。


「………そんな女性、いらっしゃるんですか?」

「…………だからこそ、一度会ってもらいたいと思っている」


私の言葉がとても冷たかったからだろうか?セフィール様が少し困ったように微笑った。

やがて、先ほどの騎士が戻り、私達を中に入るよう促す。


「奥様がお待ちです」

「ああ」

「……ハッ」


そう言えば、セフィール様のお母さまって、=ルビエルのお母さまってことよね?更にあの一度だけあったオルフェイ様を生んだ方で。


(ど、どういう遺伝子の仕組みであんな美男美女が生れるんだろう?!)


門をくぐると、更に紫の薔薇のアーチがあり…よく手入れされている庭だということが一目でわかる。そして、紫の薔薇の中に見慣れない形状の違う花がいくつか混じっていた。


「これ、薔薇の花…じゃない?」

「ああ、それは」

「シャクヤクの花」


低く、透る声。


「母上。お久しぶりです……」

「本当にお久しぶりね、セフィ」

「まさか、出迎えて下さるとは」

「!!」


レッドブロンドに、白い肌、赤の混じった金色の瞳。

それは、オルフェイ様によく似ている色だけど、この方はどこか優し気に見える。

……それは、とても衝撃的だった。

着飾ってないのに、幻覚か?光の粒まで見えてるような気がしてしまう。


(う…美っ?!綺麗な人ぉお!!)


「まあ……珍しいわね。男装の令嬢?」

「あ……っ!」


し、しまった。

これはどっちで行くべき?ロゼネイ?リッハシャル??

すると、そっと腰に手が回る。


「彼女はリッハシャル……この格好には訳があって」

「まあ……面白そうだ事。ちょうどいいわ、退屈していたところよ」


あ。

ニコ、と笑っているその笑顔は……私のことを「面白い」とか言ったオルフェイ様によく似てる。

笑い方が同じセフィール様を見て、思わずああ、やっぱ親子なんだなあと思った。


「ええと…初めまして…」

「ロゼネイ・グラント」

「えっ?」

「そう、あなただったのね?」

「!!!」


あ、そ、そうだ。

あれ?待って、これって。すると、公爵夫人はなぜか頭を下げられて…私は固まった。


「?!!か、顔を!」

「うちの娘を救ってくれてありがとう」

「そ……そんなっことは」

「……おかげで、いびつな花の刺繍を……渡さずに済みました」


ドクン、と鼓動が跳ねる。

歪な花は、花嫁衣裳の一つだと言う話を思い出す。


「……母上。ここで話すよりは、中に入りませんか?」

「そうね……でも、その前に」


ギュッと手を握られ、我に返る。


「あ、あの?」

「こちらへいらっしゃい」

「え?」

「……その恰好では目立ちすぎるでしょう」

「そ、それはそうですが」

「そうね……赤もいいけれど、何色がいいかしら」

「俺が選んでも?」

「あら……珍しいわね、あなたが妹以外の方の装いを選ぶなんて」


(よ…装い。装いと言うことは……)


あれ、なんか前にもキアルーンにいた時に、こんなことがあったような。


「あ、あのお……?」

「そうねえ、クラシックなデザインもいいけれど……ラインは可愛らしい方がよさそう」

「レディは剣を嗜むから、少しモダンなデザインでも背筋が美しく見えると思う」

「あら。それならこちらのデザインはどうかしら」

「あの!セフィール様!!一体……」


すると、くるりと振り返り、笑った。


「言っただろう?このまま、帰らせるわけにはいかない」

「え……」


すると、夫人はてきぱきとメイドに指示をし、私は更に連行された。


「今日は、決勝戦だったものね。汗をかいたでしょう?ゆっくりお湯につかるといいわ」

「っ?!!け、結構です!!私っ……もう」


帰りたいんですけど、と言おうとしたら、ぱくりと口に何かを押し込まれた。

……甘い。


「美味しい?」


スイートな香りがふわりと溶けだし、濃厚なショコラの味が口いっぱいに広がる。

思わずこくこくと頷くと、夫人は先ほどと同じ笑顔でこういった。


「じゃあ、ゆっくりして行って?」

「え……」

「それ、一粒で馬車一台買えるくらいなの!…まさか、帰るなんて言わないわよね?」


は、話し、通じてますか??


不定期にも関わらず読んでいただき、ありがとうございました!バラは蕾でこそ「告白」ですよね!

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