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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第10章 人生、叶う夢と叶わない夢があると知っている人ほど、世渡り上手

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第116話 一世一代の逆転劇


色々なことがあったけど、遂にこの時がやって来た。


「剣礼!!」


ドン、と太鼓の音が鳴る。

円形の闘技場には赤い絨毯が敷かれ、左右にずらりと並んだ王国騎士団の剣礼と共に国王陛下が姿を現した。私とケディは、そこに膝をつき、王の言葉を待つ。


「二人とも、良き戦いだった。その徴に、この請願権と共に、アズレアの勲章を授ける。……まずは、ケディック=エイデン。その力、ますます我が国の発展に貢献するように」

「ありがとうございます!」

「そして、ロゼネイ=グラント。そなたの健闘を称える。」

「ありがとうございます、陛下」


そう言って国王陛下が私—―もとい、ロゼネイ=グラントに下さったのは、蒼いビロードの箱に入った鮮やかなアズレア・ローズの薔薇の勲章だった。

細やかな金細工は、とても精巧でこの世に二つとない物。これを持つということは、陛下に一度だけ「願」を直接口にできる権利の証、となる。


(へえ…これが)


胸元に光る勲章は、夕焼けの光を浴びて輝く。

大歓声の元、うん、よく頑張ったなあ…と、しみじみ実感する。でも、ここで満足してはダメ。

ちらりと周囲を確認し、陛下の両脇に、アゼンダリア王妃、ラデュオン殿下、イリシユ、カシオス様の三人が控えているのを確認する。

わたしには、ロゼネイとして、最後の仕事が残っている。


「……恐れながら、国王陛下にお願いがございます」

「ふむ、赦す。—―-そなたは、請願権を今使うのか?」

「はい。……私、ロゼネイ=グラントの願いは、ルビエル=ヴァラモ令嬢と、イリシユ=セルリアの婚約の永久放棄を願い出ます」

「え?!」


瞬間、会場全体がざわついた。

―――そして、一番の見ものはイリシユの顔。……すごい、顎が外れんばかりに開いてる。


(ふっ。ざまあ)


「……ほお。そなた、自身の為ではなく一人の令嬢のために、その一生に一度の好機を使うというのか?」

「元は、私はこの国に身を持たぬ者。……ならば、この国にいる方にこそ、その好機を使うべきでしょう」

「そなたが望めば、身分も保証も、国籍も全て手に入るというのに…そして、彼の令嬢すらも」

「私には、私の故郷があります。この身はしかるべき場所で、年月を過ごし、土に還るでしょう。ですが……私の心はこの地に」


胸に手を置いて、ルビエルの方に向ける。


「……ロゼネイ様……」

「よかろう。ロゼネイ=グラントよ、その願い、叶えよう」


わあッと歓声が上がる。


「ちょ、ちょっと…お おまちくださ」


前のめりになったイリシユを、ラデュオン殿下が遮る。


「慎め。イリシユ」

「で、でも―――兄上!こんな」

「それが……勝利者の特権、では?」

「っカシオス……お前っ」

「……イリシユ、下がれ。衛兵、彼を」

「は!」

「なっ…ちょ こんな」


ああ、だめだわ。私も、その顔サイッコーー!って高笑いしそうだけど、我慢我慢。

カシオス様ってば、とてもいい笑顔。

心底キライなのね、あいつのこと。


「ありがとうございます。アズレアにゆるぎなき栄光がありますように」


私は膝をつき一礼する。

そして…ケディの方に手を向けた。


「さあ、君の番だろう」

「!……あ、ああ」

「ほう、ケディック=エイデン、公子は何を願う?」


ケディは、一度深呼吸をして、きっと陛下の方を見た。


(やっぱり、言うんだね)


「私の願いは……エイデン侯爵家の嫡子である、ケディック=エイデン、この、私自身の継承権の放棄を願います」

「なんと……」


何となく、私はフォーレの方を見ることができない。

……何を、思うだろう。

長い沈黙が下りた。

そして―――


「わかった。その願い、聞き入れよう」

「ありがとうございます!!」


わああっと、大きな歓声が起こる。

その歓声が遠くに聞こえ、フォーレはただ立ち尽くした。


「……なんだよ、それ」

「フォーレスト」

「ち、父上……!お、おれは」

「お前はこれから学ぶべきことが多い。……道を間違わぬよう、しっかり務めるように」

「……あ……」


がたがたと、手が震える。

言葉がうまく出ない。ただ、これから起きることに対する責任と、重圧で、うまく息ができなかった。


「……あなた。一度、みんなでお話ししましょう」


ゼネシアの言葉に、イルモンドは静かに首を振る。


「……請願権は覆せない。王の勅命だから」

「!!」


それは、フォーレにとって、未来への宣告だった。


**




同じ頃―――ヴァラモ公爵邸・赤の城館執務室では


「ようやく来たか」

「なぜ、兄上がそこに座っていらっしゃるのですか?」


セフィールの問いに、オルフェイはゆっくりと足を組んだ。


「俺が座すべき場所にいて、何か不都合でも?」

「……まあ、いずれ貴方のものになるでしょうから」


そして、ずらりとテーブルの上に、書類の束を並べた。


「これ等全て……公爵閣下が仕切る財源から出た、不透明な金銭の流れの行方です」

「ふむ」


一枚手に取り、肩をすくめる。


「学生を使った「人生賭博」……下賤な者が底辺層にいる者の未来を搾取するとは。呆れた構図よ」

「そのほかにも、調べるべき個所は山ほどあるでしょう。例えば、慈善事業と称した教会に住む子供たちが、どこで何をさせられているか、などね」


更にパラパラとページをめくり、ため息をつく。


「……なるほど、裏がとれたな」

「…?!……裏?」

「これで物的証拠、証言者が俺の元に集った、という意味だ」


(証言者……?)


「…失礼いたします。オルフェイ様、ただいまラウ=サージェントが参りました」

「?!」

「ああ、入れ」


セフィールは、ゾッとした。

手元にある証拠の書類全てに関わっているであろう男が、今まさに目の前にやってくる。

その事実が何を意味するのか。


「まさか……」


ゆっくりと扉が開かれ、やって来たのは、ラウ=サージェント。


「どうやら、ここにお前の悪事が書かれている証拠がそろっているようだが?」

「はい。存じております……ですが、私にはそれよりももっと重要で確かな情報をあなた様にご提供できることでしょう」

「ほお?……聞かせてみよ」

「公爵閣下は何とも高尚なで不埒な趣味と、崇高な嗜好をお好みでございました。私の名前はラウ=サージェント……公爵閣下の手となり、足となり…時には刃となりその身にお仕えしてまいりました」


にやりと笑った落ち窪んだ目は淀んでいる。


(……売るのか、ラウ。お前は、自身の主を)


「セフィール様もご存じでしょう?!その確かで確実な証拠を集めた先に、私が全て関わっているということを!!」

「……そうだな。この詳細にお前の口裏と証言が重なれば……公爵閣下の廃頽(はいたい)は明確だろう。この上なく速やかに、徹底して―――あの方はその全てを失うだろうな」

「おお、おいたわしや、哀しきは我が身よ…!私は幼少の頃、あの方の元へ売られて今に至ります……」

「!!……ラウ=サージェント…貴様」


そして、セフィールを見て、不敵に笑った。


「断れば死!拒んでも死!!オルフェイ様!!…全ては、致しかたなかったことでございます!!」

「ふ、認めるか。…おのれの悪事を」

「ええ!!全てやむを得ず、生きるための術だったのです!!」


(これでは……こいつの悪事を裁けない……!)


もはや、ラウ=サージェントは笑っているのか、はたまた嘆いているのか定かではない。

ただ、一つ確実なのは。


(この男は、主を売り、自身の保全を俺が持ってきた情報を通して正統化させている……!)


そして、オルフェイはその様子を見て、いつもと変わらぬ傲慢な笑みを浮かべる。


「ははは…!いいだろう、ラウ=サージェント!自身の人生を賭けて、この俺に挑んでくるとは…その薄汚い心根は見上げたものよ」

「ええ、ええ!私はあの方のために全てを捧げておりました!!薄汚いものも、そうでもないもの…全部全部!!」


セフィールは、唇をかむ。

(……やられた)


「さあ、オルフェイ様!!私の用いる全てを存分にご利用ください!」

「………兄上」

「—―-毒も喰らわば毒をも制す。さて、お前はどうする?」

「何も」


思った答えと違ったのか、オルフェイは一瞬怪訝そうな表情をした。


「望まぬ、と?」

「ええ。俺は自身で誰にも依存しなくてもよい地位と場所を持っています。今更、兄上に何かを期待しする必要性はありませんから」

「なるほど」

「その証拠の類は、どうぞ公爵閣下を追い詰める手札としてお使いください。…信憑性と、情報の精度は保証いたしますよ」

「ふん…まあ、良かろう」

「まあ、望むことがあるとすれば―――」


言いながら、膝まづくラウの横を通り、扉に手をかけた。


「これ以上俺の進む道に干渉しないでいただければ……それで、十分です」

「いいだろう、セフィール=ヴァラモ。お前と進む道は相容れぬ」

「ええ、ありがとうございます。……公爵閣下」


バタン、と扉を閉めると、しんと静まり返った廊下はまるで別世界のように感じる。


「やるべきことはやった。だが…すまない、シャル」


(目標は果たせなかった。……ラウを、引きずり下ろすことも、太陽の下に晒すことも)


だが、これでヴァラモ公爵家の道がセフィールと、二度と交わることはなくなったのだった。



**


「夢、みたい」


ルビエルは、窓のテラスにもたれかかり、今日一日のことを思い出しては、夢見心地をゆったりと感じていた。

―――まるで、魔法のようにすべてが変わった。


(でも、もう…これで)


「ルビエル様」

「!」


がさ、と目の前に差し出された一凛の深紅の薔薇を見て、ルビエルは言葉を失った。

丸い月を背に、ベルベッドのマントがはためく。


「あなたは……ロゼネイ、様」

「…こうして、二人きりで言葉を交わすのは初めて、ですね」


ドクン、と胸が高鳴る。


「……はい」


(心が…高揚する。胸が躍る。……この方のことを考えるだけで、幸せになる)


「まるで…夢を見ているようです」

「……夢?」

「ええ。……だって、あなたはここから去るのでしょう?」


その問いに、ロゼネイはふっと微笑んだ。




読んでいただきありがとうございます!!ブックマークなども嬉しいです!精進します!実録「THE 証人保護プログラム」

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