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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第10章 人生、叶う夢と叶わない夢があると知っている人ほど、世渡り上手

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第109話 SSRチケット・好感度80%UP↑&50%DAWN↓


それは、多分10歳過ぎた頃。

たまたま引き当てたチケットはSSR。でも、これがかなり使い道に困るものだった。


「……対象限定・好感度80%UP」


別に誰かに特別好きになってほしいわけでもない。

というか、こんな得体のしれない者の力を借りて人の心を操作したくない。

棄てるに捨てられない、このチケット、どうしよう。

……そのまま、大人になって、チケット同士が合体できることを知ったわけだけど、レア度が高いチケットと言うのは私の脳内スマホを使っても、独立したまま。

ホント、勝手に発動されても嫌だしどうしよう。

そう思っていたのに……まさか、こんな使い道になるなんて。


「対象限定・好感度80%ア―――ップ!!発動!」


そう叫び、地面に着地した。


「ロン=ガット!!!」

「!!!……ふにゃ」


ロンは、そのまま私の前にスライディングしてきた。


「よし、いい子」

「………好き……っ!」

「これ、返してもらうね」


まずヘルメットに突き刺さったナイフを抜いた。

ガコン、とヘルメットが落ちると、ロンはそのままへにゃとした顔で私の顔をジーっと見つめている。


「ダメだよ、悪いことして、暴れちゃ!メ!」

「はい……すみませんっ」

「よしよし。じゃあ……僕のお願い聞いてくれるね?」

「うん!」

「君の支援家門の旗と、銀色のネームカード、渡してくれる?」

「はい!いますぐっ」


そう言って立ち上がると、突然鎧を脱いで、内側に張り付けてあった旗を自らの手で剥がした。


(……それってルール違反じゃないの)


「じゃあ、降参しました、って言ってくれるね?」

「はい!降参します!!何でもします!!!大好きです!!!!」

「はいはい……じゃあ、チケット発動・好感度50%ダウン」


再びパン、と頭の中はじけると、メロメロだったロンの表情が徐々に普通に戻り…やがて正気に戻った。


「?!…あ、あれ……」

「ロン=ガット。……君の、負け」

「え?!な、なんで……っ……ああ」


そして、がくん、と肩を落とした。

それを見届けて、私はナイフを高く掲げる。


「勝利はこの手に!!」


そして…再び、会場が揺れた。

その歓声は、今日一番のもので……私はイリシユの悔しそうな表情を見て、ほくそ笑んだのだった。

沸き上がった歓声は会場中に響く。

それは……ケディとフィーレがいる、控室にも届いたのだった。


「すごい歓声……ロゼネイ、勝ったのかな」

「う……」

「!兄さんっ」


ゆっくりとケディックが目を開く。


「あれ……こ こは」

「体調は?……ここは、まあ、セフィール講師の控室だって」

「セフィール講師って……セフィール=ヴァラモ?」

「そう。支援している選手がいる貴族には、こういう特別室が与えられるらしくて……」

「試合はっ」

「?!ケディ、落ち着いて。……勝ったよ、試合」


まだどこかもうろうとしているらしく、ケディの焦点が定まらない。

たまらず、フォーレはケディの身体を押し倒した。


「寝てろ。……まだ、次の試合、始まってないからさ」

「………わかった。それより僕、どれくらい気絶してた?」

「ええと、一時間とちょっと。今は、ロゼネイの試合が終わったみたいだけど」

「!じゃあ、そろそろ行かないと!」

「待ってってば」


相変わらず落ち着きのない身体を抑え、フォーレはため息をついた。


「何があったのか、覚えてる?」

「……変な瓶があって、水を飲んだら、頭痛としびれが起きて」

「今は?」


ケディはぐっと手を伸ばすが、握ったままの拳はうまく開かない。


「……多分、一時的なものだと思うよ。その、質の悪い嫌がらせみたいなものだし」

「嫌がらせ……でも、それのせいで」

「今、セフィール講師が色々調べてるって。さっきも事務所の方が騒がしかったし……この大会自体、なんか変だから」

「…くそ、なんで」


(珍しいな。……ケディがここまで不安定になってるの)


フォーレにとってのケディは、いつも一歩先に行く、頼れる兄だった。

器用で、自分ができないことを簡単にやってのける。越えられない壁のような物があって…剣術は誰にも負けない、前を歩く兄。

なのに、今のように不安定になっている姿を見るのは稀だ。


「珍しいじゃない」

「なにが」

「……何かあるの、この大会でほしいものとか」

「……!」


去年の剣術大会のことは、よく覚えている。

誰にも追随を許さないくらい強いまま順調に勝ち続けていって、勝利しているのに、ケディはどこかつまらなそうだった。

そして、突然決勝戦であっさり敗北した……なのに、ケディは笑ってこういった。

「頼まれたから、しょうがないよなっ」て。

それが、フォーレには理解できなくて、悔しかった。


「……ある、けど。フォーレには関係ない」

「関係ない…って」


フイ、とそっぽを向いてしまった兄に、ため息をつく。


「でも、負けたくないんだろ?」

「……それは、そうだよ。この後は、カシオスも待ってるし、ロゼネイとも一回戦ってみたいし」

「ロゼネイ=グラント?」

「うん」


(……ええと、これは、多分正体に気づいてないんだよな。じゃあ、黙っていた方がいいかな)


「にしても…カシオス様って?」

「決勝戦後のイベントマッチに出るらしいけど…」

「……へえ」


実は、結構、カシオスもケディ同様戦闘好きというか、技術に貪欲と言うか。

もしくは、何か他にも理由があるかもしれないが。

それでもなお立ち上がろうとするが、やはり本調子ではないらしい。


(顔色が良くない……)


「そんなに、棄権するの、嫌なの?」

「当たり前だ」

「でも、その状態じゃ、負けるよ」

「……こんなの気合と根性で…!」

「できるわけないだろ。それくらい、わかってるだろ」

「でも!今からならせば、次の試合ぐらい……!」


こういう時のケディが頑固だ。

それは、ずっと一緒にいた、フォーレは誰よりも知っている。

だからこそ、負けてほしくない。


「兄さん、ちょっとその制服貸して」

「?なんで……」

「次の試合、俺が出る」

「え……え、えぇえ??」


目をひん剥いて口をパクパクさせる、そんな表情を見るのは実は初めてかもしれない。


(……いつもの仕返しだよ)


「兄さんは天才過ぎるけど、俺だって、剣は使える。エイデン家の男子だからね」

「で、でも」

「幸い、兄さん御前試合の時、カシオス様に髪を切られたじゃない。だから、少し長さはないけど、帽子を被ったらみんな気が付かないよ」

「そ、それは……で、でも成りすましってことだろ?!」

「バレなきゃいいんじゃない」


別に、ケディのように特別な才能があるわけじゃない。

でも、それでも、フォーレは自分がずっと努力していることを自覚している。


(負けたくないから。……肩を、並べたいから)


いつだったか、シャルに言われたことがある。


「努力して、それを続けるフォーレってすごいよね!!尊敬しちゃう」


それが嬉しくて、今まで「頑張ったところで、報われる日が来るのかな」と心の何処かで思っていたことが、完全に払しょくされた。

…シャルもシャルで、たくさん努力をしているのをフォーレも知っているから、倍以上嬉しくて、頑張ろうと思えた。


「決勝は、明日だろ?」

「そ、そうだけど……」

「じゃあ、俺がつなげるよ。明日に」




同じ頃、割れんばかりのロゼネイ=グラントの勝利の歓声を、反対側の控室にいるセフィールとカシオスも聞いていた。


「……勝ったみたいだね、公子の支援者」

「当然でしょう」


セフィールが締め切った窓を開くと、柔らかい夕焼けの光が差し込んだ。


「さて、それで……」


くるりと振り返り、床に正座している3人を冷たく見下ろした。

捕まえたのは、番狂わせ要員が二人と、運び屋の学生だった。


「後、どれくらい仕込んでる?」

「……ロ、ロゼネイは、警戒心が強くて……、控室にあるものに一切手を触れませんでした」一人の学生がうつむきながら答える。

その隣にいた学生のノートを奪い、カシオスがパラパラとページをめくる。


「あ…っ、か、かえし」

「ふうん、これが学生の参加者名簿?」

「………っそう、です」

「……へえ、結構規模は大きいんだ。番狂わせ要員は…あ、見つけた」


そして、パタンと閉じ、正座をした選手の一人の前にしゃがみ込む。


「リッセン=クラウム―――そんなに負けたくなかったの?卑怯な手を使ってまで、ケディックに」

「………わかるはずが、ないと、ばれないと……思い、ました」


思わず、カシオスは吹き出した。


「浅はかだ。……何処からそんな自信が来るんだろうね?何を入れたの?」

「け、軽度の…しびれ、薬です」

「その割には、昏倒をしてしまったようだけど」

「だって!そう、聞きました!!!」

「誰に?」

「マスターに……っ!」


セフィールは、カシオスを見た。


「また、マスターですか」

「そのようだ」


――事の顛末は、こうだ。


「その瓶を置いたのは…恐らく」

「え?」


2人の声がそろった。


「次のケディックの対戦者」

「…つまり、この控室を使う人間だ。大会のルールで、二つある控室を使う順番が決まっているからね」と、セフィール。その言葉を引き継ぐように、カシオスが続いた。

「一回戦目で使う控室は続けて使わない。不正を防ぐために次の試合で必ず使わなかった方の控室を使うことになっているらしいよ」

「で、でも…そんなの、すぐに露見するのでは?」


レイルの言葉に、頷いた。


「周りがまともな人間だったら、そうなるだろうけど。この件に関しては、恐らく協力する人間が多いだろうね」

「それは…もしかして、例の新聞をにぎわしている賭け、ですか?」

「そう。大会の出場者を見てれば、誰が本命かなんて一目瞭然だろう?人気のある選手が当然のように勝ったら、賭けにならないじゃないか」

「賭けって……」

「だから、俺たちはここで待てばいいんだ。彼がこの控室にくるのを」




読んでいただき、ありがとうございます!精進します!!根性論、割と好きです。

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