↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第10章 人生、叶う夢と叶わない夢があると知っている人ほど、世渡り上手

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
108/127

第108話 大番狂わせ


「さて…と」


私は立ち上がり、羽根つき帽子とマスクを着用した。


「行くの?」

「うん。次で3回戦だから……勝ったら」


まだ、ケディは眠ったまま。でも―――


「目が覚めたら言っといて?待ってるよって」

「……わかった」


さあ、次も行くよ。


同時刻、コロッセウム――


「勝者!ビリング=ウッド!!」


勝利者が片手をあげると、わっと歓声が上がる。

その様子を貴賓席に座るルビエルは冷ややかな目で見つめていた。


「な?僕が言った通り、彼が勝ったでしょう!」

「……そうですね」


理由は明白だった。……隣に並んで座っているのが、イリシユ=セルリアだからである。

一時、会うたびに胸が高鳴るようなそんな感覚があったが、ここ最近はなぜか急激にしぼんでしまった。

今は、ただ顔が綺麗なよく喋って動く人形のようだとさえ思ってしまう。

その様子を、イリシユも感じ取っているらしく、最近妙に馴れ馴れしい。

今もまた、同じ長椅子に座っているのをいいことに、腰に手を回そうとした。

――その不躾な手を、扇子でバシン、と叩く。

小さくうめき声をあげると、イリシユは何を言いたげにこちらを見た。

その視線すら扇子を開いて遮断し、ひらひらと仰いで見せた。


「イリシユ殿下、お顔が赤くなっていらっしゃいますわ。……扇子の風でもお受け取り下さい」

「……それは、どうも…っ」


(なぜかしら……一時期はちょっとでもときめきを感じた、己を恨みたい気分だわ。それよりも)


ひらり、と試合プログラムを見て、「ロゼネイ=グラント」の名前をそっと指でなぞった。

実を言うと、ここ数日、変装してこっそり応援のために通っていた。

先日、セフィールが突然剣術大会の選手支援をすると聞いた。


「お兄様……そう言った行事がお嫌いではありませんでした?」

「まあ……たまにはこういうのもいいかと思って」


自身の名と紋章を使うとまで決意させた選手はどんな方なのだろう?

らしくない兄の行動に少々疑問を感じたもの、現れたのは……通称・薔薇の騎士ロゼネイ=グラント。

彼だったのだ。

軽やかな身のこなしに、美しい剣さばき。そして、何より彼が歩く度、風になびくベルベットのマント姿はとてもりりしかった。

セフィールの紋章である青いバラと羽根をあしらった帽子に、流れる灰色の長い髪。その全てがルビエルの心をしっかりとらえて離さなかった。


(ロゼネイ様……次の試合がとても楽しみだわ……!)


そんな彼の人気はあっという間に火が点き、今やアズレアの年頃の女性たちの憧れの存在になっている。その素性を誰も知らないところも、あのセフィールが後援しているという事実も、多くの女性をときめきの渦に巻き込んでいるのだ。

そんな隠し切れないときめくルビエルの様子を見て、イリシユは思わず舌打ちをした。


「ッチ、……面白くない」


その好意が以前は自分に向いていたのに。

実際、イリシユは一貫して【ロゼネイ=グラント】の勝利にかけている。最初は大穴だったものの、徐々に注目を浴び始めそのオッズがどんどん目減りしているのも気に喰わない。


(最近、神ガチャも随分大人しくなったし……、ここらでパパッと……)


『お呼びでしょうか?』

「!」


この、妙な空気は恐らくイリシユにしかわからない。

天から光の柱が現われて、翼の生えたガチャが姿を現した。


(来た来た来たキターーーーっ!!!)


立ち上がりそうになるのを抑え、口元だけにやりと笑い、ポーカーフェイスを続ける。


『ガチャを引きますか?』

「……当たり前だろっ」


さっと手を伸ばそうとすると、ガチャはひょいと避けた。

空を泳いだ手を握り、ガチャをにらみつける。


「おい、早くしろよ」

『うーーーーん、ここ最近、オーディエンスの動員が減少しています。もっと面白いことをしてくれませんか?』

「…っおい!ふざけ」


はっとなり、自分に視線が集まっているのがわかる。

慌てて席を立ち、一目のつかないところに逃走した。


「テメェ…ガチャのくせに、主人公の俺にケチ付けるのかよ?!」

『うーんいまいち、だって、よわいんだものー、つまんない、だっさ』

「!!」

『という声がたくさんあります。どうしますか?』

「どうしますかって…それをどうにかするのがお前らの仕事だろ?!」

『仕方ありませんねえ。なら、誰か……〇します?』


ぎょっとなった。

だが、同時に……あることが脳裏をよぎる。


(つまり…面白くすりゃいいんだよな。なら)


「じゃあ、次の試合のロゼネイ=グラントって騎士……惨めに敗北させろよ。あいつ結構女ファンついてるみたいだし、大けがでもしたら……大騒ぎ、だぜ?」

『そのためにあなたは何をするんですか?』

「ヘイトが集まってるその試合相手に、俺が勝つってのは?」

『うーん、ひねりがない』

「ひねり…って」

『まあ、いいでしょう。じゃあ、ガチャをどうぞ』


すると、キラキラと羽が輝きだした。


「!話せばわかるじゃん。いくぞ!」


ガチャのトリガーを回しながら、あることを思い出した。


(そう言えば……俺の女、もといリッハシャルは、なんか言っていたな。何とかチケット、発動とか。あれってなんだったんだ……)


ガコン、と金色の玉が飛び出した。


『おめでとーございまーす。……BADSSR・特定の人物一名の、バーサーカーモード、発動します」

「え?」


その瞬間。ガチャに表情などない筈なのに、イリシユは確かに見た。

悪魔のようににやり、と嗤う姿を。

同時に、わっと歓声が上がる。


(!…試合?)



「ロゼネイ=グラント!対するは…ロン=ガット!!」


大きな扉が開かれると、黄色い歓声が沸き起こる。


(わあ…すごい人気だなあ)


正直、ここまでこのロゼネイ設定が人気が出るとは思っていなかったので、恥ずかしいやら申し訳ないやら。すると、貴賓席に座り、こちらを見るルビエルを見つけた。


(あ、ルビエルだ)


つい手を振ってしまいそうになるが、だめだめ。私は今ロゼネイ。

すっと手を差し出し、彼女の目を見て笑って見せる。


「!!……ロゼネイ様が、わたくしを。……あぁっ」


目が合うのを確認した後、その手を胸元に置いた。あ、喜んでくれてるかな?

だがしかし、今回も案の定ロゼネイが選択できる武器は限られていた。


「使用する武器をどうぞ」

「また?」


(錆びた剣に、欠けたナイフ……、まあ、一番良さそうなのは、これかな)


そう言って箱の中から持ち上げたのは、刀身が5センチと短いものの、柄がしっかりとしたものだった。

ぱち、と刃の部分を指ではじくと、軽やかな音共にうっすらと波模様が見える。


「ふうん…これ、片刃だけど、あたりかな」

「そちらでよろしいですか?」

「ああ」


(さて、対戦相手は…)


すると、突然コロッセウムの中心にいた審判の男がひっという短い悲鳴と共に、後ずさった。

同時に、何かの雄たけびのような物が聞こえた。


「?!」

「うぉおおお!!!!」


合図もなく、対戦相手が突然こちらに向かって突進してきたのだ。


「な…なに?!」

「うわ、うわああ!!」


対戦相手は…フルアーマーの男だった。

横幅が大きい男がなりふり構わず突進する様子はさながら野生動物そのもの。

審判の男はそのまま腹部を思いきり殴られ、壁に激突した。


「ちょっと……アレ、どういうこと?」

「し、知りません!!オレは、なにもっ」


武器を提供してきた運営の男に尋ねるも、男は何度も首を振るばかり。


「うわああ!た、助けて!」

「助けてって……あんた達の責任じゃないの?!」

「ほ、本当に何も…こ、こっちくるな!!」

「ぐるぁああ!!!」

「なにこいつ」


どんなやばい薬を盛ったんだか。

内心ため息をつきつつ、再びの突進を宙返りでよけた。すると、割れんばかりの声援が聞こえ、今起きているこの試合を、誰もおかしいとは思っていないのがわかった。


「イベントだー!」

「いけ―!ロゼネイ!」

「…?!」


たまに聞こえてくるのは、そんな声ばかり。


そして、上の方を見た時……にやにやと笑うイリシユの姿が見えた。


「ははっ……サイコーじゃん!やられろ!そいつをやっつけろーーー!」

「……まさか」


(ガチャでも引いた?!……何処か、おかしいこの雰囲気)


自分がガチャを引いていた時、何度か経験したことがある。

誰かが何かを操るような、常識やモラルがその瞬間だけ失われる、異常なのを誰も気が付かない空気。

それを証明するかのように、上空にケタケタ笑うガチャの姿を見つけた。


(やっぱり……てことはイリシユか!)


「ちょっとあんた!!おい!聞えてる?!」

「アァアア!!!」


次の突進を回避すると同時に、フルアーマーの頭の部分の留め具を引っかけ、剝がした。

露骨になった表情は白目をむいてよだれを垂らしている状態……まともじゃないのは明白だ。

何が起きているのかはわからないが、既に正気ではないらしく、武器すら放り投げている。今はただ、対象に向かって突進するだけの怪物だ。


「あーあー…理性もぶっ飛んじゃってるわけ?…ったく」


動きは単調で、避けるのは容易い。

とはいえ、こいつを止まらせるためにはどうしたらいいんだろう。

試合を止める審判はすでに気絶してるし、私の武器はヘルメットに突き刺さったまま。しかも、そのほかにいた運営の男たちは入り口に逃げ込み、扉を閉めてしまった。


「使えない奴らだなっ!!」


ええと、えーと…!現状、出入り口は封鎖状態、武器は手元にないし、相手は理性がない。

あいつが落としたぶっとい剣があるけど、あれを使うとなると――まさかこんなことで人の命を奪いたくない。

殺さずにこいつを収める方法は。


「そうだ……!!これだ!!」

「うがぁああ!!!」


再びの突進。

ぎりぎりをひらり、と避けて、気分はもう闘牛士。


「よっし…!!来なさいデカブツ!!……チケット使用!!」


パン、と頭の中で何かがはじける。


「可愛がってあげるよ…!!発動、対象限定・好感度80%アーーーップ!!!」




読んでいたいて、ありがとうございます!ブクマも感謝です!面白いと思ってい長けるように精進します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。