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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第9章 人生、一に努力で二に勝負!そのほかは……恋?!

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第102話 中毒性×ゲーム=人生?


「なあなあ、ケディック!」

「ん?」

「聞いた?正体不明の騎士の話!」


そう言って、ばっと開いた新聞の見出しには――


「何なに…【名もなき流浪の騎士、登場!】?へえ…強い奴が現われたんだな」

「そうそう、マスクしてほんとに素性不明らしいんだけどさ…すばしっこくて強いらしい」

「ふうん。こいつと戦うには……あ、順調に行けば最終決勝か!今日は26日だから一般戦、ブロック準決勝戦だ」


――同時刻


「はあ、はあ。よっし!」


間に合った――。

控室の前に立ち、すまし顔で息を整える。イメージってものがあるのよね、流浪の騎士だし。

今日のスケジュールは…ハードだ。

午前中まともに授業を受けて、その後抜け出して着換えて残り34分前に無事到着!!その後はまた速攻で着換えて弓術評価演技の応援に行く、ッと。

今は大会期間中だから、文系クラブの学生は午後はほとんど応援に回るらしくて、学校の出入りは割と自由が許されている。


(これで勝てば決勝戦で、そのまま夜にはグループトーナメント優勝を決めれる。あとは明日の自分の弓術評価演目をこなせば、大丈夫。それにしても)


実はひそひそ話がずっと聞こえてきている。

何処からだろうか?と思い見渡すと…すぐ近くの柱の陰だ。


「…マジでやるの?」

「仕方ないじゃん……うちの兄貴がこのままじゃ負けちまうんだよ」


なんとも不穏な空気。

ちらりと見て…それがうちの学院の生徒だと気づく。

エイデンみたいに兄弟姉妹でそろってエストランテ学院に入学できる人は、実はそういない。兄弟でもどちらか一方を選ばざるを得ない家門も多い。

特に男子は色々と経費が掛かりすぎるかもしれない。うちの学校の制服だけでも数種類あるし。つまりあの子は…お兄さんは、学院側の試合に出てないってことになる。


(この流れはつまり…次の私の対戦相手かな)


「だからって…こんな方法、やめたほうが」

「お前だって!俺から大分賭け金巻き上げてるじゃないか!少しは手伝えよ!」


――賭け金。つまりは、この子たち……賭け事してるの?

賭け事に興じるのは、暇な貴族だけだと思っていたのにね。私は顎に手を当て、考える。


(大会ルールであの子たちが私に何か害をなすとしたら……何処だろう)


そうこうしている内に、30分前集合のチェックに入るので、私は控室に入室した。

既に何人か待機していて、みなじろじろこちらをみてる。

近くに空いている椅子に腰かけ、剣の手入れのふりをして周りを窺う。と、あの子たちが使いそうな手で、昨日までなかった違和感に気が付いた。それが…飲料水のグラス提供。


(……下剤でも入れるの?それは、確かに効果てきめんかもね)


でも、そうまでして勝ちたい理由は何だろう。


「おい、ここは部外者立ち入り禁止だろ?」

「あ!す、すみません!でも、どうしても…ル、流浪の騎士さんの顔を見たくて!」


ん?もしかして、私の事?

あ、やっぱり。さっきの子たちだ。マスク越しなので、ちらりと視線だけ送ると、案の定謎の瓶をもってこちらにやって来た。


「こ、これ!特製ドリンクなのでっ…」

「……」


私はそれを受け取り、机の上にコン、とおいた。


「あ……」

「君は、賭けてる方?それとも…賭けられてる方?」

「え」

「も、もう行こうぜ…」


なぜか少年はこの世の終わりのように、顔面蒼白になった。

見れば、手も震えてる。


「で、でも…これを、飲んでくれないと……っあの、兄が」

「それが?」

「え……っそ そんな」

「譲られた勝利に、価値はない。……兄上を本当に想うなら、姑息な手を使うのは辞めな」


そして、私は振り返らずに会場入りする。

扉が開くと…昨日の何十倍もの声援が聞こえて、びっくりした。


「!!」


(び、びっくりしたっ……え?何この観客)


結構広い観覧席のはずだけど…どういうわけか、8割以上埋まっている。

そして、中には…


「キャー―!!騎士様ステキ!」

「こっち見て――!」


と、黄色い声援まで。

貴賓席は……相変わらずのイリシユと、奥のほうには……


(カ、カシオス様まで)


帽子のつばをくい、と被りなおし深呼吸。


「武器はこの中にある物をお使いください」

「え?…昨日はそんなルール、なかったはずだが」

「本日より導入されました」


(何よこれ)


ずらりと並んだ剣は、どれも薄汚れていて、刃こぼれもひどい。唯一まともそうな剣は…長くない、ほぼ刃渡り10センチ程のナイフだった。


「僕の剣は?」

「お預かりします」

「……いいよ」


で、相手は?


「…勝負!」


背もそこそこ、体つきもしっかりしてる真面目そうな男の子。

今まで数名と戦ったけど、この子が一番強そうかもしれない。

そして、あちらの剣は…立派な鎧に、随分と切れ味のよさそうなロングソートだ。ということは…このロゼネイ・グラントは、どうやら扱いが特殊らしい。


「舐められたものだね」


ああ、良かった。日ごろから、ルドヴィガの鷹の訓練に参加してきて…ナイフをくるくると片手で弄び、態勢を低めにして臨む。


「ナイフは弓の次に得意」

「きゃあああステキ!!」


え、何この雄たけび?!

聞いたことあるような声の気もするけど、違うよね…?


「騎士さん…」

「?」

「俺に…勝ちを譲って、くれませんか…っ…」


絞り出すような声から出された言葉に、耳を疑う。

(さっきの子と同じ。手が震えてる)


「なんで?」

「どうしても、です!」

「ふうん……もしかして君、賭けられてる方?」

「!」


(家門がスポンサーで、プレイヤー、賭ける人もいる。そして駒が出場者で……勝利が景品)


私も、彼も駒だけど…彼の場合は、もしかしたら弟君もその勝利に何かを賭けてるってことかもしれない。だから兄弟そろって、「勝たないとならない理由」ができる。


「何を賭けてるんだ?お前の弟」

「…え?な、なんで」

「僕のところに来た。…何か怪しい瓶を持って」

「ば、バカ!…あいつ」

「で?……何を賭けてるか、何を知ってるか。教えてくれたら、助けてやる」


彼の目が泳ぐ、表情が停まる。


(もう一押しかな)


「僕の後援者は……」


ちらりと、彼のフラグを見た‥‥伯爵位。


「君の怖がってる人の倍以上、力がある」


とんとん、自分の胸元のフラグを見せる。

実を言うと、このフラグは秘密がある。ヴァラモ公爵家でも、このサファイアブルーのバラが描かれたものは、セフィール様専用の紋章らしい。


(まあ、正体がわからないとしても、ヴァラモってだけで、効果はあるでしょう)


「……本当に、助けて、くれるんですか」

「できる。まあ、君が勝てば、その必要もなくなるけどね」

「わかりました!…いざ!」



―――夜のとばりが落ちた頃。私はコロッセウムのすぐそばにある海浜公園にいた。

ここにビール缶やたばこでもあればいいんだけどなあ、なんて思いながら、ぼんやりと月を見上げていた。…タバコは吸わないけど、なんというか、絵的に?


「予選突破、おめでとう。……完全勝利、だね」

「やあ、後援者様。お疲れ様です」

「……」


あ、ちょっと微妙な表情。

セフィールは、そのまま私の隣の壁に寄り掛かった。


「男装もいいけどね…俺はそうじゃない方が魅力的に見えるかな」

「まあ、そう言う役ということで。……調べてくれました?」

「ああ。君は知ってる?エストランテ学院で流行ってる、キャンディ・ゲームの事」

「キャンディ・ゲーム…?」


(そう言えば、カシオス様も何か調べていたような)


「…賭け事をしてるのは、知ってます。弟が制服を着ていたから」

「うん……誰か持ち込んだのか、どこから人気が出たのか。経緯は断定できないが、キャンディの包み紙をコインに見立て、そこに書かれた内容で実際に金を支払う…賭博ゲームのことだ。実際に金も発生するらしいね」

「キャンディの包み紙…あ!」


だから、カシオス様はこの間「ジェリー・トニーズ」に行ったとき、キャンディのことをやたら気にしていたんだ。


「知ってるなら、話を進めるよ。どうやら、弟はそれにハマり大負けして金を借りているらしい」

「金を…って、学生ですよね?借金なんて」

「このキャンディ・ゲーム……勝てば金が入る、負ければ金を失う。そういう単純なものじゃないんだ」

「……?」

「金がなくなったら、次は別のものを賭ける。例えば学費。『これを担保にすれば、次の勝負に参加できる』……そうやって、負けた分を次の勝負で取り戻そうとするんだ」

「……つまり」


私は少し考えてから、呟いた。


「負けた人間ほど、次の勝負から降りにくくなる?」

「そういうこと」

「学費まで?」

「兄はそれを知って、自分の勝利に弟が賭けるようになった。勝てば後援者から金を貰えるが、負けた時点で報酬はゼロ。そして、兄弟は詰む」

「……」


人生を賭ける、と何が違うんだろうと思う。


「…つまり、大人もしっかり絡んでる、ということですよね…?まさか」

「それ以上は、俺も言えない。確信がないから」

「………すみません」

「なにが?」

「私、セフィール様の名前は出してないけど…紋章を」

「構わないよ。君だってリスクがないわけじゃない。ルビィの為とは言え、大会では学院の生徒は参加規約に違反しているからね。…ただでは済めないだろう?なら、俺も相応の覚悟を示さないと」

「…ありがとうございます。そう言えばこの家門、青い薔薇を使っているんですね」


ヴァラモの紋章は、赤と紫と青い葡萄、それに白い花が書かれている。

けれど、青い薔薇は初めて見た。


「君にだけ話しておく。別に、俺は王家に対して敬意こそあれ、それ以上は何も思っていない。それはその証明だし……サファイアは、俺の名前の由来でもあるから」

「サファイアの薔薇……」


そう言えば、現代にいた頃、青い薔薇は「不可能の象徴」と言われていたのを思い出した。


「不可能の薔薇…」

「え?」

「いいえ、何でも。……その話が聞けて良かったです」


(よし、一度、ロゼネイはお休み。あとは…明日からリッハシャル=ルドヴィガの出番だね)

読んでいただきありがとうございます。精進します!

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