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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第9章 人生、一に努力で二に勝負!そのほかは……恋?!

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第101話 過去の因縁


(へえ。……結構色々な人がいるんだ)


その日、私が公約通り訪れた闘技場の控室では、複数の人がすでに待機していた。

遂にやって来た「グラン・トゥルノワ」剣術大会の予選初日!

…だけど、わくわくと言うか、どちらかというと緊張の方が強い。

男装だし?初出場だし?バレたらやばいよね、とか。


(心配事も多いけど…まあ、何とかなるわ)


闘技場は大きなステージ上の舞台で各2試合ずつ、時間制限も15分と決まっている。予選だけで三日もかかるらしく、最終日は夜に行われ、決勝戦はオールデイズ開催されるらしい。

この大会、基本は15歳~20歳以下の若者限定で行われているんだけど、一次審査を通った総勢120名ほどでトーナメント戦を繰り広げられていく。

一次審査と言うのは、要するに貴族の承認を得たという証明ができた人。

去年まで参加の多かった身分のない子供たちは、チャンスを潰された、と思う子供も多いかもしれないな。


(…この大会自体、キナ臭くはあるしね)


私は、テーブルの上に置いてあった新聞をパシン、と投げつける。

【ついに開催!今後の勝利を予想しよう!】と、大見出しにでかでかと乗っている。


「何が勝利予想よ、馬鹿みたい」



先日、セフィール様に聞いた話。


「…言うべきか、迷ったけれど…実は、この大会自体去年とはまるで違うものになってしまっている」

「違うもの?」

「元々、慈善事業として先代閣下が出資を始めたのだけど、そう言う慈善事業的な側面は失われた」

「慈善…ですか」


身分のない腕の立つ子にチャンスを、ってことかな?

正直、十分それで胡散臭いと思ってしまうけど。そう言う問題ではないんだろう。


「去年までヴァラモ公爵家が大会の広告や出資を3割くらいになっていたが、去年まで公爵閣下に献身だった会計士が突然退職を申し出た…結果、今大会は出資の7割まで倍増してる」

「7割って…それに退職?!」


大貴族に務める会計士となると、普通の人では務まらない。

かわりの人材を見つけるのだって、そんなに簡単ではない。だから、うちのルドヴィガもそうだけど、そう言う会計担当の人には通常の1・5倍の報酬にしている。

それなのに。


「急に…?何か理由でも?」


私がそう聞くと、彼は少し目を伏せた。


「……問題は彼が辞めた事ではなくて、その後任だ」


明らかに話題を変えたところを見ると、ワケアリなんだろう。

失踪とかそう言う…ハプニングに見舞われたってこと?


「後任?」

「…公爵は、幼い子供をどこからか連れてきては、信じられないくらいの額を投資して教育し、自分の側近にする―――そんな、特殊な指向をお持ちでね」

「……え?」


その言葉を聞いて、ゾッとした。

私の様子よほどがおかしかったのか、セフィール様が戸惑うような、見たこともない表情をした。


「……シャル?」

「………私の継母だった人間が、ヴァラモの花だったお話をしましたね」

「ああ、聞いた…けど」

「私は一度、その継母の部下に誘拐されそうになったことがあるんです」

「!!……それは、まさか」


今でも、思い出したら寒気がする。

無力な子供だった私は抵抗できず、まるで物みたいに担ぎ上げられ、薬草と一緒に麻の袋に詰め込まれた。


(あの時、狭い中で嗅いだ薬草の匂いは…ちょっと忘れられない)


だからこそ、私は強くなる決心をしたんだ。


「大丈夫、未遂で終わりました。だけど…どこかで間違ったら、セフィール様とは別の形でお会いしていたかもしれませ…」


すると、彼は口元に手を抑え、再び目を伏せた。


「すまない」

「あの…?」

「言わなければ良かった」

「……言ってください。何か、それ以外にもあるんですか?」

「……ラウ・サージェントという男」

「!!」


そんな名前、しばらく忘れていた。

でもその名を聞いたとたん、言いようもない不快感が胸に込みあがる。


「それが、今の公爵の側近で…現在の会計士の地位にいる」

「……その言い方、その人が過去何をしていた人かご存じですね?」

「ああ。……彼は子供の頃に拾われ、育て上げられた公爵の右腕にまで上り詰めた男。公爵に【後見人】の名目で子供を連れてくる、仲介人だ」

「そいつ、継母の愛人でした。その時の一件で継母は追放という形になるんですが、同時期にそいつも失踪しました。それが、こんなふうに再登場するなんて」

「シャル……」

「続けてください」


毒を吐かずにはいられない。

あの時は、運命ガチャのおかげで助かった。まさかそれさえも……神様共の計画の内だったってこと?


「……奴が会計士になった途端、剣術大会のルールは変更がされたし、貴族の承認も必要になった。それに景品も豪華になっただろう?」

「はい。…身分がなくても参加できる平等性はなくなりましたね」


実際、貴族とヴァラモ公爵家なんて組み合わせが健全なわけがない。

…セフィール様には言えないけれど。


「後ろ盾が明確になることで……どの家門が誰を支持しているかわかりやすくなってしまった。それで流行りだしたゲームがある」

「ゲーム…?」

「勝敗を賭けるカードゲーム」

「え?!」

「それを公然と世間に公表しているのが……その男だ。気を付けて」



(……【運命賭博】あの男は、かつて私にそう言った)


ええと、ギャン狂だっけ?

ギャンブル狂信者な奴が会計士ですって?しかもそれを雇ったのが、ヴァラモ公爵閣下本人だと。


「お時間です。第一試合の方は入場ください」


(ふ。終わってる……)


「ぶっ飛ばす方が…世の為人の為よね」


――この衣装もあるしね。立ち上がると、実感する。

ククナが夜なべをして作ってくれた衣装、実は相当すごいのだ。


「すごいね、ククナ!この衣装、ちゃんと実践用にできてるみたい!」

「うん!知ってる?うちの学院にも戦闘用制服ってあるでしょ?それをモチーフにしたのよ?」

「あ、うん。女性はないけど…男性の儀礼戦闘用制服ってのがあるね」


エストランテ学院は、軍事訓練学校の側面もある。

特に3学年目になると、男性のみの軍事式訓練みたいなものも導入されていて、それ用の制服も用意されている。


「でも、そんなものどこで??」

「うん、ヴィレンツェ公子様にお借りしたわ!」

「え?!!ルウト先輩??」


ルウト=ヴィレンツェ公子様は、数少ないエイデン兄弟の理解者(?)で、仲の良い幼馴染らしい。

一度だけ、顔を合わせて話したことがある。


(ええっと、確か、ククナにファーストダンスを申し込んだ方だよね?)


「よ。よく貸してくれたね…」

「うん、相談したら快くどうぞ!って」

「へえぇ……」


あれ。これはもしや…もしかするとなのだろうか。


「いい人だよね!!ちゃんと名前は覚えたわ!」

「あ……うん」


そう言えば…デビュタントの時も、名前忘れてたよね、ククナ。

(どんまい、ルウト先輩)


「しかもね、話をしたら、ダイアナ様が資金援助してくれたの!!」

「え?!叔母様?!」

「これでも文通友達なのよ?」


(情報量多すぎっ)


ああ、叔母様の高笑いが聞こえてきそう。

そんなククナの愛と真心と、ダイアナ叔母様の容赦のない資金が詰まったこの衣装、そんじょそこらの鎧なんかとは比べ物にならない。

生地は軽くて丈夫で、「流浪の騎士」と言うにふさわしい長めのマントとダークコートに、羽根つき帽子なんて……ちょっと恥ずかしくもあるけど。


(よし!!身体も軽く感じる。それに、身体だって。機能性と機動性はばっちり!)


重々しい音を立てて開かれた扉を一歩踏み出しても、全然身体がスムーズに動く。


「お前が対戦相手?」

「……」


さて、対戦相手は身長は私より大きくて、身体も大きいスキンヘッドの男。


「へへ…殺さないように気をつけないと、おめえ細っちい」


にやりと笑った顔は、いかにも柄が悪くて……顔が。


(おっさん……何こいつ。ほんとに20歳以下なの??)


いや、老け顔もいるか…とか考えていると、戦いの開始の合図の太鼓が鳴った。

勝利条件は、名入りタグのペンダントを搔っ切るか、胸元の家門のフラグを破れば勝利…なら!


「おりゃあああ!!!」

「!」


あれ?

踏み出そうとするついでにすっと避けると、そいつは重たすぎる剣のせいでよろけた。そのまま柄のままの剣を足元に出すと、躓いて転んでしまった。

ドスン、と転げううとうめき声をあげる男。


嘘。もう終わり…?という目で審判を見ると、そいつは明らかに動揺した様子で、こう告げた。


「む、無効!」

「……なぜ?」

「あなたは剣を抜いてません!よって……む、無効です!!」

「ふうん……」


ちらりと相手側の家門の旗を見る。


(ここは…王室に武官を輩出しまくってる有名な子爵家だ。ああ、なるほど)


「く、くそ!!剣を抜け!!」

「……負けたことがないんだね」


すらりと剣を抜き放ち、身長差を利用してそいつの懐に飛び込んだ。そして――一閃。

きらりと剣筋が光り、シルバータグと胸元のをフラグを真っ二つして見せた。


「あ」


間抜けな声が審判と対戦相手両方から聞こえた頃、私は剣をしまう。


「審判……何か不都合でも?ほら。コール」

「う、し 勝者…… ロゼネイ=グラント!!」


ばっとセルリア王家の旗が持ち上げられる。


(セルリア、ねえ)


わっと歓声が上がる。

こんな予選の初戦で、しかも出場者は無名な連中。

観客などいるはずもないだろうな、と思っていたのに…意外と人が多くて、この大会の注目度がわかる。


「よっしゃ!!俺の勝ち!!」

「!」


ひとり、はしゃいでいる声が聞こえたので、そちらを見ると……そこには、イリシユ=セルリア姿があった。


(うわ、暇人…あいつ、何してんの?)


イリシユに、ラウに、ヴァラモ公爵に、セルリア王家。

私にとっての「不快な奴」が見事にそろっているなんて。


「これは、負けられないね…!」


私は手ごたえと同時に、勝利を願い、こぶしを握り締めた。






読んでいただきありがとうございます!100超えました!ちゃんと完結できるので、よろしくお願いします。

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