第三十七話
オークエンペラーと直接戦う前にオークキングを標的にして、オークエンペラーの周りを動き回りながら倒していく。
愚鈍とはいえオークキングの強さは見逃せないしコンフラットたちの手に負えるか分からない。
それにその図体の大きさで歩くだけでも脅威となる。
ここを通してしまえば、ドワーフの里は取り返しのつかない被害がでるだろう。
「オマエ、ニゲるな! オデとタタカえ!!」
「はっ! 分かってるよ!!」
オークエンペラーにも牽制をしつつも、あくまでも標的はオークキングだ。
その巨躯から振り下ろされる拳は大岩すら砕くし、その腕力をこめた力は脅威である。
しかし幾ら力が強いと言っても動きの遅い敵など、火力を出せる剣を手に入れた今となってはただの格好の的である。
「ブグォォォォオ!!」
数体のオークキングを倒した所でようやく狙われていることに気付いたのか、他のオークキングは進行を止めてこちらに向かってきた。
オークエンペラーの追撃に加えてオークキングからの攻撃が加わると流石に厳しいものがある。
しかしオークの軍勢まで倒しきる時間はないと言っても、コンフラットにオークキングを倒すと言った以上は約束を守らなければならない。
オークエンペラーからの攻撃を交わしつつオークキングの元に移動し、攻撃の合間を縫って倒していく。
「──これで、最後だな」
そして残る一体を倒し切った所で、ようやくオークエンペラーに切り込む。
「オマエ……コロす!」
「なんだ魔物でも仲間がやられて悲しむ心を持っているのか? だが、直ぐに後を追わせてやるよ!!」
オークキングを倒したのと同じ剣撃を繰り出すもオークエンペラーには交わされ、そしてすかさずに反撃してくる。
重厚な剣による一撃を交わすタイミングを逃し剣で受け止めるも、力技で吹き飛ばされてしまう。
「くっ……厄介な……」
大振りをしては交わされ、近接戦闘でも剣と厚い皮によって有効打にはならない。
かといってオークエンペラーの攻撃を受けるお人好しでもないので、打開策を見出すために時間だけが過ぎていく。
「仕方がない……あれをやるか──」
「チョコマカとニゲルな。オトナしくコロされろ!!」
わざと隙をみせてオークエンペラーの大振りを誘い、そしてその振られた剣の側面に向かって剣を振るう。
それにより甲高い音と共にオークエンペラーの剣が真っ二つに折れる。
「──バカな!!」
突然に武器を失ったオークエンペラーは狼狽える。
そして俺はまたその隙を逃すようなお人好しでもない。
オークエンペラーを下から一振りで薙ぎ払う。
「終わりだ、オークエンペラー!」
「──ッグ、グハッ……」
膝をつき、血を吐くオークエンペラーにとどめを刺す。
そしてオークエンペラーの魔石を取り出してこれで全てが終わりに向かうと思ったその時、一つの悪い予感が浮かんでしまう。
「魔石……まさか──」
当たって欲しくない悪い予感がし、俺は急いでドワーフの里へと戻る。
里には今、大量の魔物の死骸と共に大量の魔石があるのだ。
そしてそこに向かったのは魔石により進化をすることを強要されたオークたち。
その行き着く先は──。
「くそっ、やはりか!!」
悪い予感は当たってしまい、ドワーフの里の中は阿鼻叫喚に包まれている。
オークが魔石を食べて進化を果たし、里の中にはオークではなくハイオークとオークロードの群れで溢れているのだ。
「くそっ、油断した。──コンフラット、コンフラットはどこだ!」
襲われているドワーフ兵を守るため、手当たりしだいに目に付いたオークどもを倒し里の中を回る。
里の中には先ほどまでは無かった倒れたオークとドワーフ兵の姿、そして激しい戦闘からか破壊された建物から煙が上がり元の姿の面影が無くなってしまった。
進化によってオークキングまで誕生しなかったのが逆に煩わしい。
全てのオークを倒すにはその数が多すぎて時間が掛かるし、その間にも被害は広がってしまう。
「……皆、無事でいてくれよ」
こうしてドワーフの里を守るために、最後の戦いが始まったのであった。




